
「是正」「改善」「予防」——品質管理に携わる方なら日常的に使う言葉ですが、この3つの違いを正確に説明できるでしょうか?ISO9001やIATF16949の審査では、是正と改善の混同が指摘されるケースが少なくありません。
本記事では、まず「是正」の一般的な意味から押さえたうえで、品質管理・ISO規格における是正・改善・予防の違いと使い分けを、現場の実務経験に基づいて徹底解説します。

この記事を書いた人
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ISO9001構築で整理しておきたい基本的な視点
ISO9001の構築や運用では、要求事項を理解するだけでなく、それを自社のルールや記録としてどう形にするかが重要になります。規格の意図は分かっていても、文書化や運用方法の判断で迷い、対応が止まってしまうケースも少なくありません。
まずは全体像を整理し、必要な文書や帳票の考え方を把握したうえで、自社に合った形へ段階的に落とし込んでいくことが、無理のないISO9001対応につながります。
この記事の目次
そもそも「是正」とは?一般的な意味を理解する
「是正(ぜせい)」とは、悪い点や不都合な点を改め正すことを意味する言葉です。「是」は道理にかなっていること・正しいことを、「正」は正しくすることを表し、合わせて「悪いものを正しい状態に戻す」という意味になります。英語では"correction"と訳されます。
ビジネスシーンでは「格差の是正」「是正勧告」「是正措置」などの表現で使われ、主に社会のルールや組織の規則など、多くの人に関わる事柄を正す場面で用いられます。個人の癖や習慣を直す場合には通常使いません。
「是正」と「改善」の違い(一般的な意味)
一般的な日本語として、この二つは以下のように区別されます。
▶是正
「悪い状態を正しい状態に戻す」こと。出発点は明らかに間違っている・不都合がある状態。
▶改善
「現状をより良い方向に変える」こと。出発点は必ずしも間違いではないが、より良くできる状態。
つまり、是正は「間違い→正しい」への修正であり、改善は「普通→より良い」への向上です。この違いは、品質管理の世界でも本質的に同じ考え方が適用されますが、ISO規格ではさらに厳密な使い分けが求められます。
品質管理における「是正」「改善」「予防」の定義
ここからは品質マネジメントシステム(QMS)の文脈で、3つの概念を正確に定義します。ISO9001やIATF16949の審査では、この定義に基づいて運用されているかが確認されますので、しっかり理解しておきましょう。
是正(Corrective Action)
品質管理における是正とは、すでに発生した不適合(問題・不具合)の根本原因を特定し、それを除去することで再発を防止する活動です。
ここでのポイントは以下の3点です。
- 不適合が発生していることが前提
→問題が起きていなければ「是正」は発動しない - 根本原因の特定が必須
→表面的な症状への対処(応急処置)ではなく、なぜ発生したかを追究する - 再発防止が目的
→一時的な修正ではなく、同じ問題を二度と発生させない仕組みを作る
なお、品質管理では「修正(Correction)」と「是正処置(Corrective Action)」は別の概念ですので注意してください。
| 用語 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| 修正 | 検出された不適合を取り除く処置(応急処置) | 不良品を選別して除去する |
| 是正処置 | 不適合の原因を除去し再発を防止する処置 | 不良原因を分析し、金型を修正して工程を改善する |
修正は「目の前の火を消す」こと、是正処置は「火事の原因を断って再発させない」ことと考えるとわかりやすいでしょう。
改善(Improvement)
品質管理における改善とは、現在の状態をさらに良くする活動です。不適合の発生を前提としない点が是正との最大の違いです。簡単にいうと、いまよりもっと良くすることが改善です。
具体的な例で比較すると以下のようになります。
- 顧客満足度調査でC判定(目標未達)
→B判定(目標達成)に引き上げる
→是正 - 顧客満足度調査でB判定(目標達成済み)
→A判定に引き上げる
→改善
改善活動は単発ではなく、PDCA(Plan-Do-Check-Act)サイクルを回しながら継続的に取り組むことが求められます。ISO9001の第10章「改善」でも、継続的改善の要求が明記されています。
改善の代表的な手法としては、リーン製造(トヨタ生産方式)、シックスシグマ、カイゼン活動、QCサークルなどがあります。
予防(Prevention)
品質管理における予防とは、問題が発生する前にリスクを特定し、未然に防ぐための活動です。
是正が「発生した問題への事後対応」であるのに対し、予防は「まだ起きていない問題への事前対応」という点で根本的に異なります。
ISO9001:2015では、旧版(ISO9001:2008)にあった「予防処置」という独立した要求事項がなくなり、代わりに「リスク及び機会への取組み(6.1項)」として、品質マネジメントシステム全体にリスクベースの考え方が組み込まれました。
一方、IATF16949では引き続き6.1.2.2項で「予防処置」が明確に要求されており、FMEAをはじめとするリスク分析手法を用いた予防的アプローチが求められています。
是正・改善・予防の違いを一目で比較

3つの概念の違いを整理すると、以下のようになります。
| 比較項目 | 是正 | 改善 | 予防 |
|---|---|---|---|
| 対象 | すでに発生した不適合 | 現状のプロセス・成果 | まだ発生していない潜在リスク |
| 目的 | 再発防止 | パフォーマンスの向上 | 未然防止 |
| タイミング | 問題発生後 | いつでも(問題の有無に関わらず) | 問題発生前 |
| 出発点 | 基準を満たしていない状態 | 基準は満たしているが、より良くできる状態 | リスクが潜在している状態 |
| 代表的手法 | 5Why分析、フィッシュボーン図、8D | PDCA、カイゼン、リーン、シックスシグマ | FMEA、リスクアセスメント、DRBFM |
| ISO9001での位置づけ | 10.2項(不適合及び是正処置) | 10.3項(継続的改善) | 6.1項(リスク及び機会への取組み) |
| IATF16949での位置づけ | 10.2.3項(問題解決)等 | 10.3.1項(継続的改善-補足) | 6.1.2.2項(予防処置) |
3つの関係性を理解する
是正・改善・予防は独立した概念ですが、実務では相互に連携して機能します。ここが超重要になるので必ず押さえてくださいね!
- 是正→予防への発展
是正処置で特定した根本原因の知見を、FMEAなどのリスク分析にフィードバックすることで、類似問題の予防につなげることができます。 - 予防→改善への発展
リスク分析で特定した潜在リスクへの対策を実施することは、プロセスの改善活動そのものです。 - 改善→是正の減少
継続的な改善活動によりプロセスの成熟度が上がれば、不適合の発生自体が減少し、結果として是正処置の件数も減っていきます。
この好循環を作ることが、品質マネジメントシステムの究極の目標です。
是正処置のプロセス:現場での実践ステップ

品質管理の現場で最も頻繁に実施されるのが「是正処置」です。ここでは、ISO9001 / IATF16949の要求事項に基づく是正処置の実践的なプロセスを解説します。
ステップ1:不適合の識別と修正(応急処置)
まず発生した不適合を正確に識別し、影響が拡大しないよう応急処置を行います。製造業であれば、不適合品の隔離・選別・流出範囲の確認がこれに該当します。
ステップ2:根本原因の特定
是正処置の核心部分です。表面的な原因ではなく、「なぜ発生したか」の根本原因を追究します。
代表的な手法は以下の通りです。
●5つのなぜ分析(5 Whys)
「なぜ?」を繰り返して真因にたどり着く
●特性要因図(フィッシュボーン図)
人・機械・材料・方法・測定・環境の観点から原因を洗い出す
●8Dレポート
自動車業界で広く使われる8ステップの問題解決手法
ステップ3:是正措置の計画と実施
根本原因に対する対策を立案し、実施します。設計変更、工程パラメータの修正、作業手順書の改訂、検査基準の追加など、具体的な手段を計画に落とし込みます。
ステップ4:効果の検証
実施した是正措置が実際に問題の根本原因を除去し、再発を防止できているかを検証します。工程能力指数(Cpk)の推移、不良率の変化、試作での確認結果などのデータに基づいて判断することが重要です。
ステップ5:水平展開と文書化
類似工程や類似製品への水平展開を行い、必要に応じてFMEA・コントロールプランなどの関連文書を改訂します。一連の活動記録は「不適合・是正処置報告書」に文書化して保管します。
是正処置報告書の書き方のポイント
是正処置の結果を文書化する「不適合・是正処置報告書」は、ISO9001 / IATF16949の審査で必ず確認される重要な記録です。書き方のポイントを押さえておきましょう。
報告書に含めるべき項目
- 不適合の内容:何が、いつ、どこで、どのように発生したか
- 修正(応急処置)の内容:不適合に対してどのような初期対応を行ったか
- 根本原因分析の結果:5Whyや特性要因図などで追究した結果
- 是正措置の内容:根本原因に対して何を実施したか(具体的な対策)
- 効果の検証結果:対策後のデータに基づく再発防止の確認
- 水平展開の記録:類似工程・製品への展開状況
- 責任者と完了日:誰が、いつまでに対応したか
よくある失敗パターン
私自身も多くの内部監査やサプライヤー監査を実施していますが、是正処置報告書で以下の問題が頻繁に見つかります。
①根本原因が浅い
「作業者の不注意」「確認不足」で原因分析が止まっている。なぜ不注意が起きたのか、なぜ確認漏れが発生する仕組みだったのかまで掘り下げる必要があります。
②修正と是正の混同
「不良品を再検査して選別した」だけを是正処置として記載している。これは修正(応急処置)であり、是正処置ではありません。
③効果の検証がない
対策を実施しただけで完了としている。データに基づく効果確認がなければ、是正処置は完了したとは言えません。
④水平展開の欠如
一つの工程で対策しただけで、類似工程への展開が行われていない。審査員はここを重点的に確認します。
是正・改善・予防に関するFAQ
品質管理の文脈ではほぼ同義で使われます。ISO規格では「是正処置(corrective action)」が正式な用語です。一方、「是正措置」は金融庁の「早期是正措置」など行政用語として使われることもあり、文脈によって微妙にニュアンスが異なります。QMSの文書では「是正処置」を使用するのが適切です。
いいえ、すべての不適合に是正処置が必要というわけではありません。不適合が偶発的なものである場合や、再発リスクが極めて低い場合は、修正(応急処置)のみで完了とすることも可能です。ただし、「是正処置を実施しない」という判断についても、その根拠(原因分析の結果)を記録に残しておく必要があります。
ISO9001:2015では旧版にあった「予防処置」という独立した要求事項はなくなりましたが、予防の概念自体が消えたわけではありません。6.1項「リスク及び機会への取組み」として、品質マネジメントシステム全体にリスクベースの考え方が組み込まれています。つまり、予防がQMS全体に統合されたと理解してください。
IATF16949では6.1.2.2項で「予防処置」が明確に要求されています。FMEA(設計FMEA・工程FMEA)を用いたリスク分析と、その結果に基づく予防的アプローチが中心です。ISO9001以上に踏み込んだ予防活動が求められる点に注意してください。
当サイトの姉妹サイト「QMS認証パートナー」にて、不適合・是正処置報告書の帳票サンプルを提供しています。真の原因追求記入欄が含まれており、ISO9001・IATF16949の審査要求を網羅した構成になっています。
是正勧告は、労働基準監督署が企業に対して法律違反(労働時間超過、残業代未払いなど)を是正するよう求める行政指導です。品質管理用語としての「是正処置」とは文脈が異なりますが、「悪い点を正す」という本質は共通しています。
是正・改善・予防の違いとは?まとめ
是正、改善、予防の違いを理解し、これらを品質マネジメントシステムに適切に組み込むことは、ISO9001やIATF16949の認証取得・維持のみならず、製品品質の向上と顧客満足度の向上に直結します。
改めて3つの違いを整理すると以下の通りです。
是正=発生した不適合の根本原因を除去し、再発を防止する活動
改善=現状をさらに良くする継続的な活動
予防=潜在リスクを特定し、問題を未然に防ぐ活動
実務上の最大のポイントは、是正と改善を混同しないことです。「不良を減らした」のは是正であり、「不良ゼロの状態からさらに効率を上げた」のが改善です。この区別が曖昧なまま運用していると、審査で指摘を受ける可能性が高くなります。
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