IATF:7.1.5.3.1項の内部試験所の要求事項の構築がうまくいかない企業様からのご相談をよく受けます。俗に言う「ラボスコープの要求(試験所の範囲)」というのが本要求事項です。ポイントは、内部試験所の要求事項の意味をきちんと理解し、関連する要求事項とリンクさせることがポイントです。
今回の記事は、IATF:7.1.5.3.1項の内部試験所の要求事項の意味と構築ポイントについて解説いたします。
知識・経験を活かし、品質マネジメントシステムの規格を幅広い方々に理解いただき、各規格の普及のお手伝いができればという思いで立ち上げました!難解な内容も、知識と経験でわかりやすく解説していきますので、これからもよろしくお願いします!あくまでも個人の見解(公式に認められたものではない)となりますので、ご理解いただき是非参考にしていただければ幸いです★
目次
IATF:7.1.5.3.1項の内部試験所の意図
IATFを取得を考えている企業の方であればご存じの通り、自動車業界とは非常に厳しい要求が沢山ありますよね!
IATFの規格解釈はもちろん、沢山の信頼性試験や材料試験など様々な試験をクリアして初めて承認され、顧客やエンドユーザーに納品されます。
その試験を行う場所について、自動車産業に関わるメーカーさんなら自社で持っていませんか?例えば、騒音測定室、材料試験室、製品解析室など様々なエリアが存在するのではないでしょうか?
それらをIATFでは、内部試験所といいます。
つまり、それらの内部試験所の管理をしなさいというのが、IATF:7.1.5.3.1項の内部試験所の要求事項と考えることが一番重要です。
つぎにそれらの内部試験所に対する構築ポイントについて解説いたします。
各内部試験所の内容をリスト化
IATF:7.1.5.3.1項の内部試験所の要求事項には、以下のようなことが大事です。
簡単にいうと「各内部試験所でできることと資源を明確にしなさい」です。つまり、以下の内容をリスト化することから始めてみましょう。
例:騒音測定
②評価及び校正の種類
例:自動車加速騒音の測定
③必要な設備・計測機器リスト
例:騒音測定器、防音室・・・
④実行するための方法及び規格のリスト
例:JATA準拠など
①から④を各内部試験所ごとにリスト化することがはじめの一歩です!
そしてもう一つは、試験所適用範囲は、QMSの範囲に含めなければならないので、「試験所管理規定」を作成し、管理方法についてルール化しましょう。
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適切な試験手順と作業者の明確化
IATF:7.1.5.3.1項の内部試験所の要求事項には、以下のようなことが大事です。
簡単にいうと、各内部試験所で試験できる試験内容を明確化し、その試験に必要な手順書を作成する。また、その試験を実施する作業員は、力量を明確にしなければならないということです。
試験は比較的高度な知識が必要になったり、間違った試験を行ったことにより大問題に発展してしまうことも考えられます。
そのため、作業手順に基づく試験はもちろん、それらに必要な試験知識・技術力について作業員を力量評価をしなくてはなりません。
その際に必要な力量評価は、その試験ごとに評価し、スキルマップと教育記録を準備するようにしましょう。
詳しくは、IATF:7.2.1項の力量-補足を参考にしてください。
該当する国際規格や顧客要求の明確化
IATF:7.1.5.3.1項の内部試験所の要求事項には、以下のようなことが大事です。自動車産業には様々な試験規格やその規格を管理する企業・団体が存在します。
その中でも有名な二つの規格が例として示されています。
規格 | URL | 内容 |
ASTM | ASTM International - Standards Worldwide | 米国試験材料協会 |
EN | List of EN standards - Wikipedia | 「European Norm」というヨーロッパ(EU)の統一規格 |
このような規格に適合した設備や計測機器、試験内容があれば、各機器一覧リストにその規格を明記する必要があります。また、調べた結果「ない」となれば、測定システムの能力検証を実施しなくてはなりません。
その方法がコアツールのMSA(測定システム解析)です。
詳しくは、IATF:7.1.5.1.1項の測定システム解析(MSA)を参考にしてください。
また、内部試験所の試験要求については、顧客より個別に与えられることがあります。
その場合は、その試験要求が実施できる試験所であることを合わせて明記しておくこと、その試験規格がすぐに取り出せるようにすることが重要です。
記録は適切なタイミングでレビュー
IATF:7.1.5.3.1項の内部試験所の要求事項には、以下のようなことが大事です。
このレビューの意味は、試験結果や力量評価、作業手順書の見直し、試験所環境の記録(例:温湿度記録など)を適切なタイミングでレビューすればOKです。
もちろんそれらの記録はいつでも取り出せることは前提ですが、その頻度やタイミングはいつでもOKということです。
一番のベストタイミングは、「内部監査前」です。
定期内部監査前にレビューしておけば、監査対策にもなりますし、レビューを実施した証拠にもなりますよね!
IATF:7.1.5.3.1項の内部試験所はどこに記載すればいい?
IATF:7.1.5.3.1項の内部試験所の要求事項の対応ルールは、試験所管理規定を作成し、対応することが前提です。その証拠として、以下の内容がわかる内容を各内部試験所の見える範囲に掲示することで内部監査・顧客監査そして、審査の際も要求事項の適合を証明できます。
②評価及び校正の種類
③必要な設備・計測機器リスト
④実行するための方法及び規格のリスト
IATF:7.1.5.3.1に関するFAQ
よくある質問をFAQ形式で3つご紹介致します!もっと詳しく質問したい場合は、是非メールコンサルティングサービスをご活用くださいね!
IATF:7.1.5.3.1項は、内部試験所において必要な試験や校正を実施するための能力や適用範囲(ラボスコープ)を明確にし、それらの管理体制を整えることを求めています。これは、試験所の運営を品質マネジメントシステムに組み込み、適切な技術手順や要員の力量を確保することが重要だからです。
内部試験所の管理を構築する際には、以下のリストが必要です。①試験内容、②評価および校正の種類、③必要な設備・計測機器のリスト、④試験を実施するための規格や方法のリストです。これらを整理し、試験所管理規定を作成することが重要です。
試験所の記録は、定期的にレビューすることが求められます。特に内部監査の前に見直すことが推奨されます。これにより、監査対策がスムーズに行え、適時に記録を確認できる体制を整えることができるようになります。
IATF:7.1.5.3.1項の内部試験所:まとめ
IATF:7.1.5.3.1項の内部試験所の要求事項の規格解釈、構築ポイントはいかがでしたか?
内部試験所の要求事項は、要求事項に基づく内容をまとめることと、別の要求事項とのリンクがあるので、構築が意外と大変です。
それではまた!