IATF:7.1.5.2.1項の校正/検証の記録の要求事項で最も重要なことは、ISO9001の範囲での校正すべき測定機器よりも範囲が広くなっていることです。これらのことより、非常に費用や労力がかかってしまう点が構築の難点です。
今回の記事は、IATF:7.1.5.2.1項の校正/検証の記録の要求事項の意味とスマートに実施する構築ポイントについて解説します。
知識・経験を活かし、品質マネジメントシステムの規格を幅広い方々に理解いただき、各規格の普及のお手伝いができればという思いで立ち上げました!難解な内容も、知識と経験でわかりやすく解説していきますので、これからもよろしくお願いします!あくまでも個人の見解(公式に認められたものではない)となりますので、ご理解いただき是非参考にしていただければ幸いです★
目次
IATF:7.1.5.2.1項の校正/検証の記録についての意図
IATF:7.1.5.2.1項の校正/検証の記録の要求事項で一番頭に入れておかなければならないのが、ISO9001で求められている校正すべき測定機器の範囲が広くなっている点です。
そのため、IATFでは、校正についてかかる費用や労力がISO9001の時より3倍くらい苦労します。
しかし、この苦労も普通に要求事項を読み取ってしまうと10倍くらいなので、今回の記事を読んでいただければ1/3くらいになる(と思う)ので、是非最後までお読みくださいね!
実はこの要求事項の言っている校正については、ISO9001の内容と基本的なやり方は同じです。
ただ最も違うのが、製品を計測する計測機器の範囲が、製品を測定する計測機器だけを校正すればよかったISO9001とは違い、製品品質に影響するすべての計測機器へと変化したことです。
この要求事項がある為、IATFを運用していると費用がかかるという一つの要因になっているとも言えます。
では、どのように解釈し構築すべきかについて次に解説いたします。
校正対象を理解する
IATF:7.1.5.2.1項の校正/検証の記録の要求事項の前文では、以下のようなことが大事です。この要求事項で大事なこと3つについて書かれています。
①-1:製品品質に影響するすべての測定機器は校正対象
「ISO9001の校正でもやってるよ!」という方も多いのではないでしょうか?
本当にそうですか?
例えば成型機に内蔵された温度計は校正していますか?成型品の品質に影響しますよね!
その他にも設備に搭載されている圧力計はどうですか?圧力が製品品質に影響することは容易に想像できますよね!
つまり、製品を出荷する際に外観寸法を計測するようなノギス・マイクロメーターは当然ながら、製品に影響するような測定機器だけではなく、設備に内蔵された測定機器も校正対象になります。
これらのことを理解して、該当する計測機器を洗い出し、校正機器台帳にすべて記載し整理しましょう。
審査の際は、現場監査で校正対象になっているかをしっかり確認されます。
特に成型ラインや基板実装ラインを持つ工場は要注意!
①-2:従業員所有物・顧客提供の計測機器も校正対象
製品設計段階で従業員が私物のノギスで測定したものが審査の際に発見された場合、不適合を食らう可能性があるので注意が必要です。
設計現場に校正されていないようなゲージ・計測機器が転がっていると、それらで測定を行っていると判断されかねません。
「これでは測定していません」と言い訳しても別の要求事項でも不適合になる可能性を秘めています。例えば、トレーサビリティや5Sなど様々な要求事項があるので注意してください。
また、「顧客から借りている計測機器は顧客が保証しているから使い続けている」というのも通じません。顧客所有物も校正対象です!
①-3:校正検証の記録は確実に残す!
前述より、製品品質に影響する測定を行う測定機器は校正の対象になり、それらを校正したらISO9001の校正同様に、校正/検証の記録を保持するようにしてください。
審査の際は、ISO9001同様に校正対象測定機器をサンプリングされて確認されます。
その際に、7.1.5.2項の測定のトレーサビリティが確立されていることも一緒に確認されるので、計測機器台帳と測定機器の紐づけ及び、その校正/検証の記録を漏れなく準備をしておくことがポイントです。
校正についての構築ポイントは、7.1.5.2項で詳しく解説していますので、そちらを参考にしてみてくださいね!
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測定機器の改造などは記録に残す!
IATF:7.1.5.2.1項の校正/検証の記録の要求事項には、以下のようなことが大事です。
一瞬製品設計のことを言っているような要求事項に読み取れますが違います。この意味は、測定システムに影響する変更を、校正/検証の記録に含める必要があることを意味しています。
例えば、測定機器の改造を行った場合、どの測定機器を改造したのか、その改造した測定機器はどの測定機器と校正したのかということを記録に残すことが必要になります。
特に注意すべきは、自動計測システムなどのプログラムのバージョン管理です。審査でよく不適合になるのが「計測システムのバージョンUP」です。
バージョン変更を行った後に「どのバージョンと校正/検証を行ったのか」が校正記録・変更履歴にわかるようにしておく必要があります。
計測機器に対するトラブル対応と未然防止
この意味は、校正するタイミングで仕様値外れが起きたらそれを記録することを意図しています。校正記録にOK/NG判定を付けてNGとその理由を記載しましょう。
これは仕様値外れが発生した場合のリスク分析要求なので、一般的にはPFMEAの中で各工程の測定機器のリスク分析が行われていることがほとんどです。
特に自動計測機器については、PFMEAの中で漏れないように注意しましょう!
測定機器のトラブルは必要に応じて顧客に報告!
簡単に言うと生産中や校正中にトラブルが起きたら、その測定機器の校正記録から生産品の検査記録まで遡って確認できることを要求しています。
校正記録はきちんと保持し、生産記録には「どの測定機器で検査したか」がわかるようにしてください。これができていないと不適合になりますし、測定のトレーサビリティーが担保できていないことにもなります。
また、上記の内容において「過去に遡ったらその測定機器がある時期から異常が発生したことがわかった。しかし顧客に出荷してしまった」とわかったら即座に顧客に通知してください!
ソフトウェアのバージョン管理は要注意!
IATF:7.1.5.2.1項の校正/検証の記録の要求事項には、以下のようなことが大事です。
この意味は、測定機器にインストールされているソフトウェアのバージョンが、意図したバージョンになっているかを使用前にチェックすることを要求しています。
この対策は、使用前にバージョンがわかるように張り紙やシールなどでビジュアル的に捉えられるようにしておくことや「使用前点検表」にチェック項目欄を設けることで対応できます。
また、その製品や工程に使用される測定機器にインストールされているソフトウェアが、意図した結果(例えば外観検査)が得られるものか検証すること要求しています。
意図した用途に使用できないソフトウェアでは利用する意味がないので、それらを検証した結果を残すようにしてください。
記録を残し維持する
IATF:7.1.5.2.1項の校正/検証の記録の要求事項には、以下のようなことが大事です。
この意図は、校正/検証の記録の保持と日常点検などの記録の維持・管理です。測定機器に関する活動を行った場合は、その記録に遡って確認できる仕組みがあればOKです。
これらはISO9001の要求でもあるので、特に難しくはありませんよね!
IATF:7.1.5.2.1項の校正/検証の記録はどこに記載すればいい?
IATF:7.1.5.2.1項の校正/検証の記録の要求事項は、計測機器管理規定を作成し、そこに詳細なルールを記載することで対応できます。
ISO9001:7.1.5.2項の測定のトレーサビリティの要求事項を参考に品質マニュアルに概要を記載し、ISO9001のプラスαの対応事項についてのルールを計測機器管理規定に追加するようにしましょう。
IATF:7.1.5.2.1に関するFAQ
よくある質問をFAQ形式で3つご紹介致します!もっと詳しく質問したい場合は、是非メールコンサルティングサービスをご活用くださいね!
IATFでは、製品品質に影響を与えるすべての測定機器が校正対象になります。まず、校正対象機器をリストアップし、計測機器台帳にすべての機器を記載・整理しましょう。また、校正や検証の記録を適切に保持し、審査の際にトレーサビリティが確認できる状態にすることが重要です。
ISO9001では製品品質に直接影響を与える測定機器が校正対象でしたが、IATFではこれに加えて、設備に内蔵された測定機器や、従業員所有物・顧客提供の計測機器も校正対象となります。範囲が広がったため、事前にしっかりと対象機器を把握して対応することが必要です。
校正対象となる測定機器にインストールされているソフトウェアのバージョンが意図したものであることを確認し、使用前にバージョンが分かるように管理することが求められます。例えば、使用前点検表にバージョン確認の項目を追加するなどの対策を講じると良いでしょう。また、バージョン変更後は、そのバージョンでの校正結果を記録しておくことが重要です。
IATF:7.1.5.2.1項の校正/検証の記録:まとめ
IATF:7.1.5.2.1項の校正/検証の記録の規格解釈および構築ポイントは如何でしたでしょうか?
IATFにおいては、ISO9001よりも校正対象機器の範囲が広くなっていることが特徴ですが、校正のやり方自体に大きな変化はありません。
注意点としては、ソフトウェアのバージョン管理などが厳しくなっているので、特に自動測定器を導入している工程についてはしっかり確認するようにしましょう!
それではまた!
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