【ISO9001攻略】5.1.1:一般(リーダーシップ)の要求事項徹底解説!

ISO9001:5.1.1「リーダーシップ及びコミットメント-一般」は、トップマネジメントが品質マネジメントシステム(QMS)に対してリーダーシップを発揮し、コミットメントを実証することを求める条項です。

a)からj)まで10個の要求事項で構成されており、QMSの有効性に対する説明責任、品質方針・品質目標の確立、事業プロセスへのQMS統合、資源の確保、改善の促進など、トップマネジメントに求められる行動を包括的に規定しています。

本記事では、a)〜j)全10要求事項の個別解説に加えて、リーダーシップ実証チェックリスト、品質マニュアルへの記載方法、審査・内部監査での確認ポイントまで実務目線で徹底解説します。


この記事を書いた人

所属:QMS認証パートナー専属コンサルタント
年齢:40代
経験:製造業にて25年従事(内自動車業界15年以上)
得意:工場品質改善・プロジェクトマネジメント
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第5章:リーダーシップ及びコミットメント「要求事項リスト
ISO・IATF 5章
※IATF運用には、ISO9001の要求事項の運用が必須です。
条項 題目 ISO9001 IATF
第4章 組織の状況
第5章 リーダーシップ
第6章 計画
第7章 支援
第8章 運用
第9章 パフォーマンス評価
第10章 改善
条項 題目 ISO
9001
重要
帳票
IATF
16949
重要
帳票
5.1.1 一般(リーダーシップ)  
5.1.1.1 企業責任  
5.1.1.2 プロセスの有効性及び効率  
5.1.1.3 プロセスオーナー
5.1.2 顧客重視  
5.2.1 品質方針の確立
5.2.2 品質方針の伝達
5.3 組織の役割・責任及び権限
5.3.1 組織の役割・責任及び権限ー補足
5.3.2 製品要求事項及び是正処置に対する責任及び権限

当サイトの情報提供スタンスについて

当サイトでは、ISO9001およびIATF16949について、規格要求の解説にとどまらず、実務でどのようにルールや記録へ落とし込むかを重視して情報を整理しています

規格の理解とあわせて、「現状とのギャップをどう捉えるか」「どこから手を付けるべきか」といった判断に迷いやすい点を、現場目線で分かりやすく解説することを目的としています。

記事内容を自社へ当てはめる際の考え方や、判断に迷うポイントについては、別ページで整理した情報も用意しています。

この記事の目次

ISO9001 5.1.1の規格要求の全体像

5.1.1が求めている10のポイント(概要一覧表)

5.1.1は、トップマネジメントがQMSに関するリーダーシップ及びコミットメントを「実証しなければならない」と明記しています。単にQMSを構築すればよいのではなく、トップマネジメント自らが積極的に関与し、その関与を「実証」=証拠として示すことが求められます。

以下がa)からj)まで10個の要求事項の概要です。

項番 要求事項 一言でいうと
a) QMSの有効性に説明責任を負う 結果責任を持つ
b) 品質方針・品質目標を確立し、戦略と整合させる 方針と目標を作る
c) 事業プロセスへのQMS統合を確実にする 日常業務に組み込む
d) プロセスアプローチとリスクに基づく考え方を促進する リスク思考を根付かせる
e) 必要な資源が利用可能であることを確実にする ヒト・モノ・カネを配分する
f) QMSの重要性を伝達する 全社員に伝える
g) QMSが意図した結果を達成することを確実にする 成果を出す
h) 人々を積極的に参加させ、指揮し、支援する 全員参加を促す
i) 改善を促進する 改善活動を推進する
j) 管理層のリーダーシップを支援する 中間管理職を支える

2008年版→2015年版での変更点

ISO9001:2008では、QMSの管理を「管理責任者」に委任することが認められていました。多くの企業で品質管理部長が管理責任者として任命され、トップマネジメント(社長・経営層)はQMSの実務にほとんど関与しないケースが一般的でした。

ISO9001:2015では、この「管理責任者」の要求が削除されました。代わりに5.1.1で、トップマネジメント自身がリーダーシップを実証することが明確に要求されるようになりました。

この変更の背景には、「QMSが経営と乖離した形式的な仕組みになっている」という問題意識があります。管理責任者に任せきりのQMSは、経営戦略とQMSが別々に運用される「二重管理」に陥りやすく、現場にとっては「ISO対応のための追加業務」となっていました。2015年版では、トップマネジメントが自ら関与することで、QMSを経営そのものに統合することを目指しています。

なぜ「リーダーシップ」が第5章の冒頭にあるのか

ISO9001:2015の規格構成は、第4章(組織の状況)で外部・内部環境を把握した後、第5章(リーダーシップ)でトップマネジメントの関与を求め、その後に第6章(計画)、第7章(支援)、第8章(運用)と続きます。

この順番には意味があります。

組織の状況を把握した上で、まずトップマネジメントが方向性を示し(第5章)、その方向性に基づいて計画を立て(第6章)、資源を確保し(第7章)、実行する(第8章)という流れです。トップマネジメントのリーダーシップが全てのQMS活動の起点であるという設計思想が、この規格構成に表れています。

私は毎年多くのサプライヤー監査を実施しますが、第5章の内容に対してどの程度経営層が理解しているかで、その企業のISO9001のレベルが即座にわかります。第5章への理解が浅い企業は、ほぼ例外なくQMSが形骸化しています。

a) QMSの有効性に対する説明責任

a)の意味と実務での対応

a)は、トップマネジメントがQMSの有効性に対して最終的な説明責任(accountability)を負うことを求めています。ここでいう「説明責任」とは、QMSが有効に機能しているかどうかの結果について、トップマネジメントが責任を持って説明できなければならないということです。

QMSの有効性とは、品質目標の達成状況、顧客満足度、不適合の発生状況、改善活動の進捗など、QMSが「意図した結果」を出しているかどうかです。これらの結果に対して、「知らなかった」「担当者に任せていた」では済まされません。

PDCAの結果責任としての説明責任

【ISO9001攻略】5.1.1:一般(リーダーシップ)の要求事項徹底解説!①

QMSの運用に不可欠なのがPDCAサイクル(Plan-Do-Check-Act)です。a)の説明責任は、このPDCAサイクル全体の結果に対する責任と理解してください。

Plan(計画)で品質方針・品質目標を策定し、Do(実行)で各プロセスを運用し、Check(評価)でマネジメントレビューや内部監査で結果を評価し、Act(改善)で是正処置や改善活動を実施する。

この一連のサイクルによって得られた結果についての説明責任がトップマネジメントにあるということです。

実務では、マネジメントレビュー(9.3項)がa)の説明責任を果たす最も重要な場です。マネジメントレビューでQMSの有効性を評価し、必要な改善指示を出すことが、a)の具体的な実証方法となります。

b)品質方針・品質目標の確立と戦略との整合

b)の意味と実務での対応

b)は、品質方針と品質目標を確立し、それらが組織の状況および戦略的な方向性と両立することを確実にすることを求めています。

品質方針は組織の品質に関する基本的な考え方(5.2項で詳細規定)、品質目標はその方針を具体化した測定可能な目標(6.2項で詳細規定)です。b)のポイントは、これらが「組織の戦略的な方向性と両立する」ことです。

経営戦略との整合性の取り方

品質方針・品質目標が経営戦略と乖離していると、「ISO対応のための品質目標」と「経営上の事業目標」が別々に存在する二重管理に陥ります。

整合性を取るためには、中期経営計画や年度事業計画を策定する際に、品質に関する目標を事業目標の一部として組み込むことが有効です。例えば、「市場クレーム件数を前年比30%削減」「工程内不良率を0.5%以下に維持」といった品質目標を、コスト目標や売上目標と同列で事業計画に組み込みます。

審査では「品質目標と事業戦略の関連を説明してください」と質問されることがあります。品質方針・品質目標が経営計画のどこに位置づけられているかを明確に説明できるようにしておいてください。

c)事業プロセスへのQMS統合

c)の意味と実務での対応

c)は、QMSの要求事項を組織の事業プロセスに統合することを求めています。QMSが日常業務とは別の「ISO対応業務」として運用されている状態は、c)の要求を満たしていません。

QMSの統合とは、営業、設計、製造、検査、出荷、購買などの各事業プロセスの中に、品質管理のルールや基準が自然に組み込まれている状態です。ISO対応のための追加業務ではなく、日常業務そのものがQMSの一部として運用されている状態が理想です。

「QMSが別物になっている」典型パターン

「証書だけもらいたい」という動機でISO9001を取得した企業に多いのが、QMSと日常業務が完全に分離している状態です。これは結果的に書類作成に追われるだけの非効率な品質マネジメントシステムを生み出します。

典型パターンとして、「ISO用の手順書」と「現場で実際に使っている手順書」が別々に存在する、審査前だけ記録を整える、品質目標の進捗管理がマネジメントレビューの時だけ行われる、といった状態があります。

c)の要求を満たすためには、QMSの手順書や記録が日常業務のツールとして使われている状態を目指す必要があります。QMSと日常業務の統合度合いは、審査員がプロセスの現場を見ることで容易に判断できます。

d)プロセスアプローチとリスクに基づく考え方の促進

d)の意味と実務での対応

【ISO9001攻略】5.1.1:一般(リーダーシップ)の要求事項徹底解説!②

d)は、プロセスアプローチおよびリスクに基づく考え方の利用を促進することを求めています。

プロセスアプローチとは、組織の活動を個々の業務ではなく「プロセス」(インプット→活動→アウトプットの連鎖)として捉え、プロセス間の相互関係を管理する考え方です。リスクに基づく考え方とは、プロセスの計画・実行において、リスク(望ましくない結果の可能性)と機会(望ましい結果の可能性)を考慮する考え方です。

d)の「促進する」という表現は重要です。トップマネジメント自身がプロセスアプローチやリスク管理を実行するのではなく、組織全体にこの考え方を根付かせるための環境や文化を作ることが求められています。

実務では、リスク管理表やFMEAの活用を推進すること、プロセスの相互関係をタートル図やプロセスフローで可視化することが、d)の対応となります。4.1項で把握した外部・内部の課題、4.2項で把握した利害関係者の要求事項に対するリスクと機会を、6.1項で計画に落とし込む流れの中で、トップマネジメントがリスク思考の重要性を組織に伝えてください。

e)必要な資源の確保

e)の意味と実務での対応

e)は、QMSに必要な資源が利用可能であることを確実にすることを求めています。ここでいう資源には、人的資源(人材、力量)、インフラストラクチャ(設備、施設、IT環境)、プロセスの運用に関する環境(作業環境、温湿度管理等)、監視及び測定のための資源(測定機器等)、知識(組織の知識)が含まれます。

e)はトップマネジメントに対して、これらの資源を予算配分や人員配置として確保する「経営判断」を求めています。QMSの運用に必要な設備投資、人材採用、教育訓練への予算配分は、現場レベルの判断ではなく経営層の判断が不可欠です。

「資源がない」は審査で通用しない

審査で「人員が足りない」「予算がない」「設備が老朽化している」といった回答をした場合、審査員は「ではトップマネジメントに資源確保を要請しましたか?」「要請した結果どうなりましたか?」と追及します。

e)の趣旨は、「十分な資源を持っていること」ではなく、「必要な資源を把握し、確保に向けた経営判断を行っていること」です。資源が不足している場合でも、トップマネジメントが状況を認識し、優先順位をつけて対応計画を立てていれば、e)の要求は満たされます。逆に、トップマネジメントが資源不足の状況を把握していなければ、e)の不適合となります。

f) QMSの重要性の伝達

f)の意味と実務での対応

f)は、有効な品質マネジメント及びQMS要求事項への適合の重要性を伝達することを求めています。トップマネジメントが品質の重要性を認識していても、それが組織全体に伝わっていなければ意味がありません。

朝礼・教育訓練・掲示物—伝達方法の具体例

伝達方法は多様ですが、以下のような手段が一般的です。

日常的な伝達:

朝礼での品質に関するメッセージ発信、品質方針の掲示、品質目標の進捗共有、社内報やイントラネットでの品質情報発信

定期的な伝達

品質月間(11月)の活動、品質教育・研修の実施、マネジメントレビュー結果のフィードバック、品質大会・品質表彰の実施

問題発生時の伝達

顧客クレーム発生時の全社通知、不適合事例の水平展開、是正処置の結果共有

審査では「トップマネジメントがQMSの重要性をどのように伝えていますか?」と質問されます。上記のような具体的な伝達手段とその記録(朝礼記録、教育訓練記録、掲示物の写真等)を示すことで、f)の実証が可能です。

g)意図した結果の達成

g)の意味と実務での対応

g)は、QMSがその意図した結果を達成することを確実にすることを求めています。QMSの「意図した結果」とは、品質目標の達成、顧客満足の向上、法規制要求事項への適合、プロセスパフォーマンスの改善など、QMSを運用することで得られるべき成果です。

トップマネジメントは、QMSが「仕組みとして存在している」だけでなく、「実際に成果を出している」ことを監視し、確認する責任があります。

マネジメントレビューとの連動

g)の実証に最も有効なのがマネジメントレビュー(9.3項)です。マネジメントレビューでは、品質目標の達成状況、顧客満足度の推移、不適合の傾向、内部監査の結果等がインプットとして報告され、トップマネジメントがQMSの有効性を評価します。

マネジメントレビューが形骸化している(議事録はあるが実質的な議論がない、指示事項のフォローアップがない等)場合、g)の要求を満たしていないと判断されます。マネジメントレビューでは、KPI(品質指標)の実績を具体的な数値で確認し、目標未達の場合は原因分析と改善指示を出すことが重要です。

h)人々の積極的参加

h)の意味と実務での対応

h)は、QMSの有効性に寄与するよう人々を積極的に参加させ、指揮し、支援することを求めています。QMSはトップマネジメントや品質管理部門だけのものではなく、組織の全員が品質活動に参加することで初めて有効に機能します。

h)の「積極的に参加させ」は、従業員が単に指示に従って作業するだけでなく、品質改善に主体的に関わる状態を目指しています。「指揮し、支援する」は、参加のための方向性を示し(指揮)、参加を妨げる障害を取り除く(支援)ことを意味します。

QC活動・提案制度との関連

h)の対応として最も効果的なのが、QCサークル活動(小集団改善活動)と改善提案制度です。QCサークル活動は、現場の作業者が自主的にグループを作り、品質問題の解決や業務改善に取り組む活動です。改善提案制度は、従業員一人ひとりが改善案を提出し、採用された場合に表彰する仕組みです。

これらの活動がトップマネジメントの支援のもとで活発に行われていることが、h)の実証となります。提案件数、採用件数、改善効果金額等の実績データがあれば審査での説明に有効です。

i)改善の促進

i)の意味と実務での対応

i)は、改善を促進することを求めています。ISO9001の基本原則の一つが「改善」であり、QMSの持続的な改善は規格全体を貫くテーマです(第10章で詳細規定)。

i)がトップマネジメントに求めているのは、改善活動が組織内で活発に行われる環境を作ることです。具体的には、改善目標の設定、改善活動への資源配分、改善成果の評価と表彰、改善事例の共有と水平展開などが含まれます。

改善は問題が起きてからの是正処置だけではありません。問題が起きる前の予防的な改善(リスクへの取組み)や、現状より良い状態を目指す改善(機会の追求)も含まれます。トップマネジメントがこの「攻めの改善」を推進する姿勢を示すことが、i)の要求です。

j)管理層のリーダーシップ支援

j)の意味と実務での対応

j)は、その他の関連する管理層がその責任の領域においてリーダーシップを実証するよう、管理層の役割を支援することを求めています。

トップマネジメントだけがリーダーシップを発揮しても、組織の末端まで品質文化は浸透しません。各部門の部門長、課長、係長といった中間管理職が、それぞれの責任範囲でリーダーシップを発揮することが、QMSの有効な運用に不可欠です。

j)がトップマネジメントに求めているのは、中間管理職がリーダーシップを発揮できる環境を整えること(権限の委譲、必要な情報の共有、教育訓練の機会提供、評価制度の整備等)です。

中間管理職が果たすべき役割

中間管理職は、トップマネジメントの方針を現場に展開し、現場の状況をトップマネジメントにフィードバックする「橋渡し」の役割を担います。品質方針を部門目標に展開する、部門内の品質問題を把握し対策を指示する、部門メンバーの力量を管理する、といった活動が中間管理職のリーダーシップです。

トップマネジメントは、管理者会議やマネジメントレビューの場で、中間管理職の品質活動に対するフィードバックを行い、必要な支援を提供することで、j)の要求を満たすことができます。

トップマネジメントのリーダーシップ実証チェックリスト

a)〜j)の10項目に対応した自己チェック表

以下は、トップマネジメントが自社の5.1.1対応状況をセルフチェックするための一覧表です。審査前の準備にもご活用ください。

No. 要求事項 チェック項目 実証方法の例
a) 説明責任 QMSの有効性を定期的に評価し報告しているか マネジメントレビュー議事録、品質報告書
b) 品質方針・目標 経営戦略と整合した品質方針・品質目標を策定しているか 品質方針書、品質目標管理表、中期経営計画
c) 事業プロセスへの統合 QMSが日常業務に組み込まれているか(ISO用の別管理になっていないか) プロセスフロー、タートル図、業務手順書
d) プロセスアプローチ・リスク リスクに基づく考え方を組織に促進しているか リスク管理表、FMEA、リスクアセスメント記録
e) 資源の確保 必要な人材・設備・教育訓練予算を配分しているか 予算計画、人員計画、教育訓練計画、設備投資計画
f) 重要性の伝達 QMSの重要性を全社に伝えているか 朝礼記録、品質教育記録、品質方針掲示物、社内報
g) 意図した結果の達成 QMSが目標を達成しているか定期的に監視しているか KPI実績表、MR議事録、品質目標達成状況表
h) 人々の参加 社員を品質改善活動に参加させているか QCサークル活動記録、改善提案件数、品質表彰実績
i) 改善の促進 改善活動を推進する仕組みがあるか 改善提案制度、是正処置台帳、改善活動報告書
j) 管理層の支援 部門長のリーダーシップ発揮を支援しているか 管理者会議議事録、権限規定、管理者教育記録

審査で「リーダーシップが形骸化」と指摘されるパターン

審査で5.1.1に関する指摘を受ける典型的なパターンを紹介します。

パターン1:マネジメントレビューが儀式化

MR議事録は存在するが、トップマネジメントが実質的に参加していない、指示事項のフォローアップがない

パターン2:品質方針が「飾り」になっている

品質方針は掲示されているが、従業員に聞いても内容を説明できない、品質目標との連動が不明確

パターン3:「管理責任者に任せている」

トップマネジメントに質問すると「品質のことは〇〇に聞いてください」と回答する(2015年版では通用しない)

パターン4:資源不足が放置されている

測定機器の老朽化、人員不足、教育訓練の未実施が慢性化しているが、トップマネジメントが状況を把握していない

パターン5:改善活動が停滞

是正処置は行っているが予防的な改善がない、改善提案制度が形骸化している

品質マニュアルへの記載方法

5.1.2(顧客重視)との使い分け

5.1.1が「QMS全般に対するリーダーシップ」を求めるのに対し、5.1.2(顧客重視)は「顧客満足に特化したリーダーシップ」を求めます。品質マニュアルでは、5.1.1にQMS全般のリーダーシップを記載し、5.1.2に顧客満足に関する具体的な取り組みを記載するように使い分けてください。

ISO9001・ISO14001構築でつまずきやすい点

ISO9001やISO14001は、「何を決めるべきか」「どう見える化するか」といった判断事項が多く、構築の初期段階で迷いやすい規格です。要求事項は理解できても、実際の規定や帳票をどう整えるかで手が止まってしまうケースも少なくありません。

そのため、実務で使われている規定や帳票の考え方を参考にしながら、自社のペースで整理していくことが重要になります。

内部監査・審査での確認ポイント

審査員が確認する5つの観点

トップマネジメントのQMSへの関与度

トップマネジメントがQMSの運用に実質的に関与しているかを確認します。マネジメントレビューへの参加状況、品質会議での発言内容、品質問題発生時の対応などが確認されます。

品質方針・品質目標と経営戦略の整合性

品質方針・品質目標が経営計画の一部として位置づけられているかを確認します。品質目標が経営戦略と無関係に設定されている場合は指摘対象です。

資源配分の妥当性QMSの運用に必要な資源

(人材、設備、教育訓練、予算)が確保されているかを確認します。資源不足が慢性化している場合、トップマネジメントの認識と対応計画を確認します。

QMSと事業プロセスの統合状況

QMSが日常業務に統合されているか、「ISO対応のための別業務」になっていないかを現場で確認します。手順書が現場で実際に使われているか、記録が日常業務の中で作成されているかが判断材料です。

改善活動の活性度改善活動が組織内で活発に行われているか

是正処置だけでなく予防的な改善も実施されているかを確認します。

ISO9001 5.1.1に関するFAQ

規格対応でよく聞かれる悩み

ISO9001やIATF16949、VDA6.3に取り組む中で、「審査対策として何を優先すべきか分からない」「要求事項に対する構築の考え方が整理できない」といった声は少なくありません。

また、社内にQMSを体系的に理解している担当者がいない場合や、外部コンサルの費用面で継続的な支援が難しいと感じるケースもあります。こうした悩みは、特定の企業に限らず、多くの現場で共通して見られるものとなっています。

トップマネジメントとは具体的に誰を指しますか?

ISO9001では、トップマネジメントを「最高位で組織を指揮し、管理する個人又はグループ」と定義しています。具体的には、代表取締役社長、CEO、工場長、事業部長などが該当します。中小企業では社長一人がトップマネジメントとなるケースが多く、大企業では経営会議体(取締役会等)がトップマネジメントとなるケースがあります。

リーダーシップを「実証する」とは具体的にどういう意味ですか?

「実証する」とは、リーダーシップを発揮していることを客観的な証拠で示すことです。「口頭で指示した」だけでは不十分で、マネジメントレビュー議事録、品質方針書、品質目標管理表、予算計画書、教育訓練記録、管理者会議議事録などの記録として残すことが重要です。審査員はこれらの記録を通じて、トップマネジメントのリーダーシップを確認します。

品質方針と品質目標の違いは何ですか?

品質方針は組織の品質に関する基本的な考え方・方向性であり、具体的な数値目標は含みません(例:「顧客の期待を超える品質を提供する」)。品質目標は品質方針を具体化した測定可能な目標です(例:「市場クレーム件数を年間10件以下にする」)。品質方針はb)で策定し5.2項で詳細規定、品質目標はb)で策定し6.2項で詳細規定されます。

マネジメントレビューとの関係は?

マネジメントレビュー(9.3項)は、5.1.1のa)(説明責任)とg)(意図した結果の達成)を実証する最も重要な機会です。マネジメントレビューでトップマネジメントがQMSの有効性を評価し、改善指示を出すことで、リーダーシップとコミットメントの実証記録となります。

5.1.1と5.1.2(顧客重視)の違いは?

5.1.1はQMS全般に対するリーダーシップを求めており、a)〜j)の10要求事項でQMS運用全体をカバーしています。5.1.2は顧客満足に特化したリーダーシップを求めており、顧客要求事項の明確化、製品・サービスの適合性、顧客満足の向上に焦点を当てています。両方合わせて第5章のリーダーシップ要求を構成しています。

「事業プロセスへの統合」とは何ですか?

QMSの要求事項が日常の事業活動(営業、設計、製造、検査、出荷、購買等)の中に自然に組み込まれている状態を指します。ISO対応のための追加業務ではなく、日常業務そのものがQMSの一部として運用されている状態がc)の理想形です。「ISO用の手順書」と「現場の手順書」が別々に存在するような状態はc)を満たしていません。

中小企業でもリーダーシップの要求は同じですか?

はい、規格の要求事項自体は企業規模を問わず同じです。ただし、中小企業では社長がトップマネジメントとして直接QMSに関与しやすいため、大企業よりも5.1.1を実証しやすい面があります。社長が品質会議に参加する、社長が品質方針を自ら発信する、社長が品質問題に直接対応する、といった活動は中小企業の強みです。

5.1.1で不適合になりやすいポイントは?

最も多い不適合は「マネジメントレビューの形骸化」と「品質方針・品質目標と経営戦略の乖離」です。マネジメントレビューが儀式的で実質的な議論がない、品質方針が何年も更新されていない、品質目標が経営計画と無関係に設定されている、といった状態は指摘対象です。また、トップマネジメントに質問した際に「品質のことは担当に任せている」と回答するケースも不適合になります。

ISO9001 5.1.1リーダーシップ及びコミットメント:まとめ

ISO9001 5.1.1は、トップマネジメントがQMSに対してa)〜j)の10項目のリーダーシップ及びコミットメントを実証することを求める条項です。2015年版では管理責任者の要求が削除され、トップマネジメント自身の直接的な関与が明確に求められるようになりました。

構築のポイントは、QMSを経営そのものに統合し(c)、品質方針・品質目標を経営戦略と整合させ(b)、マネジメントレビューでQMSの有効性を評価して改善指示を出す(a, g)ことです。形骸化した「証書のためのQMS」ではなく、経営を支えるQMSを実現するためには、トップマネジメントのリーダーシップが全ての出発点となります。

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