品質マネジメントシステム(QMS)の世界では、KPI(Key Performance Indicator)の存在は不可欠です。なぜなら、これがシステムのパフォーマンスを評価し、改善を促進するための主要な道具だから!
本日は、ISO9001とIATF16949の観点から見た、KPIの設定とその意義について詳しく解説します。
知識・経験を活かし、品質マネジメントシステムの規格を幅広い方々に理解いただき、各規格の普及のお手伝いができればという思いで立ち上げました!難解な内容も、知識と経験でわかりやすく解説していきますので、これからもよろしくお願いします!あくまでも個人の見解(公式に認められたものではない)となりますので、ご理解いただき是非参考にしていただければ幸いです★
目次
そもそも「KPI」とは何?
KPI(Key Performance Indicator)は、組織の目標達成の進捗を測定するためのパフォーマンス指標です。これはビジネスの成果を評価し、分析し、改善するための重要なツールであり、特定の目標や目的に対するパフォーマンスを可視化します。
具体的なKPIは組織の目標や業界により異なりますが、一般的には売上、顧客満足度、オペレーショナル効率、品質管理等の指標がよく使われます。
KPIは、現状のパフォーマンスを把握し、改善点を特定するために定期的にモニタリングとレビューが行われまた、KPIを通じて組織全体の進行方向を示し、全員が共通の目標に向かって進むことができるようになります。
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品質マネジメントシステムにおけるKPIの役割とは?
品質マネジメントシステム(QMS)におけるKPI(重要業績評価指標)は、組織の品質目標達成に向けた進捗を定量的に評価するための指標です。
KPIは、品質に関連するプロセスや活動のパフォーマンスを測定し、改善が必要な領域を特定します。例えば、製品の不良率や顧客満足度などがKPIとして設定されることがあります。
KPIを適切に設定・監視することで、QMSが効果的に機能し、持続的な改善が推進されまた、KPIは全社的な品質意識の向上にも寄与します。組織全体での品質目標の共有と達成を支援してくれるので、KPIの管理はしっかり行いましょう!
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ISO9001で有効:プロセス別KPIの具体例
品質マネジメントシステムにおけるプロセスでは、各プロセスのパフォーマンスを測定するためのKPI(重要業績評価指標)を設定することが求められています。ここでは、各プロセスにおいて一般的に使用されるKPIの具体例を紹介します。
1:設計開発プロセス
設計開発プロセスにおける代表的なKPIとしては、「新製品の市場導入までのリードタイム」「設計変更の回数」「新製品の初期不良率」などが挙げられ、これらの指標は、製品開発がどれだけ効率的かつ効果的に進行しているかを評価するのに役立ちます。
新製品の市場投入までの時間が短縮されるほど、市場競争力が向上し、設計変更の回数が減ることで開発の手戻りが少なくなり、初期不良率が低ければ品質の向上が期待されます。
①新製品の市場導入までのリードタイム
②設計変更の回数
③新製品の初期不良率
④開発プロジェクトのスケジュール遵守率
⑤設計コストの予算遵守率
2:工程設計プロセス
工程設計プロセスにおいては、「製造リードタイム」や「設計変更による生産停止時間」が重要なKPIです。製造リードタイムの短縮は、生産スケジュールの効率化に寄与し、設計変更による生産停止時間を最小限に抑えることで、無駄な時間とコストを削減することが可能になります。
これにより、全体の生産プロセスが柔軟かつ迅速に対応できる体制が構築されます。
①製造リードタイム
②設計変更による生産停止時間
③工程設計完了までの時間
④工程設計変更の回数
⑤新規設備の導入コスト
3:品質管理プロセス
品質管理プロセスでは、「製品不良率」「返品率」「顧客苦情数」などがKPIとして用いられます。これらの指標は、製品品質と顧客満足度を測定するための重要な指標です。
不良率が低いほど製品の品質が高いことを示し、返品率が低いほど顧客が製品に満足していることを示します。顧客の苦情数が少ないほど、企業の品質管理が効果的に機能していることが分かります。
①製品不良率
②返品率
③顧客苦情数
④品質検査合格率
⑤品質監査の指摘件数
4:製造プロセス
製造プロセスでは、「生産効率」「スクラップ率」「ダウンタイム」などがKPIとして挙げられます。生産効率は、生産体制がいかに効率よく稼働しているかを示し、スクラップ率が低いほど資源の無駄が少なく、ダウンタイムが短ければ設備の稼働率が高いことを意味します。
これらの指標を改善することで、製造プロセス全体の生産性向上が期待できます。
①生産効率
②スクラップ率
③ダウンタイム
④生産ラインの稼働率
⑤製造コストの削減率
5:購買プロセス
購買プロセスでは、「供給遅延率」「供給業者の不良率」「代替供給業者の数」などがKPIに含まれ、これらの指標は、供給業者の信頼性や供給チェーンの健全性を評価するために用いられます。
供給遅延率が低いほど供給が安定し、不良率が低ければ品質が高いことを示しまた、代替供給業者の数が多ければリスク分散ができていることを示します。
①供給遅延率
②供給業者の不良率
③代替供給業者の数
④購買コストの削減率
⑤供給契約の遵守率
6:生産管理プロセス
生産管理プロセスでは、「生産スケジュール遵守率」「在庫ターンオーバーレート」などが主なKPIです。生産スケジュールの遵守率が高いほど、計画通りに生産が行われていることを示し、在庫ターンオーバーレートが高ければ、在庫が効率的に管理されていることを意味します。
これらの指標を追跡することで、生産計画の効果や在庫管理の最適化が図れます。
①生産スケジュール遵守率
②在庫ターンオーバーレート
③生産計画の達成率
④在庫保管コスト
⑤製品出荷の正確性
7:経営マネジメントプロセス
経営マネジメントプロセスにおいては、「販売利益率」「営業利益率」「投資利益率(ROI)」などがKPIとして設定されこれらの指標は、企業の経営効率や投資の収益性を測定するのに重要です。
販売利益率や営業利益率が高ければ、収益性が高いことを意味し、ROIが高ければ、投資の成果が優れていることがわかります。
①販売利益率
②営業利益率
③投資利益率(ROI)
④売上成長率
⑤顧客獲得コスト(CAC)
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その他よく使われるKPI
品質マネジメントシステムの運用は、単純なプロセスで区切ったKPI指標もよく用いられます。個別のKPIを設定することでより効率的なQMSや経営運用ができると考えられているためです。
8:生産品目別KPI
生産品目別KPIでは、「品目別売上」「品目別利益率」「品目別不良率」などが代表的な指標として用いられます。これらのKPIは、各製品ラインや生産品目のパフォーマンスを評価するために重要です。
品目別売上は、各製品の市場における受容度を示し、利益率は製品ごとの収益性を評価する指標となりまた、品目別不良率は品質管理の指標として、製品ごとの品質にどれだけ問題が発生しているかを把握することができます。
これらのKPIを定期的にモニタリングすることで、各製品ラインのパフォーマンスを分析し、適切な改善策を講じることが可能です。
9:指図単位別KPI
指図単位別KPIでは、「オーダー遅延率」や「オーダー満足度」などの指標が用いられます。これらのKPIは、顧客からのオーダーに対する企業のレスポンスや対応速度を測定するために活用されます。
オーダー遅延率が低いほど、顧客の要望に対して迅速に対応していることが示され、オーダー満足度が高ければ、企業が提供する製品やサービスに顧客が満足していることを意味します。
これらの指標を定期的に追跡することで、オーダー処理の効率を向上させ、顧客満足度の向上を目指すことができます。
10:設備・製造ユニット別KPI
設備・製造ユニット別KPIには、「設備効率」や「設備故障率」などの指標が含まれます。これらのKPIは、設備の信頼性と製造ユニットの生産性を評価するために用いられます。
設備効率が高ければ、その設備が生産活動において最大限に活用されていることを示し、設備故障率が低い場合、設備の信頼性が高く、ダウンタイムが少ないことがわかります。
これにより、製造プロセス全体の効率性を向上させるための施策を立案することが可能となります。
11:作業環境別KPI
作業環境別KPIでは、「労働事故率」や「従業員満足度」などが指標として挙げられます。これらのKPIは、作業環境の安全性や従業員の満足度を測定するために重要です。
労働事故率が低ければ、安全な作業環境が確保されていることを示し、従業員満足度が高ければ、従業員が快適な環境で働けていることを示します。
これらの指標を通じて、職場の安全管理や従業員の労働環境改善に向けた取り組みが評価され、従業員のモチベーション向上にも寄与します。
12:部品・完成品別KPI
部品・完成品別KPIでは、「部品の欠陥率」や「完成品の不良率」などの指標が設定されます。これらのKPIは、製品の品質を評価するために用いられます。
部品の欠陥率が低ければ、部品の品質が高く、製品の信頼性も向上します。完成品の不良率が低いほど、製造プロセスにおける品質管理が適切に行われていることを示します。
これにより、製品の品質を高水準に保ち、顧客の信頼を獲得するための品質向上策を検討することができます。
13:労務管理KPI
労務管理KPIには、「労働生産性」や「労働コスト」などが含まれます。これらの指標は、労働力の効率性とコスト効果を評価するために活用されます。
労働生産性が高ければ、従業員が効率的に作業を行っていることを示し、労働コストが適切に管理されていれば、企業の経営効率が向上します。
これらのKPIを定期的に分析することで、労働力の最適化を図り、企業全体のパフォーマンスを向上させることが可能となります。
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14:KPI設定の注意点
KPI設定にはいくつかの注意点があります。まず、KPIはビジネス目標と直接関連していなければなりません。KPIは組織の成果を測定するツールであり、それがビジネスの目標に寄与していることを示すべきです。
また、KPIは簡潔で明確であるべきであり、多くの場合、複雑なKPIは理解や管理が難しくなりがちです。KPIが直感的で理解しやすいことが重要です。
さらに、KPIは定期的に見直されるべきであり、市場環境や組織の目標が変化すると、KPIもそれに応じて調整されないと生きた運用はできないとされています。
その為、KPIを設定したからOKではなく、常に改善の視点で社内に浸透させていくことが重要になります。
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KPIとは?:まとめ
KPIは、品質マネジメントシステムの効果的な運用に欠かせないツールです。ISO9001やIATFといった国際規格は、組織がKPIを設定し、それを適切に管理することを求めています。
KPI設定は、組織の目標達成をサポートし、製品とサービスの品質を改善するための重要な手段です。そして、各プロセスや部門で設定されるKPIは、組織全体のパフォーマンスを把握し、改善活動を進めるための具体的な指標を提供してくれます。
品質マネジメントシステムにKPIを適切に組み込むことは、ISO9001やIATFの要求事項を満たす上で非常に重要です。そして、そのためにはKPI設定の注意点を理解し、適切に適用する必要があります。
これを理解し活用することで、組織はISO9001やIATF16949の取得・運用に向けて確実な一歩を踏み出すことができるで、是非取り組んでみてくださいね!
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