【IATF16949攻略】10.2.3:問題解決の要求事項徹底解説!

IATF16949:10.2.3項の問題解決では、不適合が発生した際の対応方法を文書化し、根本原因の特定から再発防止まで確実に実施することが求められています。

「不具合品を選別したから完了」「作業者を再教育したから問題ない」と判断してしまうと、同じ不適合が再発するだけでなく、IATF16949審査で不適合を指摘される可能性もあるので注意が必要です。

本要求事項で重要なのは、発生原因だけではなく、なぜ検出できなかったのかという流出原因や、管理の仕組みに問題がなかったかというシステム原因まで追究すること。そのうえで、是正処置の有効性確認、類似製品への水平展開、FMEA・コントロールプランの見直しまで行わなければなりません。

今回の記事では、IATF16949:10.2.3項の問題解決の要求事項について、8D、根本原因分析、是正処置及び審査で確認されるポイントを含めて、わかりやすく解説します。


この記事の実務解説
QMS認証パートナー
専属コンサルタント

H.Minamino

製造業25年・自動車業界15年以上の実務経験

IATF16949・ISO9001・VDA6.3を、現場で使える形に落とし込む視点で解説しています。

規格要求事項の解釈だけでなく、審査で説明できる規定づくり、現場で使える帳票、内部監査・顧客監査への対応まで、実務で迷いやすいポイントを中心に整理しています。特に多くの企業様が知りたい「審査機関・顧客はどこを見るのか」の勘所も徹底解説していますので、是非ご活用ください。

専門領域
IATF16949・ISO9001・VDA6.3。初期段階の構築から認証後まですべて対応可能。
得意分野
規定・帳票・監査対応の実務化。大企業・中小企業問わず支援実績多数。
支援内容
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第10章:改善の「要求事項リスト」はこちら
ISO・IATF 10章②
※IATF運用には、ISO9001の要求事項の運用が必須です。
条項 題目 ISO9001 IATF
第4章 組織の状況
第5章 リーダーシップ
第6章 計画
第7章 支援
第8章 運用
第9章 パフォーマンス評価
第10章 改善
条項 題目 ISO
9001
重要
帳票
IATF
16949
重要
帳票
10.1 一般(改善)
10.2.1
10.2.2
不適合及び是正処置
10.2.3 問題解決
10.2.4 ポカヨケ
10.2.5 補償管理システム
10.2.6 顧客苦情及び市場不具合の試験・分析
10.3 継続的改善
10.3.1 継続的改善-補足

当サイトの情報提供スタンスについて

当サイトでは、ISO9001およびIATF16949について、規格要求の解説にとどまらず、実務でどのようにルールや記録へ落とし込むかを重視して情報を整理しています

規格の理解とあわせて、「現状とのギャップをどう捉えるか」「どこから手を付けるべきか」といった判断に迷いやすい点を、現場目線で分かりやすく解説することを目的としています。

記事内容を自社へ当てはめる際の考え方や、判断に迷うポイントについては、別ページで整理した情報も用意しています。

IATF16949:10.2.3項の問題解決とは

IATF16949:10.2.3項では、不適合が発生した際に、その問題の種類や影響度に応じた問題解決プロセスを定め、確実に運用することが求められています。

ここでいう問題解決とは、不適合品を選別したり、作業者へ再教育を行ったりするだけではありません。問題の影響範囲を特定し、暫定的な封じ込め処置を行ったうえで、根本原因を分析し、同じ問題が再発しないための是正処置まで実施する必要があります。

また、対策後には有効性を確認し、類似製品や類似工程への水平展開、FMEA・コントロールプランなどの関連文書の見直しまで行うことが重要です。

ISO9001の基本的な是正処置については、以下の記事も参考にしてください。

ISO9001:10.2不適合及び是正処置の要求事項を解説

ISO9001:10.2項の是正処置との違い

ISO9001:10.2項では、不適合に対する修正、原因の特定、是正処置の実施及び有効性確認が求められています。IATF16949:10.2.3項は、この基本要求を自動車産業向けに、より具体的にした要求事項です。

IATF16949では、問題の種類や規模に応じた問題解決方法を定めるだけでなく、封じ込め処置、根本原因分析、類似製品・類似工程への水平展開、FMEAやコントロールプランの見直しまで実施しなくてはなりません。

つまり、ISO9001が是正処置の基本的な枠組みを要求しているのに対し、IATF16949では「どのような手順で問題を解決し、再発防止につなげるのか」という実務面まで深く求められている点が大きな違いです。

問題解決の対象は顧客クレームだけではない

IATF16949:10.2.3項の問題解決は、顧客クレームが発生した場合だけに適用する要求事項ではありません。工程内不良、製品監査や工程監査で発見された不適合、設備トラブル、仕入先不良、市場不具合など、再発防止が必要と判断される問題も対象となります。

特に注意したいのが、社内で発生した不良を「顧客へ流出していないから問題ない」と判断してしまうことです。同じ不具合が繰り返されている場合や、重大な品質リスクにつながる場合は、根本原因を分析し、正式な問題解決プロセスを適用する必要があります。

不適合品を発見した際の識別、隔離、処置については、以下の記事も参考にしてください。

ISO9001:8.7.1不適合なアウトプットの管理を解説

IATF16949:10.2.3項で求められる6つの要求事項

IATF16949:10.2.3項では、問題が発生した際の対応を担当者の経験や判断だけに任せるのではなく、組織として統一した問題解決プロセスを定めることが求められています。

問題解決プロセスには、問題の種類や規模に応じた方法の選定、封じ込め処置、根本原因分析、是正処置の実施、有効性確認及び関連文書の見直しを含めなくてはなりません。

これらの一部が抜けていると、不具合品への処置は完了していても、再発防止としては不十分と判断される可能性があります。ここからは、IATF16949:10.2.3項で求められる内容を6つに分けて、実務上の注意点とあわせて解説します。

問題の種類や規模に応じた問題解決方法を決める

IATF16949:10.2.3項では、発生した問題の種類や規模に応じて、適切な問題解決方法を選定することが求められています。すべての不適合に同じ手法を適用するのではなく、顧客への影響、品質リスク、発生頻度、流出範囲などを考慮して判断しなくてはなりません。

例えば、軽微な工程内不良であれば、なぜなぜ分析などの簡易的な方法で対応できる場合があります。一方で、顧客クレームや市場不具合、重要特性に関する問題については、部門横断チームを編成し、8Dなどの体系的な問題解決手法を適用することが重要です。

また、顧客固有要求事項によって、使用する様式や回答期限が指定されている場合があります。自社の是正処置手順だけで判断せず、顧客要求を事前に確認してください。

IATF16949:4.3.2顧客固有要求事項の要求事項を解説

【超重要:マトリクス表帳票ノウハウ】
CSRs(顧客固有要求事項)は一覧化して規格要求との差分・追加要求を明確にし、社内展開状況を可視化できるかが最大のポイント。要求事項の整理は〔顧客固有要求事項マトリクス表〕で進められます。いかに簡単にできるかがノウハウ!多くの企業様は、複雑な管理手順になってしまっているので要注意!!

封じ込め処置及び暫定処置を実施する

問題が発生した際は、根本原因の分析や恒久対策を検討する前に、不適合品の追加生産や顧客への流出を防ぐための封じ込め処置を実施しなくてはなりません。

封じ込め処置では、対象ロットだけでなく、仕掛品、完成品、倉庫在庫、輸送中の製品及び顧客へ納入済みの製品まで、影響範囲を確認することが重要です。必要に応じて選別、出荷停止、顧客への連絡などを速やかに行います。

また、恒久対策が完了するまでの間は、検査頻度の増加や全数検査などの暫定処置を設定します。ただし、暫定処置はあくまで一時的な対策です。いつまでも継続せず、根本原因を除去する是正処置へ確実につなげてください。

根本原因を分析する

IATF16949:10.2.3項では、問題の再発を防ぐために、根本原因を明確にすることが求められています。

原因分析でよくある間違いが、「作業者の確認不足」「教育不足」「注意が足りなかった」といった人的要因だけで終わらせてしまうことです。これでは、なぜ確認できない仕組みになっていたのかが解決されず、担当者が変われば同じ問題が再発する可能性があります。

根本原因分析では、不良がなぜ発生したのかという「発生原因」、なぜ検査で発見できず流出したのかという「流出原因」、管理方法や仕組みに問題がなかったかという「システム原因」の3つの視点で追究することが重要です。

なぜなぜ分析や特性要因図を活用し、現物・現場・データに基づいて原因を裏付けてください。

故障解析とは?不具合原因の特定と再発防止の基本を解説

類似製品・類似工程への水平展開を行う

根本原因と是正処置が明確になったら、同じ問題がほかの製品や工程でも発生する可能性がないか確認し、必要な対策を水平展開します。

水平展開の対象は、同じ設備や金型を使用している製品だけではありません。同じ材料、部品、作業方法、検査方法、仕入先、設計構造を採用している製品や、別工場の類似工程についても確認が必要です。

また、「水平展開の対象なし」と判断した場合も、検討結果を記録として残してください。確認した証拠がなければ、審査では水平展開を実施していないと判断される可能性があります。

水平展開によって作業方法や管理条件を変更する場合は、変更に伴うリスクを評価し、関連文書へ確実に反映することが重要です。

IATF16949:8.5.6.1変更の管理-補足の要求事項を解説

【超重要:変更管理】
設計・製造の変更は品質・工程安定性に影響しやすく、どこまでを「変更」として管理するかが要点。妥当性評価・影響範囲・承認の流れは〔設計製造関連変更申請・管理表帳票〕で整理し、そのルールは〔変更管理規定〕に落とし込みましょう。品質マネジメントシステム運用の中でも超重要ルールの一つです。

是正処置の有効性を確認する

是正処置は、対策を実施した時点で完了ではありません。実施した対策によって根本原因が除去され、同じ問題が再発していないことを確認する必要があります。

有効性確認では、不良率の推移、一定期間または一定ロットの生産実績、工程能力、管理図、監査結果など、客観的なデータを用いて評価することが重要です。「対策後に不良が出ていない」という理由だけで、実施直後に有効と判定するのは避けてください。

是正処置を計画する段階で、確認方法、判定基準、確認時期及び責任者を明確にしておくと、形式的な評価を防ぐことができます。有効性が確認できなかった場合は、原因分析や対策内容を見直し、再度問題解決を行いましょう。

ISO9001:9.1.1監視・測定・分析及び評価の要求事項を解説

FMEA・コントロールプランなどの関連文書を見直す

問題解決によって新たな故障モードや管理上の弱点が明らかになった場合は、FMEA、コントロールプラン、作業標準書、検査基準書などの関連文書を見直さなくてはなりません。

例えば、検査方法を追加したにもかかわらず、コントロールプランや作業標準書が改訂されていないと、是正処置が現場へ正しく反映されず、時間の経過とともに元の運用へ戻る可能性があります。また、FMEAの発生度・検出度・予防管理なども、実際の不具合内容に基づいて再評価することが重要です。

見直しの結果、改訂不要と判断した場合も、確認した事実と判断理由を記録として残してください

IATF16949:8.5.1.1コントロールプランの要求事項を解説

IATF16949:10.2.3項と8Dの関係

IATF16949:10.2.3項では、すべての問題に対して8Dを使用することまでは要求していません。問題の種類や規模に応じて、組織が適切な問題解決方法を選定することが基本です。

ただし、顧客クレームや市場不具合などの重大な問題では、8Dレポートによる回答を顧客から求められるケースが多くあります。顧客指定の様式、問題解決ツール、回答期限などが定められている場合は、自社の是正処置様式ではなく、顧客が指定した方法に従わなくてはなりません。

そのため、是正処置規定には8Dを適用する条件を明記し、顧客固有要求事項とあわせて管理することが重要です。

8Dの各ステップと10.2.3項の対応関係

8Dは、問題発生から再発防止までを8つのステップで進める代表的な問題解決手法です。IATF16949:10.2.3項で求められる封じ込め処置、根本原因分析、是正処置、有効性確認及び水平展開を、体系的に管理しやすい点が大きな特徴です。

8Dのステップ 主な実施内容 10.2.3項との関係
D1 問題解決チームの編成 関係部門による問題解決体制の構築
D2 問題の明確化 問題の種類・規模・影響範囲の把握
D3 暫定封じ込め処置 不適合品の流出防止と影響拡大の防止
D4 根本原因の特定 発生原因・流出原因・システム原因の分析
D5 恒久対策の選定 根本原因を除去する是正処置の決定
D6 恒久対策の実施 対策の実施及び有効性確認
D7 再発防止 水平展開とFMEA・コントロールプランの見直し
D8 チームの評価 問題解決結果の共有と知識の蓄積

ただし、8Dの様式を埋めること自体が目的ではありません。根本原因の裏付けが弱い、暫定処置が長期間継続している、有効性確認の基準がないといった状態では、8Dレポートが完成していても問題解決は不十分です。

各ステップのつながりを意識し、事実とデータに基づいて進めることが重要です。

8Dレポートは「自動車産業」で超重要:書き方のコツ紹介!

根本原因分析を失敗させないポイント

根本原因分析では、なぜなぜ分析や特性要因図を使用しただけで満足してはいけません。重要なのは、分析結果が現場の事実やデータと一致しているかを確認し、本当にその原因を除去すれば再発を防止できるのかを検証することです。

特に注意したいのが、原因を一つに決めつけてしまうこと。製造条件、設備、材料、作業方法、検査方法、教育、管理の仕組みなど、複数の要因が重なって問題が発生しているケースも少なくありません。

また、発生原因だけを分析し、なぜ検査で見逃したのかという流出原因を確認していないと、別の原因で同様の不適合が発生した際に、再び顧客へ流出する可能性があります。原因分析では、現物・現場・現実を確認し、客観的な証拠に基づいて判断してください。

IATF16949 10.2.3に関するFAQ

【注目】お知らせ
規格対応で迷ったら、メールで確認できますFAQで一般的な考え方を確認できますが、自社の規定・帳票・審査対応へどう反映するかは、会社ごとに判断が変わる場合があります。
解釈
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反映
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すべての不適合で8Dを作成する必要がありますか?

すべての不適合で8Dを作成する必要はありません。問題の重大度や顧客への影響に応じて適用します。ただし、顧客から8Dを指定されている場合は、その要求に従ってください。

軽微な工程内不良にも根本原因分析は必要ですか?

すべての軽微な不良に詳細な分析が必要とは限りません。ただし、繰り返し発生している不良や、重大な問題につながる可能性がある場合は、根本原因まで分析する必要があります。

PFMEAを変更しない場合も記録が必要ですか?

PFMEAを確認した結果、変更不要と判断した場合も、その検討結果を記録しておくことが重要です。確認記録がなければ、審査で見直しを行っていないと判断される可能性があります。

是正処置の有効性はいつ確認すればよいですか?

対策直後ではなく、一定期間または一定数量の実績を確認してから判定します。確認時期、判定基準、責任者を是正処置の計画段階で決めておきましょう。

なぜなぜ分析は何回「なぜ」を繰り返せばよいですか?

必ず5回繰り返すという決まりはありません。対策可能な根本原因に到達し、現場の事実やデータによって裏付けられるまで分析することが重要です。

IATF16949 10.2.3「問題解決」のまとめ

IATF16949:10.2.3項では、問題の種類や影響度に応じた問題解決方法を定め、封じ込め処置、根本原因分析、是正処置、有効性確認まで確実に実施することが求められています。

特に重要なのは、不良の発生原因だけでなく、なぜ検査で発見できなかったのかという流出原因や、管理の仕組みに問題がなかったかというシステム原因まで追究することです。

さらに、類似製品や類似工程への水平展開、PFMEA・コントロールプランなどの関連文書の見直しまで行って、初めて再発防止につながります。8Dや是正処置報告書を作成することを目的とせず、実際に同じ問題を繰り返さない仕組みを構築してください。

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