
技能実習生・特定技能スタッフの増加で、製造現場のリーダーや教育担当が英語で作業指示を出す場面は年々増えています。さらに、海外OEMの顧客監査・第二者監査の現場巡回(フロアウォーク)では、監査官が作業者に直接「なぜこの確認をするのか」を質問することもあります。
この記事では、朝礼・作業指示・安全・5S・不良報告・声かけまで、現場ですぐ使える英語フレーズをシーン別に紹介します。
ポイントは、難しい英語ではなく短く・はっきり・やって見せること。明日から現場で使える形で揃えました。
この記事の目次
製造現場で英語が必要になる場面
まず、製造現場で英語が求められる典型的な場面を整理しましょう。
- 技能実習生・特定技能・海外スタッフへの日々の作業指示
- 海外マザー工場・海外拠点の立ち上げ支援
- 顧客監査・第二者監査の現場巡回で、監査官が作業者へ直接質問する
- 安全教育・KY(危険予知)活動の周知
ここで大事なのは、現場英語は「文法的に正しい英語」より「短く確実に伝わる英語」だということです。丁寧で長い言い回しは、かえって伝わりません。
基本はやさしい単語+命令形(+please)+やって見せる。この原則を頭に置いて、各シーンを見ていきましょう。とくに技能実習生・特定技能のスタッフは英語が母国語でないことも多いため、ネイティブ向けの英語よりも、世界共通で通じるシンプルな表現を選ぶことが結果的に近道になります。
なお、品質保証・監査担当者向けの英語は〔品質管理の英語フレーズ集|検査・是正処置から顧客監査まで【実務者解説】〕で別途まとめています。
朝礼・作業の割り当て・指示で使う英語フレーズ
一日の始まりと、作業の割り当てで使う基本フレーズです。
- Good morning, everyone. Let's start the morning meeting.
皆さんおはようございます。朝礼を始めます。 - Today, you will work on line 3.
今日はあなたは3番ラインです。 - Please start with this process first.
まずこの工程から始めてください。 - Your target for today is 500 pieces.
今日の目標は500個です。 - Let me know if you have any problems.
何か問題があれば知らせてください。 - Is that clear?Any questions?
分かりましたか?質問はありますか? - Please come to the line on time.
時間通りにラインに来てください。 - Today we have a customer audit. Please follow the standard work.
今日は顧客監査があります。標準作業を守ってください。
「朝礼」はmorning meeting、「ラインに入る」はwork on line ~、「今日の目標(数量)」はtarget / quota。理解の確認はDo you understand?だとやや高圧的に響くことがあるので、Is that clear?やAny questions?の方が柔らかく、聞き返しやすくなります。
監査日にはPlease follow the standard work.(標準作業を守って)と一言添えるだけで、現場の振る舞いが引き締まります。
作業手順・段取りで使う英語フレーズ
作業手順書(work instruction)に沿った指示と、段取り替えの表現です。
- Please follow the work instruction.
作業手順書に従ってください。 - Watch me first, then try it yourself.
まず私を見て、それからやってみてください。 - Hold the part like this.
部品をこのように持ってください。 - Tighten the screw with this torque.
このトルクでネジを締めてください。 - Check the part before the next process.
次の工程の前に部品を確認してください。 - This is the changeover. We change to product B.
これは段取り替えです。製品Bに切り替えます。 - Do not skip any step.
どの手順も飛ばさないでください。 - Always use the jig.
必ず治具を使ってください。 - This is the correct way. That one is wrong.
これが正しいやり方です。そちらは間違いです。
言葉だけで教えようとせず、Watch me first, then try it yourself.(まず見て、やってみて)を口グセにすると、言語の壁を一気に下げられます。
「作業手順書」はwork instruction、「段取り替え」はchangeover、「手順を飛ばす」はskip a step。OJTは「言葉+動作」で伝えるのが鉄則です。
機械・設備の操作で使う英語フレーズ
設備の起動・停止・設定に関するフレーズです。とくに「許可なく設定を変えない」という点は、監査でも重視される変更管理に直結します。
- Turn on the machine. / Power on.
機械の電源を入れてください。 - Warm up the machine before production.
生産前に機械を暖機運転してください。 - Set the temperature to 180 degrees.
温度を180度に設定してください。 - Do not change the settings without permission.
許可なく設定を変えないでください。 - Turn off the power after use.
使用後は電源を切ってください。 - Clean the mold after the shift.
シフト終了後に金型を清掃してください。
「電源を入れる/切る」はturn on / turn off(power on / power off)、「暖機運転」はwarm up、「設定」はsettings、「金型」はmold(プレス系はdie)です。
重要なのはDo not change the settings without permission.(許可なく設定を変えない)で、これは工程パラメータの変更管理そのものです。
設定変更が無断で行われていないかは、IATF16949やVDA6.3の監査でも確認されるポイントなので、作業者にも英語で明確に伝えておきましょう。
安全・KY(危険予知)で使う英語フレーズ
安全は最優先。ここだけは曖昧さを残さず、短い命令形で確実に伝えます。
- Safety first.
安全第一。 - Wear your safety glasses and gloves.
保護メガネと手袋を着けてください。 - Do not put your hand inside the machine.
機械の中に手を入れないでください。 - Press the emergency stop button if something is wrong.
異常があれば非常停止ボタンを押してください。 - This area is dangerous. Keep out.
ここは危険です。立入禁止です。 - Report any injury immediately.
ケガをしたらすぐ報告してください。 - Let's check the hazards before starting.
作業前に危険(KY)を確認しましょう。 - Do not run in the workplace.
職場では走らないでください。 - Lift with your legs, not your back.
腰ではなく脚を使って持ち上げてください。
「保護具(PPE)」はpersonal protective equipment(safety glasses=保護メガネ、gloves=手袋、helmet=ヘルメット)、「非常停止ボタン」はemergency stop button、「立入禁止」はKeep out / No entry。
安全に関しては、難しい単語よりも指差し・ジェスチャーを併用して、誤解の余地をなくすことが最優先です。腰痛などの労働災害を防ぐLift with your legs.(脚で持ち上げて)のような声かけも、日々続けることで定着します。
5S・整理整頓・品質づくりで使う英語フレーズ
5Sと「品質の作り込み」は、外国人スタッフにも共有したい現場の価値観です。
- Keep your workplace clean.
職場をきれいに保ってください。 - Put the tools back in their place.
工具を元の場所に戻してください。 - This is 5S: Sort, Set in order, Shine, Standardize, Sustain.
これが5Sです(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)。 - Quality is built in the process, not by inspection.
品質は検査ではなく工程で作り込みます。 - Do not pass defects to the next process.
不良を次の工程に流さないでください。 - The next process is your customer.
後工程はお客様です。 - If you are not sure, stop and ask.
迷ったら止まって聞いてください。 - Mark the location for each item.
物ごとに置き場所を表示してください。 - Clean as you go.
作業しながらこまめに片付けてください。
5Sは英語でもSort(整理)/Set in order(整頓)/Shine(清掃)/Standardize(清潔)/Sustain(しつけ)と説明できます。「品質の作り込み」はbuilt-in quality、日本の現場文化である「後工程はお客様」はThe next process is your customer.がそのまま使えます。
これらの言葉は、作業者の品質意識(IATF16949でいう「認識」)を育てる土台になります。
不良・異常を発見/報告するときの英語フレーズ
不良や異常を「隠さず・すぐ報告する」習慣づけは、流出防止の生命線です。
- I found a defect.
不良を見つけました。 - This part has a scratch / dent / crack.
この部品にキズ/へこみ/ヒビがあります。 - The dimension is out of spec.
寸法が規格外です。 - The machine stopped suddenly.
機械が急に止まりました。 - Please stop the line.
ラインを止めてください。 - Call the leader.
リーダーを呼んでください。 - Put the defective parts in the red box.
不良品は赤箱に入れてください。 - Do not use this part.
この部品は使わないでください。 - Stop, call, and wait.
止めて、呼んで、待ってください。
「不良」はdefect、「不良品」はdefective part / nonconforming part。傷の種類はscratch(キズ)/dent(へこみ)/crack(ヒビ)、「規格外」はout of specです。作業者には「Stop, Call, Wait(止める・呼ぶ・待つ)」の3動作と、不良品の隔離先(red box)をセットで覚えてもらうと、流出のリスクが大きく下がります。
自己判断で不良品を使ったり、勝手に手直し(rework)したりさせないことが重要です。
数量・進捗・シフト引き継ぎで使う英語フレーズ
生産数の確認や、シフト交代時の引き継ぎで使うフレーズです。報告・記録の習慣づけにも役立ちます。
- How many pieces have you finished?
何個できましたか? - How is the progress?
進捗はどうですか? - We are on schedule.
予定通りです。 - We are behind schedule. Please speed up a little.
予定より遅れています。少しペースを上げてください。 - Please record the count on the board.
生産数をボードに記入してください。 - I will hand over to the next shift.
次のシフトに引き継ぎます。 - Is there anything to report to the next shift?
次のシフトに申し送りはありますか?
「進捗」はprogress、「予定通り/遅れている」はon schedule / behind schedule、「シフトの引き継ぎ」はhand over to the next shift。生産数(count)や異常の有無は、口頭だけでなくボードや日報に記録(record)させることで、トレーサビリティと申し送りの抜けを防げます。
「申し送り」はanything to report / hand-over notesと表現します。
ほめる・指導する・声かけの英語フレーズ
定着率や士気を左右するのが、日々の声かけです。短いポジティブな言葉を多めに。
- Good job! / Well done!
よくできました! - That's much better.
ずっと良くなりました。 - Thank you for your hard work.
お疲れさまです。 - Be careful next time.
次は気をつけてください。 - Let's do it together.
一緒にやりましょう。 - Take a break.
休憩してください。 - You are doing great.
その調子です。
「お疲れさま」に完全に対応する英語はありませんが、Thank you for your hard work.やGood work today.が近い表現です。
指導する際も、いきなり否定せずThat's much better.(良くなった)のようにできている点を先に伝えると、外国人スタッフのモチベーションと定着につながります。
現場英語を「伝わる」に変えるコツ
フレーズを覚えても本番で伝わらない——その差を埋める実務のコツを6つ挙げます。
- やさしい英語(plain English)で。
短く、1文1メッセージ。難しい単語は避けます。 - 命令形+pleaseが基本。
Could you possibly ~?のような遠回しは、現場ではむしろ伝わりません。 - やって見せる(demonstrate)。
言葉+動作のOJTが最強。指差し・実演を惜しまない。 - Yes/Noで確認を終わらせない。
「分かった?」の後にShow me how you do it.(やって見せて)で本当の理解を確認します。 - 専門用語は現場語に翻訳。
toleranceより「OK size / NG size」のように、現場で通じる言い方に置き換える。 - 数字・単位ははっきり。
トルク値・寸法・数量は復唱させて確認します。
フレーズの先:作業手順の多言語化と力量教育
英語フレーズは「その場」を乗り切る力にはなりますが、品質を安定させるには仕組みが要ります。とくに外国人スタッフがいる現場では、次の3点が監査でも問われます。
- 作業手順書の多言語化・写真/動画化(見える化)
言葉に依存しない手順書ほど、品質が安定します - IATF16949 7.2(力量)・7.3(認識)への対応。
外国人作業者も必要な力量を持ち、自分の作業が品質に与える影響を認識している必要があります。 - 顧客監査・第二者監査の現場巡回
監査員が作業者に直接「なぜこの確認をするのか」を質問することがあります。作業者自身が(簡単にでも)答えられる状態にしておくことが、教育の有効性の証明になります。
つまり、「カンコツ(暗黙知)」を言語に依存しない形で標準化できているかどうかが、外国人スタッフの品質教育の本質です。これは内部監査・顧客監査の評価にも直結します。
逆に言えば、英語フレーズに頼りきりの現場は、「教える人によって品質がバラつく」「監査で作業者が答えられない」というリスクを抱えがちです。フレーズで日々を回しながら、並行して手順書の見える化・力量評価表(スキルマップ)・教育記録の整備を進めておくと、属人化を防ぎ、監査にも自信を持って臨めます。
まとめ
製造現場で外国人スタッフに英語で伝えるコツは、やさしい英語・命令形・やって見せるの3点に尽きます。朝礼・作業指示・安全・5S・不良報告・声かけというシーンごとに定型フレーズを持っておけば、日々の現場は十分に回せます。
そのうえで、品質を安定させ監査にも耐えるには、作業手順の多言語化と力量教育の仕組み化が次のステップになります。本記事のフレーズを自社の工程名・製品名に置き換えて、声に出して練習してみてください。
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IATF16949・ISO9001・VDA6.3は、要求事項を理解するだけでなく、現場で説明できる仕組みにすることが重要です。判断に迷う部分は個別相談で、資料を整えたい場合は教材・サンプルをご活用ください。
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