IATF16949:6.1.2.3項の緊急事態対応計画は、多くの取得企業でも構築に悩まれており、対応ができていません。構築方法にはコツが有り、最低限の対応ができているかどうかがポイントです。
今回の記事は、IATF16949:6.1.2.3項の緊急事態対応計画の意味と構築ポイントについて解説いたします。
重要:【規定】No.6121_リスク分析管理規定:IATF16949版はこちら
条項 | 題目 | ISO9001 | IATF16949 |
第4章 | 組織の状況 | 〇 | 〇 |
第5章 | リーダーシップ | 〇 | 〇 |
第6章 | 計画 | 〇 | 〇 |
第7章 | 支援 | 〇 | 〇 |
第8章 | 運用 | 〇 | 〇 |
第9章 | パフォーマンス評価 | 〇 | 〇 |
第10章 | 改善 | 〇 | 〇 |
条項 | 題目 | ISO9001 | IATF16949 |
6.1 6.1.1 6.1.2 |
リスク及び機会への取組み | ○ | ○ |
6.1.2.1 | リスク分析 | ○ | |
6.1.2.2 | 予防処置 | ○ | |
6.1.2.3 | 緊急事態対応計画 | ○ | |
6.2 6.2.1 6.2.2 |
品質目標及びそれを達成するための計画策定 | ○ | ○ |
6.2.2.1 | 品質目標及びそれを達成するための計画策定-補足 | ○ | |
6.3 | 変更の計画 | ○ | ○ |
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目次
IATF16949:6.1.2.3項の緊急事態対応計画の規格解釈
自動車産業のみならず現代社会には様々なリスクが存在します。
例えば、台風・洪水により顧客へ出荷できない事態や、地震・火災そして経済的な理由なども大きなリスクです。
また社内においても様々なリスクが存在します。
例えば、設備故障による生産停止、サプライヤーからの納品物が入荷できない事態なども考えられます。
最近ではサイバー攻撃による工場シャットダウンなども大きなリスクとして挙げられています。
そのような緊急事態に備え、リスクヘッジや対応計画を立てて自動車産業顧客に影響を与えないように取り組むことを要求しているのがIATF16949:6.1.2.3項の緊急事態対応計画の意味です。
しかしこれらは追求すればするほどきりがありません。
そしてお金もかかります。
そのため、自社でできる範囲で全ての要求事項を網羅して緊急事態対応計画を作成することが重要なポイントになります。
次に、緊急事態対応計画の構築ポイントについて解説します。
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生産設備・インフラストラクチャのリスク分析
IATF16949:6.1.2.3項の緊急事態対応計画の要求事項には、以下のように記載されています。
b)顧客へのリスク及び影響に従って、緊急事態対応計画を定める。
c)主要設備の故障(8.5.6.1.1も参照)
この要求事項の対応を簡単に解釈すると以下が重要なポイントです。
②生産に不可欠な設備・インフラをリスク大に指定する
③②についての代替方法がないか検討する
④代替方法があればリスク大→リスク中へダウン
⑤リスク大の事象については、緊急事態対応計画を策定
このような手順でリスク分析を行うことで、条文a)の対応が可能になります。
設備のリスク分析の具体的なやり方は、下記の画像を参照してみましょう!
外部提供者からの製品・サービスのリスク分析
IATF16949:6.1.2.3項の緊急事態対応計画の要求事項には、以下のように記載されています。
このリスク分析だ大事なことは、部品であれば在庫、プロセス(工程外注先:QC工程図の一部の工程を外注先に依頼している場合)、サービス(メンテナンス会社)であれば代替企業の有無です。
生産設備・インフラストラクチャのリスク分析同様に、部品・プロセス・サービス会社に対してのリスク分析を行うことがポイントです。
下記のような手順でリスク分析を行いましょう。
②納期についてのリスク分析を行う
③代替メーカーの有無を検討する
④②×③の結果からリスク大について対応計画を作成する
⑤最終的にリスクが中以下になっていることを確認する
このような手順でリスク分析を行うことで、条文a)の対応が可能になります。
部品・工程外注先のリスク分析の具体的なやり方は、下記の画像を参照してみましょう!
自然災害からのリスク分析
IATF16949:6.1.2.3項の緊急事態対応計画の要求事項には、以下のように記載されています。
c)項では、自然災害を含む「個別緊急事態対応計画」を作成することは必須ですが、まずは全体像がわかるリストを作成しておくことが重要です。
審査や顧客監査の際に説明しやすくするためにも全体像が分かるリストを作成しましょう。
作成方法を以下のように作成することがおすすめです。
個別対応計画の策定及び利害関係者への通知
IATF16949:6.1.2.3項の緊急事態対応計画のc)項の要求事項に対応するためには、以下のような個別対応計画が必要です。
ここでのポントは、IATF16949:6.1.2.3項の緊急事態対応計画のd)項の要求事項です。
上手「BCP④」にも記載している通り、利害関係者への通知について個別緊急事態対応計画に必ず記入してください。
また、通知担当及び通知方法も必ず入れるようにしましょう。
実地訓練または机上訓練を行う頻度を決める
IATF16949:6.1.2.3項の緊急事態対応計画の要求事項には、以下のように記載されています。
注記:サイバーセキュリティテストには、適宜、組織によって内部的に運用される場合も、外注される場合もある。
つまり、緊急事態対応計画で定められた事象(設備や部品・工程外注先へのリスク対応含む)は、社内で決めた頻度(最低限年次で!)で実地訓練または机上訓練(シミュレーション)を行う必要があります。
特にサイバー攻撃(最近ではスパムメールなど)に対する訓練は見落としがちな内容になっています。
そのため、注記の中にサイバーセキュリティーのテストは外注化するなどの策を講じることも言及されています。
テスト結果は部門横断検証およびトップへ報告
IATF16949:6.1.2.3項の緊急事態対応計画の要求事項には、以下のように記載されています。
g)緊急事態対応計画を文書化すること、及び、改訂があればそれを説明した文書化された情報を保持すること、これには変更を正式許可した責任者(複数可)を含む。
h)緊急事態対応計画には、該当する従業員向け訓練及び認識の要領の開発及び実施を含めること
この条文3つが抜けている企業が多く、指摘事項になりやすい項目です。
訓練は年次で最低1回行い、結果の検証は必ずトップマネジメントを含む部門横断検証を実施すること。
またその会議の議事録を残し、変更された個別緊急事態対応計画は速やかに従業員へ教育し、その教育記録を残すことがポイントです。
それらの一連の流れをまとめたのが下記となりますので、是非参考にしてみてくださいね!
緊急事態(非計画的シャットダウン)も考慮!
IATF16949:6.1.2.3項の緊急事態対応計画の要求事項には、以下のように記載されています。
i)生産が停止した緊急事態の後で生産を再稼働したとき及び正規のシャットダウンプロセスがとられなかった場合、製造された製品が引き続き顧客仕様を満たすことの妥当性確認条項を含めなければならない。
生産が停止し,通常のシャットダウンプロセスが行われなかったという緊急事態が起こった後の生産の再開後も,製造された製品が顧客仕様を満たすことを継続していることを正当化するための規定を,緊急事態対応計画に含めなければならない。
正規のシャットダウンプロセスとは、IATF16949:8.5.1.4項のシャットダウン後の検証と紐づいています。
計画的なシャットダウン(設備停止など)であれば再立ち上げ方法が規定されていると思いますが、非計画的シャットダウン(例えば大規模停電)などでシャットダウンが起きた場合、適当な再立ち上げは危険です。
緊急事態に備え、非計画的なシャットダウン時にも対応できるように備える必要があります。
その詳しい方法は、8.5.1.4項を是非参考にしてみてください。
IATF16949:6.1.2.3項の緊急事態対応計画は構築が大変な要求事項の一つ!対応計画が不十分な場合、審査のみならず顧客監査でも不適合になることが多いです。簡単にまとめられるテクニック満載の帳票を格安でご提供いたします!
IATF16949:6.1.2.3項の緊急事態対応計画の取組みはどこに記載すればいい?
IATF16949:6.1.2.3項の緊急事態対応計画の取り組みは、規定及び個別手順書で対応することが無難です。
品質マニュアルには要求事項のみを記載し、「緊急事態管理規定」を作成し、規定に付随する「個別緊急事態対応計画」を作成すればOKです。
IATF16949:6.1.2.3に関するFAQ
IATF16949のメールコンサルティングでよくある質問をFAQ形式で3つご紹介致します!もっと詳しく質問したい場合は、是非メールコンサルティングサービスをご活用くださいね!
緊急事態対応計画は、企業が自然災害やサプライチェーンの混乱、設備の故障などの予期しない事態に迅速に対応し、生産を維持するために重要です。この計画は、顧客への影響を最小限に抑え、信頼を維持する手段として、特に自動車産業において求められています。
欧州自動車顧客との取引で特に重要な要求事項になるので注意しましょう!
最も重要なリスクは、顧客の生産に不可欠な設備やインフラの停止、外部提供者からの供給停止、自然災害やサイバー攻撃などです。これらのリスクに対する対応計画を整備し、代替手段を検討することが、計画構築の第一歩です。
IATF16949全体として「リスク」に対しては文書化したプロセスが必要なので、弊社販売中のサンプル規定を参考にしていただければ幸いです。
⇒【規定】No.6121_リスク分析管理規定:IATF16949版
IATF 16949の規格では、少なくとも年次でのテストが必要とされています。実地訓練やシミュレーションを通じて、計画が実際に有効かどうかを確認し、必要に応じて見直しを行うことが求められています。特に、サイバー攻撃に対する訓練も定期的に実施することが推奨されるので、漏れがないようにしましょう。
緊急事態対応計画は、リスクの特定と対策が必要なので、弊社販売中帳票を是非参考にしてみてくださいね!
⇒【帳票】No.6123_緊急事態対応計画一覧表
IATF16949:6.1.2.3項の緊急事態対応計画:まとめ
IATF16949:6.1.2.3項の緊急事態対応計画についての規格解釈、構築ポイントはいかがでしたでしょうか?
自動車産業顧客へのリスクを低減させるためのリスク分析の機会を与え、それらの対応を具体的に行うことで顧客からの信頼へとつなげるための要求事項であることが特徴です。
緊急事態に備え沢山のリスクヘッジをすることは非常に素晴らしいです。
しかしやりすぎは企業の経営を圧迫しかねません。
だからこそIATF16949が求める最低限のことに注力して抜けがないように取り組むことが重要です!
それではまた!
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②コントロールプラン:帳票雛形から作成ポイント解説
③PPAP:PPAPプロセス構築解説
④FMEA:FMEA必須帳票事例と作成方法〜特殊特性まで解説
⑤MSA:ゲージR&R・クロスタブ法を事例帳票〜計算方法まで解説
⑥SPC:要求事項や物理的な意味まで完全網羅