
ISO14001 7.1「資源」は、環境マネジメントシステム(EMS)を形だけで終わらせず、実際に機能させるための土台となる要求事項です。どれだけ立派な環境方針や目標を掲げても、それを支える人・設備・予算といった資源が不足していれば、EMSは継続的に運用できません。審査では「専任者が必要なのか」「どこまで資源を確保すべきか」といった点がよく質問されますので要注意。
本記事では、ISO14001 7.1資源の考え方から、実務での確保方法、審査での説明ポイントまでをわかりやすく解説します。
| 条項 | 規格題目 | 14001 | 9001 |
| 第4章 | 組織の状況 | 〇 | 〇 |
| 第5章 | リーダーシップ | 〇 | 〇 |
| 第6章 | 計画 | 〇 | 〇 |
| 第7章 | 支援 | 〇 | 〇 |
| 第8章 | 運用 | 〇 | 〇 |
| 第9章 | パフォーマンス評価 | 〇 | 〇 |
| 第10章 | 改善 | 〇 | 〇 |
| 条項 | 題目 | 14001 | 9001 |
| 7.1 | 資源 | 〇 | 〇 7.1.1 |
| 7.2 | 力量 | 〇 | 〇 |
| 7.3 | 認識 | 〇 | 〇 |
| 7.4 | コミュニケーション | 〇 | 〇 |
| 7.5 | 文書化した情報 | 〇 | 〇 7.5.1 |
この記事の目次
ISO14001 7.1項の目的と要求事項の全体像
ISO14001 7.1「資源」は、環境マネジメントシステム(EMS)を確立・実施・維持し、さらに継続的に改善していくための前提条件を定めた要求事項です。環境方針や環境目標が適切に設定されていても、それを支える人員や設備、時間、予算といった資源が不足していれば、EMSは形骸化してしまいます。そのためISO14001では、組織が自ら必要な資源を見極め、適切に提供することを明確に求めています。7.1項は、EMS全体の実行力を左右する「基盤」といえる要求事項なので、非常に重要です。
ISO14001における「資源」とは何か
ISO14001でいう「資源」とは、単に人や設備だけを指すものではありません。人的資源(担当者・体制・力量)に加え、設備やインフラ、情報、時間、予算など、EMSを機能させるために必要なあらゆる要素が含まれます。重要なのは、「どの資源が自社のEMSにとって本当に必要か」を組織自身が判断する点です。規格は資源の量や専任体制を一律に求めているわけではなく、組織の規模や活動内容に応じた合理的な判断を求めています。
EMSの確立・維持・改善と資源の関係
ISO14001 7.1では、資源を「確立・実施・維持・継続的改善」のすべての段階で考慮する必要があります。たとえば、新たな環境目標を設定した場合、それを達成するための人員や時間を確保できなければ、実行段階で問題が生じます。また、改善活動を継続するには、担当者への教育や設備更新など、追加の資源配分が必要になることもあります。このように、EMSの各プロセスと資源配分が連動しているかどうかが、審査でも重要な確認ポイントとなります。
資源不足が招く典型的な問題点
資源が十分に確保されていない場合、EMSではいくつかの典型的な問題が発生します。たとえば、担当者が多忙で記録が追いつかない、点検や測定が計画どおり実施されない、改善活動が途中で止まるといった状況です。これらは審査で「運用不十分」「実効性不足」と判断される原因になります。ISO14001 7.1の本質は、無理のない資源配分によってEMSを継続可能な仕組みにすることにありますので、トップマネジメントを中心に社内構築が必要です。
ISO14001で求められる資源の具体例
ISO14001 7.1では「資源を決定し,提供すること」が求められていますが、何をどこまで用意すべきか分からず悩む担当者も少なくありません。重要なのは、規模や業種に応じて自社に必要な資源を合理的に判断することです。ここでは、ISO14001で代表的に求められる資源を3つの視点から整理します。
人的資源(担当者・力量・体制)
最も基本となるのが人的資源です。ISO14001では専任担当者の設置を義務づけているわけではありませんが、EMSを運用するための役割分担と責任の明確化は不可欠です。担当者が兼務であっても問題ありませんが、力量不足や業務過多によりEMSが形骸化している場合は、資源不足と判断される可能性があります。教育訓練や引き継ぎ体制も含めて、人に関する資源をどのように確保しているかが審査では確認されます。
ISO14001では、環境マネジメントの専任担当者を置くことは要求されていません。中小企業では、品質管理や総務、安全担当などが兼務でEMSを運用しているケースが一般的です。ただし、兼務であっても「誰が何を担当しているのか」が明確であり、必要な力量が確保されていなければなりません。審査では、専任かどうかよりも「責任と権限が明確で、実際に機能しているか」が重視されます。
設備・インフラ・技術的資源
ISO14001 7.1でいう資源には、設備やインフラといった物的資源も含まれます。例えば、排水処理設備、廃棄物保管場所、測定機器、エネルギー管理システムなどが該当します。これらは「最新であること」よりも、「環境側面や順守義務に対応できていること」が重要です。設備が老朽化している場合でも、点検や補修の仕組みが整っていれば、適切な資源管理として評価されます。
最も多い指摘は、EMSの運用に対して明らかに人手や時間が不足しているケースです。例えば、担当者が一人で多くの業務を抱え、内部監査や目標管理が後回しになっている場合、資源不足と判断されることがあります。改善策としては、業務分担の見直しや、優先順位の整理を行い、「最低限必要な活動に資源を集中させる」ことが有効です。必ずしも人員増加が必要なわけではなく、現実的に回る体制を示せれば問題ありません。
予算・時間などの経営資源
見落とされがちですが、予算や時間もISO14001 7.1における重要な資源です。改善活動や教育、設備更新を行うには、一定の予算確保が前提となります。また、担当者がEMS業務に割ける時間が極端に少ない場合、実効性のある運用は困難です。審査では具体的な金額提示まで求められることは稀ですが、必要な活動に対して経営として資源配分を行っているかという姿勢が重視されます。
ISO14001 7.1では、資源配分を示すための特定の帳票は求められていません。しかし、審査では「どのように資源を提供しているか」を裏付ける証拠が必要になります。例えば、教育記録、会議議事録、改善活動の計画書、設備点検記録などが有効な証拠になります。重要なのは、「EMSのために経営として意思決定し、資源を使っている」ことが説明できることです。この視点を押さえることで、資源に関する指摘は大きく減らせます。
ISO14001 7.1項のよくある質問(FAQ)
はい、取得できます。ISO14001 7.1では「十分な資源」を求めていますが、専任担当者や一定人数を義務づけているわけではありません。重要なのは、組織の規模や活動内容に対して、EMSが無理なく運用できているかどうかです。兼務体制であっても、役割分担が明確で、必要な活動が実施されていれば問題ありません。審査では人数よりも「実際に回っているか」が重視されます。
原則として、具体的な金額の提示は求められません。ISO14001 7.1で重要なのは、「必要な活動に対して資源を確保する意思決定が行われているか」です。例えば、設備更新や教育が必要と判断された際に、それに対応した行動が取られていれば十分です。審査では、予算書そのものよりも、改善活動や設備対応の実績が証拠として評価されます。
はい、多くの部分で共通化が可能です。ISO9001とISO14001はともに7.1項で「資源」を要求しており、人的資源・設備・時間・情報などの考え方は共通しています。教育、設備管理、会議体、外部委託管理などは、品質・環境で一本化して運用することで効率が高まります。統合マネジメントシステム(IMS)として説明できれば、審査でもプラス評価につながります。
まとめ:資源はEMSを動かすエンジン!
ISO14001 7.1「資源」は、環境マネジメントシステム(EMS)を実効性のある仕組みとして機能させるための基盤となる要求事項です。人・設備・予算・時間といった資源は、量の多さよりも「自社にとって必要なものが適切に確保されているか」が重要です。専任体制でなくても、役割分担が明確で、日常業務とEMSが無理なく連動していれば問題ありません。資源を適切に配分し、改善活動に活かしていくことで、EMSは形骸化を防ぎ、継続的な環境パフォーマンス向上を支えるエンジンとして機能させていきましょう!
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最終的には「自社で回せる品質マネジメントシステム」を目指して、継続的な改善・運用が可能な体制の構築を目指します!










