【ISO9001攻略】5.2.2:品質方針の伝達の要求事項徹底解説!

ISO9001:5.2.2「品質方針の伝達」は、トップマネジメントが確立した品質方針を文書化し、組織内に伝達・理解・適用させ、利害関係者にも入手可能にすることを求める条項です。

a)文書化した情報としての維持、b)組織内への伝達・理解・適用、c)利害関係者への入手可能性の3つの要求事項で構成されています。

本記事では、a)〜c)全3要求事項の個別解説に加えて、規模別の伝達手段完全ガイド、審査での「突然質問」対策、理解度の確認方法と7.3項(認識)との連動、品質マニュアルへの記載例、審査・内部監査での確認ポイントまで実務目線で徹底解説します。


この記事の実務解説
QMS認証パートナー
専属コンサルタント

南野 弘明

製造業25年・自動車業界15年以上の実務経験

IATF16949・ISO9001・VDA6.3を、現場で使える形に落とし込む視点で解説しています。

規格要求事項の解釈だけでなく、審査で説明できる規定づくり、現場で使える帳票、内部監査・顧客監査への対応まで、実務で迷いやすいポイントを中心に整理しています。特に多くの企業様が知りたい「審査機関・顧客はどこを見るのか」の勘所も徹底解説していますので、是非ご活用ください。

専門領域
IATF16949・ISO9001・VDA6.3。初期段階の構築から認証後まですべて対応可能。
得意分野
規定・帳票・監査対応の実務化。大企業・中小企業問わず支援実績多数。
支援内容
教材提供・メール相談・個別コンサル。特に24時間対応可能なメール相談がおすすめ。

「この解釈でよいのか」「自社の規定や帳票にどう反映すればよいのか」と迷った場合は、QMS認証パートナーの教材・相談メニューもご活用ください。ご用途に合わせて提案させていただきます。


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第5章:リーダーシップ及びコミットメント「要求事項リスト」
ISO・IATF 5章
※IATF運用には、ISO9001の要求事項の運用が必須です。
条項 題目 ISO9001 IATF
第4章 組織の状況 〇 〇
第5章 リーダーシップ 〇 〇
第6章 計画 〇 〇
第7章 支援 〇 〇
第8章 運用 〇 〇
第9章 パフォーマンス評価 〇 〇
第10章 改善 〇 〇
条項 題目 ISO
9001
重要
帳票
IATF
16949
重要
帳票
5.1.1 一般(リーダーシップ) ○   ○
5.1.1.1 企業責任 ○  
5.1.1.2 プロセスの有効性及び効率 ○  
5.1.1.3 プロセスオーナー ○ ●
5.1.2 顧客重視 ○   ○
5.2.1 品質方針の確立 ○ ● ○
5.2.2 品質方針の伝達 ○ ● ○
5.3 組織の役割・責任及び権限 ○ ● ○
5.3.1 組織の役割・責任及び権限ー補足 ○ ●
5.3.2 製品要求事項及び是正処置に対する責任及び権限 ○ ●
A: 当サイトの情報提供スタンスについて

当サイトでは、ISO9001およびIATF16949について、規格要求の解説にとどまらず、実務でどのようにルールや記録へ落とし込むかを重視して情報を整理しています。

規格の理解とあわせて、「現状とのギャップをどう捉えるか」「どこから手を付けるべきか」といった判断に迷いやすい点を、現場目線で分かりやすく解説することを目的としています。

記事内容を自社へ当てはめる際の考え方や、判断に迷うポイントについては、別ページで整理した情報も用意しています。

B: IATF16949で必要な規定25本・帳票82様式の一覧

「自社に足りない文書は、どれか」——その答えを出すための一覧です。章別に規定と帳票をすべて並べ、審査で指摘されやすい5領域と、手戻りの少ない作成順序まで解説しています。

⇒ 有料級:詳細記事はこちら

C: 有料記事42本を読み放題|審査での答え方を公開

審査で差がつくのは、規格の知識量ではなく、自社の運用を説明できるかどうかです。部門別の想定問答30選、コアツールの実務、負荷軽減の具体策——42本すべてが、パスワード1つで読み放題。記事は随時追加され、追加分も追加料金はかかりません。

⇒ 有料記事一覧はこちら

D: 現地・オンライン・メールコンサルの違いと選び方

「この解釈で合っているか」を確認したいのか、「何から手をつけるか」を決めたいのか。課題の性質によって、選ぶべきコンサルの形態は変わります。3形態の費用と特性を比較し、自社に合う選び方を整理しました。

⇒ 記事の詳細はこちら

ISO9001 5.2.2の規格要求の全体像

5.2.2が求めている3つのポイント

5.2.2は、5.2.1で確立した品質方針を「伝える」「理解させる」「使えるようにする」ための条項です。品質方針がどれだけ優れた内容であっても、伝達されなければ意味がありません。

項番 要求事項 一言でいうと
a) 文書化した情報として利用可能な状態にされ、維持される 品質方針を文書化し、最新版を管理する
b) 組織内に伝達され、理解され、適用される 全従業員に伝え、理解させ、業務に活かす
c) 必要に応じて、密接に関連する利害関係者が入手可能である 顧客やサプライヤー等の外部関係者が見られるようにする

5.2.1(確立)と5.2.2(伝達)の違い

5.2.1は品質方針の「中身を作る」条項、5.2.2は「中身を届ける」条項です。

5.2.1は品質方針がa)〜d)の4つの条件(組織の状況への適切性、品質目標の枠組み、要求事項充足のコミットメント、継続的改善のコミットメント)を満たす内容であることを求めています。

5.2.2は、5.2.1で確立した品質方針を文書化し、組織内外に届け、理解・適用させるためのプロセスに関する要求です。

品質マニュアルでは、5.2.1に方針の策定・内容・見直しを記載し、5.2.2に方針の文書化・伝達手段・理解度確認・外部公開の方法を記載する形で使い分けてください。

「伝達→理解→適用」の3段階構造

b)の要求事項には「伝達され」「理解され」「適用される」という3つの段階が含まれています。これは単に「知らせる」だけでは不十分であることを意味しています。

第1段階:伝達
品質方針の内容が全従業員に「届いている」状態。掲示、教育、朝礼などの手段で情報が行き渡ること。

第2段階:理解
従業員が品質方針の内容を「わかっている」状態。品質方針の文言を知っているだけでなく、その意味や自分の業務との関連を理解していること。

第3段階:適用
従業員が品質方針を日常業務に「活かしている」状態。品質方針の方向性に沿った判断や行動ができていること。

審査では、第1段階(掲示しているか)だけでなく、第2段階(理解しているか)、第3段階(適用しているか)まで確認されます。「伝達=掲示するだけ」と捉えると指摘を受ける可能性があるため、3段階すべてへの対応が必要です。

a)文書化した情報として利用可能な状態にし、維持する

a)の意味と実務での対応

a)は、品質方針を「文書化した情報」として管理し、必要な人がいつでも参照できる状態にすることを求めています。

「文書化した情報として利用可能」とは、品質方針が紙またはデジタルの文書として存在し、組織内の関係者がアクセスできることを意味します。口頭伝達だけでは不十分です。

「維持される」とは、品質方針が文書管理の対象として管理され、変更があった場合に最新版に更新されることを意味します。

文書化の形式に規格上の制限はありません。品質マニュアルの中に記載する、品質方針書として単独文書にする、社内掲示用のポスターにする、イントラネットに掲載するなど、組織の実情に合った方法を選んでください。

品質方針の文書管理方法

品質方針を「維持する」ためには、7.5項(文書化した情報)と同様の文書管理が必要です。

最低限必要な管理項目:

管理項目 内容 対応例
版数管理 現在の品質方針が何版目かを管理 「品質方針第3版」等
承認 トップマネジメントの承認を得る 社長承認印、電子承認
制定日/改訂日 いつ制定・改訂されたかを記録 「制定:2020年4月1日改訂:2025年4月1日」
配布管理 最新版がどこに配布されているかを管理 配布先一覧
旧版管理 改訂時に旧版が使用されない措置 旧版の回収または「旧版」印の押印

品質方針の文書管理は、他の文書化した情報と同じ仕組みで運用すれば問題ありません。特別な管理体制は不要です。

MR時の品質方針変更確認の仕組み

品質方針を「維持する」ためには、定期的に方針の適切性を確認し、必要に応じて更新する仕組みが必要です。

最も効率的な方法は、マネジメントレビュー(MR)の議題に品質方針の見直しを組み込むことです。MRの議事録テンプレートに「品質方針の継続有無」という確認欄を設けておくと、検討忘れを確実に防止できます。

MR議事録への記載例:

確認事項 判断 トップコメント
品質方針の継続有無 □継続
□変更
「経営環境に大きな変化はないため、現行の品質方針を継続する。」

変更が必要と判断された場合は、5.2.1の手順で改訂し、改訂版を5.2.2の手順で再伝達します。

b)組織内に伝達され、理解され、適用される

b)の意味と実務での対応

b)は、品質方針が組織内の全従業員に「伝達」され、「理解」され、「適用」されることを求めています。

ここでいう「組織内」には、正社員だけでなく、パート・アルバイト、派遣社員、契約社員など、組織の品質マネジメントシステムの適用範囲内で業務に従事するすべての人が含まれます。

b)の対応のポイントは3段階(伝達→理解→適用)それぞれに適切な手段を用意することです。「掲示しているから伝達した」だけでは、第2段階の「理解」と第3段階の「適用」を満たしていないと判断される可能性があります。

伝達手段の一覧と選び方

品質方針の伝達手段は複数あり、組織の規模や環境に応じて適切な手段を組み合わせて使用します。以下は主な伝達手段の一覧です。

伝達手段 概要 対象 証拠の残し方 中小企業 大企業
社内掲示 品質方針をポスター・額装して掲示 全従業員 掲示物の写真 ◎ ○
朝礼での唱和 朝礼時に品質方針を読み上げる 全従業員 朝礼記録 ◎ △
新入社員教育 入社時教育で品質方針を説明 新規入社者 教育訓練記録 ◎ ◎
定期品質教育 年1回以上の品質教育で再確認 全従業員 教育訓練記録 ◎ ◎
品質マニュアル配布 品質マニュアル内に品質方針を記載し配布 管理者層 配布記録 ◎ ◎
イントラネット掲載 社内ポータルサイトに品質方針を掲載 全従業員 アクセスログ △ ◎
eラーニング オンライン教育で品質方針を学習 全従業員 受講記録・テスト結果 △ ◎
品質月間活動 品質月間(11月)の活動で再周知 全従業員 活動記録・報告書 ◎ ◎
携帯カード 名刺サイズのカードに品質方針を印刷し配布 全従業員 配布記録 ◎ ○
社内SNS・チャット 社内コミュニケーションツールで共有 全従業員 投稿履歴 ○ ◎
おすすめ

中小企業(従業員100名以下程度)の推奨組み合わせ
→社内掲示+新入社員教育+定期品質教育+品質マニュアル配布

大企業(従業員数百名以上)の推奨組み合わせ
→社内掲示+新入社員教育+定期品質教育+イントラネット+eラーニング

いずれの場合も、単一の手段だけでなく複数の手段を組み合わせることで、伝達の確実性を高めてください。

「理解」の確認方法—審査での突然質問に備える

b)で最も審査で問われるのが「理解され」の部分です。審査員が現場で従業員に直接質問する形で確認するケースが多く、特に注意が必要です。

審査でよくある場面
審査員が製造現場を巡回中にパート・アルバイトの方に「品質方針について教えてください」と突然質問することがあります。この質問に対して全く答えられない場合、「品質方針が理解されていない」と指摘される可能性があります。

対策①:社内掲示で「見ればわかる」状態を作る

品質方針を製造現場の目立つ場所に掲示しておけば、突然質問されても掲示物を指して「あそこに掲示してあるものが品質方針です」と答えることができます。完璧な暗唱は不要ですが、品質方針の存在と場所を知っていることが最低限です。

対策②:定期教育で「自分の言葉で説明できる」レベルを目指す

年1回以上の品質教育で品質方針を取り上げ、「品質方針の意味」と「自分の業務との関連」を説明する時間を設けてください。審査では「品質方針を暗唱してください」ではなく「品質方針の内容を自分の言葉で説明してください」と質問されます。

対策③:審査前の事前確認

審査の1〜2週間前に各部門で品質方針の内容を再確認する場を設けます。朝礼で品質方針を読み上げる、品質方針の掲示物を指差し確認するなど、簡単な方法で構いません。

理解度の確認手法:

確認手法 方法 証拠 推奨頻度
教育後テスト 品質教育後に品質方針に関する簡易テスト テスト用紙・結果一覧 年1回
教育後アンケート 「品質方針と自分の業務の関連」を記述させる アンケート用紙 年1回
部門内ミーティング 各部門で品質方針の意味を話し合う 議事録 半期1回
審査前確認 朝礼等で品質方針を再確認 朝礼記録 審査前
内部監査での質問 内部監査時に従業員の理解度を確認 内部監査記録 年1回

「適用」の実証方法—品質方針と日常業務の接続

b)の第3段階「適用される」は、従業員が品質方針の方向性に沿って業務を行っていることを意味します。

「適用」の実証方法として最も効果的なのは、品質方針→品質目標→部門目標→個人の業務の階層構造を明確にすることです。従業員が「自分の日常業務は品質方針のどのフレーズに貢献しているか」を説明できれば、「適用されている」と判断されます。

例えば、品質方針に「顧客満足度の向上を追求する」とあり、品質目標に「クレーム件数前年比30%削減」が設定され、各部門の活動計画にクレーム削減の具体策が含まれていれば、品質方針が日常業務に「適用されている」ことになります。

7.3項(認識)との連動

5.2.2のb)は、7.3項(認識)と密接に連動しています。7.3項では、組織の管理下で働く人々が「品質方針」を認識していることを要求しています。

5.2.2のb)が「伝達→理解→適用」のプロセスを求めているのに対し、7.3項は「結果としての認識状態」を求めています。つまり、5.2.2のb)は「手段」、7.3項は「結果」の関係です。

審査では、5.2.2と7.3は一体的に確認されることが多いです。現場で従業員に品質方針の内容を質問する行為は、5.2.2のb)(伝達・理解されているか)と7.3(認識しているか)を同時に確認しています。

c)利害関係者への入手可能性

c)の意味と実務での対応

c)は、「必要に応じて、密接に関連する利害関係者が入手可能である」ことを求めています。

「必要に応じて」という表現に注目してください。すべての利害関係者に積極的に配布する義務はありません。求められた場合に提供できる状態にしておけば十分です。ただし、品質方針を外部に公開することは信頼構築に有効なため、積極的な公開を推奨します。

自社HPへの品質方針掲載

c)を最も効率的に満たす方法は、自社Webサイト(ホームページ)に品質方針を掲載することです。

審査機関や顧客は、監査・審査の前に十中八九、対象企業のホームページを確認します。ホームページに品質方針が掲載されていれば、外部の利害関係者がいつでも入手可能な状態であることが証明されます。

HP掲載のポイント

①企業概要や品質への取り組みページに品質方針を全文掲載する
②ISO認証マーク(登録証番号・認証範囲)と一緒に掲載すると効果的
③品質方針の制定日または最終改訂日を併記する
④日本語のみでなく、海外顧客がいる場合は英語版も併記する

ホームページに品質方針を掲載するだけでc)の要求は担保可能です。

「密接に関連する利害関係者」とは誰か

c)の「密接に関連する利害関係者」とは、4.2項で特定した利害関係者のうち、品質方針の内容に関心を持つ可能性がある者です。

利害関係者 品質方針との関連 提供方法の例
顧客(OEM・Tier1等) 品質に対する取り組み姿勢の確認 HP掲載、監査時の提示
サプライヤー 品質方針に基づく品質要求の背景理解 HP掲載、サプライヤー会議で説明
認証機関・審査機関 審査での確認対象 品質マニュアル提出、HP掲載
規制当局 法令遵守のコミットメント確認 HP掲載、要求時に提出
従業員の家族・地域社会 企業の品質に対する姿勢の理解 HP掲載

外部伝達の記録・エビデンスの残し方

c)は「入手可能である」ことが要求であり、「伝達した記録を残す」ことは明示的には要求されていません。しかし、以下のエビデンスがあれば審査で確実に対応できます。

  • HP掲載:品質方針が掲載されたページのURL(スクリーンショットも有効)
  • サプライヤー会議:品質方針をサプライヤーに説明した会議の議事録
  • 監査時の提示:顧客監査や第三者審査で品質方針を提示した記録
  • 名刺・会社案内:品質方針が記載された名刺や会社案内パンフレット

内部・外部の課題=リスクと捉える

販売中:教材・サンプル 区分 ISO9001 IATF16949
リスク及び機会検討表(計画込み) 帳票 〇 〇
緊急事態対応計画表(BCP表) 帳票 × 〇
リスク分析管理規定 規定 △ 〇

品質方針の伝達方法完全ガイド

規模別の伝達計画モデル

組織の規模に応じた伝達計画の推奨モデルを紹介します。

【モデル1:中小企業(従業員50名以下)】

手段 頻度 担当 証拠
社内掲示(事務所・現場) 常時 品質管理責任者 掲示物写真
朝礼での唱和 毎週月曜 各部門長 朝礼記録
新入社員教育 入社時 品質管理責任者 教育訓練記録
年次品質教育 年1回 品質管理責任者 教育訓練記録・理解度確認
携帯カード配布 入社時 総務 配布記録
自社HP掲載 常時 管理部門 URL

【モデル2:中堅企業(従業員50〜300名)】

手段 頻度 担当 証拠
社内掲示(全拠点) 常時 品質保証部 掲示物写真
新入社員教育 入社時 人事部+品質保証部 教育訓練記録
年次品質教育 年1回 品質保証部 教育訓練記録・テスト結果
品質月間活動 11月 品質保証部 活動記録
イントラネット掲載 常時 IT部門 アクセスログ
品質マニュアル配布 改訂時 品質保証部 配布記録
自社HP掲載 常時 広報・管理部門 URL

【モデル3:大企業(従業員300名以上・複数拠点)】

手段 頻度 担当 証拠
社内掲示(全拠点) 常時 各拠点品質管理者 掲示物写真
新入社員教育 入社時 人事部+品質保証部 教育訓練記録
年次品質教育 年1回 品質保証部 教育訓練記録
eラーニング 年1回 品質保証部+IT 受講記録・テスト結果
品質月間活動 11月 品質保証部 活動記録
イントラネット掲載 常時 IT部門 アクセスログ
社内SNS・チャット 改訂時 品質保証部 投稿履歴
品質マニュアル配布 改訂時 品質保証部 配布記録
自社HP掲載(多言語) 常時 広報 URL

伝達の「証拠」として残すべき記録一覧

審査では「品質方針をどのように伝達していますか?」と質問された際に、具体的な証拠を提示できることが重要です。

証拠の種類 何を証明するか 保管場所の例
社内掲示物の写真 品質方針が常時掲示されていること 品質記録
教育訓練記録 品質方針について教育を実施したこと 人事・品質記録
理解度テスト結果 従業員が品質方針を理解していること 品質記録
朝礼記録 品質方針の定期的な周知を実施していること 各部門記録
配布記録 品質マニュアル・携帯カード等を配布したこと 品質記録
HP掲載のURL 外部利害関係者が入手可能であること 品質記録
MR議事録 品質方針の見直しを実施したこと 品質記録

デジタル時代の伝達手段

近年はデジタルツールの活用による伝達方法が増えています。特に複数拠点を持つ企業や、テレワークを導入している企業では、デジタル伝達手段の活用が効果的です。

イントラネット(社内ポータル):トップページに品質方針を掲載し、全従業員がログイン時に目にする状態を作ります。アクセスログを伝達の証拠として利用可能です。

eラーニング:品質方針の内容とその意味を学ぶコンテンツを作成し、年1回の受講を義務づけます。受講完了後に理解度確認テストを組み込めば、伝達と理解の確認を同時に行えます。

社内SNS・チャットツール: SlackやTeams等のチャットツールで品質方針の改訂情報を全社チャネルに投稿します。投稿履歴が伝達の証拠になります。

電子掲示板・デジタルサイネージ:工場の食堂やエントランスにデジタルサイネージを設置し、品質方針を常時表示する方法もあります。

デジタル伝達手段を活用する場合も、アナログの社内掲示と併用することを推奨します。製造現場ではPC画面を見る機会が少ない場合があり、紙の掲示が依然として有効です。

内部監査・審査での確認ポイント

審査員が確認する5つの観点

品質方針の文書化と版管理

品質方針が文書化され、最新版が管理されているかを確認します。制定日・改訂日・版数・承認者が明確であることが確認ポイントです。

伝達手段の実施状況

品質方針をどのような手段で伝達しているかを確認します。教育訓練記録、掲示物、イントラネット等の実物を確認されます。

従業員の理解度

現場で従業員に直接質問する形で確認します。「品質方針について教えてください」「品質方針は自分の業務とどう関係していますか?」といった質問が一般的です。

パート・派遣を含む全員への伝達

正社員以外の従業員にも伝達されているかを確認します。パート・アルバイトの入社時教育記録が確認対象になります。

外部への入手可能性

品質方針が外部の利害関係者に入手可能であるかを確認します。ホームページへの掲載、顧客監査時の提示方法等を質問されます。

ISO9001 5.2.2に関するFAQ

【注目】お知らせ
規格対応で迷ったら、メールで確認できますFAQで一般的な考え方を確認できますが、自社の規定・帳票・審査対応へどう反映するかは、会社ごとに判断が変わる場合があります。
解釈
この要求事項の考え方でよいか確認したい
反映
規定・帳票にどう落とし込むか相談したい
審査
審査指摘や回答方針に不安がある

個別事情がある場合は、メールコンサルで実務目線の確認ができます。

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5.2.2と5.2.1の違いは何ですか?

5.2.1は品質方針の「確立」(中身を作ること)、5.2.2は品質方針の「伝達」(中身を届けること)に関する要求です。5.2.1がa)〜d)の4要件を満たす方針を策定・維持することを求め、5.2.2がその方針を文書化し、組織内外に届けて理解させることを求めています。

品質方針は暗記させる必要がありますか?

暗記させる必要はありません。ISO9001は品質方針を「暗記している」ことではなく「理解している」ことを求めています。品質方針の存在を知り、その主旨を自分の言葉で説明でき、自分の業務との関連を認識していれば十分です。審査でも暗唱テストではなく、内容の理解度が確認されます。

品質方針の伝達にはどのような記録が必要ですか?

必須の記録は規格上指定されていませんが、教育訓練記録(新入社員教育・定期品質教育で品質方針を説明した記録)、社内掲示物の写真、品質マニュアルの配布記録、HP掲載のURLがあれば審査で十分に対応できます。理解度確認のためのテスト結果やアンケートがあればさらに強固です。

派遣社員やアルバイトにも品質方針を伝達する必要がありますか?

はい。QMSの適用範囲内で業務に従事するすべての人(正社員、パート、アルバイト、派遣社員、契約社員)が伝達の対象です。入社時教育の中で品質方針の内容を説明し、教育訓練記録を残してください。審査では、パート・アルバイトに直接質問されることがあります。

品質方針をどのように外部に公開すればよいですか?

最も効率的な方法は自社ホームページへの掲載です。企業概要や品質への取り組みのページに品質方針の全文を掲載してください。ISO認証マークや登録証番号と一緒に掲載するとより効果的です。ホームページを持たない企業は、会社案内パンフレットに品質方針を記載する方法も有効です。

品質方針の伝達方法を変更する場合の注意点は?

伝達方法を変更する場合(例:紙の掲示からイントラネットに移行する場合)、移行期間中に旧手段と新手段を併用することを推奨します。また、品質マニュアルの5.2.2の記載内容も合わせて更新してください。伝達方法の変更自体は文書管理(7.5項)の観点から適切に管理すれば問題ありません。

5.2.2で不適合になりやすいポイントは?

最も多いのは「掲示はしているが従業員が理解していない」ケースです。次に多いのは「正社員には伝達しているがパート・派遣には伝達していない」ケース。品質方針の文書管理が不十分(旧版の掲示物が残っている等)も指摘されやすいポイントです。外部への入手可能性(ホームページ掲載等)の欠如も観察事項として挙げられることがあります。

海外拠点や外国人従業員がいる場合、多言語対応は必要ですか?

ISO9001は多言語対応を明示的には要求していませんが、b)の「理解され」の観点から、従業員の母語や理解できる言語で品質方針が提供されていることが望ましいです。海外拠点がある場合は現地語への翻訳、外国人従業員がいる場合は英語や該当言語への翻訳を検討してください。最低限、品質方針の要点を簡易な言葉で説明する教育資料があれば対応可能です。

品質マネジメントシステム:おすすめ教材

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ISO9001 5.2.2品質方針の伝達:まとめ

ISO9001 5.2.2は、5.2.1で確立した品質方針を文書化し、組織内外に届けて理解・適用させるための条項です。a)文書化と維持、b)組織内への伝達・理解・適用、c)利害関係者への入手可能性の3つが求められます。

b)の「伝達→理解→適用」の3段階構造を意識し、単に掲示するだけでなく、教育と理解度確認の仕組みを整備することが重要です。特にパート・アルバイト・派遣社員を含む全従業員への伝達と、審査での突然質問に備えた理解度の確保がポイントです。c)は自社ホームページへの品質方針掲載で効率的に対応できます。

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