
IATF16949:6.1.2.1「リスク分析」は、IATF16949の中でも最重要な要求事項の一つです。製品リコールの教訓、製品監査結果、市場での回収・修理、顧客苦情、スクラップ・手直しの5つのインプットを用いてリスクを分析し、その結果を文書化して保持することが求められます。
本記事では、a)〜e)の5要求事項を個別に解説し、それぞれがFMEA(故障モード影響解析)のどこにインプットされるかをマッピングテーブルで可視化。さらにリスク分析が明言されている全19条項の横断マップ、リスク分析手法(FMEA/FTA/DRBFM等)の比較、ISO9001のリスク管理との違いまで徹底解説します。

この記事を書いた人
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| 条項 | 題目 | ISO9001 | IATF |
| 第4章 | 組織の状況 | 〇 | 〇 |
| 第5章 | リーダーシップ | 〇 | 〇 |
| 第6章 | 計画 | 〇 | 〇 |
| 第7章 | 支援 | 〇 | 〇 |
| 第8章 | 運用 | 〇 | 〇 |
| 第9章 | パフォーマンス評価 | 〇 | 〇 |
| 第10章 | 改善 | 〇 | 〇 |
| 条項 | 題目 | ISO 9001 |
重要 帳票 |
IATF 16949 |
重要 帳票 |
| 6.1 6.1.1 6.1.2 |
リスク及び機会への取組み | ○ | ● | ○ | |
| 6.1.2.1 | リスク分析 | ○ | ● | ||
| 6.1.2.2 | 予防処置 | ○ | |||
| 6.1.2.3 | 緊急事態対応計画 | ○ | ● | ||
| 6.2 6.2.1 6.2.2 |
品質目標及びそれを達成するための計画策定 | ○ | ○ | ||
| 6.2.2.1 | 品質目標及びそれを達成するための計画策定-補足 | ○ | ● | ||
| 6.3 | 変更の計画 | ○ | ○ |
当サイトの情報提供スタンスについて
当サイトでは、ISO9001およびIATF16949について、規格要求の解説にとどまらず、実務でどのようにルールや記録へ落とし込むかを重視して情報を整理しています。
規格の理解とあわせて、「現状とのギャップをどう捉えるか」「どこから手を付けるべきか」といった判断に迷いやすい点を、現場目線で分かりやすく解説することを目的としています。
記事内容を自社へ当てはめる際の考え方や、判断に迷うポイントについては、別ページで整理した情報も用意しています。
この記事の目次
6.1.2.1リスク分析の全体像
リスク分析とは何か
IATF16949:6.1.2.1「リスク分析」は、製品やプロセスに関わるリスクを体系的に特定・評価し、その結果を文書化して保持することを要求する条項です。
自動車産業における「リスク分析」の本質は、過去に起きた品質問題(リコール・クレーム・スクラップ等)から教訓を抽出し、それを新製品や既存製品のFMEAにフィードバックすることで、同じ問題の再発を防止し、新たなリスクを未然に防ぐことです。
ISO9001(6.1)のリスク管理とIATF16949(6.1.2.1)のリスク分析の違い
ISO9001とIATF16949では「リスク」の扱いが大きく異なります。
| 項目 | ISO9001:6.1(リスク及び機会への取組み) | IATF16949:6.1.2.1(リスク分析) |
|---|---|---|
| 対象 | QMS全体の経営リスク・機会 | 製品・プロセスの品質リスク |
| アプローチ | リスクに基づく考え方(概念的) | 具体的なリスク分析手法の実施 |
| 手法の指定 | 特定の手法は指定なし | FMEAを中心とした体系的分析 |
| インプット | 組織の状況、利害関係者のニーズ | a)リコール教訓b)製品監査c)市場回収d)苦情e)スクラップ |
| 文書化 | 必要に応じて | 文書化した情報として保持が必須 |
| 深さ | 事業レベルの広範なリスク管理 | 個別の故障モード・影響・原因レベルの詳細分析 |
ISO9001のリスク管理は「経営レベル」の広範な概念であるのに対し、IATF16949の6.1.2.1は「製品・工程レベル」の具体的なリスク分析を要求しています。IATF16949取得企業は両方を適切に運用する必要があります。
a)〜e)の5つの要求事項の全体構成
6.1.2.1は、リスク分析を実施する際に「少なくとも以下を含めなければならない」として5つのインプットを明記しています。
| 要求 | 概要 | ひとことで言うと |
|---|---|---|
| a) | 製品リコールから学んだ教訓 | 過去の重大品質問題からの学び |
| b) | 製品監査結果 | 完成品の適合性検証結果 |
| c) | 市場で起きた回収及び修理 | フィールドでの品質問題実績 |
| d) | 顧客からの苦情 | 顧客クレーム・スコアカード情報 |
| e) | スクラップ及び手直し | 製造工程内の品質ロスデータ |
これらは全て「過去のデータ」であり、過去の品質問題から教訓を抽出してFMEAにフィードバックすることがリスク分析の核心です。
リスク分析の核心:FMEAとの関係

なぜFMEAがリスク分析の中心なのか
IATF16949において「リスク分析」と言えば、実質的にはFMEA(Failure Mode and Effects Analysis:故障モード影響解析)を意味します。FMEAは、潜在的な故障モードとその影響・原因を体系的に分析し、リスクの優先順位をつけて予防処置を決定するツールです。
6.1.2.1が求めているのは、a)〜e)の5つのインプットデータをFMEAに反映することで、FMEAの精度と網羅性を高めることです。
a)〜e)×FMEAインプット対応マッピングテーブル
| 要求事項 | インプットデータ | FMEAのどこに反映するか |
|---|---|---|
| a)リコール教訓 | リコール原因・対策履歴 | 故障モード欄・原因欄の追加、特殊特性の見直し |
| b)製品監査結果 | 完成品の寸法・機能・外観の適合性データ | 検出管理欄の見直し、検出度(D)の再評価 |
| c)市場回収・修理 | フィールド不具合データ、保証クレーム | 故障モード欄・影響欄の追加、重大度(S)の再評価 |
| d)顧客苦情 | 顧客クレーム、スコアカード指摘事項 | 故障モード欄の追加、原因欄の深掘り |
| e)スクラップ・手直し | 工程内不良率、廃棄・手直しデータ | 発生度(O)の再評価、工程管理欄の見直し |
このマッピングが理解できれば、6.1.2.1の本質は明確です。a)〜e)の品質データをFMEAにフィードバックし、故障モード・影響・原因・検出管理を継続的に更新・改善すること。これがリスク分析です。
DFMEA(設計FMEA)とPFMEA(工程FMEA)へのインプットの違い
a)〜e)のインプットはDFMEAとPFMEAの両方に反映しますが、主な適用先が異なります。
| インプット | DFMEAへの反映 | PFMEAへの反映 |
|---|---|---|
| a)リコール教訓 | ◎設計起因のリコールを故障モードに追加 | ○工程起因のリコールを故障モードに追加 |
| b)製品監査 | ○設計仕様との不整合を確認 | ◎製造結果の適合性を検出管理に反映 |
| c)市場回収 | ◎設計要因のフィールド不具合を反映 | ○製造要因のフィールド不具合を反映 |
| d)顧客苦情 | ◎機能・性能に関する苦情を反映 | ◎外観・寸法に関する苦情を反映 |
| e)スクラップ・手直し | ○設計上の製造困難性を反映 | ◎工程内不良の故障モード・発生度を反映 |
a)製品リコールから学んだ教訓
要求事項の意図
a)項では、過去の製品リコール(自社・業界問わず)から得た教訓をリスク分析のインプットとして活用することが求められています。
リコール教訓の収集と活用方法
| 情報源 | 内容 | 活用方法 |
|---|---|---|
| 自社のリコール履歴 | 自社が過去に実施したリコールの原因・対策 | 同じ故障モードがFMEAに含まれているか確認、なければ追加 |
| 業界のリコール情報 | 国土交通省リコール届出、NHTSA等の公開データ | 類似製品・類似部品のリコール事例を自社FMEAに展開 |
| 顧客からのリコール情報 | 完成車メーカーのリコール対応で自社部品が関与したケース | 重大度(S)の再評価、特殊特性の見直し |
自動車業界での具体例
例:エアバッグインフレータのリコール事例→同じ火薬材料・同じ密閉構造を使用している部品のDFMEAに「経年劣化による異常展開」の故障モードを追加。特殊特性を設定し、工程管理を強化。
例:ブレーキ部品の材料不良によるリコール→類似材料を使用する全製品のDFMEAを横展開確認。材料ロットトレーサビリティの要件をPFMEAの管理項目に追加。
※一般的な呼称としては過去トラリストのようなものです。
b)製品監査結果
要求事項の意図
b)項では、製品監査(完成品の品質を検証する監査)の結果をリスク分析のインプットとして活用することが求められています。
製品監査とは

製品監査は、IATF16949の9.2.2.4で要求される監査で、製造された完成品が図面仕様・顧客要求・法規制に適合しているかを実際に検査・測定して確認するものです。
| 確認項目 | 内容 | FMEAへの反映 |
|---|---|---|
| 寸法測定 | 図面公差内に入っているか | 公差外れがあれば発生度(O)の再評価 |
| 機能試験 | 性能要件を満たしているか | 機能不適合があれば故障モードの追加 |
| 外観検査 | 外観基準を満たしているか | 外観不良があれば検出管理の強化 |
| 材料・物性 | 材料証明書との整合性 | 不整合があれば材料リスクの再評価 |
| 梱包・表示 | 梱包仕様・ラベル表示の適合性 | 不備があれば出荷工程の管理強化 |
リスク分析への反映ポイント

製品監査で不適合や懸念事項が発見された場合、それは「現行のFMEAでカバーできていないリスクが存在する」ことを意味します。発見事項をFMEAにフィードバックし、故障モードの追加や検出度(D)の見直しを行います。
c)市場で起きた回収及び修理
要求事項の意図
c)項では、市場(フィールド)で発生した製品の回収や修理の実績をリスク分析のインプットとして活用することが求められています。
リコールvsフィールド修理の違い
| 項目 | リコール(a項) | 市場回収・修理(c項) |
|---|---|---|
| 規模 | 大規模(国の届出を伴う) | 小〜中規模(自主的な回収含む) |
| 深刻度 | 安全性・法規制に関わる重大問題 | 品質不良・機能不足・耐久性問題 |
| データソース | 公的届出・プレスリリース | 保証クレーム、サービスキャンペーン |
| FMEAへの反映 | 重大度(S)が高い故障モードの追加 | 発生度(O)・検出度(D)の再評価 |
活用すべきフィールドデータ
| データ | 内容 | FMEAへの反映先 |
|---|---|---|
| 保証クレームデータ | 保証期間内の修理・交換実績 | 故障モード別の発生度(O)更新 |
| 0km不良データ | 完成車メーカーの組付ライン不良 | 嵌合・寸法関連の故障モード追加 |
| サービスキャンペーン | 予防的な部品交換プログラム | 耐久性関連の故障モードの重大度見直し |
| NTF(No Trouble Found) | 不具合再現せずで返却された部品 | 間欠的不具合の故障モードと検出方法の検討 |
d)顧客からの苦情
要求事項の意図

d)項では、顧客から受けた苦情(クレーム)をリスク分析のインプットとして活用することが求められています。
苦情情報の種類とFMEAへの反映
| 苦情の種類 | 内容 | FMEAへの反映 |
|---|---|---|
| 品質クレーム | 寸法・外観・機能の不適合 | 故障モードの追加、検出管理の強化 |
| 納期クレーム | 欠品・遅延・数量不足 | 工程能力・生産計画リスクの評価 |
| スコアカード指摘 | 顧客のサプライヤー評価結果 | PPM目標との乖離がある故障モードの優先対策 |
| 8Dレポート要求 | 顧客が正式な是正処置を要求 | 対象の故障モード・原因・対策のFMEA更新 |
| 特別承認(デビエーション) | 一時的な仕様外れの承認要求 | リスク評価と暫定管理の妥当性確認 |
苦情データのリスク分析への展開フロー
顧客苦情受領→原因分析(8D/なぜなぜ)→FMEA該当箇所の確認→故障モード追加or S×O×D再評価→コントロールプラン更新→作業標準書改訂→有効性確認
この展開フローが途切れていると、「苦情は処理したがFMEAに反映されていない」状態になり、審査で不適合になります。
e)スクラップ及び手直し
要求事項の意図
e)項では、製造工程内で発生するスクラップ(廃棄)と手直し(リワーク)のデータをリスク分析のインプットとして活用することが求められています。
スクラップ・手直しデータのFMEAへの反映
| データ | 内容 | FMEAへの反映 |
|---|---|---|
| 不良モード別スクラップ率 | 故障モードごとの廃棄実績 | 発生度(O)の実績値による更新 |
| 手直し率・手直し内容 | 手直し作業の頻度と内容 | 手直し起因の二次不良リスクの評価 |
| 工程別不良率 | 工程ごとの不良発生状況 | 該当工程の故障モード・原因の見直し |
| パレート分析結果 | 不良の上位要因 | 重点改善対象の故障モード特定 |
| 工程能力(Cpk)データ | 管理特性の工程能力 | Cpk不足の特性に対する管理強化 |
手直し品の品質リスク
手直し品には、元の不適合とは異なる二次的なリスクが潜んでいます。IATF16949では8.7.1.4(手直し製品の管理)と8.7.1.5(修理製品の管理)でリスク分析を明示的に要求しており、手直し・修理に伴う新たな故障モードをFMEAに追加する必要があります。
リスク分析の結果を文書化する
文書化が求められる理由
6.1.2.1は「リスク分析の結果を文書化した情報として保持しなければならない」と明記しています。
| 目的 | 内容 |
|---|---|
| トレーサビリティの確保 | どのリスクが特定され、どの対策が取られたかの追跡可能性 |
| 監査・審査の証拠 | リスク分析が体系的に実施されていることの証明 |
| 継続的改善の基礎 | 過去の分析結果を基に、リスク評価の精度を向上させる |
| 組織の知識としての蓄積 | 7.1.6(組織の知識)へのインプット |
文書化された情報の具体例
| 文書 | 内容 | 管理方法 |
|---|---|---|
| DFMEA | 設計段階のリスク分析結果 | 製品別に作成・改訂管理 |
| PFMEA | 工程段階のリスク分析結果 | 工程別に作成・改訂管理 |
| コントロールプラン | FMEAの結果を工程管理に展開 | 量産前CP・量産CP |
| リスク分析記録 | a)〜e)のインプットデータと分析結果 | 定期的なレビュー記録 |
FMEAの帳票自体が「文書化した情報」です。FMEAが正しく作成・維持・更新されていれば、6.1.2.1の文書化要求は満たされます。
リスク分析手法の比較:FMEA以外の手法
IATF16949のリスク分析はFMEAが中心ですが、FMEAを補完する他のリスク分析手法もあります。目的に応じて使い分けることが重要です。
| 手法 | 正式名称 | 概要 | 主な適用場面 |
|---|---|---|---|
| FMEA | 故障モード影響解析 | 故障モード・影響・原因を体系的に分析しリスク優先度をつける | 設計段階(DFMEA)・工程設計段階(PFMEA) |
| FTA | 故障の木解析 | トップ事象から原因を論理的に掘り下げる | 安全性に関わる重大故障の原因分析 |
| DRBFM | 変更点に基づく設計レビュー | 変更点に着目して設計リスクを議論 | 設計変更時 |
| SWOT | 強み弱み機会脅威分析 | 経営レベルのリスク・機会の評価 | ISO9001の6.1(経営リスク)向け |
使い分けの指針
| 状況 | 推奨手法 |
|---|---|
| 新製品の設計段階 | DFMEA |
| 新工程の設計段階 | PFMEA |
| 設計変更・流用設計 | DRBFM + FMEA見直し |
| 重大安全リスクの深掘り | FTA + FMEA |
| 経営レベルのリスク評価(ISO9001 6.1対応) | SWOT分析 |
FMEAの6つの作成・見直しタイミング

IATF16949が要求するFMEAの作成・見直しタイミングは以下の6段階です。このどのタイミングでもFMEAへの遡りが確実に行われていることが、審査・監査で確認されます。
| No. | タイミング | DFMEAの対応 | PFMEAの対応 |
|---|---|---|---|
| ① | 新製品立ち上げ時 | 新規作成 | 新規作成 |
| ② | 設計変更時 | 変更箇所の見直し・追加 | 変更に伴う工程リスクの見直し |
| ③ | 工程変更時(4M変更) | 設計への影響確認 | 変更箇所の見直し・追加 |
| ④ | 顧客クレーム発生時 | 設計起因クレームの反映 | 工程起因クレームの反映 |
| ⑤ | 内部不良・スクラップ発生時 | 設計上の製造困難性の見直し | 故障モード・発生度の更新 |
| ⑥ | 定期レビュー時(年次等) | 全体的な見直し | 全体的な見直し |
これらのタイミングでFMEAが見直されていない場合、審査で不適合になる可能性が非常に高いです。 FMEAはリスク分析であり、その分析結果から適切な対応がされて初めて「顧客要求を満たす製品にリスクがないこと」が保証されるからです。
リスク分析が明言されている全19条項の横断マップ
IATF16949では、6.1.2.1以外にも多数の条項で具体的にリスク分析(FMEA)の実施が要求されています。以下の19条項を把握し、それぞれの場面でFMEAへの遡りを確実に行うことが重要です。
| 条項 | 題目 | リスク分析として求められていること |
|---|---|---|
| 6.1.2.1 | リスク分析 | 各段階でのリスク分析概要(a〜e含む) |
| 6.1.2.2 | 予防処置 | FMEAの推奨処置=予防処置 |
| 7.1.3.1 | 工場、施設及び設備の計画 | フロアレイアウト変更におけるリスク分析 |
| 8.3.2.1 | 設計・開発の計画-補足 | 部門横断でのリスク分析 |
| 8.3.3.1 | 製品設計へのインプット | フィージビリティ評価結果の考慮 |
| 8.3.3.2 | 製造工程設計へのインプット | DFMEAの引渡し |
| 8.3.3.3 | 特殊特性 | FMEAへの記号表記 |
| 8.3.5.1 | 設計・開発からのアウトプット-補足 | DFMEAの実施 |
| 8.3.5.2 | 製造工程設計からのアウトプット | PFMEAの実施 |
| 8.3.6.1 | 設計・開発の変更 | 変更規模に応じたFMEAの見直し |
| 8.5.1.1 | コントロールプラン | コントロールプランへのFMEAインプット |
| 8.5.2.1 | 識別及びトレーサビリティ-補足 | トレーサビリティ保証のリスク分析 |
| 8.5.5.1 | サービスからの情報のフィードバック | 10.2.6とリンク |
| 8.5.6.1 | 変更管理-補足 | 変更におけるFMEAの見直し |
| 8.7.1.4 | 手直し製品の管理 | 手直しによるリスク分析 |
| 8.7.1.5 | 修理製品の管理 | 修理によるリスク分析 |
| 10.2.3 | 問題解決 | 品質是正によるリスク分析 |
| 10.2.4 | ポカヨケ | ポカヨケによるリスク分析 |
| 10.2.6 | 顧客苦情及び市場不具合の試験・分析 | クレームによるFMEAの見直し |
帳票への組込みポイント
これだけ多くの条項でFMEAの見直しが求められているため、各帳票にFMEAへのチェックポイントを組み込むことが構築段階で重要です。
| 帳票 | 組込み方法 |
|---|---|
| プロジェクト計画・監視帳票 | インプット・アウトプットにFMEAを明記 |
| 変更管理帳票 | 「FMEA見直し要否」のチェック欄を設置 |
| クレーム管理帳票 | 「FMEA更新要否」の確認欄を設置 |
| 不適合品管理帳票 | 「FMEA該当箇所の確認」欄を設置 |
| 内部監査チェックリスト | 各条項のFMEA対応状況を確認項目に追加 |
これらを構築段階で考慮することで、審査や監査でFMEA関連の指摘を受けることが大幅に減少します。
審査・内部監査での確認ポイント
審査員が確認する8つの観点
FMEAはIATF16949の運用でも最重要事項であり、コアツールといわれる手法の1つです。これらを含めてしっかりと構築してください。
| No. | 確認観点 | 確認内容 |
|---|---|---|
| 1 | a)〜e)のインプット活用 | a)〜e)の5つのインプットがリスク分析(FMEA)に反映されているか |
| 2 | FMEAの作成・更新状況 | 6つのタイミングでFMEAが作成・見直しされているか |
| 3 | FMEAの具体性 | 故障モード・原因・対策が抽象的でなく具体的か |
| 4 | FMEAからCPへの展開 | FMEAの管理項目がコントロールプラン・作業標準書に反映されているか |
| 5 | 文書化の状況 | リスク分析結果が文書化された情報として保持されているか |
| 6 | 苦情・不良のFMEAフィードバック | 顧客クレームや工程内不良がFMEAに反映されているか |
| 7 | 変更時のFMEA見直し | 設計変更・4M変更時にFMEAが見直されているか |
| 8 | 教訓の横展開 | リスク分析の教訓が類似製品・類似工程に展開されているか |
IATF16949 6.1.2.1に関するFAQ
規格対応でよく聞かれる悩み
ISO9001やIATF16949、VDA6.3に取り組む中で、「審査対策として何を優先すべきか分からない」「要求事項に対する構築の考え方が整理できない」といった声は少なくありません。
また、社内にQMSを体系的に理解している担当者がいない場合や、外部コンサルの費用面で継続的な支援が難しいと感じるケースもあります。こうした悩みは、特定の企業に限らず、多くの現場で共通して見られるものとなっています。
FMEAを正しく実施・維持することがリスク分析の核心です。a)リコール教訓、b)製品監査結果、c)市場回収・修理、d)顧客苦情、e)スクラップ・手直しの5つのデータをFMEAにフィードバックし、故障モード・影響・原因・検出管理を継続的に更新します。
新製品立ち上げ時(新規作成)、設計変更時、工程変更時(4M変更)、顧客クレーム発生時、内部不良・スクラップ発生時、定期レビュー時の6つのタイミングで見直します。
FMEAが中心ですが、FTA(故障の木解析)やDRBFM(変更点に基づく設計レビュー)などの手法をFMEAと組み合わせて使うことも有効です。ただし、IATF16949ではFMEAが実質的なリスク分析手法として要求されています。
ISO9001の6.1は経営レベルの広範なリスク管理(リスクに基づく考え方)であり、IATF16949の6.1.2.1は製品・プロセスレベルの具体的なリスク分析です。IATF16949取得企業は両方を運用する必要があります。
a)は自社・業界のリコール履歴、b)は製品監査報告書(9.2.2.4)、c)は保証クレーム・0km不良データ、d)は顧客クレーム・スコアカード、e)は工程内不良率・スクラップ率から収集します。
FMEAの帳票自体が文書化された情報として有効です。ただし、a)〜e)のインプットに基づく見直しのトリガーと結果が追跡できるよう、FMEA改訂履歴や品質会議議事録にも記録を残すことが望ましいです。
IATF16949全体で、リスク分析(FMEA)が明示的に求められている条項は19条項あります。6.1.2.1を起点に、設計・製造・変更・クレーム・不適合管理の各プロセスでFMEAへの遡りが必要です。
最も多いのは「クレーム・変更時にFMEAが見直されていない」です。次に「FMEAの推奨処置欄が抽象的」「FMEAの内容がコントロールプランに反映されていない」「a)〜e)のインプットがFMEAに反映された記録がない」が続きます。
規格対応で不安・悩むポイント
ISO9001やIATF16949、VDA6.3といった規格対応では、「どこから手を付ければよいか分からない」「社内だけで判断を進めることに不安がある」と感じるケースが少なくありません。
品質マネジメントの構築は、一度に完成させる必要はなく、考え方やサンプルを参考にしながら、少しずつ自社に合った形へ整えていくことも可能です。
IATF16949 6.1.2.1リスク分析:まとめ
IATF16949:6.1.2.1のリスク分析は、a)〜e)の5つのインプット(リコール教訓・製品監査・市場回収・顧客苦情・スクラップ)をFMEAにフィードバックし、リスクの特定・評価・対策を継続的に更新することが核心です。
最も重要なのは、6つのタイミング(新製品立ち上げ・設計変更・工程変更・クレーム発生・内部不良発生・定期レビュー)でFMEAへの遡りを確実に行うことです。IATF16949全体で19条項がリスク分析を要求しており、各帳票にFMEAへのチェックポイントを組み込むことで、審査・監査での指摘を防ぐことができます。
FMEAは「作って終わり」ではなく「使い続けて育てる」ものです。各段階・各イベントで確実にFMEAへ遡り、a)〜e)のデータを反映し続けることが、6.1.2.1の本質です。
次の記事
【IATF16949攻略】6.1.2.2:予防処置の要求事項徹底解説!
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