
ISO9001:5.3項の組織の役割・責任及び権限の要求事項は、経営者によって与えられた組織の役割に対して責任及び権限が、会社組織の中できちんと伝達され、実施されることを意味しています。
今回の記事は、ISO9001:5.3項の組織の役割・責任及び権限について解説いたします。

条項 | 題目 | ISO9001 | IATF16949 |
5.1.1 | 一般(リーダーシップ) | ○ | ○ |
5.1.1.1 | 企業責任 | ○ | |
5.1.1.2 | プロセスの有効性及び効率 | ○ | |
5.1.1.3 | プロセスオーナー | ○ | |
5.1.2 | 顧客重視 | ○ | ○ |
5.2.1 | 品質方針の確立 | ○ | ○ |
5.2.2 | 品質方針の伝達 | ○ | ○ |
5.3 | 組織の役割・責任及び権限 | ○ | ○ |
5.3.1 | 組織の役割・責任及び権限ー補足 | ○ | |
5.3.2 | 製品要求事項及び是正処置に対する責任及び権限 | ○ |
目次
ISO9001:5.3項の組織の役割・責任及び権限の意図
ISO9001:5.3項の組織の役割・責任及び権限の要求事項は、トップマネジメントが定めた組織の役割つまり各プロセス及び部門に対して、業務を遂行するための責任と権限を割り当てることを意味しています。
会社組織には様々な部門やプロセスが存在し、その中でも様々な職位・役職の方が在籍されています。
その役職者の方々は、必ずしもトップマネジメントから指示を受けて仕事を遂行することだけが求められるわけではなく、様々な「責任」と「権限」が与えられているはずです。
もちろんISO9001を取得していない企業でも、それらがきちんとルールブックとして定められている企業は多いのではないでしょうか。
ISO9001:5.3項の組織の役割・責任及び権限では、各プロセス・部門に対して組織の役割とその部門の責任と権限、そして役職者をはじめとする業務を遂行する者に責任と権限を付与することを意味しています。
では次に、ISO9001:5.3項の組織の役割・責任及び権限についての具体的な構築方法について見ていきましょう。
プロセス連関図が重要!
ISO9001:5.3項の組織の役割・責任及び権限の要求事項には、以下のように記述されています。
a)品質マネジメントシステムが,この規格の要求事項に適合することを確実にする。
b) プロセスが,意図したアウトプットを生み出すことを確実にする。
a)の意図は、ISO9001の要求事項と自社のプロセス・部門の役割・対応部門がきちんと網羅されていることを証明することを求めています。
すなわち!プロセス連関図(プロセスマトリクス)を使用することで説明することができます。
プロセス連関図を使用することで、全ての要求事項がどの部門・プロセスで対応されるのかが割り当てられることで証明することが可能になります。
b)の「意図したアウトプット」は、インプットを基に各プロセス・部門で仕事を遂行し、その意図したアウトプットを生み出すことで、各プロセスに引き渡すことを意味しています。
つまり!タートル図(タートルチャート)で説明することが可能です。
タートル図のアウトプット部分が「意図したアウトプット」になるので、その成果物を確実に生み出すための各プロセスの役割や仕事内容(上図:①の部分)を確実に実施する仕組みが大事です。
その仕組みがプロセス連関図とリンクしていることがISO9001の構築にめちゃくちゃ重要なポイントなので、相互リンクしているかしっかり確認しましょう。
顧客重視を促進する組織を作る
ISO9001:5.3項の組織の役割・責任及び権限の要求事項には、以下のように記述されています。
c) 品質マネジメントシステムのパフォーマンス及び改善(10.1項参照)の機会を特にトップマネジメントに報告する。
d) 組織全体にわたって,顧客重視を促進することを確実にする。
c)の意味は、前述のb)の「意図したアウトプット」が確実に実施されていることを監視するKPI指標(タートル図右下)を含めて、トップマネジメント(経営層)に報告することです。
つまり!ISO9001:9.3.2項のマネジメントレビューのインプットにすること及び、必要に応じた会議内で報告することが求められます。
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d)の内容は、顧客重視を促進する組織体制を作ることを意図しています。トップマネジメントだけではなく、各プロセス・部門・それに従事する要員に責任と権限を与えて仕事をすることが求められます。
すなわち!業務分掌を作成し、責任と権限を社内周知することを求めているのがこの要求事項となります。
②各部門の役割を洗い出す
③各部門の各役職者の責任と権限を決める
ここまでがISO9001の要求ですがそれだけではなく、各要求事項に対応した業務・職位分掌を作り上げるのがポイントです。
②-1:各役職者のコミュニケーション手段を明確にする
部門や役職者によって参加会議やコミュニケーション手段が変わります。
コミュニケーションには上申(上司の報告)も含まれるので、その手段・報告先もコミュニケーションになる為、業務・職位分掌に明記すると、7.4項のコミュニケーションについても対応可能です。
②-2:部下の指導方法
顧客重視の観点から、部下の育成は必須です。部長職の仕事内容を部下に教育することで、組織力が上がり且つ、7.2項の力量の対応にもつながります。
力量アップの為には指導者の力量も必要なため、各役職者がどの従業員を指導できるのかを記載しておくと、要求事項とリンクして非常に効果的な運用ができるようになります。
②-3:各職位に昇格するための条件を明確にする
役職者の任命プロセスで大事なのが、「その職位に昇格するための最低条件」です。
例えば、「課長職を10年以上経験するまたは、それと同等のレベル以上が実証できる場合」などがあげられます。
これらの任命プロセスを明確にしながら教育計画と整合をとることで、人材不足に対してのケア(底上げや中途採用の必要性)ともリンクし、効果的な運用が可能になります。
②-4:顧客重視からの職位に対する技術要求
d)項からも分かるように、トップマネジメントは「顧客重視の促進」を求めているわけですから、各役職者によって高い技術レベルが求められます。
例えば、部長クラスの方がISO9001の規格を理解していない方だと、ISO9001は組織及び部門の中で浸透せずうまく機能しません。
ISO9001を取得する=顧客満足の追究ですから、それを満たすことのできるレベルの役職者をトップマネジメントが任命することが大事です。
組織に変更が起きたらQMSも見直す
ISO9001:5.3項の組織の役割・責任及び権限の要求事項には、以下のように記述されています。
例えば、工場の移転・組織の変更が発生した場合、ISO9001における品質マネジメントシステム(QMS)に影響を与えることが考えられます。
そういった場合は、ISO9001の運用上の問題点抽出・対策をきちんと行った上での変更を行うことで完全に整った状態を維持することが可能です。
特に、ISO9001の認証範囲の変更が発生する場合(特に追加:例えば工場追加・営業所追加など)がある場合は、注意が必要です。
ISO9001:5.3項の組織の役割・責任及び権限はどこに記載すればいい?
ISO9001:5.3項の組織の役割・責任及び権限の要求事項は、対応方法について品質マニュアルに記載し、業務・職位分掌規定を作成し対応することがポイントです。
ISO9001:5.2.2項の品質方針の伝達:まとめ
ISO9001:5.3項の組織の役割・責任及び権限の要求事項の規格解釈および構築ポイントは如何でしたでしょうか?
ISO9001の運用は、トップマネジメントの力だけでは業務すべてを取り組むことは不可能です。
その為、組織の役割(プロセス・部門)を明確にし、その個別の部門での役職者から部員までの品質マネジメントシステムにおける責任と権限を割り当てることが本要求事項のポイントです。
それではまた!
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