VDA6.3とは、ドイツ自動車工業会(VDA)が定める「プロセス監査」の手法です。近年、欧州系の自動車メーカー・サプライヤーとの取引で「VDA6.3で監査します」と要求されるケースが急増しています。

最初に「まずはポテンシャル監査なので、質問表に基づいて内部監査をしてください」と言われ、「ポテンシャルって何だ?」と戸惑った方も多いのではないでしょうか。

VDA6.3は、製品の引き合いからアフターマーケット(市場クレーム対応)までをプロセス(P1〜P7)ごとに分割して評価する、IATF16949よりも厳しいと言われる監査です。

このページでは、VDA6.3の全体像、評価方法、IATF16949との違い、監査対策のポイントまでを、実際にVDA6.3のプロセス監査を行う監査員の視点で整理しました。各テーマの詳しい解説記事への入口としてご活用ください。


この記事の実務解説
QMS認証パートナー
専属コンサルタント

H.Minamino

製造業25年・自動車業界15年以上の実務経験

IATF16949・ISO9001・VDA6.3を、現場で使える形に落とし込む視点で解説しています。

規格要求事項の解釈だけでなく、審査で説明できる規定づくり、現場で使える帳票、内部監査・顧客監査への対応まで、実務で迷いやすいポイントを中心に整理しています。特に多くの企業様が知りたい「審査機関・顧客はどこを見るのか」の勘所も徹底解説していますので、是非ご活用ください。

専門領域
IATF16949・ISO9001・VDA6.3。初期段階の構築から認証後まですべて対応可能。
得意分野
規定・帳票・監査対応の実務化。大企業・中小企業問わず支援実績多数。
支援内容
教材提供・メール相談・個別コンサル。特に24時間対応可能なメール相談がおすすめ。

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VDA6.3規格題目一覧
P1 ポテンシャル分析
P2 プロジェクトマネジメント
P3 製品及びプロセス開発の計画
P4 製品及びプロセス開発の実施
P5 サプライヤー管理
P6 生産プロセス分析
P7 顧客ケア・顧客満足度とサービス

VDA6.3とは(プロセス監査の目的)

VDA6.3は、製品やサービスを生み出す“プロセスそのもの”が、顧客要求と規制要件にどの程度準拠しているかを評価する監査手法です。完成した製品の合否を見るのではなく、「良い製品を安定して作れるプロセスになっているか」を、専用の質問表(チェックシート)に基づいて専門の監査員が評価します。欧州自動車顧客との取引では、IATF16949の取得に加えて、このVDA6.3への対応を求められることが増えています。

VDA6.3の規格は、製品の引き合いからアフターマーケット(主に市場クレーム対応)までを、次のプロセス要素(P1〜P7)に分割して構成されています。

VDA6.3の全体像(P1〜P7のプロセス要素)

VDA6.3は、ポテンシャル分析(P1)と、本監査にあたるP2〜P7で構成されます。本監査は全58項目を対象に「徹底的に突っ込まれる」のが特徴です。

要素 名称 概要 詳細
P1 ポテンシャル分析(潜在性分析) 新規取引前に、取引してよい会社かを評価(36項目) P1
P2 プロジェクトマネジメント プロジェクト組織で対応する体制・管理 P2
P3 製品及びプロセス開発の計画 詳細計画・製造フィージビリティ・資源計画の監視 P3
P4 製品及びプロセス開発の実現 計画に基づく製品・工程開発の実行 P4
P5 サプライヤーマネジメント 供給者の選定・管理・監視 P5
P6 生産プロセス分析 量産工程の管理(コントロールプラン・是正) P6
P7 顧客ケア/顧客満足/サービス 引渡し後の顧客対応・市場クレーム対応 P7

条項単位の一覧:VDA6.3要求事項一覧(P2〜P7まとめて解説)

※P2〜P4は製品・プロセス開発、P5はサプライヤー、P6は量産、P7は顧客対応に対応します。日本企業が特に苦労しやすいのが、プロジェクト組織で対応する文化が必要なP2(プロジェクトマネジメント)です。

ポテンシャル分析(P1)と本監査(P2〜P7)の違い

VDA6.3の入口となるのがポテンシャル分析(P1)です。これは、欧州系メーカー・サプライヤーと初めて取引する際に、新規仕入先に取引を開始するだけの技術力・品質力・リスクマネジメント能力があるかを事前に評価する監査です。

  • ポテンシャル分析(P1)
    全58項目のうち36項目に絞って評価。結果は契約可否の意思決定に直結し、ここをクリアしないと次のステップ(量産前監査など)へ進めないことがほとんどです。
  • 本監査(P2〜P7)
    ポテンシャル分析を通過し、設計・試作・量産段階へ進むと、58項目すべてを対象とした本格的なプロセス監査が行われます。質問表への回答だけでなく、現場・記録・運用の実態まで突っ込まれます。

詳しくは:VDA6.3とIATF16949の違いとポテンシャル分析(P1)の解説

VDA6.3の評価方法(緑黄赤・採点とダウングレード)

VDA6.3の評価は厳格で、IATF16949を取得しているサプライヤーでも、よくて80%程度の合格点と言われます。VDA6.3の方が要求が厳しいことを前提に準備する必要があります。

  • ポテンシャル分析(P1)の評価
    各要求事項を緑(Green:問題なし)/黄(Yellow:一部課題はあるが改善可能)/赤(Red:重大なリスクあり)の3段階で評価し、総合判定で取引可否を判断します。
  • 本監査(P2〜P7)の採点
    各質問を点数(0/4/6/8/10点)で評価します。たとえばP3で「資源計画の遅延が起きているのに対策していない」と4点がつき、いきなり赤点(不合格水準)になることもあり、ダウングレードのルールに注意が必要です。

「IATF取得済みだから大丈夫」と油断すると、評価の厳しさと観点の違いで点を落とします。

IATF16949との関係(理解の鍵)

VDA6.3は、単独で理解しようとすると難しく感じられますが、IATF16949との関係性を意識して整理すると、要求事項の意図が把握しやすくなります。「なぜその質問があるのか」「どこまで準備すべきか」は、両規格のつながりを理解することで判断しやすくなります。IATF16949を取得している企業であれば、P6(生産プロセス分析)などは比較的理解しやすい内容です。

ただし、IATFの監査ではあまりこだわらない点が、VDA6.3では重視されることがあります。代表例が製造フィージビリティで、欧州顧客の監査では契約前のフィージビリティスタディが特に重視されます(実施しないと契約違反・損害賠償のリスク)。日本の文化との違いを意識した準備が必要です。

詳しくは:VDA6.3とIATF16949の違いと構築ポイント

VDA6.3の監査対策(高評価を得るために)

VDA6.3で高評価を得るには、質問表に答えられるようにするだけでなく、現場の運用・記録が質問の意図に応えられる状態になっていることが重要です。よくある失点ポイントを押さえて準備しましょう。

詳しくは:VDA6.3の監査で高評価を得る方法(監査員が解説)VDA6.3監査のFAQ

まとめ

VDA6.3とは、ドイツ自動車工業会が定めるプロセス監査の手法で、製品の引き合いからアフターマーケットまでをP1〜P7のプロセス要素に分けて評価します。入口となるポテンシャル分析(P1)は契約可否に直結し、本監査(P2〜P7)では58項目すべてが徹底的に評価されます。IATF16949よりも厳しいと言われ、取得済み企業でも油断は禁物です。IATF16949との関係性を意識しつつ、製造フィージビリティやプロジェクトマネジメントなどVDA6.3特有の観点を、現場の運用と記録で示せるように準備することが、高評価への鍵になります。各プロセス要素の詳しい解説は、本ページからリンクする記事をご確認ください。

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