【IATF16949攻略】4.3.1:品質マネジメントシステムの適用範囲の決定-補足の要求事項徹底解説!

IATF16949:4.3.1「品質マネジメントシステムの適用範囲の決定-補足」は、ISO9001:4.3の適用範囲をベースに、自動車産業特有の厳しい除外制限を追加した要求事項です。

ISO9001では比較的柔軟に適用範囲を設定できますが、IATF16949では支援部門や遠隔地拠点も含めた全社的な適用が求められ、唯一の除外は製品設計・開発(8.3項)のみに限定されます。

本記事では、規格要求の全体像から、品質マニュアルへの記載方法、審査・内部監査での確認ポイントまで、構築と運用の両面から実務目線で徹底解説します。


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第4章:組織の状況「要求事項リスト」
ISO・IATF 4章
※IATF運用には、ISO9001の要求事項の運用が必須です。
条項 題目 ISO
9001
IATF
16949
第4章 組織の状況
第5章 リーダーシップ
第6章 計画
第7章 支援
第8章 運用
第9章 パフォーマンス評価
第10章 改善
条項 題目 ISO
9001
重要
帳票
IATF
16949
重要
帳票
4.1 組織及びその状況の理解  
4.2 利害関係者のニーズ及び期待の理解    
4.3 品質マネジメントシステムの適用範囲の決定    
4.3.1 品質マネジメントシステムの適用範囲の決定-補足  
4.3.2 顧客固有要求事項
4.4(4.4.1) 品質マネジメントシステム及びそのプロセス  
4.4.1.1 製品及びプロセスの適合  
4.4.1.2 製品安全  
4.4.2 題目なし(文書管理要求)    

当サイトの情報提供スタンスについて

当サイトでは、ISO9001およびIATF16949について、規格要求の解説にとどまらず、実務でどのようにルールや記録へ落とし込むかを重視して情報を整理しています

規格の理解とあわせて、「現状とのギャップをどう捉えるか」「どこから手を付けるべきか」といった判断に迷いやすい点を、現場目線で分かりやすく解説することを目的としています。

記事内容を自社へ当てはめる際の考え方や、判断に迷うポイントについては、別ページで整理した情報も用意しています。

IATF16949 4.3.1の規格要求の全体像

IATF16949:4.3.1の品質マネジメントシステムの適用範囲の決定-補足は、ISO9001:4.3の品質マネジメントシステムの適用範囲の決定を土台としつつ、自動車産業に特化した補足要求を加えた条項です。

ISO9001は製造業だけでなくサービス業や運送業など幅広い業種で取得されるため、適用範囲の柔軟性が確保されています。一方、IATF16949は自動車産業に限定された規格であり、サプライチェーン全体で品質を保証する必要があることから、適用範囲に対する制限が非常に厳格です。

具体的には、IATF16949 4.3.1では以下の3点が要求されています。

①支援部門(遠隔地含む)をQMS適用範囲に含めること
②唯一の除外はISO9001 8.3の製品設計・開発のみ
③製造工程設計は除外対象に含めてはならない

ISO9001:4.3では「適用不可能な要求事項」について、製品・サービスの適合性や顧客満足に影響しない限り除外を認めていますが、IATF16949ではその自由度を大幅に制限しているのが最大の違いです。この厳格さの背景には、自動車部品の不具合が人命に直結するという産業特性があります。

支援部門もQMS適用範囲に含める

支援部門の定義と具体例

IATF16949における「支援部門」とは、製品を直接製造するわけではないものの、品質活動に間接的に関与する部門を指します。具体的には以下のような部門が該当します。

①本社(品質方針の決定、経営戦略の策定)
②設計センター(製品設計、技術的判断)
③購買部門(サプライヤー選定、部材調達)
④物流・配給センター(保管、輸送、納期管理)
⑤研究・解析サイト(材料試験、信頼性評価)

これらの部門は製造現場から離れていても、製品品質に直接的または間接的に影響を与えます。例えば、購買部門のサプライヤー選定が不適切であれば、いくら製造工程が優れていても品質問題は発生します。そのため、IATF16949ではこれらの支援部門もすべてQMSの適用範囲に含め、審査対象とすることを要求しています。

遠隔地・海外拠点の扱い

IATF16949 4.3.1では「拠点内にあろうと遠隔地にあろうと」という表現で、物理的な距離に関係なく適用範囲に含めることを明確にしています。

例えば、群馬県の工場でIATF16949を取得する場合でも、東京本社に購買部門や設計部門がある場合は、本社も審査対象になります。同様に、海外に設計拠点や物流倉庫がある場合も、品質マネジメントシステムの中に取り込む必要があります。

グローバルに展開する企業では、複数国に拠点が分散するケースが一般的です。拠点ごとに品質基準がバラバラでは、最終製品の品質を一貫して保証することができません。IATF16949が遠隔地拠点も含めた全社適用を求める理由は、サプライチェーン全体での品質の一貫性を確保するためです。

唯一許される除外=製品設計・開発

除外が認められる条件

IATF16949において除外が許されるのは、ISO9001の8.3項「製品及びサービスの設計・開発」に関連する要求事項のみです。ただし、この除外は無条件ではなく、以下のすべての条件を満たす必要があります。

①自社で製品の設計・開発を一切行っていないこと
②設計責任が納入顧客(自動車メーカー等)にあること
③除外する理由を文書化し、正当性を明確に示すこと
④その文書を維持(適切に改訂・管理)すること

「維持」という表現は、単に保管するだけでなく、事業環境や組織の変化に応じて随時更新することを意味します。設計責任の所在が変わった場合は、速やかに文書を改訂する必要があります。

除外可能な企業の具体例

以下のような企業は、8.3項の製品設計・開発を除外できる可能性があります。

  • 完成車メーカーから支給された設計図をもとに樹脂部品を射出成形する企業
  • 顧客図面に従ってエンジン部品を機械加工する企業
  • 製品設計を行わず電装品の組立のみを行うEMS企業
  • 顧客仕様に基づきワイヤーハーネスの切断・圧着・組立を担う工場

いずれの場合も、製品の「何を作るか」は顧客が決定し、自社は「どう作るか」のみを担当している企業です。自社内に設計部門が存在する場合は、基本的にすべての要求事項が適用されることを覚えておきましょう。

除外時の文書化の方法

除外を行う場合は、品質マニュアル内に以下の内容を明記します。

  • 除外する要求事項の条項番号と内容(例:ISO9001 8.3製品及びサービスの設計・開発)
  • 除外の理由(例:製品設計責任は顧客である〇〇自動車が保有しており、当社は顧客図面に基づく製造のみを行っているため)
  • 製造工程設計は除外対象に含まれていないことの明示

審査では、この文書の内容と実態の整合性が確認されます。例えば、「設計・開発は除外している」と品質マニュアルに記載しているにもかかわらず、社内でDR(デザインレビュー)や設計FMEAを実施している場合は、矛盾を指摘される可能性があります。

製造工程設計は除外できない

IATF16949 4.3.1では、製造工程設計は適用範囲からの除外に含めてはならないと明確に規定しています。これはIATF16949の中でも特に重要なポイントです。

製品設計を顧客が行い、自社は製造のみを担う企業であっても、「どのように作るか」という製造工程の設計は自社の責任です。製造工程設計には以下の要素が含まれます。

  • 工程フローの設計と最適化
  • 使用する設備・治具・金型の選定
  • 作業方法・管理条件の設定
  • 検査方法・測定手法の設計
  • 工程FMEA(PFMEA)の実施
  • コントロールプランの策定

これらは製品品質に直接影響するため、たとえ組み立てだけを行う工場であっても、工程設計はQMSの適用範囲に含めて管理しなければなりません。顧客がPPAP(生産部品承認プロセス)で工程承認を行うケースでも、工程設計の責任は自社にあります。

規格を理解するうえで、よくある「つまずき」とは?

ISO9001やIATF16949、VDA6.3の要求事項は、条文を読むだけでは自社業務への当てはめ方が分かりにくい場面が少なくありません。理解したつもりでも、文書化や運用判断で迷いが生じることは多く、その違和感こそが改善ポイントになる場合もあります!

※ 個別ケースでの考え方整理が必要な場合は、補足的な確認も可能です。

適用範囲の品質マニュアルへの記載方法

記載例テンプレート

IATF16949では、ISO9001:4.3の適用範囲に加えて、自動車のどの製品が適用されているかを明確に記載する必要があります。以下に品質マニュアルの記載例を示します。

1)適用サイト株式会社〇〇 群馬工場住所:群馬県〇〇市〇〇 〇-〇-〇部門:製造部、生産技術部、生産管理部、品質管理部

2)支援事業所株式会社〇〇 本社住所:東京都〇〇区〇〇 〇-〇-〇部門:営業部、技術部、購買部、総務部

3)適用する事業・活動自動車ワイパーの設計、製造、販売

4)適用除外なし(設計部門を有するため、全要求事項を適用)※設計責任がない企業の場合:ISO9001 8.3製品及びサービスの設計・開発を除外(理由:製品設計責任は顧客である〇〇自動車株式会社にあるため。ただし、製造工程設計は適用範囲に含む)

5)適用組織及び要員当社の品質マネジメントシステムを適用する組織を付表(1)「組織図」に示す。適用される要員は、正社員、契約社員、派遣社員、パート・アルバイトのすべてに適用する。

組織変更時の更新管理ポイント

品質マニュアルに記載した組織図や適用範囲は、組織変更が発生した場合に必ず更新しなければなりません。以下のような変更が発生した場合は、速やかに品質マニュアルを改訂してください。

①部門の新設・統廃合
②新拠点の追加や既存拠点の閉鎖
③適用製品の変更(新製品の追加、製品終息等)
④設計責任の移管(顧客→自社、または自社→顧客)

審査時に組織図の変更が反映されていないことが発見された場合、文書管理の不適合として指摘される可能性があります。マネジメントレビューの中で適用範囲の妥当性を定期的に確認する運用を構築しましょう。

内部監査・審査での確認ポイント

IATF16949 4.3.1に関する審査では、以下の4つの観点が重点的に確認されます。

支援部門・遠隔拠点がQMS適用範囲に含まれているか

品質マニュアルの適用範囲に、本社・設計センター・物流拠点等がすべて記載されているかを確認します。「工場だけを適用範囲にしている」場合は不適合のリスクがあります。

除外理由の文書化と正当性が維持されているか

8.3項を除外している場合、その理由が品質マニュアルに明記されているか、また事業実態と整合しているかを確認します。除外しているはずの設計FMEAや設計レビューの記録が社内に存在する場合、矛盾を指摘されます。

製造工程設計が適用範囲に含まれているか

設計・開発を除外している企業であっても、製造工程設計(PFMEA、コントロールプラン等)が適用範囲に含まれていることを確認します。

組織変更時に適用範囲が更新されているか

前回審査以降の組織変更(部門新設・拠点移転等)が適用範囲に反映されているかを確認します。

IATF16949 4.3.1に関するFAQ

規格対応でよく聞かれる悩み

ISO9001やIATF16949、VDA6.3に取り組む中で、「審査対策として何を優先すべきか分からない」「要求事項に対する構築の考え方が整理できない」といった声は少なくありません。

また、社内にQMSを体系的に理解している担当者がいない場合や、外部コンサルの費用面で継続的な支援が難しいと感じるケースもあります。こうした悩みは、特定の企業に限らず、多くの現場で共通して見られるものとなっています。

IATF16949の適用範囲を決定する際、どの部門を含めるべきですか?

IATF16949では、設計部門、購買部門、物流拠点など、工場内外のすべての関連部門を適用範囲に含める必要があります。製品の品質に直接的または間接的に影響を与えるすべての支援部門が対象です。「直接製造していないから対象外」という判断は認められません。

遠隔地や海外拠点もすべてQMS適用範囲に含める必要がありますか?

はい。IATF16949 4.3.1では「拠点内にあろうと遠隔地にあろうと」と明記されており、物理的な距離は判断基準になりません。海外の設計拠点、物流倉庫、購買部門なども品質に関わる業務を担っている限り、適用範囲に含める必要があります。

IATF16949で除外が認められるのはどの要求事項ですか?

唯一の除外が認められるのはISO9001 8.3項「製品及びサービスの設計・開発」に関連する要求事項のみです。自社で設計・開発を行わず、顧客が設計責任を持っている場合に限り除外が可能です。除外する場合は理由を文書化し、品質マニュアルで維持管理する必要があります。

製造工程設計も設計・開発と同じように除外できますか?

いいえ、製造工程設計は除外できません。これはIATF16949 4.3.1で明確に禁止されています。工程フローの設計、設備・治具の選定、工程FMEA、コントロールプランの策定など、「どう作るか」に関わる活動はすべてQMS適用範囲に含める必要があります。

設計・開発を除外する場合、具体的にどのような文書化が必要ですか?

品質マニュアルに以下の内容を記載します。①除外する要求事項の条項番号と内容、②除外の理由(例:設計責任は顧客にあるため)、③製造工程設計は除外に含まないことの明示。この文書は「維持」が求められるため、事業環境の変化に応じて随時更新する必要があります。

QMSの適用範囲は一度決めたら見直さなくてよいですか?

いいえ、定期的な見直しが必要です。部門の新設・統廃合、新拠点の追加、適用製品の変更、設計責任の移管など、組織や事業に変化があった場合は速やかに品質マニュアルを改訂してください。マネジメントレビューの中で適用範囲の妥当性を確認する運用を推奨します。

適用範囲が曖昧だとどのようなリスクがありますか?

適用範囲が不明確な場合、規格要求の適用漏れ、内部監査や外部審査での不適合指摘、部門間の責任範囲の混乱、品質リスクの見落としなどが発生しやすくなります。適用範囲はQMS全体の土台となるため、明確かつ一貫した定義が不可欠です。

ISO9001 4.3とIATF16949 4.3.1の最大の違いは何ですか?

ISO9001 4.3では、製品・サービスの適合性や顧客満足に影響しない限り、適用不可能な要求事項を柔軟に除外できます。一方、IATF16949 4.3.1では除外が8.3項の製品設計・開発のみに限定され、さらに製造工程設計の除外が明確に禁止されています。自動車産業では部品不具合が人命に直結するため、この厳格さが求められています。

規格対応で不安・悩むポイント

ISO9001やIATF16949、VDA6.3といった規格対応では、「どこから手を付ければよいか分からない」「社内だけで判断を進めることに不安がある」と感じるケースが少なくありません。

品質マネジメントの構築は、一度に完成させる必要はなく、考え方やサンプルを参考にしながら、少しずつ自社に合った形へ整えていくことも可能です。

IATF16949 4.3.1の品質マネジメントシステムの適用範囲の決定-補足:まとめ

IATF16949 4.3.1は、ISO9001 4.3の適用範囲をベースに、自動車産業特有の厳格な除外制限を追加した条項です。ポイントを整理すると、支援部門や遠隔拠点を含めた全社的なQMS適用が必須であること、唯一の除外は製品設計・開発(8.3項)のみであること、そして製造工程設計は除外に含めてはならないことの3点に集約されます。

適用範囲は品質マニュアルに明確に記載し、組織変更時には速やかに更新してください。審査では、文書の記載内容と実態の整合性が重点的に確認されます。「決めているか」ではなく「今も妥当か」という視点で運用を続けることが、審査対応と品質向上の両面で重要です。

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