製造業における特殊工程の管理と妥当性確認は、品質保証とコスト削減に不可欠です。多くの企業がこれを避けがちですが、適切な管理と確認プロセスは長期的に企業の競争力を高めます。
本記事では、特殊工程の重要性、実施の際の課題と解決策、実際の企業例を通じて、妥当性確認がいかに製品の品質向上とコスト効率の改善に寄与するかを解説します。
知識・経験を活かし、品質マネジメントシステムの規格を幅広い方々に理解いただき、各規格の普及のお手伝いができればという思いで立ち上げました!難解な内容も、知識と経験でわかりやすく解説していきますので、これからもよろしくお願いします!あくまでも個人の見解(公式に認められたものではない)となりますので、ご理解いただき是非参考にしていただければ幸いです★
目次
特殊工程とは何?
重要要求事項:8.5.1の(f)項
特殊工程とは、その結果が製品に反映され、後からの検査では品質を保証することが難しい、または不可能な製造工程を指します。これらの工程は、製品の品質に直接的な影響を及ぼすため、非常に高い精度と管理が要求されます。
この内容は、ズバリ「破壊試験を伴う工程管理」を意味しています。
「監視又は測定で検証することが不可能な場合」というのは、製品を破壊して検査しないとわからない工程なので、例えば表面処理・水没試験など、製品の性能を失ってしまうような作業・検査をしないとわからない場合です。
どのタイミングで実施することが妥当なのかが問われるので、毎ロットN=5検査や1か月に1回信頼性試験実施など、検査規格書に確実に記述するようにしましょう。
このような検査以外は、通常の受入検査・工程内検査・出荷検査で全数検査または抜き取り検査で担保可能なので、難しく考える必要はありません。
特殊工程においては、プロセスの妥当性確認が極めて重要となります。これは、プロセスが計画通りの結果を出せること、つまり製造条件や工程が適切であることを事前に証明するプロセスです。
プロセスの妥当性確認の必要性は、特にその工程の結果が製品の機能や安全性に直接影響を及ぼす場合に顕著です。
製品の最終検査では不具合を検出できない、または製品が顧客に渡された後にしか問題が発覚しないような工程がこれにあたります。そのため、事前に工程が適切であることを確認し、証拠を残すことが重要となるのです。
具体的な特殊工程の例
具体的な特殊工程の例としては、以下のような工程が挙げられます。
工程例 | 内容 |
塗装 | 製品に色や保護膜を施す工程。塗装の均一性や耐久性は、後からの検査では完全には評価できない。 |
メッキ | 製品の表面に金属層を付加する工程。メッキの均一性や密着性は、製品の耐腐食性や耐摩耗性に直接影響する。 |
接着 | 二つ以上の部品を接合する工程。接着剤の選定や接着条件は、接合部の強度や耐久性に直接影響する。 |
圧着や圧接 | 物理的な圧力を用いて部品を固定する工程。適切な圧力が適用されていないと、部品間の接続不良が生じる可能性がある。 |
これらの工程は、製品の品質を保証する上で非常に重要な役割を担っています。プロセスの妥当性確認を通じて、これらの特殊工程が計画通りに実施され、期待される品質が得られることを保証することが、ISO9001などの品質管理システムにおいて求められています。
プロセスの妥当性確認
プロセスの妥当性確認は、製造プロセスが設計された通りに実行され、計画どおりの品質を持つ製品が生産されることを保証するための重要なステップです。
この確認作業は、特に後から品質を検証することが困難または不可能な特殊工程において重要です。
プロセスの妥当性確認は、製造条件が適切であり、それが一貫して製品の品質基準を満たすことができることの実証に大きく貢献します。
プロセスの妥当性確認の意味
プロセスの妥当性確認とは、製造プロセスがその目的に対して適切であり、計画通りの結果を確実に出せることを証明するプロセスです。
これは「計画どおりの結果を出せることの実証」とも言え、製品やサービスが設計要件や顧客の期待を満たすことができることを保証するために必要です。
プロセスの妥当性確認の方法
プロセスの妥当性確認では、以下のような活動が行われます。
妥当性確認の活動項目 | 内容 |
製造プロセスの評価 | 製造プロセスが製品仕様に適合し、一貫して品質の高い製品を生産できるかどうかを評価します。 |
リスク評価 | 製造プロセスにおける潜在的なリスクを特定し、それらを軽減または排除するための対策を講じます。 |
試験実施 | 実際に製品を製造し、設定された製造条件下で計画通りの品質が得られるかをテストします。 |
データ収集と分析 | 製造プロセスから得られるデータを収集し、分析して、プロセスが安定しており、予測された品質の製品が一貫して生産されることを確認します。 |
文書化と承認 | プロセスの妥当性確認の結果を文書化し、必要に応じて改善策を施した後、プロセスを承認します。 |
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計画どおりの結果を出せることの実証の必要性
計画どおりの結果を出せることの実証は、製品の一貫した品質を保証するために不可欠です。
特に、安全性や性能に直接影響を与える製品の場合、この実証作業は製品が規制要件や顧客の期待を満たすことを保証するために極めて重要です。
特殊工程では、製造後の検査では品質を確認できないか、非常に困難な場合が多いため、プロセスの妥当性確認が特に重要になります。
これは、特殊工程が正しく管理されていない場合、不具合が発生したときに製品の再製造や廃棄が必要になり、コスト増加や顧客満足度の低下に直結するためです。
そのため、プロセスの妥当性確認により、特殊工程が予め定められた品質基準を満たすことができるという確証を得ることは、製品の信頼性と品質を保証する上で不可欠です。
特殊工程の管理方法
特殊工程の管理方法、特に妥当性確認の実際の手順と記録には、詳細な計画と厳格な実施が必要です。ここでは、その手順と特殊工程記録の重要性について解説します。
ステップ | 内容 |
基準の定義 | 品質基準、製造プロセス基準、および製品性能基準を明確に定義します。これらの基準は、製品の品質を保証するために必要な条件や特性を詳細に説明するものです。 |
承認された設備の使用 | 特定の特殊工程に適合する設備を選定し、これらの設備がプロセス要件を満たしていることを確認します。承認された設備のみを使用し、定期的なメンテナンスと検査を行います。 |
資格認定された作業者による作業 | 特殊工程を適切に実施できる訓練を受け、資格を持つ作業者のみが作業を行うようにします。これには、適切な訓練と技能評価が含まれます。 |
作業手順の適用 | 「QC工程表」「作業手順書」など、事前に定められた作業手順に従って、作業を行います。これにより、作業の一貫性と再現性を確保します。 |
特殊工程記録の作成と管理 | 作業者、作業日、使用設備、作業方法、作業条件など、重要な情報をすべて文書化し、「特殊工程記録」として管理します。 |
妥当性の再確認と手順の見直し |
定期的にプロセスの妥当性を再評価し、必要に応じて手順を見直し、改善します。 |
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特殊工程とは何?:まとめ
特殊工程の適切な管理と妥当性確認は、製造業での品質保証とコスト効率の向上に不可欠です。企業がこれらのプロセスを避けたがる現状を克服し、長期的な視点で品質とコストのバランスを取ることは、競争力のある製品を市場に提供し、企業の持続可能な成長を支える上で重要です。
教育と啓発、リソースへのアクセスの向上、プロセスの簡素化と標準化、長期的な視点の促進など、具体的な解決策を通じて、特殊工程の管理と妥当性確認の重要性を業界全体で認識し、実践する文化を育成することが求められます。
このような取り組みにより、品質不良によるコストや、後工程での問題発見に伴う再作業の必要性を減少させることができます。また、製品の信頼性が高まることで、顧客満足度と企業のブランド価値が向上します。妥当性確認は、単に規制遵守のためだけではなく、企業の経済的な成功と市場での競争力を高めるための戦略的な投資と考えるべきです。
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