IATF:7.1.5.1.1項の測定システム解析(MSA)は、簡単に言うと「校正ではわからないことを調べる技法」と覚えておきましょう。そのため、コアツールの一つとして重要な自動車産業の手法となっています。
今回の記事は、IATF:7.1.5.1.1項の測定システム解析(MSA)の意味と構築ポイントについて、だれでも簡単に測定システム解析の基礎が理解できるように解説いたします。
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条項 | 題目 | ISO9001 | IATF |
第4章 | 組織の状況 | 〇 | 〇 |
第5章 | リーダーシップ | 〇 | 〇 |
第6章 | 計画 | 〇 | 〇 |
第7章 | 支援 | 〇 | 〇 |
第8章 | 運用 | 〇 | 〇 |
第9章 | パフォーマンス評価 | 〇 | 〇 |
第10章 | 改善 | 〇 | 〇 |
条項 | 題目 | ISO9001 | IATF |
7.1.1 | 一般(資源計画) | 〇 | 〇 |
7.1.2 | 人々 | 〇 | 〇 |
7.1.3 | インフラストラクチャ | 〇 | 〇 |
7.1.3.1 | 工場、施設及び設備の計画 | 〇 | |
7.1.4 | プロセスの運用に関する環境 | 〇 | 〇注記 |
7.1.4.1 | プロセスの運用に関する環境-補足 | 〇 | |
7.1.5 7.1.5.1 |
一般(監視及び測定のための資源) | 〇 | 〇 |
7.1.5.1.1 | 測定システム解析 | 〇 | |
7.1.5.2 | 測定のトレーサビリティ | 〇 | 〇注記 |
7.1.5.2.1 | 校正/検証の記録 | 〇 | |
7.1.5.3.1 | 内部試験所 | 〇 | |
7.1.5.3.2 | 外部試験所 | 〇 | |
7.1.6 | 組織の知識 | 〇 | 〇 |
7.2 | 力量 | 〇 | 〇 |
7.2.1 | 力量-補足 | 〇 | |
7.2.2 | 力量-業務を通じた教育訓練(OJT) | 〇 | |
7.2.3 | 内部監査員の力量 | 〇 | |
7.2.4 | 第二者監査員の力量 | 〇 | |
7.3 | 認識 | 〇 | 〇 |
7.3.1 | 認識-補足 | 〇 | |
7.3.2 | 従業員の動機付け及びエンパワーメント | 〇 | |
7.4 | コミュニケーション | 〇 | 〇 |
7.5.1 | 一般(文書化した情報) | 〇 | 〇 |
7.5.1.1 | 品質マネジメントシステムの文書類 | 〇 | |
7.5.2 | 作成及び更新 | 〇 | 〇 |
7.5.3 7.5.3.1 7.5.3.2 |
文書化した情報の管理 | 〇 | 〇 |
7.5.3.2.1 | 記録の保管 | 〇 | |
7.5.3.2.2 | 技術仕様書 | 〇 |
【教材】 | No.1-001 | QMSノウハウ_学習教材 |
【教材】 | No.2-001 | コアツール_学習教材 |
【教材】 | No.7-001 | 内部監査概説_学習教材 |
この記事の目次
IATF:7.1.5.1.1項の測定システム解析(MSA)の意図
IATF:7.1.5.1.1項の測定システム解析(MSA)の意味をしっかり理解しないと、何のために測定システム解析をやっているのかわからず無駄な時間を過ごしてしまいます。
IATFの認証に向けてプロジェクトを組んでいる企業や校正にかかわる部課長さんクラスの方はしっかり理解してくださいね!
まずは測定システム解析(MSA)を行うことは何かというと、「校正対象となっている測定機器(試験機器含む)本体が持つバラつきを調べる行為」です。
では「校正と何が違うの?」という点が一番疑問に思われますよね!一言で言います。
校正は測定システム解析(MSA)の一つです。
つまり、IATFは、校正をすることだけではなく、測定システムが持つバラつきを解析してその結果を保持することを要求していることになります。
次に、測定システム解析の要求事項についてみていきましょう。
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測定システム解析対象機器の考え方
IATF:7.1.5.1.1項の測定システム解析(MSA)をすべての計測機器で実施することは莫大な労力と費用が掛かる為無駄です。そこで以下がポイントです。
・コントロールプランで定められた測定機器は、MSAの対象
・MSAの優先順位付け:重要特性(例:●●高さ)及び特殊特性(この2つは絶対やる!)
上記を理解すれば測定システム解析(MSA)対象機種はもうわかりますよね!
コントロールプランに特殊特性を付与したり、重要工程として指定した工程は、測定システム解析を実施しないと不適合です。
逆に言うと、それら以外は測定システム解析(MSA)を実施することは、優先的に行わない(必要に応じて行えばOKですし、やらなくてもいい)でOKということです。
それらに使用されている校正機器は「校正対象計測機器台帳」で管理されていると思うので、対象機器をわかるようにしておきましょう。
ISO9001/IATF16949/VDA6.3
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レファレンスマニュアルに従う
IATF:7.1.5.1.1項の測定システム解析(MSA)の要求事項では、以下のようなことが大事です。
つまり、測定システム解析の手法は、AIAG:レファレンスマニュアルに適合しなくてはなりません。レファレンスマニュアルの販売(日本語版あり)は、プレクサスジャパン社で販売していますので、下記のボタンのリンク先から購入しておきましょう。
審査の際は、レファレンスマニュアルを持っているかも大事な対象になります。
MSAの基礎を理解する
IATF:7.1.5.1.1項の測定システム解析(MSA)の要求事項を理解することは当然ですが、要求事項を理解してもMSAをできるようになったこととは異なります。
MSAを理解するためには、5つのことを理解しなくてはなりませんが、レファレンスマニュアルを見てもおそらくさっぱりわかりません(笑)。
数学的な要素が強いため、それらを簡単にした内容を次に解説します。
③-1:MSAで大事なことは5つ!
IATF:7.1.5.1.1項の測定システム解析(MSA)の要求事項で求めていることで大事なことは5つあります。
それらの具体的なやり方をレファレンスマニュアル(MSA第4版スタディガイド)で記載されていますが、まとめると以下の5つです。
②安定性
③直線性
④繰返性
⑤再現性
この5つのことを調べることが測定システム解析です。
では、前述の中で「校正はMSAの一部」と説明しましたがどういったことなのか下の図を見てください。
つまり、測定システム解析の5つの内容の内、①偏り②安定性③直線性を調べる行為は、校正で対応可能であり、④繰返し性⑤再現性はMSAの内容を理解しないとできないことを意味しています。
次に、①から⑤具体的な内容をわかりやすく解説します。
③-2:偏りとは何?
測定システム解析の中の「偏り」とは、基準となるものとのズレ(差異)を確認することです。
この内容は、いわゆる「校正」で確認しています。
ノギスの校正の場合、一般的に外部機関で校正されたブロックゲージを使用すると思いますが、それらとノギスに表示される値とのズレを確認することが校正です。
その具体的な事例を下図に示しますので、是非今一度復習してみましょう!
③-3:安定性とは何?
測定システム解析(MSA)の中の「安定性」とは、測定機器の時間変化を見ることです。測定機器を使用している間に傾向的にずれていくようなものでは校正した後に不具合が起きてしまいます。
そういったことがないように測定システム解析(MSA)では、時間変化(安定性)の確認を要求しています。具体的な事例は、以下のようになるので参考にしてみてくださいね!
③-4:直線性とは何?
測定システム解析(MSA)の中の「直線性」とは、測定範囲内での偏りを見ることです。
偏り・安定性は、一つのブロックゲージを使用して確認しましたが、直線性を確認するためには、大きさの違うブロックゲージを準備して繰返し測定することで直線性を計算することができます。
下図は、5つのブロックゲージの事例です。すべての値が直線性を表し重なってしまっていますが、きちんと直線のグラフになっていますよね!
③-5:測定システム解析では「繰返し性」「再現性」が重要!
測定システム解析を理解するためには、繰返し性と再現性を調べる必要があります。
この二つを調べるために、校正で使用した基準サンプルを使うことはできません。大事なサンプルは、「製品」または「部品」を使用する必要があります。
では「繰返し性」についてですが、これは「1人の測定者が1つの製品を使って、複数回測定した結果のバラツキを確認する行為」のことです。
次に「再現性」についてですが、これは「繰返し性に加えて、測定する人のバラつきを加味して確認する行為」です。
つまり、測定システムの中には、計測機器だけではなく、部品・製品のバラつきや測定者のバラつき・その方法も含まれます。つまりそれらを含めて解析しないと真のバラつきも含めた判定(合格または不合格)ができないのです。
具体的な繰返し性・再現性の確認事例は、下図を参照してください。
③-6:測定システム解析(MSA)が重要な理由
IATFの初学者の方の多くは、「校正すればOKじゃない?」と思いがちです。しかし校正だけでは不十分といえる理由があるから測定システム解析が必要なんです。
「測定結果がNG=測定機器の不良」とみなさんは自信を持って言えますか?
言えないですよね?それが正解です。
なぜなら、測定結果がNGには以下の4つの原因やバラつきが含まれるからです。
②測定対象物のバラつき
③測定者のバラつき
④測定方法のバラつき
つまり、測定システム解析とは、測定システムのバラつきを確認する手法ということです。
③-7:GageR&Rとは何?
測定システム解析(MSA)の意味を理解できたところでさらに疑問が出てきますよね!
IATFの中にGRR(ゲージR&R:Gage Repeatability(繰返し性)&Reproducibility(再現性))が出てきます。多くの方がここと意味不明になりますが、皆さんなら理解できます!
これは前述の「製品または部品のバラつき」と「測定者のバラつき」を加味して計算した答えすなわち「合否判定結果」を出すことが測定システム解析(MSA)が求める真の要求なんです。
具体的に行った結果を下記に示すので参考にしてください。
【難解な要求事項構築におすすめ】
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【帳票サンプル】 | No.71511-1_GRR |
【規定サンプル】 | No.7151_計測機器・試験所管理規定 |
【重要教材】 | No.2-001_コアツール学習教材 |
【おまけ】クロスタブ法はどうすればいい?
IATF:7.1.5.1.1項の測定システム解析(MSA)の要求事項でもう一つ欠かせない手法の一つに、クロスタブ法があることをご存知ですか?
GageR&R法に目が行きがちですが、クロスタブ法は、計数値システム解析ツールなので、コアツールの必須手法です。
特にクロスタブ法は、ゲージが「人:OK/NG判定」の場合に使用されることが多く、検査者の力量判定としても非常に有効であり、審査・監査でも大活躍の手法と言えます。
本サイトでは、クロスタブ法を使用した「計数値測定システム解析ツール」を事例込で販売しているため、是非IATF構築に役立ててくださいね!
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【帳票サンプル】 | No.71511-1_GRR |
【帳票サンプル】 | No.71511-2_クロスタブ法 |
【構築教材】 | No.2-001_コアツール学習教材 |
IATF:7.1.5.1.1項の測定システム解析(MSA)はどこに記載すればいい?
IATF:7.1.5.1.1項の測定システム解析(MSA)は、品質マニュアルに具体的な手法を記載するのではなく、「測定システム解析管理手順」などの実施要領書と自社の考え方を作成することが重要です。
それらの実施要領の前提は、レファレンスマニュアルに基づいて作られている必要があります。品質マニュアルには関連規定を記載し、詳細は実施要領書を見るようにしましょう。
IATF:7.1.5.1.1に関するFAQ
メールコンサルティングでよくある質問をFAQ形式で3つご紹介致します!もっと詳しく質問したい場合は、是非「メールコンサルティングサービス」をご活用くださいね!どんな疑問についても丁重にお答えします!
測定システム解析(MSA)は、測定機器や測定プロセスにおけるバラつきを評価するための手法です。校正と異なり、MSAでは測定機器、測定対象物、測定者、測定方法のバラつきも含めて解析し、その結果を基に測定システムの信頼性を評価します。これにより、測定結果の正確性と再現性を確保することができます。
全ての測定機器に対してMSAを実施する必要はありません。IATFの要求事項では、特に重大特性や特殊特性に関連する測定機器に対してMSAを行うことが推奨されています。コントロールプランで特定された重要な工程に使用される測定機器に焦点を当て、MSAを適切に実施することが重要です。
GageR&Rは、MSAの一部で、繰返し性(Repeatability)と再現性(Reproducibility)を評価する手法です。これは、測定機器のバラつきだけでなく、測定者や測定条件の違いによるバラつきを評価するための解析手法です。複数の測定者が同じサンプルを何度も測定することで、その結果を基に測定システムの信頼性を確認します。
実施する際は必ず専用の帳票を使用するようにしましょう!
IATF:7.1.5.1.1項の測定システム解析(MSA):まとめ
IATF:7.1.5.1.1項の測定システム解析(MSA)の規格解釈および構築ポイントは如何でしたでしょうか?本要求事項への対応で重要なことは以下です。
②測定システム解析の重要内容
・偏り
・安定性
・直線性
・繰返し性
・再現性
③GageR&Rは、製品と人のバラつきを加味した手法
これらを理解してMSAの手法を使いこなせばばっちり!
それではまた!
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