
製造現場で不適合品が発生したとき、最初に重要になるのが「どこに置くか」「どのように識別するか」「誰が処置を判断するか」です。不適合品の置き場が曖昧なままだと、合格品や確認待ち品と混在し、誤使用、誤出荷、再発防止の遅れにつながります。
この記事では、製造業における不適合品の置き場管理について、ISO9001・IATF16949の考え方を踏まえながら、現場で使える識別・隔離・解除判断のポイントを解説します。

この記事を書いた人
所属:QMS認証パートナー専属コンサルタント
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IATF16949構築で整理しておきたい視点
IATF16949(自動車産業のQMS)の構築や運用では、規格要求の理解だけでなく、それをどのようなルールや記録に落とし込むかが重要になります。ISO9001との違いや不足点を把握できていないと、構築途中で手が止まってしまうことも少なくありません。
まずは全体像を整理し、必要な知識や帳票の考え方を段階的に確認していくことが、無理のない対応につながります。
この記事の目次
不適合品の置き場管理とは何か
不適合品の置き場管理とは、規格、図面、仕様、社内基準、顧客要求を満たさない製品や部品を、合格品と混在させないように識別・隔離する管理のことです。単に「不良品を置く場所を決める」だけではなく、誰が見ても使用不可であることが分かり、勝手に次工程や出荷へ流れない状態にすることが目的です。
製造現場では、不適合品、判定待ち品、手直し予定品、特採検討品、廃棄予定品が同じような場所に置かれてしまうことがあります。この状態では、現場担当者が誤って使用したり、選別前の品が合格品として扱われたりするリスクがあります。
ISO9001の不適合及び是正処置については、【ISO9001攻略】10.2:不適合及び是正処置の要求事項徹底解説!で詳しく解説しています。本記事では、その前段階として、不適合品を現場でどのように置き、識別し、隔離するかに絞って説明します。
不適合品の置き場が曖昧だと何が起きるか
不適合品の置き場が曖昧だと、最も大きな問題は誤使用と誤出荷です。不適合品が合格品の近くに置かれていたり、識別票が外れていたりすると、次工程の作業者が通常品と勘違いして使用してしまう可能性があります。
また、対象範囲が分からなくなることも大きな問題です。どのロットが不適合なのか、どこまで確認済みなのか、どの品が手直し済みなのかが不明確になると、選別や再検査の信頼性が下がります。結果として、余計な在庫を止めたり、広範囲の再確認が必要になったりします。
不適合品の置き場管理は、品質保証部門だけの仕事ではありません。製造、検査、倉庫、出荷、購買など、現品を扱うすべての部門に関係します。現場で置き場のルールが守られていない場合、内部監査や顧客監査でも指摘されやすいポイントです。
不適合品として置き場管理すべき対象
不適合品の置き場管理では、明らかな不良品だけを対象にすると不十分です。検査でNGとなった品、判定待ち品、異常発生時の対象品、選別待ち品、手直し品、再検査待ち品、特採検討品、廃棄予定品なども、状態に応じて識別・隔離する必要があります。
特に注意したいのは、判定待ち品です。まだ不適合と決まっていないため、現場では通常品の近くに置かれがちです。しかし、確認が終わる前に次工程へ流れてしまえば、不適合品と同じリスクになります。そのため、判定待ち品も「使用不可」または「確認待ち」として明確に識別することが重要です。
異常処理と連動する場合もあります。設備異常や材料違い、検査異常が発生したときは、異常発生前後の製品を一時的に保留し、不適合品または確認待ち品として管理します。
不適合品置き場の基本ルール

不適合品置き場の基本は、合格品と物理的に分けることです。床のライン、専用棚、専用箱、隔離エリア、施錠エリアなどを使い、不適合品が通常品と混在しないようにします。置き場には「不適合品置場」「判定待ち品置場」「手直し品置場」など、状態が分かる表示を行います。
置き場を決めるだけでなく、誰が置いてよいのか、誰が取り出してよいのか、誰が処置を決めるのかも明確にします。誰でも自由に出し入れできる状態では、隔離している意味が弱くなります。特に出荷直前品や重要保安部品など、顧客影響が大きい製品については、品質保証部門の承認なしに解除できないルールにすることが望ましいです。
また、不適合品置き場は、現場の邪魔にならない場所であると同時に、管理しやすい場所である必要があります。人通りが多すぎる場所や、合格品置き場のすぐ横にある場所は、混在リスクが高くなります。
識別票・赤札で状態を明確にする
不適合品の管理では、置き場だけでなく、現品に付ける識別票も重要です。赤札、不適合品票、保留票、判定待ち票、手直し票などを使い、現品の状態が一目で分かるようにします。
識別票には、品番、品名、ロット番号、数量、不適合内容、発見日、発見者、処置予定、判定者、次のアクションなどを記載できるようにしておくとよいでしょう。特にロット番号や数量が抜けていると、後から対象範囲を確認できなくなります。
注意したいのは、識別票が外れたり、文字が読めなくなったりすることです。現場では、油、粉じん、移動、積み替えによって表示が見えにくくなることがあります。そのため、現品票だけに頼らず、置き場表示、管理台帳、システム上のステータスなど、複数の方法で状態を管理すると安定します。
不適合品と判定待ち品を分ける
不適合品置き場でよく起きる問題が、不適合品と判定待ち品の混在です。不適合が確定した品と、まだ品質確認中の品が同じ場所に置かれていると、どちらがどの状態なのか分からなくなります。
判定待ち品は、合格品でも不適合品でもない中間状態です。そのため、「確認が終わるまで使用禁止」として管理する必要があります。判定待ち品置き場を別に設ける、保留票を付ける、システム上で出荷停止にするなど、誤使用を防ぐ工夫が必要です。
また、判定待ち品は長期間放置されやすい傾向があります。誰がいつまでに判断するのかを決めておかないと、置き場に品物がたまり、現場の管理が崩れていきます。判定待ち品には期限と責任者を設定し、定期的に確認することが重要です。
手直し品・再検査待ち品の置き場管理
手直し品や再検査待ち品も、不適合品管理の中で注意が必要です。手直し前、手直し中、手直し後、再検査待ち、再検査合格の状態が混在すると、未確認品が合格品として流れるリスクがあります。
手直し品を管理する場合は、手直し指示、手直し内容、作業者、再検査結果、承認者を記録します。手直し後に再検査が必要な場合は、再検査が完了するまで合格品置き場へ戻さないルールが必要です。
また、手直し品の置き場は、通常品と分けるだけでなく、作業途中の状態が分かるようにすることが重要です。たとえば、「手直し待ち」「手直し済み・再検査待ち」「再検査合格」などに分けると、現場での誤判断を防ぎやすくなります。
手直しはその場しのぎでなく、誰が・どの条件で承認するかをルール化できているかが要点。判断基準と記録の残し方は〔手直し申請書帳票〕で整理できます。
特採品の置き場管理
特採品とは、規格や要求事項を満たしていないものの、顧客や権限者の承認を得て使用または出荷する品のことです。特採品は、不適合品とは異なる扱いになりますが、承認前の段階では通常品と混在させてはいけません。
特採を検討している品は、「特採申請中」「顧客承認待ち」「使用可否判断待ち」などの状態が分かるように識別します。承認が下りる前に使用または出荷してしまうと、大きな問題になります。特に顧客承認が必要な場合は、承認記録と対象ロットが確実に紐づいていることが重要です。
特別採用に関する考え方は、【IATF16949攻略】8.7.1.1:特別採用に対する顧客の正式許可の要求事項徹底解説!も参考になります。不適合品置き場管理では、特採品を「不適合だけど使ってよい品」と安易に扱わず、承認前後の状態を明確に区別しましょう。
特別採用にするかは品質リスク・顧客影響を踏まえた判断が要点。判断条件と承認フロー・記録の残し方は〔特別採用申請書帳票〕で整理できます。
廃棄品の置き場管理

廃棄品も、不適合品管理の中で見落とされやすい対象です。廃棄と決まった品であっても、すぐに処分されず一時的に現場や倉庫に置かれることがあります。この間に通常品と混在すると、誤使用や誤出荷のリスクがあります。
廃棄品は、「廃棄予定品」「廃棄承認済み」「廃棄待ち」など、状態を明確にして管理します。廃棄前に数量確認や承認が必要な場合は、勝手に処分しないルールも必要です。特に高額部品や顧客支給品の場合は、廃棄判断に顧客承認が必要になることがあります。
廃棄品置き場は、通常品置き場から離し、できれば誤って持ち出せない場所に設けます。廃棄処理後は、廃棄数量、廃棄日、承認者、処分方法を記録として残すと、後から説明しやすくなります。
不適合品置き場の解除ルール
不適合品置き場では、置くルールだけでなく、解除するルールが重要です。隔離された品を誰が、どの条件で、どこへ戻してよいのかが曖昧だと、未確認品が通常品として扱われるリスクがあります。
解除には、品質確認、再検査、手直し完了、特採承認、廃棄承認など、状態に応じた判断が必要です。解除判断者は、製造担当者だけでなく、品質保証部門や責任者が関与するルールにすると安全です。特に顧客影響がある品や重要特性に関わる品は、品質保証部門の承認を必須にすることが望ましいです。
解除時には、識別票を外すだけでなく、管理台帳やシステム上の状態も更新します。現品の表示だけ変えても、台帳上は不適合のまま、または出荷停止が残ったままになることがあります。現品、記録、システムを一致させることが重要です。
不適合品置き場とトレーサビリティ
不適合品置き場管理では、トレーサビリティも重要です。不適合品がどのロットで、どの工程で、どの材料を使い、どの検査で発見されたのかを追跡できなければ、影響範囲を特定できません。
たとえば、同じ不具合が複数ロットで発生している場合、材料ロット、設備、作業者、製造条件、検査記録を確認する必要があります。不適合品置き場に現品があるだけでは、原因分析や影響範囲の確認には不十分です。
識別及びトレーサビリティについては、【IATF16949攻略】8.5.2.1:識別及びトレーサビリティ-補足の要求事項徹底解説!でも解説しています。不適合品の置き場管理では、現品の隔離と記録の紐づけをセットで考えることが重要です。
不適合品置き場で監査指摘を受けやすいポイント
不適合品置き場で監査指摘を受けやすいのは、置き場はあるものの、実際には状態が分からないケースです。たとえば、不適合品置き場に識別票のない品が置かれている、判定待ち品と廃棄品が混在している、解除者が不明、長期間放置されている品がある、といった状態です。
また、不適合品置き場が合格品置き場に近すぎる場合や、誰でも自由に持ち出せる場合も注意が必要です。隔離しているつもりでも、誤使用を防げる状態になっていなければ、管理としては不十分です。
内部監査では、不適合品置き場を実際に見て、表示、識別票、数量、台帳、処置状況、解除記録が一致しているかを確認すると効果的です。内部監査の進め方については、ISO9001:内部監査チェックリスト作成ポイント解説も参考になります。
不適合品置き場を現場で機能させるポイント

不適合品置き場を現場で機能させるには、ルールを複雑にしすぎないことが重要です。現場担当者が迷わず使えるように、置き場、識別票、連絡先、処置判断者を分かりやすくしておく必要があります。
特に有効なのは、状態別に置き場を分けることです。不適合品、判定待ち品、手直し待ち品、再検査待ち品、特採申請中、廃棄待ちなどを明確に分けると、現場での誤判断を防ぎやすくなります。ただし、置き場を細かく分けすぎると管理が煩雑になるため、自社の不適合発生状況に合わせて設計することが大切です。
また、定期的な棚卸しも必要です。不適合品置き場に長期間置かれたままの品があると、処置漏れや判断遅れにつながります。週次や月次で、置き場の品番、数量、処置状況、責任者、期限を確認する仕組みを作ると、管理が安定します。
まとめ:不適合品の置き場管理は誤使用・誤出荷を防ぐ基本である
不適合品の置き場管理は、製造現場で品質トラブルを広げないための基本です。重要なのは、不適合品を合格品と分けて置くだけではなく、状態を明確に識別し、誰が処置を判断し、どの条件で解除するかを決めておくことです。判定待ち品、手直し品、特採申請中の品、廃棄予定品なども、通常品と混在させない管理が必要です。
不適合品置き場が曖昧なままだと、誤使用、誤出荷、影響範囲の不明確化、監査指摘につながります。自社の置き場管理を見直す際は、置き場表示、識別票、隔離方法、解除ルール、管理台帳、トレーサビリティをセットで確認しましょう。現場で使いやすく、かつ後から説明できる仕組みにしておくことが大切です。
不適合品置き場のルール、不適合品票、隔離エリアの設計、手直し品や特採品の管理方法で迷う場合は、メールコンサルティングで個別に整理することも可能です。自社の工程や製品リスクに合わせて、現場で運用できる不適合品管理へ落とし込むことが重要です。
QMS認証パートナー:https://partner.iatf-iso.net/
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