【ISO9001攻略】4.4.2:品質マネジメントシステムの文書管理の要求事項徹底解説!

ISO9001:4.4.2は、品質マネジメントシステム(QMS)のプロセスの運用を支援するために必要な文書化した情報を「維持」し、プロセスが計画通りに実施されたことを確信するために必要な文書化した情報を「保持」することを求める条項です。

条文はシンプルですが、「維持と保持の違いは何か」「どの文書が維持でどの記録が保持か」「どの程度の文書化が必要か」など、実務で迷うポイントが多い条項でもあります。

本記事では、文書階層ピラミッドによる文書体系の可視化、維持・保持の対象文書一覧表、品質マニュアルへの記載方法、審査・内部監査での確認ポイントまで実務目線で徹底解説します。


この記事を書いた人

所属:QMS認証パートナー専属コンサルタント
年齢:40代
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Hiroaki.M

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第4章:組織の状況「要求事項リスト」はこちら
ISO・IATF 4章
※IATF運用には、ISO9001の要求事項の運用が必須です。
条項 題目 ISO
9001
IATF
16949
第4章 組織の状況
第5章 リーダーシップ
第6章 計画
第7章 支援
第8章 運用
第9章 パフォーマンス評価
第10章 改善
条項 題目 ISO
9001
重要
帳票
IATF
16949
重要
帳票
4.1 組織及びその状況の理解  
4.2 利害関係者のニーズ及び期待の理解    
4.3 品質マネジメントシステムの適用範囲の決定    
4.3.1 品質マネジメントシステムの適用範囲の決定-補足  
4.3.2 顧客固有要求事項
4.4(4.4.1) 品質マネジメントシステム及びそのプロセス  
4.4.1.1 製品及びプロセスの適合  
4.4.1.2 製品安全  
4.4.2 題目なし(文書管理要求)    

当サイトの情報提供スタンスについて

当サイトでは、ISO9001およびIATF16949について、規格要求の解説にとどまらず、実務でどのようにルールや記録へ落とし込むかを重視して情報を整理しています

規格の理解とあわせて、「現状とのギャップをどう捉えるか」「どこから手を付けるべきか」といった判断に迷いやすい点を、現場目線で分かりやすく解説することを目的としています。

記事内容を自社へ当てはめる際の考え方や、判断に迷うポイントについては、別ページで整理した情報も用意しています。

この記事の目次

ISO9001 4.4.2の規格要求の全体像

4.4.2が求めている2つのポイント

4.4.2の要求事項は、非常にシンプルな2つのポイントで構成されています。

プロセスの運用を支援するための文書化した情報を「維持」すること

品質マネジメントシステムの各プロセスが適切に運用されるための基準や手順を定めた文書を整備し、常に最新で使える状態に管理することを求めています。ここでいう「維持」とは、必要に応じて改訂し、継続的に使用可能な状態にすることです。

プロセスが計画通りに実施されたことを確信するための文書化した情報を「保持」すること

プロセスを実施した結果を示す証拠(記録)を適切に保管し、後から確認できる状態にすることを求めています。ここでいう「保持」とは、定められた期間、内容を変更せずに保管することです。

つまり4.4.2は、QMSの運用に必要な「ルール(文書)」と「証拠(記録)」の両方を適切に管理することを求めているということです。

4.4.1との関係

4.4.2は、4.4.1(品質マネジメントシステム及びそのプロセス)の直後に位置する条項です。4.4.1でプロセスを特定し、そのインプット・アウトプット・順序・相互関係・資源・責任者・リスク等を明確にしたうえで、4.4.2でそれらを「文書化した情報」として管理することを求めています。

4.4.1が「プロセスを決める」条項であるのに対し、4.4.2は「決めたことを文書化して管理する」条項という関係です。4.4.1でタートル図やプロセスフロー(プロセスマップ)としてプロセスを定義した内容は、4.4.2(a)の「維持」の対象となります。

プロセスマップで業務をつなげるイメージ

ISO9001やIATF16949では、組織の業務をプロセスとして整理し、全体の流れを把握することが求められます。その可視化手法の一つがプロセスマップです。

主要プロセスと支援プロセスの関係を整理することで、業務の重複や抜け漏れに気づきやすくなります。作成時は、流れを複雑にしすぎず、全体像を俯瞰できる粒度でまとめることがポイントです。

ISO9001における「文書化した情報」の位置づけ

ISO9001:2015では、旧版(ISO9001:2008)で使われていた「文書」と「記録」を統合して「文書化した情報」という用語に一本化しました。しかし実務上は、「維持する文書化した情報」=文書(ルール)、「保持する文書化した情報」=記録(証拠)として区別して管理することが一般的です。

4.4.2は、この「文書化した情報」の管理に関する基本要求であり、具体的な管理方法(作成、更新、管理、保管等)は7.5項(文書化した情報)で詳細に規定されています。4.4.2は「何を文書化するか」を示し、7.5項は「どう管理するか」を示すという関係です。

「維持」と「保持」の違い

「維持」の定義と対象文書

維持(maintain)とは、文書化した情報を必要に応じて改訂し、継続的に使用可能な状態にすることです。

「維持」の対象は、プロセスの運用ルールや手順を定めた文書類です。これらの文書は、プロセスの変更、規格の改訂、改善活動の結果等に応じて更新される必要があります。

維持の対象文書の例:

  • 品質マニュアル
  • 品質方針書
  • 規定(品質管理規定、購買管理規定、文書管理規定等)
  • 手順書(標準作業手順書、工程指示書等)
  • プロセスフロー(QC工程表、フローチャート)
  • タートル図
  • 品質計画書・コントロールプラン
  • 帳票フォーマット(記録用紙のひな型)
  • 品質目標管理表
  • 組織図、業務・職位分掌表

「保持」の定義と対象記録

保持(retain)とは、文書化した情報を定められた期間、内容を変更せずに保管することです。

「保持」の対象は、プロセスを実施した結果を示す記録です。記録は「過去に何が行われたか」の証拠であるため、その内容を後から変更してはなりません。

保持の対象記録の例:

  • 検査記録・試験結果
  • 工程チェックシート・工程記録
  • 内部監査報告書
  • 不適合報告書・是正処置記録
  • マネジメントレビュー議事録
  • 教育訓練記録・力量評価表
  • 校正記録
  • 受入検査記録
  • 顧客クレーム対応記録
  • 設計検証・妥当性確認記録

維持と保持を間違えやすいケース

実務で「維持」と「保持」を混同しやすいケースがあります。以下の点に注意してください。

間違えやすいケース1:帳票フォーマットと記録

帳票のフォーマット(空欄の用紙テンプレート)は「維持」の対象です。そのフォーマットに実際のデータを記入した記録は「保持」の対象です。同じ帳票でも、テンプレートの状態と記入済みの状態では管理の仕方が異なります。

間違えやすいケース2:品質目標管理表

品質目標を記載した管理表は「維持」の対象(目標が変われば更新する)。品質目標の達成状況を記録した実績表は「保持」の対象(過去の実績は変更しない)。

間違えやすいケース3:手順書と改訂履歴

手順書の本文は「維持」の対象(内容を最新に更新する)。手順書の改訂履歴そのものは「保持」の対象(過去の改訂記録は残す)。

維持・保持の対象文書一覧表

ISO9001の各条項で要求される文書化した情報を、維持(文書)と保持(記録)に分類した一覧表です。自社の文書管理の網羅性確認にご活用ください。

維持(文書)が要求される主な条項:

条項 文書化が要求される内容 文書例
4.3 QMSの適用範囲 品質マニュアル(適用範囲の記載)
4.4.1 QMSのプロセス タートル図、プロセスフロー
5.2.1 品質方針 品質方針書
6.2.1 品質目標 品質目標管理表
8.1 運用の計画及び管理 QC工程表、コントロールプラン
8.5.1 製造及びサービス提供の管理 作業手順書、工程指示書

保持(記録)が要求される主な条項:

条項 記録が要求される内容 記録例
7.1.5.1 監視及び測定のための資源 校正記録
7.2 力量 教育訓練記録、力量評価表
8.2.3.2 製品及びサービスに関する要求事項のレビュー 契約内容確認記録
8.3.2 設計・開発の計画 設計計画書
8.3.3 設計・開発へのインプット 設計インプット記録
8.3.4 設計・開発の管理 デザインレビュー記録
8.3.5 設計・開発からのアウトプット 設計成果物
8.3.6 設計・開発の変更 設計変更記録
8.5.2 識別及びトレーサビリティ ロット管理記録
8.5.3 顧客又は外部提供者の所有物 支給品管理記録
8.5.6 変更の管理 変更管理記録
8.6 製品及びサービスのリリース 検査記録、出荷判定記録
8.7.2 不適合なアウトプットの管理 不適合品報告書
9.1.1 監視、測定、分析及び評価 検査データ、工程記録
9.2.2 内部監査 内部監査報告書
9.3.3 マネジメントレビューからのアウトプット MR議事録
10.2.2 不適合及び是正処置 是正処置報告書

(a)プロセスの運用を支援するための文書化した情報(維持)

品質マニュアル

品質マニュアルは、QMS全体の方針、適用範囲、プロセスの概要、組織構成等を記載した最上位文書です。ISO9001:2015では品質マニュアルの作成は必須ではありませんが、QMSの全体像を把握するための文書として作成している企業がほとんどです。IATF16949では品質マニュアルの作成が要求されています。

品質マニュアルの改訂は、組織変更、プロセスの見直し、規格の改訂等に応じて行います。

規定・手順書(標準作業手順書、工程指示書等)

規定は「何をするか」「誰がするか」「どのような基準で行うか」を定めた文書です。手順書は「どのように行うか」を具体的な手順として示した文書です。製造業であれば、作業手順書(SOP)や工程指示書は日常的に使用する最も重要な文書の一つです。

これらの文書は、作業者への確実な指示伝達と教育訓練の基盤となります。プロセスの変更、不適合の是正、改善活動の結果に応じて必要な改訂を行い、常に最新の状態を維持してください。

QC工程表、フローチャート

プロセスフローは、業務の流れを視覚的に示した文書です。工程の順序、検査ポイント、判定基準、使用する設備等を一覧化することで、プロセス全体の構造が把握できます。

QC工程表(QC Process Chart)は製造業で広く使われているプロセスフローの一形態で、各工程の管理項目、管理方法、管理頻度、使用設備、関連文書等を表形式で整理します。

タートル図

タートル図は、各プロセスのインプット、アウトプット、必要な資源、手順、責任者、評価指標を一枚の図にまとめたものです。4.4.1でプロセスを定義する際に作成し、4.4.2(a)の「維持」対象として管理します。タートル図はプロセスの全体像を俯瞰するのに非常に有効で、内部監査やプロセス評価の際にも活用されます。

タートル図で整理するプロセス定義の考え方

IATF16949やISO9001では、各プロセスの目的や責任、インプット・アウトプット、指標などを明確に定義することが求められます。その整理方法の一つがタートル図(タートルチャート)です。プロセスを俯瞰して可視化できるため、役割や管理項目の抜け漏れを確認しやすくなります。

一方で、どの項目をどこまで記載すべきかで迷うケースも少なくありません。そのため、プロセス定義の視点を整理したうえでタートル図を活用することが重要になります。こうした整理を進める方法の一つとして、タートル図を用いたプロセス定義の進め方を分かりやすくまとめた資料を参考にする方法もあります。

(b)プロセスが計画通りに実施されたことを確信するための文書化した情報(保持)

検査記録・試験記録

製品が品質基準を満たしているかを確認した結果の記録です。受入検査記録、工程内検査記録、最終検査記録、試験成績書等が含まれます。検査記録は製品の適合性を証明する最も基本的な証拠であり、顧客や規制当局への品質証明の基盤となります。

監査記録(内部監査・外部審査)

内部監査の実施結果(監査計画、チェックリスト、不適合報告、改善事項等)と外部審査の結果を記録したものです。監査記録は、QMSが規定通りに運用されているかを第三者的に確認した証拠であり、改善活動の出発点となります。

不適合記録・是正処置記録

プロセスや製品において発生した不適合の内容、原因分析の結果、是正処置の内容、効果確認の結果を記録したものです。不適合記録は問題の追跡可能性を確保し、再発防止につなげるための重要な記録です。

マネジメントレビュー記録

経営層が定期的に実施するマネジメントレビューの議事録です。QMSの有効性、品質目標の達成状況、改善の必要性等についてのトップマネジメントの判断と指示事項を記録します。マネジメントレビュー記録は、トップマネジメントがQMSに関与している証拠として審査で重点的に確認されます。

教育訓練記録

従業員に対する教育訓練の実施記録です。教育内容、受講者、実施日、効果確認の結果等を記録します。7.2項(力量)の要求と連動し、プロセスに関わる要員の力量が確保されている証拠となります。

工程記録・チェックシート

日常の製造工程で記録されるデータです。工程温度、圧力、時間等の工程パラメータ、チェックシートによる確認結果等が含まれます。工程記録は、製造プロセスが定められた条件で運用されたことを証明する証拠です。

文書化した情報の体系(文書階層ピラミッド)

7.5.1.1品質文書管理台帳

QMS文書の4層構造

品質マネジメントシステムの文書は、一般的に4つの階層で体系化されます。この文書階層ピラミッドを理解することで、4.4.2の(a)と(b)の対応関係が直感的に把握できます。

第1階層:品質マニュアル(方針・体系)

QMS全体の方針、適用範囲、プロセスの概要を示す最上位文書。通常1文書。

第2階層:規定・手順書(ルール)

各プロセスの実施ルールを定めた文書。品質管理規定、購買管理規定、文書管理規定等。通常10〜30文書程度。

第3階層:作業指示書・帳票フォーマット(実行手順)

現場レベルの具体的な作業手順や記録用紙のテンプレート。標準作業手順書、工程指示書、チェックシートのフォーマット等。通常50〜100文書程度。

第4階層:記録(証拠)

プロセスを実施した結果として作成される記録。検査記録、工程記録、監査記録、是正処置記録等。

文書階層と4.4.2(a)(b)の対応

階層 内容 4.4.2との対応 管理方法
第1階層:品質マニュアル 方針・体系 (a)維持 必要に応じて改訂
第2階層:規定・手順書 ルール (a)維持 必要に応じて改訂
第3階層:作業指示書・帳票フォーマット 実行手順 (a)維持 必要に応じて改訂
第4階層:記録 証拠 (b)保持 定められた期間保管

第1〜3階層は「維持」の対象であり、プロセスの変更や改善に応じて更新されます。第4階層は「保持」の対象であり、過去の実施結果の証拠として内容を変更せずに保管されます。

この文書階層ピラミッドを理解しておくと、「この文書は維持か保持か」の判断に迷った場合でも、「ルールを定めた文書=維持」「実施結果の記録=保持」と即座に判断できます。

規格を理解するうえで、よくある「つまずき」とは?

ISO9001やIATF16949、VDA6.3の要求事項は、条文を読むだけでは自社業務への当てはめ方が分かりにくい場面が少なくありません。理解したつもりでも、文書化や運用判断で迷いが生じることは多く、その違和感こそが改善ポイントになる場合もあります!

※ 個別ケースでの考え方整理が必要な場合は、補足的な確認も可能です。

品質マニュアルへの記載方法

品質マニュアル記載例

4.4.2は条文がシンプルなため、品質マニュアルへの記載は条文の趣旨をそのまま反映すれば対応できます。

記載例:「組織は、次の事項について必要な程度の文書化した情報を整備する。

(a)プロセスの運用を支援するために必要な文書化した情報を維持する。対象文書には、品質マニュアル、規定、手順書、作業指示書、プロセスフロー、品質計画書等を含む。これらの文書は、必要に応じて改訂し、常に最新の使用可能な状態を維持する。

(b)プロセスが計画通りに実施されたことを確信するために必要な文書化した情報を保持する。対象記録には、検査記録、監査記録、不適合記録、マネジメントレビュー記録、教育訓練記録等を含む。これらの記録は、文書管理規定に定める保管期間、内容を変更せずに保管する。

文書化した情報の作成、更新、管理に関する詳細は、文書管理規定(7.5項参照)に定める。」

7.5項(文書化した情報)との連動

4.4.2は「何を文書化するか」を定める条項であり、「どう管理するか」の詳細は7.5項に委ねられています。品質マニュアルでは4.4.2の記載から7.5項を参照する形で連動させてください。

7.5項では以下の管理方法が規定されています。

  • 7.5.1(一般):QMSに必要な文書化した情報の範囲
  • 7.5.2(作成及び更新):文書の識別、形式、承認に関する要求
  • 7.5.3.1(管理):文書の配布、アクセス、保管、変更管理に関する要求
  • 7.5.3.2(管理):外部文書の管理に関する要求

4.4.2の審査では、7.5項の文書管理体制と合わせて確認されることがほとんどです。4.4.2と7.5項を一体的に運用することで、効率的な文書管理が可能になります。

内部監査・審査での確認ポイント

審査員が確認する5つの観点

ISO9001 4.4.2に関する審査では、以下の観点が重点的に確認されます。

プロセスの運用を支援する文書(維持)が整備されているか

手順書、規定、プロセスフロー、品質計画書等が存在し、最新の状態に管理されているかを確認します。「手順書がない」「手順書が5年前のまま更新されていない」という状態は指摘の対象です。

文書が最新で、関係者に周知されているか

文書が改訂された場合、旧版が回収され、最新版が関係者に配布・周知されているかを確認します。現場で旧版の手順書が使われている状態は典型的な不適合です。

プロセスの実施結果を示す記録(保持)が適切に管理されているか

検査記録、監査記録、是正処置記録等が作成され、適切に保管されているかを確認します。「記録がない」「記録が見つからない」という状態は重大な指摘対象です。

記録が改ざんされず、追跡可能な状態か

記録の内容が後から変更されていないこと(修正液で消していない、日付の遡り記入がない等)、必要な記録が追跡可能であることを確認します。

文書管理のルール(7.5項)が機能しているか

文書の作成・承認・配布・改訂・廃止のプロセスが規定通りに運用されているかを、4.4.2と7.5項を合わせて確認します。

ISO9001 4.4.2に関するFAQ

規格対応でよく聞かれる悩み

ISO9001やIATF16949、VDA6.3に取り組む中で、「審査対策として何を優先すべきか分からない」「要求事項に対する構築の考え方が整理できない」といった声は少なくありません。

また、社内にQMSを体系的に理解している担当者がいない場合や、外部コンサルの費用面で継続的な支援が難しいと感じるケースもあります。こうした悩みは、特定の企業に限らず、多くの現場で共通して見られるものとなっています。

「維持」と「保持」の違いは何ですか?

「維持」は文書を必要に応じて改訂し、継続的に使用可能な状態にすることです。規定や手順書が対象です。「保持」は記録を定められた期間、内容を変更せずに保管することです。検査記録や監査記録が対象です。簡潔に言えば、「ルール=維持」「証拠=保持」と覚えてください。

4.4.2で求められる文書はどの程度の範囲ですか?

4.4.2は「必要な程度の」文書化した情報を求めており、すべてのプロセスにすべての文書を要求しているわけではありません。組織の規模、業種、プロセスの複雑さに応じて、必要な文書の範囲を組織自身が決定します。ただし、ISO9001の各条項で「文書化した情報を維持/保持しなければならない」と明記されている項目は必須です。

文書化した情報は紙でなければなりませんか?

紙である必要はありません。ISO9001:2015では、文書化した情報の媒体や形式について制限はありません。電子データ(PDF、Excel、専用システム等)での管理も問題ありません。電子管理の場合は、バックアップ、アクセス権限、データの完全性(改ざん防止)に注意してください。

4.4.2と7.5項の違いは何ですか?

4.4.2は「何を文書化するか」(QMSのプロセス運用に必要な文書と記録の範囲)を定める条項です。7.5項は「どう管理するか」(文書の作成、更新、承認、配布、保管、廃止の方法)を定める条項です。4.4.2と7.5項は一体的に運用してください。

記録の保管期間はどう決めればよいですか?

ISO9001では記録の保管期間を具体的に規定していません。組織が自ら決定します。一般的には、法令要求、顧客要求、業界慣行を考慮して決めます。製造業では一般的な品質記録は3〜5年、製品安全に関わる記録は製品のライフサイクル+数年としているケースが多いです。IATF16949では顧客固有要求で保管期間が指定されることもあります。

文書の改訂管理はどのように行えばよいですか?

改訂の際は、改訂内容を明記し、権限者の承認を得てから配布します。旧版の回収と廃棄(または識別)を行い、現場で最新版のみが使用される状態を確保してください。改訂番号(Rev.1、Rev.2等)や改訂日の記載により、文書のバージョン管理を行います。詳細は7.5項の文書管理規定に定めます。

品質マニュアルは必須ですか?

ISO9001:2015では品質マニュアルの作成は必須ではありません。しかしQMS全体を体系的に示す文書として、多くの企業が作成しています。IATF16949では品質マニュアルの作成が要求されています。品質マニュアルを作成する場合は、4.4.2(a)の「維持」の対象として管理してください。

不要な文書を廃止する場合の注意点は?

不要な文書を廃止する際は、廃止の根拠と承認を記録し、現場から確実に撤去してください。電子文書の場合はアーカイブに移動し、閲覧制限をかけます。紙文書の場合は回収し、廃棄記録を残します。「廃止したはずの文書が現場に残っている」状態は審査で指摘される典型的な問題です。

ISO9001 4.4.2文書化した情報の維持と保持:まとめ

ISO9001 4.4.2は、QMSのプロセスの運用を支援するための文書化した情報を「維持」し、プロセスが計画通りに実施されたことを確信するための文書化した情報を「保持」することを求める条項です。

構築のポイントは、「維持」と「保持」の違いを正確に理解し、文書階層ピラミッド(第1〜3階層=維持、第4階層=保持)の考え方でQMS文書を体系的に管理することです。4.4.2は「何を文書化するか」を定め、具体的な管理方法は7.5項に委ねる構造となっているため、両者を一体的に運用してください。

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