
IATF16949:4.4.1.2「製品安全」は、IATF16949の目玉要求事項の一つであり、製品安全に関連する製品及び製造工程の運用管理のために文書化されたプロセスを持つことを組織に要求しています。
OEM(自動車メーカー)が最も警戒する「リコール」と「製造物責任」への対応として、a)〜m)の13項目にわたる具体的な要求が定められています。
本記事では、全13項目の解説に加え、製品安全責任者(PSB)の任命、法令・規制の入手方法、ISO26262との関連、品質マニュアルへの記載方法、審査・内部監査での確認ポイントまで、構築と運用の両面から実務目線で徹底解説します。

この記事を書いた人
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| 条項 | 題目 | ISO 9001 |
IATF 16949 |
| 第4章 | 組織の状況 | 〇 | 〇 |
| 第5章 | リーダーシップ | 〇 | 〇 |
| 第6章 | 計画 | 〇 | 〇 |
| 第7章 | 支援 | 〇 | 〇 |
| 第8章 | 運用 | 〇 | 〇 |
| 第9章 | パフォーマンス評価 | 〇 | 〇 |
| 第10章 | 改善 | 〇 | 〇 |
| 条項 | 題目 | ISO 9001 |
重要 帳票 |
IATF 16949 |
重要 帳票 |
| 4.1 | 組織及びその状況の理解 | ○ | ● | ○ | |
| 4.2 | 利害関係者のニーズ及び期待の理解 | ○ | ○ | ||
| 4.3 | 品質マネジメントシステムの適用範囲の決定 | ○ | ○ | ||
| 4.3.1 | 品質マネジメントシステムの適用範囲の決定-補足 | ○ | |||
| 4.3.2 | 顧客固有要求事項 | ○ | ● | ||
| 4.4(4.4.1) | 品質マネジメントシステム及びそのプロセス | ○ | ● | ○ | |
| 4.4.1.1 | 製品及びプロセスの適合 | ○ | |||
| 4.4.1.2 | 製品安全 | ○ | |||
| 4.4.2 | 題目なし(文書管理要求) | ○ | ○ |
当サイトの情報提供スタンスについて
当サイトでは、ISO9001およびIATF16949について、規格要求の解説にとどまらず、実務でどのようにルールや記録へ落とし込むかを重視して情報を整理しています。
規格の理解とあわせて、「現状とのギャップをどう捉えるか」「どこから手を付けるべきか」といった判断に迷いやすい点を、現場目線で分かりやすく解説することを目的としています。
記事内容を自社へ当てはめる際の考え方や、判断に迷うポイントについては、別ページで整理した情報も用意しています。
この記事の目次
IATF16949 4.4.1.2製品安全の規格要求の全体像
製品安全がQMSに組み込まれた背景
従来、製品安全の概念は品質管理とは一部異なるものとして捉えられていました。製品安全は設計思想に基づき、ユーザーに危害が及ばない安全性のある製品を作り上げることを意図するものです。
しかし、IATF16949ではこの製品安全の概念をQMSの一部として明確に取り込みました。その背景には、ADAS(先進運転支援システム)や自動運転技術の高度化があります。これらの技術が不具合で機能しなくなった場合、人命に関わる重大な品質問題に直結します。また、過去のエアバッグ大量リコール事件のように、サプライヤー部品が原因で大規模な安全問題が発生した事例も、この要求強化の直接的なきっかけとなっています。
ISO/IEC Guide51(安全規格策定の基準ガイドライン)では、安全を「受容できないリスクがないこと」と定義しています。IATF16949 4.4.1.2は、この安全の概念を自動車産業のQMSに落とし込み、設計段階から製造、サプライチェーン、市場投入後まで一貫した製品安全管理を組織に要求しています。
a)〜m)全13項目の構成
4.4.1.2では、文書化されたプロセスに含めるべき内容として、a)からm)まで13項目が規定されています。これらは大きく以下の5つの領域に分類できます。
①法令・規制と顧客通知
a)法令規制の特定、b)顧客への通知
②設計段階の管理
c)設計FMEAの特別承認、d)製品安全特性の特定
③製造段階の管理
e)製造時点の特性管理、f)コントロールプラン・工程FMEAの特別承認、g)対応計画
④組織体制と変更管理
h)責任体制・上申プロセス、i)教育訓練、j)変更時の安全影響評価
⑤サプライチェーンと継続改善
k)サプライチェーンへの展開、l)トレーサビリティ、m)学んだ教訓
ISO9001にはない独自要求であること
ISO9001には製品安全に関する専門的な要求事項はありません。4.4.1.2は完全にIATF16949独自の要求であり、特にISO9001のみを取得している企業がIATF16949の認証取得を目指す際に、構築が最も難航する条項の一つです。「文書化したプロセス」の要求があるため、製品安全管理規定の作成が必須となります。
法令・規制の特定と顧客への通知【a)b)】
a)法令・規制の製品安全要求事項の特定
4.4.1.2 a)は、製品安全に影響を及ぼす法令及び規制要求事項を組織が特定することを求めています。日本国内の保安基準はもちろん、製品が使用される仕向国の法令・規制要求事項についても、顧客ごとに特定し、プロジェクトや生産・出荷段階で適用された状態にする必要があります。
法令・規制情報の入手方法を「製品安全管理規定」に明記し、定期的な情報更新の仕組みを構築してください。参考となる各国の法令・規制要求は、国土交通省自動車総合安全情報に掲載されています。
また、大抵のOEMやTier1は、Tier2以降に法令・規制についての要求をまとめて通知してくれます。ただし、欧州メーカーなどは聞かないと教えてくれない場合もあるため、組織自ら顧客に確認するようにしてください。受動的に待つのではなく、能動的に情報を取りに行く姿勢が重要です。
自動車産業で特に押さえるべき製品安全関連の法規制は以下の通りです。
日本:道路運送車両の保安基準
EU:ECE規則(車両等の安全・環境に関する統一基準)
米国:FMVSS(連邦自動車安全基準)
中国:GB規格(強制性国家標準)
b)顧客への通知
a)で特定した法令・規制の要求事項を顧客に通知するプロセスが必要です。特に、法規制の改正や新規適用があった場合には、速やかに顧客へ通知し、製品への影響と対応方針を共有します。この通知プロセスは、顧客との透明な関係を構築し、製品安全に関するリスクを早期に共有するために不可欠です。
設計段階での製品安全管理【c)d)】
c)設計FMEAに対する特別承認

4.4.1.2 c)は、設計FMEA(DFMEA)に対して特別承認を求めています。ここでいう「特別承認」とは、通常の承認フローとは別に、より上位レベル(顧客、製品安全責任者、トップマネジメント等)の承認が必要になることを意味します。
製品安全に関わる設計判断を現場任せにせず、組織として正式にリスクを認識・評価したうえで進めるための仕組みです。特別承認が必要なケースや承認者を事前にルール化し、製品安全管理規定に明記してください。
設計FMEAでは、製品安全に関わる故障モードを重点的に分析し、安全特性への影響度(S値:重大性)が高い項目について、対策の妥当性を厳密に検証する必要があります。
d)製品安全に関係する特性の特定

製品固有の性質(仕様、性能、構造等)から、製品安全に関わる特性を特定し適切に管理することが求められます。IATF16949では、これらを特殊特性(Special Characteristics)と呼び、通常の品質特性よりも厳格な管理を要求しています。
製品安全特性と通常の品質特性の違いは以下の通りです。
①品質特性
顧客要求への適合が目的。寸法精度、外観、性能値など
②製品安全特性
事故・危害の防止が目的。発生頻度が低くても影響度が大きい特性が対象
特殊特性は、FMEAやコントロールプラン(QC工程図)に特別な記号で表記し、Cpk管理やSPC(統計的工程管理)による重点管理を行います。
製造段階での製品安全管理【e)f)g)】
e)安全に関する製品特性及び製造時点での特性の特定及び管理
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設計段階で特定された製品安全特性を、製造段階でも確実に管理することが求められます。製造時点で新たに特定される安全関連の工程パラメータ(温度、圧力、締付トルク等)も管理対象に含まれます。
具体的には、工程FMEA(PFMEA)を通じて製造段階での安全リスクを分析し、コントロールプランに基づいてSPC管理や全数検査等の管理方法を決定します。工程能力指数(Cpk)による監視を行い、管理限界を逸脱した場合のリアクションプランも事前に策定してください。
f)コントロールプラン及び工程FMEAの特別承認
製造工程においても、工程FMEA及びコントロールプランに対して設計段階と同様の特別承認が必要です。製品安全に関わる製造工程の管理方法について、顧客や製品安全責任者の承認を得ることで、安全性を維持するための適切な監視・管理が組織として承認された状態を証明できます。
g)対応計画(リアクションプラン)の策定
IATF16949 9.1.1.1を参照し、製品安全に関するリスクが顕在化した場合の対応計画(リアクションプラン)を策定・運用することが求められます。対応計画に含めるべき内容は以下の通りです。
①異常検知時の初動対応
工程停止の判断基準、暫定処置の手順
②影響範囲の特定
対象ロット・製品の追跡方法
③顧客への通知
通知のタイミング、連絡先、報告様式
④是正処置
根本原因の分析手法、恒久対策の実施
⑤再発防止の確認
対策の有効性検証方法
リアクションプランは作成するだけでなく、定期的に模擬訓練を実施し、計画通りに機能するかを確認してください。
責任体制・教育訓練・変更管理【h)i)j)】
h)製品安全責任者(PSB)の任命と上申プロセス
4.4.1.2 h)は、製品安全に関する責任を明確にし、トップマネジメントを含めた上申プロセス及び情報フローを規定することを求めています。さらに、顧客への通知プロセスも含めなければなりません。
製品安全責任者(PSB:Product Safety Beauftragter) は、トップマネジメントが正式に任命し、製品安全に関する最高権限を与える必要があります。PSBに相応しい人物は、一般的に品質保証部の部長クラスの方です。
ただし、単純に役職で任命するのではなく、PSB(製品安全責任者)の資格を保持している方であることが望ましく、その資格を持つことで任命プロセスの妥当性を証明できます。
上申プロセスでは以下を明確にしてください。
①誰が製品安全問題を報告するか(発見者→部門長→PSB→トップマネジメント)
②いつ報告するか(発見から何時間以内に初回報告等)
③何を報告するか(対象製品、影響範囲、暫定処置の内容等)
④顧客への通知基準:どのレベルの問題から顧客通知が必要か
i)製品安全に関連する要員への教育訓練
製品安全に関係する製品及び関連する製造工程に携わる全ての要員に対して、組織又は顧客によって特定された教育訓練を実施することが求められます。
教育訓練は、以下の対象者と内容を含めてください。
- 設計部門:DFMEAにおける安全特性の識別方法、ISO26262(機能安全)の基礎
- 製造部門:安全特性の工程管理方法、異常時の対応手順
- 品質部門:安全関連不適合の処理手順、顧客通知プロセス
- 購買部門:サプライヤーへの安全要求の伝達方法
- 全社共通:製品安全方針、リコール事例からの教訓
教育訓練の実施記録と有効性の評価は、審査で必ず確認されるポイントです。
j)製品・工程変更時の安全影響評価と承認
製品又は工程の変更を行う場合、製品安全に関する潜在的影響の評価を実施し、変更の実施前に承認を得ることが必要です。変更内容そのものに加えて、「安全リスクが新たに発生していないか」「既存の安全リスクが増大していないか」を必ず評価してください。
具体的な確認事項は以下の通りです。
- 設計FMEAの再評価(安全特性への影響)
- 工程FMEAの再評価(製造条件変更の影響)
- コントロールプランの更新要否
- 顧客承認または社内特別承認の要否判断
承認なしで変更を実施しないことがこの要求の核心です。4M変更管理プロセスと連動させて運用してください。
サプライチェーン管理・トレーサビリティ・教訓【k)l)m)】
k)サプライチェーン全体への製品安全要求の展開
顧客指定の供給者を含む、サプライチェーン全体にわたって製品安全に関する要求事項を連絡することが求められます。自社だけでなく、原材料の仕入先、外注加工先、物流業者に至るまで、製品安全に影響する全てのサプライヤーが管理対象です。
展開にあたっては、以下を実施してください。
①品質契約(品質保証協定書)に製品安全要求を明記する
②安全特性に関わる材料・部品の仕入先には、安全特性の管理基準を具体的に伝達する
③定期的な二者監査で製品安全要求の遵守状況を確認する
④「購入品だから責任外」という考え方は通用しない——外部委託しても安全の最終責任は自社にある
l)製造ロット単位の製品トレーサビリティ

サプライチェーン全体にわたって、最低限、製造ロット単位での製品トレーサビリティを確保し実施することが求められます。
顧客へ納品した後にトラブルが発生した場合、波及性を確認し、対象ロットや製品を特定できなければ、顧客への影響が拡大し、損害賠償請求に至るケースもあります。製品安全問題が発生した際に、影響範囲を迅速・正確に特定できるかどうかが、リコールの規模と企業の信頼性を左右します。
ロット単位でのトレーサビリティが確保されていれば、必要最小限の範囲でのリコール対応が可能になり、被害と費用の拡大を防止できます。
なお、要求事項の最低限は製造ロットの特定ですが、顧客によっては個体識別(シリアル番号管理)を要求される場合もあります。特にADAS関連部品やエアバッグ関連部品など、安全性が極めて重要な製品では、個体レベルのトレーサビリティが求められる傾向が強まっています。
m)新製品導入に活かす学んだ教訓
過去に発生した製品安全問題やリスク管理の教訓を、新しい製品の導入に活かすことが求められます。具体的には以下の方法で実践してください。
- 過去トラブルチェックリストの活用:過去の安全関連不適合・リコール事例をデータベース化し、新規製品の設計レビュー時に参照する
- 設計基準への反映:過去の教訓を設計基準書やFMEAの前提条件に組み込む
- 教育訓練への活用:実際の事例を教材として使用し、組織全体の安全意識を向上させる
- FMEAへの反映:新規製品のDFMEA・PFMEAで、過去の不具合モードを漏れなくインプットする
学んだ教訓を「記録して終わり」にせず、次の製品開発プロセスに確実にフィードバックする仕組みが重要です。
ISO26262(機能安全)との関連
近年の自動車産業では、IATF16949 4.4.1.2の製品安全要求に加えて、ISO26262(自動車の機能安全)への対応が求められるケースが増えています。特にECU(電子制御ユニット)、ADAS関連部品、パワートレイン制御システムなどの電子・電装部品を製造する企業では、ISO26262の理解が不可欠です。
ISO26262は、電気・電子システムの機能安全に特化した規格であり、ASIL(Automotive Safety Integrity Level)と呼ばれる安全度水準に基づいてリスクを分類・管理します。IATF16949 4.4.1.2の製品安全管理と、ISO26262の機能安全管理は、以下の点で密接に関連しています。
- 安全特性の特定:4.4.1.2 d)の製品安全特性と、ISO26262のASILレベルに基づく安全要求は相互補完的
- FMEA:4.4.1.2 c)f)の設計FMEA・工程FMEAは、ISO26262のFTA(故障の木解析)やFMEDAと連携させることが効果的
- 変更管理:4.4.1.2 j)の安全影響評価は、ISO26262のインパクト分析と統合して運用できる
全ての製品にISO26262が適用されるわけではありませんが、顧客から機能安全の要求がある場合は、4.4.1.2の製品安全管理プロセスとISO26262の要求を整合させた管理体制を構築してください。
規格を理解するうえで、よくある「つまずき」とは?
ISO9001やIATF16949、VDA6.3の要求事項は、条文を読むだけでは自社業務への当てはめ方が分かりにくい場面が少なくありません。理解したつもりでも、文書化や運用判断で迷いが生じることは多く、その違和感こそが改善ポイントになる場合もあります!
※ 個別ケースでの考え方整理が必要な場合は、補足的な確認も可能です。
品質マニュアルへの記載方法
製品安全管理規定の策定
4.4.1.2は「文書化したプロセス」の要求があるため、製品安全管理規定の作成が必須です。製品安全管理規定には、a)〜m)の全13項目に対する具体的な対応方法を記載し、「誰が・いつ・何を・どのように」管理するかを明確にしてください。
品質マニュアルには、以下のように製品安全管理の概要を記載します。
記載例:「当社は、製品安全に関連する全ての製品及び製造工程の運用管理のため、文書化されたプロセスとして製品安全管理規定(文書番号:〇〇)を策定し運用する。本規定は、IATF16949 4.4.1.2のa)〜m)の全要求事項に対する当社の対応方法を定めるものであり、以下を含む。
タートル図への反映

品質マニュアルへの記載に加えて、タートル図の各プロセスにも製品安全要求を反映させることをお勧めします。具体的には、タートル図のインプットに「法令・規制要求事項」「顧客の製品安全要求」を明記し、アウトプットに「特別承認記録」「対応計画」「教育訓練記録」を含めることで、審査員に対してもプロセスの中に製品安全が組み込まれていることを可視化できます。
タートル図で整理するプロセス定義の考え方
IATF16949やISO9001では、各プロセスの目的や責任、インプット・アウトプット、指標などを明確に定義することが求められます。その整理方法の一つがタートル図(タートルチャート)です。プロセスを俯瞰して可視化できるため、役割や管理項目の抜け漏れを確認しやすくなります。
一方で、どの項目をどこまで記載すべきかで迷うケースも少なくありません。そのため、プロセス定義の視点を整理したうえでタートル図を活用することが重要になります。こうした整理を進める方法の一つとして、タートル図を用いたプロセス定義の進め方を分かりやすくまとめた資料を参考にする方法もあります。
内部監査・審査での確認ポイント
審査員が確認する6つの観点
IATF16949 4.4.1.2に関する審査では、以下の観点が重点的に確認されます。
製品安全管理規定(又はそれに準ずる文書)が存在し、4.4.1.2のa)〜m)全13項目に対する対応方法が明記されているかを確認します。
適用される法規制が一覧化され、顧客への通知プロセスが機能しているかを確認します。法改正への対応記録も問われます。
通常の承認フローとは区別された特別承認プロセスが運用され、承認記録が残されているかを確認します。
PSBの正式な任命記録、権限の明確化、上申フロー図、顧客通知プロセスの文書化と実績を確認します。
製品安全に関係する要員への教育訓練の計画・実施記録・有効性評価を確認します。
サプライヤーへの製品安全要求の伝達記録、トレーサビリティの実証(製造ロットの追跡実演を求められることもある)を確認します。
IATF16949 4.4.1.2に関するFAQ
規格対応でよく聞かれる悩み
ISO9001やIATF16949、VDA6.3に取り組む中で、「審査対策として何を優先すべきか分からない」「要求事項に対する構築の考え方が整理できない」といった声は少なくありません。
また、社内にQMSを体系的に理解している担当者がいない場合や、外部コンサルの費用面で継続的な支援が難しいと感じるケースもあります。こうした悩みは、特定の企業に限らず、多くの現場で共通して見られるものとなっています。
品質管理は「顧客要求への適合」を主目的とし、寸法精度、外観、性能値などの品質特性を管理します。一方、製品安全は「事故・危害の防止」を主目的とし、発生頻度が低くても影響度が大きい特性が管理対象となります。品質不適合は顧客クレームにとどまりますが、安全不適合はリコール、人身事故、製造物責任訴訟に直結するため、管理の厳格さが異なります。
製品安全管理規定を作成してください。この規定にはa)〜m)の全13項目に対する対応方法として、法令特定の手順、FMEA特別承認のフロー、PSBの権限と上申プロセス、対応計画、教育訓練計画、サプライヤーへの展開方法、トレーサビリティの確保方法を含める必要があります。規定だけでなく、対応する帳票(記録フォーマット)も整備してください。
一般的には品質保証部の部長クラスの方が適任です。ただし、単に役職で任命するのではなく、PSB資格を保持していることが望ましく、資格保持者であることで任命プロセスの妥当性を証明できます。PSBはトップマネジメントが正式に任命し、製品安全に関する最高権限(工程停止判断、出荷停止判断、顧客への緊急通知発信等)を付与する必要があります。
通常承認は設計部門内のレビューと承認で完結しますが、特別承認は、製品安全に関わる項目について、より上位レベル(PSB、トップマネジメント、場合によっては顧客)の承認を必要とします。これは、安全に関わる設計判断を現場任せにせず、組織として正式にリスクを認識・評価したうえで進めるための仕組みです。特別承認が必要な条件(FMEA重大性スコアの閾値等)を事前にルール化してください。
異常検知時の初動対応(工程停止判断基準、暫定処置手順)、影響範囲の特定(ロットトレース方法)、上申フロー(PSB→トップマネジメント→顧客への通知タイミング)、根本原因分析手法、恒久対策の実施と有効性検証方法を含めてください。リアクションプランは策定するだけでなく、年1回以上の模擬訓練で機能性を確認することが推奨されます。
変更内容そのものに加えて、安全リスクが新たに発生していないか、既存の安全リスクが増大していないかを評価します。具体的には、設計FMEAと工程FMEAの再評価、製品安全特性への影響確認、コントロールプランの更新要否、顧客承認や社内特別承認の要否判断を実施し、承認なしで変更を進めないことが求められます。
品質保証協定書に製品安全要求の条項を明記し、安全特性に関わる材料・部品の仕入先には管理基準を具体的に伝達します。顧客指定サプライヤーも含め、二者監査で遵守状況を定期的に確認してください。口頭での伝達は不十分であり、文書化された要求と確認記録が必須です。
4.4.1.2の要求としては、最低限、製造ロット単位のトレーサビリティが求められています。ただし、ADAS関連部品、エアバッグ関連部品、ブレーキ部品など安全性が極めて重要な製品では、顧客から個体識別(シリアル番号管理)を要求されるケースが増えています。顧客のCSRを確認し、必要なトレーサビリティのレベルを把握してください。
過去の安全関連不適合・リコール事例をデータベース化し、新規製品の設計レビュー時に過去トラブルチェックリストとして参照する仕組みを構築してください。さらに、教訓を設計基準書やFMEAの前提条件に組み込み、教育訓練の教材としても活用します。「記録して終わり」ではなく、次の開発プロセスに確実にフィードバックする仕組みが重要です。
4.4.1.2はQMSの枠組みでの製品安全管理、ISO26262は電気・電子システムの機能安全に特化した規格です。両者は相互補完的な関係にあり、安全特性の特定、FMEAの実施、変更管理において連携させることが効果的です。全ての製品にISO26262が適用されるわけではありませんが、ECU・ADAS関連部品を製造する企業では両規格の整合が求められます。
規格対応で不安・悩むポイント
ISO9001やIATF16949、VDA6.3といった規格対応では、「どこから手を付ければよいか分からない」「社内だけで判断を進めることに不安がある」と感じるケースが少なくありません。
品質マネジメントの構築は、一度に完成させる必要はなく、考え方やサンプルを参考にしながら、少しずつ自社に合った形へ整えていくことも可能です。
IATF16949 4.4.1.2の製品安全:まとめ
IATF16949 4.4.1.2は、製品安全に関連する全ての製品及び製造工程の運用管理のため、文書化されたプロセスを持つことを求めるIATF16949の目玉要求事項です。a)〜m)の全13項目は、法令・規制の特定から、設計・製造段階でのFMEA特別承認、PSBの任命と上申プロセス、サプライチェーン全体への展開、トレーサビリティの確保、学んだ教訓の活用まで、製品安全管理の全領域をカバーしています。
構築のポイントは、製品安全管理規定を中核として、全13項目への対応方法を文書化し、実運用と記録を一致させることです。「規定はあるが現場で運用されていない」状態は審査で不適合となるため、定期的な模擬訓練や教育訓練を通じて、製品安全管理プロセスの実効性を維持してください。
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