
IATF16949:7.1.3.1項の工場・施設及び設備の計画では、新しい工場や設備を導入する際に「部門横断的アプローチ」を用いてリスク特定・緩和を含む計画の検証を行うことを要求しています。
本記事では、7.1.3.1項の要求事項a)〜e)を体系的に解説し、フロアレイアウトプランの作成事例や監査対策のポイントまで、現場で「使える」情報を網羅的に解説いたします。

この記事を書いた人
所属:QMS認証パートナー専属コンサルタント
年齢:40代
経験:製造業にて25年従事(内自動車業界15年以上)
得意:工場品質改善・プロジェクトマネジメント
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| 条項 | 題目 | ISO9001 | IATF |
| 第4章 | 組織の状況 | 〇 | 〇 |
| 第5章 | リーダーシップ | 〇 | 〇 |
| 第6章 | 計画 | 〇 | 〇 |
| 第7章 | 支援 | 〇 | 〇 |
| 第8章 | 運用 | 〇 | 〇 |
| 第9章 | パフォーマンス評価 | 〇 | 〇 |
| 第10章 | 改善 | 〇 | 〇 |
| 条項 | 題目 | ISO 9001 |
重要 帳票 |
IATF 16949 |
重要 帳票 |
| 7.1.1 | 一般(資源計画) | 〇 | ● | 〇 | |
| 7.1.2 | 人々 | 〇 | ● | 〇 | |
| 7.1.3 | インフラストラクチャ | 〇 | ● | 〇 | |
| 7.1.3.1 | 工場、施設及び設備の計画 | 〇 | ● | ||
| 7.1.4 | プロセスの運用に関する環境 | 〇 | ● | 〇注記 | |
| 7.1.4.1 | プロセスの運用に関する環境-補足 | 〇 | ● | ||
| 7.1.5 7.1.5.1 |
一般(監視及び測定のための資源) | 〇 | 〇 | ||
| 7.1.5.1.1 | 測定システム解析 | 〇 | ● | ||
| 7.1.5.2 | 測定のトレーサビリティ | 〇 | 〇注記 | ||
| 7.1.5.2.1 | 校正/検証の記録 | 〇 | ● | ||
| 7.1.5.3.1 | 内部試験所 | 〇 | ● | ||
| 7.1.5.3.2 | 外部試験所 | 〇 | ● | ||
| 7.1.6 | 組織の知識 | 〇 | 〇 | ||
| 7.2 | 力量 | 〇 | 〇 | ● | |
| 7.2.1 | 力量-補足 | 〇 | |||
| 7.2.2 | 力量-業務を通じた教育訓練(OJT) | 〇 | |||
| 7.2.3 | 内部監査員の力量 | 〇 | ● | ||
| 7.2.4 | 第二者監査員の力量 | 〇 | ● | ||
| 7.3 | 認識 | 〇 | 〇 | ||
| 7.3.1 | 認識-補足 | 〇 | |||
| 7.3.2 | 従業員の動機付け及びエンパワーメント | 〇 | |||
| 7.4 | コミュニケーション | 〇 | ● | 〇 | |
| 7.5.1 | 一般(文書化した情報) | 〇 | 〇 | ||
| 7.5.1.1 | 品質マネジメントシステムの文書類 | 〇 | |||
| 7.5.2 | 作成及び更新 | 〇 | 〇 | ||
| 7.5.3 7.5.3.1 7.5.3.2 |
文書化した情報の管理 | 〇 | 〇 | ||
| 7.5.3.2.1 | 記録の保管 | 〇 | |||
| 7.5.3.2.2 | 技術仕様書 | 〇 |
当サイトの情報提供スタンスについて
当サイトでは、ISO9001およびIATF16949について、規格要求の解説にとどまらず、実務でどのようにルールや記録へ落とし込むかを重視して情報を整理しています。
規格の理解とあわせて、「現状とのギャップをどう捉えるか」「どこから手を付けるべきか」といった判断に迷いやすい点を、現場目線で分かりやすく解説することを目的としています。
記事内容を自社へ当てはめる際の考え方や、判断に迷うポイントについては、別ページで整理した情報も用意しています。
この記事の目次
- 1 IATF16949:7.1.3.1項の工場・施設及び設備の意図
- 2 7.1.3.1の要求事項の全体像
- 3 計画は部門横断的アプローチが必須!
- 4 フロアレイアウトプランを作成する
- 5 リスク特定とリスク緩和方法を実施する
- 6 サイバー攻撃に対する防御を考慮する
- 7 製造フィージビリティ評価を適用する
- 8 工程有効性の維持と再評価
- 9 変更管理のルールを適用する
- 10 リーン生産の適用と構内協力会社への対応
- 11 一連の結果・進捗はマネジメントレビューのインプット!
- 12 IATF16949:7.1.3.1項の取組みはどこに記載すればいい?
- 13 内部監査・審査での確認ポイントと質問例
- 14 IATF16949:7.1.3.1に関するFAQ
- 15 IATF16949:7.1.3.1項の工場・施設及び設備の計画:まとめ
IATF16949:7.1.3.1項の工場・施設及び設備の意図
自動車産業にかかわる多くの企業では、新製品立ち上げすなわち、製品開発から量産前までにどの工場・施設で生産するかを事前に計画されていると思います。また、新製品開発段階で新しい設備を工場に導入する場合なども検討されているでしょう。
IATF16949:7.1.3.1項の工場・施設及び設備の計画では、その検討段階を「部門横断的アプローチ(多機能アプローチ)」を用いて実施することを要求しています。工場運営に大きくかかわる生産技術部や工場技術部だけではなく、製造部・品質管理部・生産管理部・購買部といった部門が専門的な視点から計画段階から入り込むことにより、最適な選定が行えるというのも品質向上につながります。
さらにISO9001:7.1.3項のインフラストラクチャよりも踏み込んだ要求として、リスクに基づく考え方・製造フィージビリティ評価・サイバー防御・工程有効性の維持まで幅広くカバーしている点が、IATF固有の特徴です。規格解釈を間違えずにどのように構築するのか、次にその方法論について解説します。
7.1.3.1の要求事項の全体像
IATF16949:7.1.3.1項は、大きく以下の5つの要素で構成されています。まずは全体像を把握してから、各要素を順番に深掘りしていきましょう。
| 要求区分 | 概要 |
|---|---|
| a)部材の流れ・フロアスペースの有効活用 | 工場レイアウトを最適化し、材料の取扱い・動線・スペースの付加価値ある活用を図る |
| b)不適合品の管理 | 不適合品が他の製品に混入しないよう、識別・隔離エリアを設ける |
| c)サイバー防御 | 製造を支援する装置・システムをサイバー攻撃から防御する |
| d)製造フィージビリティ評価・生産能力計画 | 新製品・新工程の製造実現性を評価し、生産能力計画を含める |
| e)工程有効性の維持と再評価 | コントロールプラン維持(8.5.1.1)、段取り替え検証(8.5.1.3)時などにリスクの再評価を行い、工程の有効性を維持する |
加えて注記1では「リーン生産の原則適用が望ましい」とされています。
注記2では「構内に存在する協力会社の活動も計画に含めて管理する」ことが示されています。
これらすべてに対して「部門横断的アプローチ」を適用し、リスク特定・リスク緩和を含む検証を行うことが本要求事項の根幹です。
計画は部門横断的アプローチが必須!
IATF16949:7.1.3.1項の工場・施設及び設備の計画の要求事項を簡単にいうと、部門横断的アプローチを用いて計画の検証を行うこと。
ISO9001を取得している企業の場合、ISO9001:7.1.3項のインフラストラクチャのみの対応を実施しているのですが、IATF16949ではそれらを新規導入する際に「検証」まで要求しています。
この部門横断的アプローチの証拠は、「工場・施設・設備計画検討書」を作成し、承認欄を設けることで対応可能です。
部門横断的アプローチ(多機能アプローチ)とは、共通の目標を達成するために異なる経験を持った人々が集まる、常設または一時的なチームのことです。一般的に、工場・施設・設備の計画検証では以下のような部門が関与します。
・生産技術部(主管部門):設備仕様の策定、レイアウト設計、工程設計
・製造部:作業性・動線の評価、作業者の安全確保
・品質管理部:不適合品管理エリア、検査工程の配置、コントロールプランとの整合
・生産管理部:生産能力計画、材料の流れの最適化
・購買部:設備調達、協力会社との調整
・情報システム部:サイバーセキュリティ対策の評価
異なるスキルセットを持つチームメンバーが一緒に働くことで、より効果的に目標を達成できるため、会社にとってもメリットがあります。IATF16949では、この部門横断的アプローチの要求が多発していますので、しっかり理解し構築する必要があります。
フロアレイアウトプランを作成する
IATF16949:7.1.3.1項の要求事項a)「部材の流れ、取扱い、及びフロアスペースの有効活用の最適化」に対応するためには、フロアレイアウトプランの作成が重要です。この手順は、以下のようなレイアウトプランニングのステップを踏むことで対応できるので、次に解説します。
変更前のフロアレイアウトを作成する

フロアプランには、大きく分けて以下のポイントが書かれていることが重要です。
①導入するフロアの見取り図(レイアウト)→できる限り詳細に書いた方がいい
②物(生産物)の流れ→動線を矢印で明示
③不適合品が発生した場合の隔離エリア(修正エリア)など
④フロアの面積
⑤設備の占有率→70%がMAXとするのがベター
⑥生産能力
この内容がわかる「工場・施設・設備計画検討書」を作成することがポイントです。
※フロアレイアウトの具体的な事例図は、記事内の画像を参照してください。
変更後のフロアレイアウトプランを作成する

次に変更後のフロアレイアウトプランを作成し、変化点を確認できるようにします。
例えば、外観画像検査機Aに加え、検査機Bを追加することにより生産能力を上げることを目的とした場合、新設備導入により月産台数増加に伴い設備占有率が上がります。設備占有率の基準は各社違うと思いますが、70%程度をMAXとしておくとよいでしょう。
変更前と変更後の両方のレイアウトを並べることで、変化点が可視化され、リスク特定が行いやすくなります。特に変更(追加含む)はリスクを伴うことが多いので、部門横断的アプローチの中できちんと検証していくことが重要となります。
工場施設・設備管理で整理するインフラ計画の考え方
IATF16949では、工場施設や設備、治具が製品品質に影響を与えないよう、計画的に管理することが求められます。新設や変更時にリスクを事前に検討することで、量産後の不具合や能力不足を防ぎやすくなります。設備やインフラの整備状況を整理しておくことは、安定した生産体制の基盤となります。
一方で、どこまでを計画段階で評価すべきかや、治具管理との区分で迷うケースも少なくありません。そのため、検討項目や管理方法を整理したうえで運用することが重要になります。こうした整理を進める方法の一つとして、施設・設備計画の進め方をまとめた資料を参考にする方法もあります。
不適合品の管理エリアを確保する
要求事項b)では、不適合品が次工程に流出しないよう管理するための仕組みとして、工場レイアウト上に不適合品の識別・隔離エリアを設けることが求められています。
レイアウト設計の段階で以下を考慮してください。
①不適合品の一時置き場:ラインから下ろした不適合品を即座に隔離するエリア
②修正・手直しエリア:再加工が可能な場合の作業スペース
③廃棄品置き場:修正不可の場合に最終処理まで保管するエリア
④識別方法:赤色テープ・赤札・専用コンテナなど、通常品と明確に区別できる仕組み
不適合品管理エリアの位置は、生産ラインから近すぎず遠すぎない場所が理想です。あまりに遠いと不適合品が放置されるリスクがあり、近すぎると通常品との混入リスクが高まります。
リスク特定とリスク緩和方法を実施する
IATF16949:7.1.3.1項の根幹となるのが「リスクの特定及びリスクの緩和方法」です。工場・施設・設備の計画段階において、潜在的なリスクを洗い出し、それぞれに対する緩和策を事前に講じることが求められています。
想定されるリスクの例
- 設備故障リスク:新規設備の初期故障、老朽化設備との干渉
- 材料供給リスク:レイアウト変更による動線悪化、供給停滞
- 品質リスク:新工程導入に伴う工程能力不足、検査漏れ
- 安全リスク:作業者の導線変更による事故リスク、設備間の安全距離
- 生産能力リスク:計画能力と実際の能力の乖離
- サイバーリスク:ネットワーク接続設備の脆弱性
リスク緩和の具体的手法

リスクを特定した後は、以下のような緩和策を「工場・施設・設備計画検討書」に記録します。
- 工程FMEA(PFMEA)との連携:新工程・変更工程のリスクをFMEAで体系的に評価
- 設備の予防保全計画:新規設備導入と同時にTPM計画を策定
- 試運転・バリデーション:量産前に設備能力を検証し、想定通りの品質・生産能力が出るか確認
- 緊急事態対応計画(6.1.2.3項)との整合:設備停止時の代替手段を事前に計画
リスク特定の際には、組織全体で情報を共有し、リスクの発生確率や影響度を評価することが重要です。これは部門横断的アプローチによるレビューの場で実施するのが最も効果的です。
サイバー攻撃に対する防御を考慮する
IATF16949:7.1.3.1項の要求事項c)では、製造を支援する装置及びシステムについて、サイバー攻撃からの防御を実施することが要求されています。
近年、自動車工場・関連工場を狙ったサイバー攻撃が増加しており、攻撃を受けると生産ラインのシャットダウンが発生し、納期遅延や巨額の損害につながる事例も報告されています。
工場・施設・設備計画を作成する際に、以下のサイバーセキュリティ対策が考慮されていることが重要です。
①ネットワーク分離
生産系ネットワークとオフィス系ネットワークの分離
②アクセス制御
設備制御システムへの不正アクセス防止(パスワード管理、権限設定)
③ファイアウォール・侵入検知システムの導入
④定期的なセキュリティパッチの適用
⑤USBなど外部メディアの使用制限
⑥バックアップ体制
攻撃を受けた場合のデータ復旧手順
サイバーセキュリティは、コンピュータを利用するオフィス区域だけでなく、PLC(プログラマブルロジックコントローラ)やロボットなどの製造設備そのものにも適用される点を見落とさないでください。
IATF16949:6.1.2.3項の緊急事態対応計画でもサイバー攻撃への対応が要求されていますので、併せて確認することをおすすめします。
製造フィージビリティ評価を適用する

IATF16949:7.1.3.1項の要求事項d)では、新製品や新工程に対する製造フィージビリティ(製造実現性)の評価方法を開発・実施することが求められています。さらに、この評価には生産能力計画を含めること、また既存工程への変更提案に対しても適用可能であることが必要です。
フロアレイアウトプランの「工場・施設・設備計画検討書」に以下の内容を検討できるようにしておくのがポイントです。
①導入・変更などの見積もり概算
②別途必要となる資源(治工具含む)など
③どの場所が追加・変更されるのか(工場名・何階など)
④生産能力(顧客要求の生産レート・数量を満たすか)
⑤必要なソフトウェア・インフラストラクチャ
⑥人員(特に特殊技能が必要な場合)
ここで重要なのは、生産能力計画には顧客から契約された生産レートと数量を考慮することです。現在の受注量だけでなく、将来的な増産計画も踏まえた評価が求められています。
なお、製造フィージビリティ評価は8.2.3.1.3項(組織の製造フィージビリティ)とも密接に関連しています。7.1.3.1項では「方法の開発と実施」が主な要求であり、8.2.3.1.3項では「個別プロジェクトごとの評価実施」が要求されている点を区別して理解しておきましょう。
工程有効性の維持と再評価
IATF16949:7.1.3.1項の要求事項e)では、工場・施設・設備の工程有効性を維持するために、定期的にリスクの再評価を実施することを求めています。
特に以下のタイミングでの再評価が明示されています。
- 工程承認時
新工程や変更工程の承認に際して、計画通りの有効性が維持されているか確認 - コントロールプランの維持(8.5.1.1項)
コントロールプランを更新する際に、工場・施設・設備面のリスクも再評価
- 作業の段取り替え検証(8.5.1.3項)
段取り替え時に設備や治工具が正しくセットされているか、工程の有効性が保たれているか
再評価のポイントは、変更が行われた際に、その変更が工程の品質・能力・安全性に悪影響を与えていないかを確認することです。変更前後のデータ(工程能力指数Cpk、不良率、設備稼働率など)を比較して評価するのが実務的なアプローチです。
定期的な再評価の仕組みを確立しておくことで、工程が進化する中で生じる変化やリスクを適切に管理し、品質と効率を確保し続けることができます。
変更管理のルールを適用する
IATF16949:7.1.3.1項の要求事項では、変更や追加の時でも本要求事項を適用することを要求しています。
工場・施設・設備の追加・変更は、変更の中でも大きなイベントになることは間違いありません。それらの追加・変更の際は、8.5.6の変更管理を同時に適用する必要があります。
一般的な変更申請のルールと合わせて工場・施設・設備計画検討書が添付及び参照できる仕組みであれば指摘されませんが、トレーサブルになっていない場合は、指摘になるので注意してください。
変更ルールを適用することで、PFMEA、コントロールプランの維持・改訂へもつなげることができます。変更管理のフローとしては、以下の流れが一般的です。
- 変更申請書の起案
- 「工場・施設・設備計画検討書」の作成(部門横断的レビュー)
- リスク評価・製造フィージビリティ評価の実施
- PFMEA・コントロールプランへの反映
- 変更実施・検証
- 変更結果の記録・承認
リーン生産の適用と構内協力会社への対応
IATF16949:7.1.3.1項には2つの注記があり、実務上見落とされがちですが重要な内容です。
注記1:リーン生産の原則
「これらの要求事項は、原則的にリーン生産の適用が望ましい」とされています。つまり、工場レイアウトやフロアスペースの最適化において、以下のようなリーン生産の考え方を取り入れることが推奨されます。
・ムダの排除:不要な搬送・動作・在庫を削減するレイアウト設計
・セル生産方式の検討
・5S活動の反映:整理・整頓・清掃・清潔・躾がしやすいレイアウト
・かんばん方式に対応した部材供給エリアの設計
注記であるため審査で不適合にはなりにくいですが、審査員からの改善提案として指摘されることがあります。特にトヨタ系サプライヤーでは、リーン生産の要素をレイアウトに反映しているかが確認される傾向があります。
注記2:構内協力会社への適用
「これらの要求事項は、自社のサイトに協力会社が存在している場合は、組織と同様の計画に含め管理を行う」ことが示されています。
構内で作業を行う外注先・派遣会社・物流業者なども、自社のフロアレイアウト計画や安全管理の対象に含める必要があります。具体的には以下の対応が考えられます。
・構内協力会社の作業エリアもフロアレイアウトプランに明記する
・不適合品管理ルールを協力会社にも適用・教育する
・サイバーセキュリティのルール(USB使用禁止など)を協力会社にも周知する
一連の結果・進捗はマネジメントレビューのインプット!

IATF16949:7.1.3.1項の工場・施設及び設備の計画の内容は、9.3.2.1項のマネジメントレビューへのインプットに含める必要があります。具体的には「製造フィージビリティの評価結果(既存工程の変更・新設備・新製品に対する評価)」をトップマネジメントに報告します。
逆に報告が抜けていると不適合になるので、マネジメントレビューの帳票がある場合は、その帳票に7.1.3.1の要求事項を追加しておきましょう。
報告すべき内容の例としては以下が挙げられます。
・当期に実施した工場・施設・設備の変更・追加の概要
・製造フィージビリティ評価の結果と判定
・リスク評価で特定されたリスクと緩和策の実施状況
・工程有効性の再評価結果
・次期の設備投資計画・レイアウト変更の予定
IATF16949:7.1.3.1項の取組みはどこに記載すればいい?
IATF16949:7.1.3.1項の要求事項の取り組みについての記載は、品質マニュアルの7.1.3.1項に記載するだけでもOKです。
規定などを作成する企業も多いかもしれませんが、大事なことは計画検討が行われる仕組みが重要なため、品質マニュアルの中で具体的な取り組み方法を記載することでも対応可能です。
記載例については以下を参考にしてみてください。
品質マニュアル7.1.3.1記載例
当社は、工場・施設・新設備を新たに導入する際は、「工場・施設・設備計画検討書」を使用し、部門横断的アプローチを実施する。検討書作成にあたり、必要情報・書類の作成指示は生産技術部を主管部門とする。全部門が承認した計画書以外は実施してはならない。製造フィージビリティ評価には生産能力計画を含め、顧客要求の生産レートを満たすか検証する。工程の有効性維持のため、変更実施後のリスク再評価を実施し、コントロールプラン・PFMEAの改訂要否を判断する。構内協力会社の活動も本計画の対象に含める。一連の結果はマネジメントレビューのインプットとして報告する。
内部監査・審査での確認ポイントと質問例
私自身も多くの内部監査やサプライヤー監査を実施していますが、7.1.3.1項は確認対象としてサンプリングされやすい要求事項です。
その理由は、工場・施設・設備の計画は「現場を見ればすぐに確認できる」ため、審査員・監査員にとって確認しやすいから。レイアウトの実態と図面の差異、不適合品管理エリアの有無などは現場ウォークで一目瞭然です。
ここが甘いと不適合になる可能性が非常に高いです。以下の確認ポイントと質問例を参考に、事前準備を行ってください。
審査で指摘されやすい5つのポイント
| No. | 指摘されやすいポイント | よくある不備の状態 | 対策 |
|---|---|---|---|
| ① | 部門横断的アプローチの証拠がない | 設備導入実績はあるが、計画検討書や議事録がなく「口頭で合意した」だけ | 承認欄を設けた検討書を作成し、各部門の責任者がサインする仕組みを構築する |
| ② | フロアレイアウトが現場と一致していない | 図面上はきれいだが、実際の現場では設備の追加・移動が図面に反映されていない | 変更の都度レイアウト図を更新するルールを明確にし、管理台帳で最新版管理する |
| ③ | サイバーセキュリティが考慮されていない | 「うちは古い設備だから関係ない」と未対応 | PLCやラダープログラムもサイバー攻撃の対象。SI(認定解釈)で強化された項目なので最新要求を確認する |
| ④ | 製造フィージビリティ評価に生産能力計画が含まれていない | フィージビリティ評価は実施しているが、キャパシティの数値検証が抜けている | 顧客要求の生産レート・数量を満たすか数値的に検証し、記録に残す |
| ⑤ | マネジメントレビューへの報告漏れ | 7.1.3.1の結果がマネジメントレビューのインプット項目に入っていない | マネジメントレビュー帳票のアジェンダに明示的に項目を追加する |
これらがサンプリングで複数見つかると確実に不適合になるので、計画検討書の作成から承認、レイアウトの維持管理まで一気通貫で抜けがないように仕組みを構築しましょう。
監査で「見られる帳票・記録」一覧
内部監査や審査では、以下の帳票・記録をサンプリングで確認されます。事前に整備されていることを確認しておきましょう。
| 帳票・記録 | 確認される内容 |
|---|---|
| 工場・施設・設備計画検討書 | 部門横断的アプローチの証拠、リスク評価、承認記録 |
| フロアレイアウト図(変更前後) | 現場との一致性、物の流れ、不適合品管理エリア |
| 製造フィージビリティ評価記録 | 生産能力計画の含有、顧客要求への適合 |
| PFMEA | リスク特定・緩和策の記録、変更時の見直し実績 |
| コントロールプラン | 工程有効性維持のための更新履歴 |
| 変更管理記録 | 7.1.3.1との紐づけ(トレーサビリティ) |
| マネジメントレビュー議事録 | 7.1.3.1に関するインプット・アウトプット |
| サイバーセキュリティ関連規定 | 対策内容、適用範囲、運用記録 |
IATF16949:7.1.3.1に関するFAQ
規格対応でよく聞かれる悩み
ISO9001やIATF16949、VDA6.3に取り組む中で、「審査対策として何を優先すべきか分からない」「要求事項に対する構築の考え方が整理できない」といった声は少なくありません。
また、社内にQMSを体系的に理解している担当者がいない場合や、外部コンサルの費用面で継続的な支援が難しいと感じるケースもあります。こうした悩みは、特定の企業に限らず、多くの現場で共通して見られるものとなっています。
部門横断的アプローチとは、異なる部門が連携して工場・施設・設備の計画を検証・改善する手法を指します。具体的には、生産技術部、製造部、品質管理部、購買部などが協力し、それぞれの専門知識を活かしてリスクの軽減や効率的なレイアウト設計などを行います。
まず「工場・施設・設備計画検討書」を作成し、部門横断的アプローチに基づいて計画を立てることが必要です。変更前後のフロアレイアウトプランを作成し、製造フィージビリティ評価を実施した上で、各部門の承認を得てから導入を進めます。
製造設備やITシステムのサイバーセキュリティ対策として、ネットワーク分離、アクセス制御、ファイアウォール・侵入検知システムの導入、外部メディアの使用制限などを実施します。PLCやロボットなどの製造設備もサイバー攻撃の対象になることを忘れないでください。
最も多いのは「部門横断的アプローチの証拠(検討書・議事録)がない」ケースです。次いで「フロアレイアウトが現場と一致していない」「製造フィージビリティ評価に生産能力計画が含まれていない」「マネジメントレビューへの報告漏れ」が指摘されやすい傾向にあります。
注記1で「リーン生産の原則適用が望ましい」とされています。工場レイアウト設計にムダの排除・5S活動・かんばん方式などの考え方を取り入れることが推奨されます。注記のため不適合にはなりにくいですが、改善提案として指摘されることがあります。
注記2で「構内に存在する協力会社の活動も計画に含め管理する」ことが示されています。構内協力会社の作業エリアもフロアレイアウトプランに含め、不適合品管理ルールやサイバーセキュリティルールも適用・教育する必要があります。
工程承認時、コントロールプラン改訂時(8.5.1.1項)、段取り替え検証時(8.5.1.3項)が明示されています。加えて、設備の大規模修理や増産対応など工程に影響を与える変更が発生した際にも再評価を実施することをおすすめします。
当期に実施した工場・施設・設備の変更概要、製造フィージビリティ評価の結果、リスク評価の実施状況と緩和策、工程有効性の再評価結果、次期の設備投資計画などを報告します。9.3.2.1項のe)に明記されているため、報告漏れは不適合になります。
IATF16949:7.1.3.1項の工場・施設及び設備の計画:まとめ
IATF16949:7.1.3.1項の工場・施設及び設備の計画についての規格解釈、構築ポイントはいかがでしたでしょうか?ISO9001の7.1.3項のインフラストラクチャよりも厳しい要求として追加されているのが7.1.3.1項です。
本要求事項のポイントを改めて整理すると以下の通りです。
- 部門横断的アプローチにより計画を検証し、承認記録を残す
- フロアレイアウトプランで変更前後を可視化し、不適合品管理エリアも設計する
- リスク特定・緩和をFMEA等と連携して体系的に実施する
- サイバー防御は製造設備を含めて対策する
- 製造フィージビリティ評価には生産能力計画を含める
- 工程有効性はコントロールプラン維持・段取り替え検証時に再評価する
- 結果はすべてマネジメントレビューへインプットする
- リーン生産の原則と構内協力会社への適用も忘れずに
しかし多くの企業は、工場・施設・設備計画検討書のような具体的な取り組みがされていないことが多く、IATF16949の取得に障壁となっていることも。今回の事例を交えた検討書の作成・フロアレイアウトマップを基に、しっかり構築してみましょう!
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