IATF:9.1.1.2項の統計的ツールの特定の要求事項は、統計管理手法として多くの企業でXbarR管理図などが使用されていますが、IATFではその統計手法をどのように特定しているのかまで要求しています。
今回の記事は、IATF:9.1.1.2項の統計的ツールの特定の要求事項の意味と構築ポイントについて解説します。
重要:【規定】No.9111_SPC規定:IATF版はこちら
知識・経験を活かし、品質マネジメントシステムの規格を幅広い方々に理解いただき、各規格の普及のお手伝いができればという思いで立ち上げました!難解な内容も、知識と経験でわかりやすく解説していきますので、これからもよろしくお願いします!あくまでも個人の見解となりますので、ご理解いただき是非参考にしていただければ幸いです★
条項 | 題目 | ISO9001 | IATF |
第4章 | 組織の状況 | 〇 | 〇 |
第5章 | リーダーシップ | 〇 | 〇 |
第6章 | 計画 | 〇 | 〇 |
第7章 | 支援 | 〇 | 〇 |
第8章 | 運用 | 〇 | 〇 |
第9章 | パフォーマンス評価 | 〇 | 〇 |
第10章 | 改善 | 〇 | 〇 |
条項 | 題目 | ISO9001 | IATF |
9.1 9.1.1 |
一般(監視・測定・分析及び評価) | ○ | ○ |
9.1.1.1 | 製造工程の監視及び測定(SPC) | ○ | |
9.1.1.2 | 統計的ツールの特定 | ○ | |
9.1.1.3 | 統計概念の適用 | ○ | |
9.1.2 | 顧客満足 | ○ | ○ |
9.1.2.1 | 顧客満足-補足 | ○ | |
9.1.3 | 分析及び評価 | ○ | ○ |
9.1.3.1 | 優先順位付け | ○ | |
9.2.1 9.2.2 |
内部監査 | ○ | ○ |
9.2.2.1 | 内部監査プログラム | ○ | |
9.2.2.2 | 品質マネジメントシステム監査 | ○ | |
9.2.2.3 | 製造工程監査 | ○ | |
9.2.2.4 | 製品監査 | ○ | |
9.3.1 | 一般(マネジメントレビュー) | ○ | ○ |
9.3.1.1 | マネジメントレビュー-補足 | ○ | |
9.3.2 | マネジメントレビューへのインプット | ○ | ○ |
9.3.2.1 | マネジメントレビューへのインプット-補足 | ○ | |
9.3.3 | マネジメントレビューからのアウトプット | ○ | ○ |
9.3.3.1 | マネジメントレビューからのアウトプット-補足 | ○ |
目次
IATF:9.1.1.2項の統計的ツールの特定の意味
製造業における基本的な考え方として超重要なのが「統計」です。
統計について詳しい人の多くは理数系の大学を卒業した一部の方が多いかもしれませんが、多くの方が統計については非常に苦手な分野ではないでしょうか?
しかしIATFを運用するにあたり、「統計が苦手」とは言っていられないのが本要求事項です。
IATF:9.1.1.2項の統計的ツールの特定の意図は、統計ツールをプロジェクト遂行段階(APQP段階)で特定し、且つそれらの結果をFMEA(設計FMEA・工程FMEA)そしてコントロールプランで特定することを要求しています。
そのため、特定ツールの特定のルール化及び、9.1.1.3:統計概念の適用とをリンクさせたうえでの社内に徹底された統計的ツールの運用が求められます。
SPC管理規定の作成が必須!
IATF:9.1.1.2項の統計的ツールの特定の要求事項には、以下のようなことが大事です。
「決定しなければならない」というワードからも、統計的ツールについて理解し、それらをどの工程にどのように使うのかをルール化する必要があります。
それがSPC管理規定です。
この規定がないと審査や監査はもちろん、統計的ツールをAPQP段階で特定する根拠として非常に苦労してしまいますし、生産現場での運用も大変です。
「適切な使い方」というワードの意味からも「どの工程で統計的ツールを使用するのか」を特定することが重要です。
特定された統計的ツールの例
ライン | 工程名 | 特殊特性 | 統計ツール | 目的 | 最低確認数 |
A | 成型外観検査 | ★ | XbarR管理図 | ばらつき調査 | N=5 |
B | 基板検査 | パレート図 | 不良の累積曲線管理 | 不良全数カウント | |
C | 圧入高さ検査 | XbarR管理図 | ばらつき調査 | N=5 | |
・・・ | ・・・ | ・・・ | ・・・ | ・・・ | ・・・ |
FMEAとコントロールプランに特定された統計ツールを明記!
IATF:9.1.1.2項の統計的ツールの特定の要求事項には、以下のようなことが大事です。
・これは、D-FMEA・P-FMEA・コントロールプランに含めていること。
①FMEAの中で統計ツールを特定する方法
IATF:9.1.1.2項の統計的ツールの特定の要求事項の中に「FMEA」と記載されている場合は、FMEAの中で何らかの対応していないと審査や監査で説明するのが大変です。
なので、是が非でもFMEAの中で統計ツールを特定してください。
この特定された統計ツールの主な記載場所は、「取られた処置の完了日」という欄に、使用した統計ツールや量産移行後の監視ツールを記入するのがおすすめです。
例えば、推奨処置の検証内容として工程能力指数の調査を実施し、その数値から「Cpk=1.85となり、十分満足するということを確認した(資料名も併せて記入)」などを記入しておくとよいでしょう。
量産移行後は、「XbarR管理図で管理する」といったような記述があるとさらにいいでしょう。
\AIAG準拠!FMEA帳票販売中/
帳票名 | 帳票ページ |
設計FMEA | 【帳票】No.6121-3_設計FMEA |
工程FMEA | 【帳票】No.6121-4_工程FMEA |
②コントロールプランの中で統計ツールを特定する方法
IATF:9.1.1.2項の統計的ツールの特定の要求事項の中に「コントロールプラン」とあるので、こちらにも統計ツールの特定結果を記載する必要があります。
記載場所は、「管理方法」の欄です。
この欄には、以下のような内容を記述することが重要です。
②検査方法
③チェックシート名
④管理図の種類
⑤管理重要事項
⑥試験方法
⑦報告書名
など
チェックシートや管理図(P管理図、XbarR管理図など)が記載されていることがほとんどです。
FMEA(設計FMEA、工程FMEA)からの管理要求やSPC管理規定で特定された統計的手法を記入するようにしましょう。
IATFでは、コントロールプランは「付属書A」に従って作成されていなければならないので、帳票は超大事!
当サイトでは、コントロールプランのフォーマットを販売しておりますので、是非貴社の構築に役立ててくださいね!
IATF:8.5.1.1項のコントロールプランでは、いわゆるQC工程図の作成方法について要求しています。ISO9001企業では簡易QC工程図が多い中、IATFでは明確な要求事項があるので注意が必要です。そのため、要求事項完全網羅のコントロールプランを作成しましたので、是非ご活用ください!簡単にまとめられるテクニック満載の帳票を格安でご提供いたします!
IATF:9.1.1.2に関するFAQ
IATFのメールコンサルティングでよくある質問をFAQ形式で3つご紹介致します!もっと詳しく質問したい場合は、是非メールコンサルティングサービスをご活用くださいね!
統計ツールの選定は、製造プロセスの性質と監視したい品質特性に依存します。以下のポイントを参考にするといいと思います。
①変数データか属性データかの判断から選定
変数データ(連続データ):測定値(例:寸法、温度)
属性データ(離散データ):合否や不良率(例:合格/不合格の判定)
②適切な管理図の選択
X̅-R管理図:サンプルサイズが小さい場合の平均・範囲を管理
X̅-S管理図:サンプルサイズが大きい場合の平均・標準偏差を管理
P管理図:不良率を監視する場合
C管理図:単位あたりの不良数を監視する場合
③工程の安定性と能力指数の計算
Cp/Cpk:工程能力指数
Pp/Ppk:工程性能指数
このように、工程の種類やデータの性質に応じた管理図を選択し、SPCツールを適切に導入することで、製品の品質管理を効果的に行えます。
SPCの導入後、工程が安定しているかどうかを判断するには以下のポイントを確認します。
①管理図の安定性
・管理図上で、すべてのデータ点が管理限界内に収まっていること。
・異常パターン(例:連続した上昇・下降、管理限界への接触など)がないこと。
②能力指数の確認
・Cp(設計仕様に対する工程能力)が1.33以上であることが一般的な基準です。
・Cpk(工程の中心位置を考慮した能力)が1.33未満の場合、工程が設計仕様に対して不十分な可能性があります。
③継続的なデータ収集と改善
安定した状態でも継続的にデータを収集し、必要に応じて改善サイクルを回します。例えば、顧客クレームや内製不良の発生頻度が増えた場合、再度工程の見直しを行います。
統計的ツールは、APQPのフェーズ2の段階(製品設計と開発計画)で初期的に検討され、フェーズ3の段階(工程設計と開発)で具体的に決定します。フェーズ2の段階では重要な品質特性(CTQ)が定義され、顧客要求に沿った分析手法(例:Cpk、X̅-R管理図)が選定されます。フェーズ3の段階では、PFMEAやコントロールプランで工程ごとの監視手法を決定します。フェーズ4の段階で実施する量産試作生産により、選定ツールの有効性を検証します。
IATF:9.1.1.2項の統計的ツールの特定:まとめ
IATF:9.1.1.2項の統計的ツールの特定の要求事項の規格解釈はいかがでしたか?
IATFは、コアツールに関する要求事項の対応方法が超重要!
SPCは、統計管理手法として多くの企業でXbarR管理図などが使用されていますが、IATFではその統計手法をどのように特定しているのかまで要求しています。
特にその特定は、FMEA及びコントロールプランで特定されていることが確認されるので、抜けが無いように対応しましょう!
それではまた!
IATF16949&ISO9001の構築ご支援:メールにて承ります!
A:月額20,000円のメールコンサルティングサービスには、IATF・ISO9001における品質マネジメントシステムに関する質問への回答、プロセス構築と改善のアドバイス、規格要求事項に関するご説明などが含まれます。メールでのやり取りを通じて、貴社の状況に応じた具体的なサポートを提供しいたしております。
A:基本的には月に何度でもメールで質問を送っていただいてOKです。ただし、回答には通常1〜3営業日を頂いております(多くはその日の内に回答可能です!)。やり取りの回数に制限はありませんが、1つのメールにつき明確な質問やテーマを設定していただくようお願いしております。
A:現在のサービスはメールのみの対応となっておりますが、追加料金にて電話やビデオ会議での相談も承ります。詳細については別途お問い合わせください。
※2024年現在は、メールコンサルティング以外数カ月先まで予約がいっぱいとなっております。空き次第、弊社HPでアナウンス致します。
A:はい、もちろんです。初心者の方でもわかりやすく丁寧にサポートいたします。初めての導入に必要なステップや、どのように進めていくべきかも具体的にアドバイスいたしますので、安心してご利用ください。
A:サービスの解約は、次回請求日の2週間前までにメールにてご連絡いただければ対応いたします。解約にあたって特別な手続きは必要なく、解約後は翌月から請求されません。また、一度解約しても何度でも契約できますのでご安心ください。ただし、銀行振込の場合、一度でもその月に質問されますと請求が発生しますので、あらかじめご了承ください。
『IATF 16949』はInternational Automotive Task Force(IATF)の登録商標です。当サービスはIATFの認定を受けたものではなく、独自に認証取得を支援するサービスを提供しています。
※当サービスおよび教材は、IATF16949の認証取得を支援するための情報を提供するものであり、認証取得を保証するものではありません。認証の可否は審査機関の判断によります。