【IATF16949攻略】7.1.5.2.1:校正/検証の記録の要求事項徹底解説!

IATF16949:7.1.5.2.1項「校正/検証の記録」は、ISO9001の校正要求より校正すべき計測機器の範囲が大幅に拡大された条項です。端的に言うと、ISO9001では「製品を測定する計測機器」が対象だったものが、IATF16949では「製品品質に影響するすべての計測機器」に拡大されています。

この範囲拡大により、成型機に内蔵された温度計・圧力計・設備に組み込まれた自動計測器なども校正対象となります。さらに従業員の私物計測機器・顧客から提供された計測機器も対象外にはなりません。

本記事では、ISO9001との違い・a)〜i)の各要求の詳細解説・校正対象機器の洗い出し方法・計測機器台帳の作り方など、現場実務経験をベースに網羅的に解説します。


この記事を書いた人

所属:QMS認証パートナー専属コンサルタント
年齢:40代
経験:製造業にて25年従事(内自動車業界15年以上)
得意:工場品質改善・プロジェクトマネジメント
目標:ちょっとの相談でも頼りにされるコンサルタント
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第7章:支援についての「要求事項リスト」はこちら
ISO・IATF 7章
※IATF運用には、ISO9001の要求事項の運用が必須です。
条項 題目 ISO9001 IATF
第4章 組織の状況
第5章 リーダーシップ
第6章 計画
第7章 支援
第8章 運用
第9章 パフォーマンス評価
第10章 改善
条項 題目 ISO
9001
重要
帳票
IATF
16949
重要
帳票
7.1.1 一般(資源計画)
7.1.2 人々
7.1.3 インフラストラクチャ
7.1.3.1 工場、施設及び設備の計画
7.1.4 プロセスの運用に関する環境 〇注記
7.1.4.1 プロセスの運用に関する環境-補足
7.1.5
7.1.5.1
一般(監視及び測定のための資源)
7.1.5.1.1 測定システム解析
7.1.5.2 測定のトレーサビリティ 〇注記
7.1.5.2.1 校正/検証の記録
7.1.5.3.1 内部試験所
7.1.5.3.2 外部試験所
7.1.6 組織の知識
7.2 力量
7.2.1 力量-補足
7.2.2 力量-業務を通じた教育訓練(OJT)
7.2.3 内部監査員の力量
7.2.4 第二者監査員の力量
7.3 認識
7.3.1 認識-補足
7.3.2 従業員の動機付け及びエンパワーメント
7.4 コミュニケーション
7.5.1 一般(文書化した情報)
7.5.1.1 品質マネジメントシステムの文書類
7.5.2 作成及び更新
7.5.3
7.5.3.1
7.5.3.2
文書化した情報の管理
7.5.3.2.1 記録の保管
7.5.3.2.2 技術仕様書

当サイトの情報提供スタンスについて

当サイトでは、ISO9001およびIATF16949について、規格要求の解説にとどまらず、実務でどのようにルールや記録へ落とし込むかを重視して情報を整理しています

規格の理解とあわせて、「現状とのギャップをどう捉えるか」「どこから手を付けるべきか」といった判断に迷いやすい点を、現場目線で分かりやすく解説することを目的としています。

記事内容を自社へ当てはめる際の考え方や、判断に迷うポイントについては、別ページで整理した情報も用意しています。

IATF16949:7.1.5.2.1項の「意図」を理解する

ISO9001:7.1.5.2項との違い

7.1.5.2.1項を正しく理解するためには、まずISO9001:7.1.5.2項(測定のトレーサビリティ)との違いを整理することが重要です。

比較項目 ISO9001:7.1.5.2 IATF16949:7.1.5.2.1
校正対象の範囲 製品やサービスの適合性確認に使用する測定機器 製品品質に影響するすべての計測機器
設備内蔵の計測機器 対象外のケースが多い 対象
従業員所有物の計測機器 原則対象外 対象
顧客所有物の計測機器 対象外 対象
ソフトウェアバージョン管理 明示なし 要求あり(g・i)
仕様外れ時のリスク評価 明示なし 要求あり(b・c)
顧客への通知 明示なし 要求あり(e)
a)〜i)の記録要件 なし 9項目の記録が必要

この「校正対象範囲の拡大」がISO9001との最大の違いであり、IATF16949の校正管理が費用・労力面で負担増になる主な原因ですただし、正しく理解して体系的に対応すれば、その負担を最小限に抑えられます。

なぜ範囲が拡大されたか

自動車産業では、製品品質は最終的な寸法検査だけで決まるのではなく、製造工程全体を通じて形成されます。例えば、以下のような内容があります。

品質に影響するとは?

①射出成型では、成型機の温度・圧力が製品の密度・寸法・物性に直接影響する
②基板実装ラインでは、リフロー炉の温度プロファイルが半田品質を左右する
③プレス工程では、プレス圧力・速度が製品の寸法精度・残留応力に影響する

これらの工程に組み込まれた計測機器が校正されていなければ、最終検査で品質を確認していても、そもそも工程条件の測定値が信頼できないことになります。IATFがこの拡大要求を定めているのはこのような背景からです。

校正対象機器の正確な把握:洗い出しの方法

校正対象となる計測機器の分類

以下の判断基準で、自社の全計測機器を棚卸しします。

分類 対象の判断基準 具体例
製品測定機器
→従来対象
製品の寸法・特性を直接測定する機器 ノギス・マイクロメータ・三次元測定機・荷重計
工程パラメータ計測機器
→追加
製造工程の条件パラメータを計測する機器 成型機内蔵温度計・圧力計・炉の温度センサー
設備組込み計測機器
→追加
設備に内蔵・組み込まれた計測機器 プレス機の荷重センサー・ロボットの位置センサー
自動計測・検査機器
→追加
自動測定・外観検査を実施する機器 画像検査装置・レーザー測定器・自動寸法計測機
従業員所有物
→追加
従業員が業務上使用している私物の計測機器 私物のノギス・巻尺・温度計
顧客所有物
→追加
顧客から貸与・提供された計測機器 顧客貸与の専用測定器・ゲージ

設備内蔵計測機器の洗い出しで注意すべきポイント

特に成型ラインや基板実装ライン・プレスラインを持つ工場は要注意です。

設備に内蔵された計測機器は「設備の一部」として見過ごされやすく、審査での指摘が多い箇所です。各製造設備について以下を確認してください。

  • 設備の運転条件(温度・圧力・速度・電流等)を計測しているセンサー・計器が存在するか
  • その計測値が製品品質(寸法・物性・外観・機能)に影響するか
  • 影響する場合は、その計測機器を校正対象として計測機器台帳に登録する

従業員所有物・顧客所有物への対応

従業員の私物の計測機器が設計現場や検査エリアに存在し、業務に使用されている場合は校正対象となります。「これでは測定していません」という主張は、現場に未校正の計測機器が存在する時点でトレーサビリティや5S等の別要求での不適合リスクを生じさせます。

対応策は以下の2つです。

対応 内容
私物の計測機器は業務での使用を禁止する 社内ルールとして計測機器管理規定に明記し、私物の使用を禁止する
使用する場合は校正済み状態を維持する 私物であっても会社として校正を実施し、校正シールを貼付する

顧客所有物については「顧客が保証しているから」という理由では対応不可です。顧客所有物も同様に校正対象として管理するルールを計測機器管理規定に明記してください。

計測機器台帳の管理項目と作成方法

校正対象機器が特定できたら、計測機器台帳として一元管理します。

計測機器台帳に含める管理項目

管理項目 内容
機器管理番号 各計測機器に付与する固有の識別番号
機器名称・型式 機器の名称とメーカー型式
設置場所・使用工程 どの工程・設備で使用しているか
測定対象・測定量 何を測定しているか(寸法・温度・圧力等)
製品品質への影響 対象製品・工程への品質影響の有無と内容
校正周期 何ヶ月に1回校正するか
校正機関 JCSS認定機関等の校正委託先
直近校正日 最後に校正した日付
校正有効期限 次回校正の期限日
特殊特性との紐づけ 特殊特性(SC・CC)に関わる測定に使用するか
所有区分 社有・従業員所有・顧客所有の区別
ソフトウェアバージョン 計測機器に搭載されたソフトウェアのバージョン(該当する場合)
計測機器台帳の活用方法

計測機器台帳は単なるリストではなく、以下の機能を持つ管理ツールとして運用します。

①校正期限の管理:有効期限切れが近い機器を色分けや期限順で管理する
②特殊特性との紐づけ:特殊特性に関わる測定機器を識別し、優先管理する
③トレーサビリティの確保:どの機器で測定したかを生産記録と紐づける

要求事項a)〜i)の詳細解説

7.1.5.2.1項では、校正/検証の記録に含めるべき9つの事項が定められています。

a)設計変更による改訂

測定システムに影響を与える変更(計測機器の改造・設計変更等)を、校正/検証の記録に含める必要があります。これは製品の設計変更の話ではなく、計測機器・測定システム自体の変更の記録要求です。例えば以下のような変更が該当します。

変更の例 記録すべき内容
計測機器の改造・カスタマイズ どの機器をどのように改造したか、改造後に何と比較校正したか
測定治具・ゲージの変更 変更前後のゲージ設計と変更理由・変更後の校正結果
自動計測システムの構成変更 センサー・配線・ハードウェアの変更と変更後の検証記録

特に重要なのが自動計測システムの変更です「どのバージョン・構成で校正を実施したか」が後から追跡できる状態になっていることが求められます。

b)受け入れた仕様外れの値

校正の結果、計測機器が仕様外れの値を示した場合でも、そのまま使用を継続する(受け入れる)場合は、その仕様外れの事実と受け入れた根拠を記録に残すことが求められます。

仕様外れとなった計測機器を「許容できる」と判断する場合は、以下を記録します。

記録項目 内容
仕様外れの内容 どの測定範囲で・どのくらいの誤差が発生したか
受け入れた根拠 製品公差に対する影響評価・他の計測機器との整合性
使用条件の制限 仕様外れでも使用可能な条件(測定範囲・測定対象の限定等)
承認者 受け入れを判断・承認した担当者

「とりあえず使い続けた」という記録のない状態が最も問題です仕様外れを認識した時点で、受け入れるか廃棄するかを判断し、その判断根拠を記録してください。

c)仕様外れ状態によるリスク評価

【IATF16949攻略】7.1.5.2.1:校正/検証の記録の要求事項徹底解説!①

計測機器が仕様外れの状態にある場合、それが製品やサービスにもたらすリスクを評価することが求められます。このリスク評価は、PFMEA(工程FMEA)の中で各工程の計測機器に関するリスク分析として実施することが最も実務的な対応です。

PFMEAには以下の視点でリスクを記載します。

故障モード 影響 管理策
計測機器の示す値が仕様外れになる 不良品を合格品と判定する可能性 定期校正・校正記録のレビュー・ダブルチェック
センサーが故障して異常値を示す 工程条件が管理外になり不良品が発生 アラーム設定・定期点検・バックアップ計測

特に自動計測機器については、PFMEAの中でリスク分析が網羅されているか確認してください自動計測機器の故障モードが抜けている場合、審査で指摘されるリスクが高くなります。

d)校正外れまたは故障の発見と以前の測定結果の妥当性

校正中または使用中に計測機器の校正外れや故障が発見された場合、それが以前に実施した測定結果に与える影響を評価し、文書化することが求められます。

①校正外れ・故障の発見

②「いつから」外れていたかを推定
→前回の正常校正日を確認

③その期間に当該機器で測定した製品・工程の特定

④以前の測定結果への影響を評価
→測定値の信頼性は保たれていたか

⑤必要に応じて再測定・製品の再評価

⑥顧客への通知が必要かどうかの判断
→要求e参照

⑦全対応の記録化

校正記録はきちんと保持し、生産記録には「どの計測機器で検査したか」がわかる仕組みが必要ですこの紐づけができていないと、測定のトレーサビリティが担保できていないとして不適合になります。

e)顧客への通知

計測機器の不具合により疑わしい製品や材料が顧客に出荷されている(または出荷された可能性がある)場合、顧客への通知が求められます

IATF16949の要求事項の中で、顧客への通知要求は複数の条項にまたがって登場します

7.1.5.2.1項のe)もその一つです。審査で「顧客への通知を怠った事例」が発見された場合、重大不適合として扱われることもあります。

計測機器管理規定に以下必須

計測機器管理規定に記載すべき顧客通知関連事項は、校正外れ・故障発見時の顧客通知の判断基準(どのような状態になったら通知が必要か)、通知の方法と連絡先の確認手順、通知のタイミング(発覚後何日以内に通知するか)、通知内容に含めるべき情報(影響期間・対象製品・対応方針)です。

計測機器管理規定とは?

f)校正/検証後の仕様適合表明

【IATF16949攻略】7.1.5.2.1:校正/検証の記録の要求事項徹底解説!②

校正や検証が完了した後、計測機器が再度仕様に適合していることを確認し、そのことを記録として残すことが求められます。

校正証明書に「校正の結果、仕様に適合していることを確認した」という記載・確認印があれば、この要求を満たす証拠になります。JCSS認定機関が発行する校正証明書はこの要件を満たしています

社内校正を実施している場合は、校正記録の最後に「校正の結果、仕様内であることを確認した(確認者名・日付)」という欄を設けてください。

g)ソフトウェアのバージョン検証

計測機器や試験設備に使用されるソフトウェアについて、そのバージョンが意図したものであることを使用前に確認し、バージョン変更があった場合の検証結果を記録することが求められます。

「計測システムのバージョンUP/DOWNの変更」は審査で頻繁に不適合が発見される項目です。よくある不備の状態は以下の通りです。

よくある不備 内容
バージョン変更後の校正記録がない ソフトウェアを更新したが、どのバージョンで校正したかが記録にない
使用中のバージョンが校正時と異なる 校正後にソフトウェアが更新され、校正したバージョンと現在のバージョンが一致しない
バージョン管理が形式的 バージョン番号の記録はあるが、変更内容・変更理由・検証結果がない

最も実務的な対策は「使用前点検表にソフトウェアバージョン確認チェック項目を設けること」です。

使用前点検表の記載例

点検項目 確認内容 確認欄
ソフトウェアバージョン バージョンが規定バージョン(Ver.X.X)であること
校正有効期限 有効期限内であること
機器の外観 損傷・異常がないこと

この点検表が毎日・毎シフト記入されることで、「使用前に意図したバージョンであることを確認した」という証拠になります。

また、ソフトウェアが更新された際には以下の記録を残してください。

  • 変更前のバージョン番号と変更後のバージョン番号
  • 変更内容(機能追加・バグ修正等)
  • 変更後の検証内容と検証結果(既知の測定値での確認等)
  • 変更後の承認者

h)ゲージの校正及び保全活動の記録

【IATF16949攻略】7.1.5.2.1:校正/検証の記録の要求事項徹底解説!③

従業員所有・顧客所有・供給者所有を含む全ての計測機器(ゲージ)について、校正及び保全活動の記録を保持することが求められます。

h)が他の項目と異なる点は、所有者に関わらず「使用している」計測機器全ての記録が対象という点です。

計測機器の所有者 管理の基本方針
会社所有 計測機器台帳に登録・定期校正・校正記録の保持
従業員所有 業務使用を禁止するか、使用する場合は会社として校正を実施し記録を保持
顧客所有(貸与品) 顧客との合意の上で校正管理を実施し、校正記録を保持
供給者(仕入先)所有 第二者監査・サプライヤー評価の中で校正管理状況を確認

保全活動の記録とは、計測機器の日常点検・清掃・消耗品交換等の維持管理活動の記録です。設備台帳や点検チェックシートに記録を残してください。

i)生産に関係するソフトウェアの検証

生産に使用されるソフトウェアが、意図した用途のために使用できるものであることを検証し、その記録を保持することが求められます。

g)が「計測機器に組み込まれたソフトウェアのバージョン確認」を求めているのに対し、i)は「生産・検査に使用されるソフトウェアが意図した結果を出せるかの能力検証」を求めています。

要求 内容
g) ソフトウェアのバージョンが意図したものかの確認(事前チェック)
i) ソフトウェアが意図した機能を正しく発揮できるかの能力検証(妥当性確認)

実務での検証方法の例

ソフトウェアの種類 検証方法
外観検査システム 既知の合格品・不合格品を使って正しく判定できるかを確認する(ゴールデンサンプル試験)
自動寸法測定システム 寸法が既知の標準品を測定して、正しい値が得られるか確認する
生産管理ソフトウェア テスト環境で意図した動作が実行されるかを確認し、本番環境へ移行する

校正/検証の記録管理の実施方法

記録として残すべき項目

校正証明書・自社の校正記録には以下の情報を含めます。

記録項目 内容
校正実施日 いつ校正したか
計測機器の識別情報 管理番号・機器名称・型式・シリアル番号
使用した標準器 何と比較校正したか(JCSS証明書番号等)
校正結果 測定値・基準値・誤差・合否判定
校正者・承認者 誰が実施し誰が承認したか
次回校正予定日 次回の校正期限
仕様外れの有無と対応 仕様外れがあった場合のb)〜d)への対応

校正記録の保管期間

IATF16949では保管期間の具体的な指定はありませんが、7.5.3.2.1項(記録の保管)の要求事項および顧客CSRに従って保管期間を設定することが必要です。

実務的には、「当該計測機器が廃棄された後も最低1年間(顧客要求がある場合はそれに従う)の保管」を原則とする企業が多いです。計測機器管理規定に保管期間を明記してください。

内部監査・審査での確認ポイントと質問例

7.1.5.2.1項の審査では、「設備内蔵の計測機器が校正台帳から漏れている」「従業員の私物が現場にある」「ソフトウェアバージョンの管理記録がない」という不備が最も多く指摘されます。

現場ウォーク中に審査員が設備の計器・センサーを直接確認し「これは校正していますか?」と聞いてくることが非常に多いため、設備内蔵計測機器の校正対応は特に念入りに確認してください

審査で指摘されやすい5つのポイント

No. 指摘されやすいポイント よくある不備の状態 対策
設備内蔵計測機器が校正台帳から漏れている 製品測定用のノギス等は管理されているが、成型機の温度計・圧力計が台帳に含まれていない 全製造設備の計測機器を棚卸しし、製品品質への影響を評価して台帳に追加する
従業員の私物計測機器が現場にある 設計・検査エリアに未校正の私物ノギスや温度計が放置されている 私物計測機器の使用を禁止するルールを設け、現場の5S活動と連動させる
ソフトウェアバージョンの管理記録がない 自動計測器や検査装置のソフトウェアが更新されたが、更新前後のバージョン記録・検証記録がない 使用前点検表にバージョン確認欄を設け、変更時の検証記録を保持するルールを整備する
仕様外れ発見時の対応が記録されていない 校正でNGが出たが「次回から気をつける」だけで、影響評価・是正処置の記録がない b)〜d)の要件に対応した「仕様外れ発生時の対応フォーム」を整備し、必ず記録を残す
校正記録と生産記録が紐づいていない 校正記録はあるが「どの製品の検査にどの機器を使ったか」が追跡できない 生産・検査記録に使用した計測機器の管理番号を記載するルールを設ける

監査で「見られる帳票・記録」一覧

帳票・記録 確認される内容
計測機器台帳 全対象機器の登録・校正有効期限・ソフトウェアバージョン
校正証明書(JCSS等) 外部機関による校正の証拠・認定マーク
自社校正記録 社内校正の実施記録・合否判定・承認
仕様外れ発生時の対応記録 b)〜d)の要件への対応証拠
顧客通知記録 e)の要件への対応証拠
ソフトウェアバージョン管理記録 使用前確認・変更時の検証記録
使用前点検表 バージョン確認・校正有効期限確認の証拠
生産記録・検査記録 使用計測機器の管理番号記載(トレーサビリティ)
計測機器管理規定 管理ルールの文書化状況

IATF16949:7.1.5.2.1に関するFAQ

規格対応でよく聞かれる悩み

ISO9001やIATF16949、VDA6.3に取り組む中で、「審査対策として何を優先すべきか分からない」「要求事項に対する構築の考え方が整理できない」といった声は少なくありません。

また、社内にQMSを体系的に理解している担当者がいない場合や、外部コンサルの費用面で継続的な支援が難しいと感じるケースもあります。こうした悩みは、特定の企業に限らず、多くの現場で共通して見られるものとなっています。

IATF16949の校正はISO9001と何が違いますか?

最大の違いは校正対象の範囲です。ISO9001では「製品やサービスの適合性確認に使用する測定機器」が対象でしたが、IATF16949では「製品品質に影響するすべての計測機器」に拡大されています。成型機の温度計・圧力計、設備に内蔵されたセンサー、従業員所有の計測機器、顧客から提供された計測機器なども対象となります。また、a)〜i)の9項目の記録要件やソフトウェアバージョン管理の要求もISO9001にはないIATF固有の要求です。

設備に内蔵された温度計・圧力計は全て校正しなければなりませんか?

「製品品質に影響するかどうか」が判断基準です。設備の温度・圧力が製品の寸法・物性・外観・機能に影響するならば校正対象です。逆に、製品品質と無関係な設備パラメータ(例:冷却水循環ポンプの流量計等)は対象外となります。PFMEAを活用して各工程の計測機器と製品品質の因果関係を整理し、影響があるものを校正対象として特定することが実務的なアプローチです。

従業員の私物のノギスが現場にある場合はどうすればよいですか?

2つの対応があります。①私物の使用を禁止する:計測機器管理規定に「業務上の測定は会社支給の校正済み計測機器を使用すること」と明記し、私物の持ち込みを禁止します。②使用する場合は校正を実施する:会社として校正を実施し、校正シールを貼付して計測機器台帳に登録します。いずれの場合も、未校正の私物計測機器が業務測定に使われている状態を作らないことが重要です。

ソフトウェアバージョンの確認はどのように記録すればよいですか?

使用前点検表にバージョン確認欄を設け、毎日・毎シフトの点検時に確認・記録する方法が最も実務的です。「規定バージョンはVer.X.X、確認結果OK」という形式で記録します。バージョン変更時は、変更前後のバージョン番号・変更内容・変更後の検証結果(ゴールデンサンプルでの確認等)・承認者を記録として保持してください。

校正外れが発覚した場合、顧客への通知は必ず必要ですか?

疑わしい製品が顧客に出荷されている可能性がある場合に通知が必要です。校正外れが発覚した時点で、①その計測機器がいつから校正外れだったか(または外れた可能性があるか)、②その期間に当該機器で測定した製品が顧客に出荷されているか、を確認します。出荷済みの場合は、顧客への通知を検討してください。「通知が必要な状況の定義と通知手順」を計測機器管理規定に事前に明記しておくことで、発生時の対応が迷いなく進められます。

校正記録の保管期間はどのくらいに設定すればよいですか?

規格上の具体的な指定はありません。実務的には計測機器の使用期間+顧客CSRで定められた記録保管期間(多くの場合1年〜5年以上)が基準になります。自動車産業では製品保証期間が長いため、校正記録の保管期間を長めに設定している企業が多いです。計測機器管理規定に明記し、顧客CSRの要求と整合させてください。

PFMEAと校正管理はどのように連動させればよいですか?

PFMEAには「計測機器の示す値が仕様外れになる」という故障モードを工程ごとに記載し、その影響・発生度・検出度を評価します。特に自動計測機器・特殊特性に関わる計測機器については、PFMEA内でのリスク評価が重要です。PFMEAで特定したリスクの高い計測機器については、校正周期を短くする・二重チェックを実施するなどの管理強化を計測機器管理規定に反映させることで、c)の「仕様外れ状態によるリスク評価」要件を満たすことができます。

計測機器管理規定は必ず作成しなければなりませんか?

規格上、文書の形式は問いませんが、a)〜i)の記録要件・ソフトウェアバージョン管理・顧客通知手順・仕様外れ対応フロー等の複合的な要求事項を管理するためには、独立した計測機器管理規定の作成が実務上ほぼ必須です。ISO9001の測定のトレーサビリティ(7.1.5.2項)の規定を基本として、IATF16949固有の追加要求(校正対象範囲の拡大・a〜i要件等)を追記する形が最も効率的です。

まとめ:IATF16949:7.1.5.2.1項の校正/検証の記録

IATF16949:7.1.5.2.1項は、ISO9001より大幅に拡大された校正対象範囲と、a)〜i)の9項目の記録要件を規定する条項です。本要求事項のポイントを改めて整理すると以下の通りです。

  • 校正対象範囲の拡大:製品測定機器だけでなく、設備内蔵計測機器・従業員所有物・顧客所有物も対象
  • 計測機器台帳の整備:全対象機器を登録・校正有効期限・ソフトウェアバージョンまで一元管理
  • a)〜i)の9項目の記録要件:機器変更・仕様外れ・リスク評価・故障対応・顧客通知・SW管理等を記録化
  • ソフトウェアバージョン管理(g・i):使用前点検表でのバージョン確認・変更時の検証記録が必要
  • PFMEAとの連動(c):計測機器の故障リスクをPFMEAに組み込みリスク管理する
  • 顧客通知要件(e):疑わしい製品が出荷された場合の通知判断基準と手順を規定化する
  • 校正記録と生産記録の紐づけ(d):どの機器で測定したかが後から追跡できる仕組みを整備する
  • 計測機器管理規定の作成:ISO9001の校正管理+IATF固有の追加要求を一体的に規定する

「校正するだけ」「校正証明書を保管するだけ」ではIATF16949の要求に対応できません。校正対象の正確な把握・a)〜i)への対応・ソフトウェアバージョン管理・トレーサビリティの確保という4点を柱に体系的な管理体制を構築してください。

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7.1.5.2.1項は「校正対象の範囲設定」と「a〜iの9項目への対応」で迷いやすい条項です。「どこまでが校正対象か」「ソフトウェアバージョンの記録はどう整備すればよいか」という個別ケースのご相談は、メールコンサルティングで対応しています。

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