ISO9001:6.1項のリスク及び機会への取組みは、品質マネジメントシステムの計画を作成する時、リスクを検討し、そのリスクを機会(チャンス)と捉え、計画と取組みを実施することを意図しています。
今回の記事は、ISO9001:6.1項のリスク及び機会への取組みの意味と構築ポイントについて解説します。
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目次
ISO9001:6.1項のリスク及び機会への取組みの意図
ISO9001:6.1項のリスク及び機会への取組みは、品質マネジメントシステム構築時のみならず、内部監査・顧客監査そして審査会社における認証・更新審査において必ず確認されるポイントです。
また品質方針・品質目標を立てる際も「リスク」をきちんととらえることで、「機会」を得ることに繋がります。
ここで重要なのが、リスクと機会についての言葉の意味をきちんと理解しておきましょう。
リスクとは、将来起こる不確定な事象とその影響つまり、「悪い事が起こる可能性」の事。
②機会
機会とは、目的を達成するためのチャンスの事。
つまり、リスクはチャンス(機会)になり得るので、取り組む必要があるのかを検討し、それをマネジメントシステムの計画にきちんと取り込むことが重要です。
例えば極端な事例として、世界的にIC不足が発生している中で、IC在庫を2年保有する計画をIC不足前に確保できていたらどうでしょうか?
「IC不足:生産リスク→IC在庫大量保有でライバル企業より優位に立てるチャンス」となり得るということを意味しています。
これらを効果的に品質マネジメントシステムの計画段階から取り込むための構築ポイントについて、次に解説いたします。
外部・内部の課題とのリンクを考慮する
ISO9001:6.1項のリスク及び機会への取組みの要求事項の前文には、以下のようなことが大事です。
リスク及び機会への取組みにおいて大事なポイントは、内部(組織)・外部(顧客/法令・規制当局など)の状況を理解し、その状況からわかるリスクを抽出し、機会を決定する必要があります。
つまり構築の際は、以下の要求事項で事前に検討された内容を利用できる状態にし、リンクさせることが重要です。
抽出方法は、下記の要求事項を参考にしてみましょう!
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リスクと機会を抽出する表を作成
ISO9001:6.1項のリスク及び機会への取組みの要求事項には、以下のようなことが大事です。
b)望ましい影響を増大する。
c)望ましくない影響を防止又は低減する。
d)改善を達成する。
①意図した結果の意味
a)の「意図した結果」とは、品質方針・品質目標を達成させることを意味しています。
しかし、リスクの中には大きなリスクから小さなリスクまで様々であり、それら全てを品質マネジメントシステム運用の中で取り組むことはベストですが、費用・人・資源も必要になります。
その為、組織の中で取り組むべきと判断した内容だけを品質方針・品質目標へインプットすることが重要です。
②悪い影響と良い影響を考える
リスクというのはチャンスととらえることができる為、悪い影響から良い影響を齎すことが可能かを検討することが重要です。
ISO9001:6.1項のリスク及び機会への取組みの要求事項には、注記1と注記2が記載されていますが、その内容が上記の内容です。
例えば新製品を開発のきっかけや新たな分野への進出などはリスクが伴うこともありますが、新市場の中でTOP企業になれる可能性もあるとも考えられます。
その為には、リスク及び機会を検討し、悪い影響と良い影響そして、リスクの低減や改善活動を取り組むことが自社に発展にもつながることを理解することが重要です。
リスクと機会への取組計画と実績の監視を行う
ISO9001:6.1項のリスク及び機会への取組みの要求事項には、以下のようなことが大事です。
b)次の事項を行う方法
1)その取組みの品質マネジメントシステムプロセスへの統合及び実施(4.4参照)
2)その取組みの有効性の評価
リスク及び機会への取組みは,製品及びサービスの適合への潜在的な影響と見合ったものでなければならない。
この意図は、6.1.1で抽出されたリスクと機会について実際に取り組むと決めたことを計画し、実行し、その成果を評価することを要求しています。
「実際に取り組んだ結果の評価」とはトップマネジメントが最終評価をすることを意図しているので、9.3.2項のマネジメントレビューのインプットにすることが重要です。
これらを考慮すると下記画像のように「リスクと機会検討表」と「リスクと機会運用表」の二つが重要となるので、それらを自社に合わせた形で帳票に落とし込むようにしましょう。
①リスクと機会への取り組み帳票作成方法
ISO9001:6.1項のリスク及び機会への取組み帳票は、ISO9001取得への大事な帳票の一つです。
要求事項がリンクしている内容があるので、帳票作成時に抜けがでることがあります。それを回避するために、以下のように要求事項とのリンクを帳票に書き込んでしまうことがポイントです。
計画表は、リスク評価の結果から計画を立て実行する必要がある内容を抽出して、リスク及び機会運用表でPDCAを評価します。
②リスク評価は重要!
リスクと機会の抽出ができたら「何を取り組むべきか」について自社の判断基準が無いと取り組むべきかどうかがわかりません。
それらを分かりやすくするためにリスク評価を実施し取り組む必要があります。
その際の検討方法は千差万別ですが、考え方として以下のように考えると計画作成しやすくなるのでおすすめです。
リスク大×チャンス中=取り組むか検討
・・・
リスク小×チャンス大=必ず取り組む
③結果と評価のまとめは必ずマネジメントレビューのインプットへ
リスクと機会の運用結果は、自社のマネジメントレビューのタイミングでトップマネジメントへインプットしてください。
マネジメントレビューが月ごとであれば毎月、1回/年であればまとめ会議などでの報告が必要です。
また、トップマネジメントからの更なる要求などあれば、リスクと機会検討表へ新たに追加・更新することで滞りなく運用できるようになります。
そうすることにより、内部監査・顧客監査そして審査会社の監査の際も適合性を証明することができるようになるので、是非トライしてみてくださいね!
ISO9001:6.1項のリスク及び機会への取組みはどこに記載すればいい?
ISO9001:6.1項のリスク及び機会への取組みについての記載は、品質マニュアルに記載することがおすすめです。
多くの企業で運用が上手く行かないといったご相談を受けますが、その原因は無駄な規定に落とし込みを図っていることです。
そうではなく、品質マニュアルに運用方法を記載し、取り組みは「帳票」で適合性を主張すればよいという考え方が重要です。
品質マニュアルへの記載例を以下に示しますので、是非参考にしてみてくださいね!
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ISO9001:6.1(6.1.1,6.1.2)に関するFAQ
ISO9001のメールコンサルティングでよくある質問をFAQ形式で3つご紹介致します!もっと詳しく質問したい場合は、是非メールコンサルティングサービスをご活用くださいね!
リスクと機会の識別は、内部・外部の状況分析(SWOT分析やPEST分析)を活用するのが効果的です。プロセスごとに影響を与える要因を特定し、顧客満足や事業目標への影響を考慮することが重要です。社員の意見を取り入れ、部門横断的に検討すると見落としが減ります。
リスクの対応には「回避」「低減」「共有」「受容」の4つの戦略があります。重要度に応じて適切な戦略を選び、PDCAサイクルで改善を継続することが求められます。また、対応策は単に問題解決だけでなく、プロセスの改善や顧客満足度向上を目指すことを考慮しましょう。
⇒【ISO9001攻略】9.1.2:顧客満足の要求事項徹底解説!
機会とは、リスク回避の結果や改善活動を通じて得られるポジティブな効果です。例えば、新技術導入や市場拡大の機会がこれに該当します。これらの機会を積極的に捉え、目標達成に貢献する行動計画を策定し、進捗を定期的に評価することが求められます。
ISO9001:6.1項のリスク及び機会への取組み:まとめ
ISO9001:6.1項のリスク及び機会への取組みについての規格解釈、構築ポイントはいかがでしたでしょうか?
リスクというのは場合によっては「チャンス」になることもあります。
リスクを検討し新たなチャンスをものにしていくことは、事業存続の観点からも非常に重要な取り組みといえるので、ISO9001取得が「無駄」ではないことを意味している要求事項の一つとも言えます。
製造業だけではなく、あらゆる業種でも役立つISO9001なので、本要求事項を基に是非リスクと機会に取り組んでみてくださいね!
それではまた!
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