
IEC60068は、振動、温度、湿度などの環境条件に対する試験方法を定めた国際規格です。自動車部品は、走行中の振動や温度変化、湿度などの過酷な環境にさらされるため、耐久性や信頼性を事前に評価することが欠かせません。
その際の基本となる試験方法として、IEC60068が広く参照されています。
自動車OEMの要求仕様や社内規格においても、IEC60068をベースに試験条件が設定されるケースは少なくありません。本記事では、IEC60068の基本的な考え方や、振動・温度・湿度試験の位置づけ、実務で注意すべきポイントを整理し、環境試験規格をわかりやすく解説します。
この記事の目次
IEC 60068(環境試験)とは何か
IEC60068は、製品が使用環境に耐えられるかを評価するための環境試験方法を体系的にまとめた国際規格です。対象は特定の業界に限定されず、電子部品や機械部品など、幅広い製品に適用されます。特に自動車業界では、車載部品の信頼性評価において基本となる規格として扱われています。
重要な点は、IEC60068が「試験方法」を定めた規格であることです。試験の手順や条件設定の考え方は示されていますが、合否判定基準そのものは規定されていません。そのため、実際の評価では、顧客要求や製品仕様に基づいて判定基準を別途設定する必要があります。
IEC 60068で扱われる主な環境試験(振動・温度・湿度)
IEC60068では、製品が想定される使用環境に耐えられるかを確認するため、さまざまな環境試験方法が定義されています。中でも自動車業界で頻繁に用いられるのが、振動試験、温度試験、湿度試験です。これらは、車両走行時の振動や、季節・地域による温度変化、結露や高湿度環境といった実使用条件を模擬する目的で実施されます。
振動試験では、走行中に発生する機械的な振動が部品に与える影響を確認します。温度試験では、高温や低温、急激な温度変化に対する耐性を評価し、材料劣化や性能低下の有無を確認します。湿度試験では、高湿度環境下での腐食や絶縁劣化などを評価します。
IEC60068は、これらの試験をどのような方法で実施するかを整理した規格であり、試験内容を標準化する役割を担っています。
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IEC 60068は「シリーズ規格」:目的により参照パートが分かれる
IEC60068は単体の規格というより、環境ストレスごとに試験方法を整理した「シリーズ規格」として運用されます。実務では、仕様書に「IEC60068準拠」とだけ書かれていても、それだけでは試験内容が確定しません。例えば低温・高温・振動・衝撃など、対象ストレスに応じて参照すべき試験パートが異なるためです。
仕様書や顧客要求で「どの試験パートの、どの条件を適用するのか」まで特定し、試験計画書に落とし込むことが重要になります。
振動・温湿度だけではない:腐食・粉塵・日射なども対象になり得る
IEC60068は、振動・温度・湿度に加え、衝撃、腐食(塩水噴霧など)、粉塵、日射(太陽光)、低気圧といった環境ストレスも試験として整理されています。
車載部品の不具合は「壊れ方」が一つではなく、例えば湿度+温度変化で結露が起き、腐食やリークにつながることもあります。よって、規格の一覧を“全部やるチェックリスト”にするのではなく、使用環境→故障モード→必要試験の順で選定し、試験の狙いを明確にするのが現実的です。
自動車OEM要求とIEC 60068の関係
自動車業界では、IEC60068そのものへの適合が直接求められるというよりも、OEM独自の試験規格や社内規格のベースとしてIEC60068が活用されるケースが一般的です。多くのOEMは、自社の使用環境や設計思想に合わせて試験条件を定めており、その試験方法の考え方としてIEC60068が参照されています。
例えば、振動条件や温度範囲、試験時間などはOEMごとに細かく指定されますが、その試験の進め方や環境の与え方はIEC60068に準拠した形で定義されることが多くあります。そのため、IEC60068を理解しておくことで、OEM規格や顧客仕様書に記載された試験内容を読み解きやすくなります。
単に試験を実施するだけでなく、「なぜその試験条件なのか」を説明できることが、実務上の重要なポイントです。
IATF16949との関係:IEC 60068は「試験方法の根拠」になる
IATF16949は、製品試験そのものを定めた規格ではありませんが、設計検証や妥当性確認、変更管理といった要求事項を通じて、試験の実施と管理を強く求めています。その際、どのような根拠で試験方法を選定しているのかを説明できることが重要になります。
IEC60068は、IATF16949の中で直接参照されている規格ではありませんが、環境試験方法の国際的な根拠として活用されるケースが多く見られます。例えば、設計検証段階で実施する振動試験や温度試験について、「なぜその試験条件なのか」「どの規格に基づいているのか」を説明する際に、IEC60068が試験方法の裏付けとして使われます。
IATF16949の審査や顧客監査では、「IEC60068に従って試験したか」よりも、「設計意図や使用環境に基づき、妥当な試験方法を選定・管理しているか」が重視されます。そのため、IEC60068を単なる試験手順書として扱うのではなく、IATF16949の要求事項と結びつけて、試験計画・結果・判断基準を一貫して説明できる状態を作ることが重要です。
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ISO16750との使い分け:自動車では「車載前提」の規格も併用される
自動車分野では、IEC60068(汎用的な試験方法)をベースにしつつ、車載電装品向けに環境条件・負荷を整理したISO16750シリーズが参照されることも多くあります。
ISO16750は車両への搭載位置などを前提に環境ストレスと試験を整理している点が特徴で、車載用途ではこちらが“会話の土台”になる場面があります。
したがって実務では、「OEM規格(またはISO16750)で要求条件を押さえ、試験方法の根拠としてIEC60068を参照する」という組み立てが分かりやすい運用になります。
IEC 60068で注意すべき実務上のポイント
IEC60068を実務で扱う際に注意すべき点は、試験方法と合否判定基準を混同しないことです。
IEC60068はあくまで「どのように環境を与えるか」という試験方法を定めた規格であり、「合格・不合格をどう判断するか」までは規定していません。そのため、試験結果をどの基準で評価するかは、製品仕様や顧客要求に基づいて別途定める必要があります。
また、設計意図や使用環境を十分に考慮せずに、規格に記載された試験をそのまま実施してしまうと、過剰試験や逆に評価不足となる可能性があります。IEC60068を活用する際は、設計部門や品質部門と連携し、どの環境条件をどのレベルで評価すべきかを事前に整理したうえで試験計画を立てることが重要です。
まとめ
IEC60068は、振動・温度・湿度などの環境条件に対する試験方法を定めた国際規格であり、自動車部品の耐久性や信頼性を評価するうえで基本となる規格です。ただし、IEC60068は合否判定基準を示す規格ではなく、あくまで「どのように試験を行うか」という方法を整理した規格である点を正しく理解する必要があります。
自動車業界の実務では、OEM独自規格やISO16750などの車載向け規格が要求条件として示され、その試験方法の根拠としてIEC60068が参照されるケースが一般的です。また、IATF16949の運用においては、試験そのものよりも、設計意図や使用環境に基づいて適切な試験を選定し、計画・実施・評価までを一貫して管理できているかが重視されます。
そのため、IEC60068を単なる試験手順書として扱うのではなく、OEM要求やIATF16949の要求事項と結びつけて理解し、「なぜこの試験を行うのか」「どの規格を根拠にしているのか」を説明できる状態を作ることが重要です。環境試験をマネジメントの一部として整理することで、IEC60068は製品信頼性を高めるための有効な指針として活用できます。
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