【IATF16949攻略】7.2.3:内部監査員の力量の要求事項徹底解説!

IATF16949:7.2.3項「内部監査員の力量」は、内部監査員として任命するために最低限必要な力量(a〜e)を文書化されたプロセスで検証すること、および力量を維持するための年間最低監査回数(f)と変化への知識更新(g)を要求する条項です。

「外部セミナーの修了証を取得して監査員リストに登録して終わり」という対応では審査で不適合になる可能性が非常に高い条項です。力量の証明・評価・維持・養成計画まで含めた仕組みを監査管理規定として文書化することが構築のポイントです。

本記事では、a)〜g)の要求事項の詳細解説・内部監査管理規定に記載すべき内容・力量評価13項目の実務的な設計方法・外部研修の活用法・内部監査対策まで、現場実務経験をベースに網羅的に解説します。


この記事の実務解説
QMS認証パートナー
専属コンサルタント

南野 弘明

製造業25年・自動車業界15年以上の実務経験

IATF16949・ISO9001・VDA6.3を、現場で使える形に落とし込む視点で解説しています。

規格要求事項の解釈だけでなく、審査で説明できる規定づくり、現場で使える帳票、内部監査・顧客監査への対応まで、実務で迷いやすいポイントを中心に整理しています。特に多くの企業様が知りたい「審査機関・顧客はどこを見るのか」の勘所も徹底解説していますので、是非ご活用ください。

専門領域
IATF16949・ISO9001・VDA6.3。初期段階の構築から認証後まですべて対応可能。
得意分野
規定・帳票・監査対応の実務化。大企業・中小企業問わず支援実績多数。
支援内容
教材提供・メール相談・個別コンサル。特に24時間対応可能なメール相談がおすすめ。

「この解釈でよいのか」「自社の規定や帳票にどう反映すればよいのか」と迷った場合は、QMS認証パートナーの教材・相談メニューもご活用ください。ご用途に合わせて提案させていただきます。


相談メニューを見る

第7章:支援についての「要求事項リスト」はこちら
ISO・IATF 7章
※IATF運用には、ISO9001の要求事項の運用が必須です。
条項 題目 ISO9001 IATF
第4章 組織の状況 〇 〇
第5章 リーダーシップ 〇 〇
第6章 計画 〇 〇
第7章 支援 〇 〇
第8章 運用 〇 〇
第9章 パフォーマンス評価 〇 〇
第10章 改善 〇 〇
条項 題目 ISO
9001
重要
帳票
IATF
16949
重要
帳票
7.1.1 一般(資源計画) 〇 ● 〇
7.1.2 人々 〇 ● 〇
7.1.3 インフラストラクチャ 〇 ● 〇
7.1.3.1 工場、施設及び設備の計画 〇 ●
7.1.4 プロセスの運用に関する環境 〇 ● 〇注記
7.1.4.1 プロセスの運用に関する環境-補足 〇 ●
7.1.5
7.1.5.1
一般(監視及び測定のための資源) 〇 〇
7.1.5.1.1 測定システム解析 〇 ●
7.1.5.2 測定のトレーサビリティ 〇 〇注記
7.1.5.2.1 校正/検証の記録 〇 ●
7.1.5.3.1 内部試験所 〇 ●
7.1.5.3.2 外部試験所 〇 ●
7.1.6 組織の知識 〇 〇
7.2 力量 〇 〇 ●
7.2.1 力量-補足 〇
7.2.2 力量-業務を通じた教育訓練(OJT) 〇
7.2.3 内部監査員の力量 〇 ●
7.2.4 第二者監査員の力量 〇 ●
7.3 認識 〇 〇
7.3.1 認識-補足 〇
7.3.2 従業員の動機付け及びエンパワーメント 〇
7.4 コミュニケーション 〇 ● 〇
7.5.1 一般(文書化した情報) 〇 〇
7.5.1.1 品質マネジメントシステムの文書類 〇
7.5.2 作成及び更新 〇 〇
7.5.3
7.5.3.1
7.5.3.2
文書化した情報の管理 〇 〇
7.5.3.2.1 記録の保管 〇
7.5.3.2.2 技術仕様書 〇
A: 当サイトの情報提供スタンスについて

当サイトでは、ISO9001およびIATF16949について、規格要求の解説にとどまらず、実務でどのようにルールや記録へ落とし込むかを重視して情報を整理しています。

規格の理解とあわせて、「現状とのギャップをどう捉えるか」「どこから手を付けるべきか」といった判断に迷いやすい点を、現場目線で分かりやすく解説することを目的としています。

記事内容を自社へ当てはめる際の考え方や、判断に迷うポイントについては、別ページで整理した情報も用意しています。

B: IATF16949で必要な規定25本・帳票82様式の一覧

「自社に足りない文書は、どれか」——その答えを出すための一覧です。章別に規定と帳票をすべて並べ、審査で指摘されやすい5領域と、手戻りの少ない作成順序まで解説しています。

⇒ 有料級:詳細記事はこちら

C: 有料記事42本を読み放題|審査での答え方を公開

審査で差がつくのは、規格の知識量ではなく、自社の運用を説明できるかどうかです。部門別の想定問答30選、コアツールの実務、負荷軽減の具体策——42本すべてが、パスワード1つで読み放題。記事は随時追加され、追加分も追加料金はかかりません。

⇒ 有料記事一覧はこちら

D: 現地・オンライン・メールコンサルの違いと選び方

「この解釈で合っているか」を確認したいのか、「何から手をつけるか」を決めたいのか。課題の性質によって、選ぶべきコンサルの形態は変わります。3形態の費用と特性を比較し、自社に合う選び方を整理しました。

⇒ 記事の詳細はこちら

IATF16949:7.2.3項の「意図」を理解する

ISO9001でも内部監査員の任命は行われますが、その多くは「社内で監査の研修をした人」「外部セミナーの修了証を持つ人」程度の管理で済んでいる場合が多いです。

IATF16949がなぜ内部監査員の力量を強化して要求しているかというと、自動車産業の内部監査にはISO9001の監査では求められない専門的な知識が必要だからです。具体的には以下のような特殊性があります。

内部監査員の必須知識

①顧客固有要求事項(CSR)への対応状況を評価できること
→T社・H社等の顧客ごとに異なるSQMがQMSに正しく組み込まれているかを判断する能力が必要

②コアツール(APQP・PPAP・FMEA・SPC・MSA)の運用状況を評価できること
→規格知識だけでなく、これらのツールが実際に機能しているかを見抜く専門性が必要

③製造工程・製品に関する技術的理解が必要
→製造工程監査・製品監査ではプロセスや製品仕様の技術的知識がなければ有効な監査ができない

内部監査は「形式的なチェック作業」ではなく、QMSの実効性を担保する重要な仕組みです。その監査を担う監査員の質が低ければ、審査で「内部監査が形骸化している」と判断されます。

7.2.3項の要求事項の全体像

IATF16949:7.2.3項の要求事項は大きく3層構造になっています。

要求の層 内容
①全監査員共通の最低力量(a〜e) どの種類の内部監査員も最低限保有すべき5つの力量
②監査種類別の追加力量 製造工程監査員・製品監査員それぞれに必要な専門知識
③力量の維持要求(f・g) 年間最低監査回数の遵守と変化への知識更新

これらすべてを網羅した「監査管理規定」の作成が必須です。この規定がないと審査が通らない可能性が非常に高いため、必ず作成してください。

内部監査の3種類と監査員の区分

IATF16949における内部監査は以下の3種類に分類されます。7.2.3項はこれら3種類それぞれの監査員に対する力量要求を定めています。

監査の種類 目的 対応する規定条項
①品質マネジメントシステム(QMS)監査 QMS全体が要求事項に適合し有効に機能しているかを確認 9.2.2.2項
②製造工程監査 各製造工程がコントロールプラン通りに実施されているかを確認 9.2.2.3項
③製品監査 製品が顧客要求・品質基準を満たしているかを確認 9.2.2.4項

②と③の監査員はいずれも①(QMS監査員)の力量を前提として選出されます。すなわち、製造工程監査員と製品監査員は「QMS監査員の力量+追加専門力量」を持つ人材である必要があります。

要求事項a):自動車産業プロセスアプローチとリスクに基づく考え方

【IATF16949攻略】7.2.3:内部監査員の力量の要求事項徹底解説!①

内部監査員は、自動車産業特有のプロセスアプローチとリスクに基づく考え方を理解し、監査に適用できる能力を持つことが求められます。

自動車産業のプロセスアプローチとは、各業務プロセスを独立した作業として評価するのではなく、インプット→プロセス→アウトプットの連鎖として捉え、プロセス間の相互作用が製品品質にどう影響するかを評価する視点です。つまり、タートル図を自分で書くことができないといけないということです。

リスクに基づく考え方とは、「現状が適合しているか」だけでなく、「このプロセスにはどんなリスクが潜んでいるか」「そのリスクに対して適切な予防・緩和策が取られているか」を評価する姿勢です。

力量の証明方法

証明手段 内容
外部研修の受講記録 IATFプロセスアプローチ・リスクマネジメント研修の修了証
監査実施記録 リスクベースの評価を行った監査報告書の実績
内部教育記録 社内でのIATF要求事項教育の受講証跡

要求事項b):顧客固有要求事項の理解

【IATF16949攻略】7.2.3:内部監査員の力量の要求事項徹底解説!②

内部監査員は、自社の顧客(T社・H社等)が定める顧客固有要求事項(CSR)を理解し、それがQMSに正しく組み込まれているかを監査できる能力を持つことが求められます。

顧客CSR(仕入先品質マニュアル:SQM)は顧客ごとに異なる独自の品質要求です。内部監査員は、自社が取引する全顧客のCSRの内容を把握した上で、「各CSRが社内の規定・帳票・実務に正しく反映されているか」を評価できる必要があります。

超重要構築ポイント

b)については外部セミナーでは対応できません。IATF事務局が各内部監査員に顧客固有要求事項の内容を教育する仕組みを、内部監査管理規定に明記する必要があります。

顧客CSRの変更があった場合は、その内容を監査員にも速やかに周知し、監査チェックリストを更新することも規定に盛り込んでください。

要求事項c):ISO9001及びIATF16949要求事項の理解

内部監査員は、ISO9001とIATF16949の全要求事項を深く理解し、監査対象のプロセスや文書がこれらに適合しているかを評価できる能力を持つことが求められます。

規格要求事項を「知っている」レベルと「監査で適用できる」レベルは異なります。監査員は「この工程のコントロールプランはIATF8.5.1.1項のどの要求に対応しているか」「この品質マニュアルの記載は7.5.1.1項を満たしているか」という形で、規格要求と実務を紐づけて評価できなければなりません。

研修コース 概要 修了証の取得
IATF要求事項セミナー(2日) IATF16949の全要求事項の解説 取得可
ISO9001内部監査員セミナー ISO9001要求事項と監査手法 取得可
IATF内部監査セミナー(2日) IATF内部監査の計画・実施・報告 取得可

要求事項d):コアツール要求事項の理解

内部監査員は、IATF16949で要求されるコアツール(APQP・PPAP・FMEA・SPC・MSA)を理解し、監査対象でこれらが適切に運用されているかを評価できる能力を持つことが求められます。

コアツール別の監査での確認ポイント

コアツール 概要 監査での確認ポイント
APQP(先行製品品質計画) 新製品の開発・量産移行プロセスの品質計画 各フェーズのゲートレビューが実施されているか
PPAP(生産部品承認プロセス) 顧客への生産部品承認提出物の準備・承認 変更時のPPAP再提出が実施されているか
FMEA(故障モード影響解析) 製品・工程のリスク特定と低減 最新版に維持され、実際の管理と整合しているか
SPC(統計的工程管理) 管理図等による工程の安定性監視 特殊特性のCpkが基準値を満たしているか
MSA(測定システム解析) 測定システムの信頼性評価 特殊特性の測定器のGR&Rが許容範囲内か

要求事項e):監査計画・実施・報告・所見完了の理解

【IATF16949攻略】7.2.3:内部監査員の力量の要求事項徹底解説!③

内部監査員は、監査の計画立案から実施・報告書作成・是正処置のフォローアップまでを一連の流れとして実施できる技能を持つことが求められます。

内部監査の実施フローと各段階での必要技能

①監査計画の立案
-監査目的・範囲・基準の設定
-監査チェックリストの作成
-監査スケジュールの設定

↓

②監査の実施
-冒頭会議:目的・範囲の説明
-文書レビュー・現場観察・インタビュー
-客観的証拠の収集と記録
-終了会議:所見の説明

↓

③監査報告書の作成-適合・不適合・観察事項の整理
-不適合の客観的根拠の記載
-是正処置要求の発行

↓

④フォローアップ
-是正処置の妥当性確認
-有効性の検証
-所見のクローズ

ワンポイント:審査初回は外部セミナーの修了証でなんとかなる場合もありますが、取得後に力量アップ計画や定期的な監査実績がないと指摘事項になります。「内部監査にはニーズ(目的)がある」という理解なしに的確な運用はできないと判断されやすいため、監査目的の理解を力量評価項目に明示的に組み込んでください。

製造工程監査員の追加力量

【IATF16949攻略】7.2.3:内部監査員の力量の要求事項徹底解説!④

QMS監査員の力量に加えて、製造工程監査員には以下の専門力量が求められます。

製造工程監査員に必要な追加力量

追加力量 内容
監査対象工程の技術的知識 加工条件・工程パラメータ・設備特性等の理解
PFMEA(工程FMEA)の理解 工程リスクの評価方法と管理策の妥当性判断
コントロールプランの理解 管理特性・管理頻度・測定方法の設定の妥当性評価
工程異常の判断基準 どのような状態が不適合・観察事項かの判断力
監査管理規定への記載ガイダンス

製造工程監査員の選出基準として規定に記載すべき内容は、QMS監査員の力量に加えて、監査対象となる製造工程の実務経験年数の要件、PFMEA・コントロールプランを読み込んで評価できることの証明方法、選出にあたって誰が承認するかの手順です。具体的な経験年数や評価基準は組織の実態に応じて設定してください。製造部・生産技術部・品質管理部などの実務経験を考慮することが一般的です。

製品監査員の追加力量

【IATF16949攻略】7.2.3:内部監査員の力量の要求事項徹底解説!⑤

QMS監査員の力量に加えて、製品監査員には以下の専門力量が求められます。

製品監査員に必要な追加力量

追加力量 内容
製品要求事項の理解 顧客と取り交わした製品仕様書・図面・試験基準の理解
測定・試験設備の操作知識 監査で使用する測定器・試験設備の正しい操作方法
判定基準の理解 合否を判定するための基準値・判定方法の知識
記録・トレーサビリティの確認 製品の品質記録が正しく保管されているかの評価
監査管理規定への記載ガイダンス

製品監査員の選出基準として規定に記載すべき内容は、QMS監査員の力量に加えて、日常的に使用する測定機器・試験設備の操作理解の証明方法、監査対象製品の仕様書・図面・試験結果の理解確認の手順、選出にあたって必要な部門経験や担当業務の要件です。測定機器の理解については、校正作業経験・検査業務経験などを選出条件として考慮することが一般的です。

トレーナーの力量証明

組織内部で内部監査員教育を提供する社内トレーナーについても、文書化した情報を保持することで力量証明が求められます。社内トレーナーとして内部監査員教育を担当する人材には、教える内容に対して十分な専門知識があることの証明が必要です。

以下の外部資格を保有する人材を社内トレーナーとして認定することが、最も確実な力量証明の方法です。

トレーナーに求められる要件

資格 発行機関 特徴
IATFサプライヤー監査員(SAC)資格 IATF公認機関 IATF16949の監査に関する包括的な力量証明
VDA6.3監査員資格 VDA公認機関 プロセス監査専門の国際資格

これらの資格を持つトレーナーが社内研修を実施した場合、その研修の修了証も内部監査員の力量証明として有効に機能します。

要求事項f):年間最低回数の監査実施(力量維持)

組織は、内部監査員が力量を維持するために「年間最低何回の監査を実施するか」を規定し、監査員がその回数を遵守することを管理します。

多くの組織では年1回の内部監査を実施していますが、その場合でも監査員リストに登録されている全員が毎年いずれかの監査に参加することを義務付けることが力量維持の最低条件です。

監査に参加しない年が続くと力量が低下し、次回の審査で「内部監査員の力量が維持されていない」と指摘されるリスクが高まります。

監査管理規定には、年間の監査実施計画に監査員を配置するルール、年1回以上の監査参加を維持できなかった監査員の扱い(再認定の必要性等)を明記してください。

要求事項g):内外変化への知識維持(力量維持)

組織は、内部監査員が技術変化・規格改訂・顧客CSR変更等の内外の変化に対応して、要求事項の知識を継続的に更新することを管理します。

対応が必要な変化の種類

変化の種類 具体例 監査員への対応
規格改訂 ISO9001・IATF16949の新版発行 変更点の教育・監査チェックリストの更新
コアツール改訂 FMEA新版(AIAG-VDA版等) 改訂内容の研修受講・評価基準の更新
顧客CSR変更 SQM(仕入先品質マニュアル)の改訂 変更内容の教育・監査項目への反映
社内工程変更 新設備・新製品・新工程の追加 該当工程の追加知識習得
法規制変更 環境規制・安全規制の強化 規制内容の理解と監査項目への反映

「変化が発生した際の再教育の仕組み」を内部監査管理規定に明記することで、g)への対応が文書化されます。

監査管理規定に記載すべき内容

監査管理規定の作成は7.2.3項対応の最重要ステップです。この規定には、以下に関わる複数の要求事項をまとめて記載することで、監査全体の仕組みが一つの規定で把握できる状態を作ります。

監査管理規定に入れること

監査管理規定には、以下の内容が重要です。

  • 監査員の種類と各種類で求められる力量の定義
  • 力量の証明方法(外部資格・研修修了証・社内評価)
  • 監査員としての任命プロセスと承認者
  • 内部監査員リストの管理方法と更新ルール
  • トレーナーの資格要件と力量証明の管理
  • 年間最低監査回数と未達時の対応
  • 変化発生時の知識更新と再教育の手順
  • 力量評価の実施時期・方法・評価基準・判定基準

上記を盛り込んでください。

関連要求事項との統合

7.2.3項の規定は、以下の関連条項もあわせて一つの規定にまとめることで管理が効率化されます。

内部監査員リストの管理

【IATF16949攻略】7.2.3:内部監査員の力量の要求事項徹底解説!⑥内部監査員リストはIATF16949の審査時に必ず提示を求められる書類の一つです。以下の管理項目を含めて整備してください。

内部監査員リストに含める管理項目

管理項目 内容
氏名・所属部門 監査員の基本情報
認定している監査種類 QMS監査員・製造工程監査員・製品監査員の区分
力量証明の根拠 外部資格名・取得日、または社内評価の実施日・評価結果
認定日・認定者 いつ誰が監査員として認定したか
年間監査実施実績 直近の監査実施日・対象範囲・報告書番号
力量評価結果 最新の力量評価の結果と次回評価予定日
備考 対応可能な監査対象工程・製品の区分等

力量評価13項目の設計と評価方法

力量評価は「評価した記録が残ること」が重要です。以下の13項目を基に4段階評価等で数値化するなど、基準点以上の人材を監査員として認定する仕組みにすることで、力量評価の客観性を確保できます。

力量評価13項目は、全て証明書があれば審査の際も問題ありませんが、無いと社内トレーナーの力量証明が必要なのでかなり苦労します。

品質マネジメントシステム監査員の力量評価項目

No. 評価項目 評価の観点
① IATF要求事項の理解 全条項の内容と相互関係を説明できるか
② APQP&PPAPの理解 各段階の目的・アウトプットを監査で評価できるか
③ FMEAの理解 RPN・特殊特性の設定・管理策の妥当性を評価できるか
④ MSAの理解 GR&R等の結果の許容判定基準を理解しているか
⑤ SPCの理解 管理図の見方・工程能力指数の判定基準を理解しているか
⑥ IATF内部監査手法の理解 監査計画・実施・報告・フォローアップを適切に実施できるか
⑦ 顧客固有要求事項の理解 自社の顧客CSRの内容とQMSへの展開を確認できるか

製造工程監査員の追加力量評価項目

No. 評価項目 評価の観点
⑧ 該当工程の技術的理解 加工条件・パラメータ・不良モードを説明できるか
⑨ コントロールプランの理解 管理特性・管理方法の妥当性を評価できるか
⑩ 該当部門での実務経験 監査対象工程に関する実務経験の有無・期間

製品監査員の追加力量評価項目

No. 評価項目 評価の観点
⑪ 該当計測機器・試験設備の理解 監査で使用する測定器を正しく操作・判定できるか
⑫ 製品要求・図面の理解 仕様書・図面から合否判定基準を読み取れるか
⑬ 該当部門での実務経験 検査・品質管理業務の実務経験の有無・期間
評価点数と認定基準の設計例

①4段階評価(0〜3点)を採用する場合の認定基準設計の考え方として、QMS監査員は①〜⑦の全項目で一定水準以上の評価点を合計した際に認定するルールを定める。

②製造工程監査員はQMS監査員の認定に加えて⑧〜⑩についても基準点を設け、製品監査員は⑪〜⑬について基準点を設ける。

※具体的な点数基準は組織の実態に合わせて設定してください。

内部監査員の養成計画

力量評価と並行して、内部監査員の養成計画を策定し内部監査管理規定に明記することが求められます。

養成計画に含めるべき内容

内部監査管理規定に記載すべき養成計画の内容は、現状の監査員数と必要監査員数の把握(過不足の評価)、新規監査員の育成目標人数と育成期間、外部研修の受講計画(年度ごとの受講予定者・コース)、社内教育の実施計画(トレーナー・対象者・頻度)、力量評価の実施スケジュール(年1回以上推奨)です。

社内トレーナーによる内部教育の実施

外部研修コースに加えて、社内トレーナーによる内部講習も力量向上の有効な手段です。社内講習の場合は、トレーナーが上記の資格要件を満たしていることを確認した上で実施記録を残すことで、内部監査員の力量証明の一部として活用できます。

内部監査・審査での確認ポイントと質問例

7.2.3項は審査で不適合になりやすい条項のひとつとして現場では認識されています。「監査員リストはあるが力量証明がない」「規定はあるが力量評価を実施していない」という状態が最も多い不適合パターンです。

審査で指摘されやすい5つのポイント

No. 指摘されやすいポイント よくある不備の状態 対策
① 内部監査管理規定が存在しない 内部監査のルールが品質マニュアルに数行書かれているだけで、独立した規定がない 内部監査に関する全要求事項を網羅した内部監査管理規定を作成する
② 力量証明の記録が修了証のみ 外部セミナーの修了証はあるが、その後の力量評価・力量アップ計画が存在しない 修了証に加えて社内力量評価表を整備し、毎年の評価記録を保持する
③ 製造工程・製品監査員の追加力量が未証明 QMS監査員と製造工程監査員が同一の証明書で管理されており、追加力量が証明されていない 監査員リストに監査種類区分を設け、各種類の力量証明を個別に管理する
④ f)g)の力量維持要求が未文書化 「毎年監査に参加している」「変化があれば教育している」と言うが、その記録・規定が存在しない 年間最低監査回数と変化時の知識更新を内部監査管理規定に明文化する
⑤ トレーナーの力量証明がない 社内で内部監査員教育を実施しているが、トレーナーの資格・力量証明の記録がない トレーナーの資格要件を規定に明記し、資格証明書・力量評価記録を保持する

監査で「見られる帳票・記録」一覧

帳票・記録 確認される内容
監査管理規定 a)〜g)の要求事項の網羅性・力量要件の定義
監査員リスト 監査種類・力量証明根拠・認定日・年間実績
外部研修修了証・合格証 a)c)d)e)の力量証明
社内力量評価表(13項目) 毎年の力量評価記録と評価結果
顧客CSR教育記録 b)の力量証明(社内教育による)
監査実績記録 f)の年間最低監査回数の遵守確認
変化時の再教育記録 g)の知識維持の証拠
トレーナー資格証明書 トレーナーの力量証明
内部監査員養成計画 育成計画の文書化

IATF16949:7.2.3に関するFAQ

【注目】お知らせ
規格対応で迷ったら、メールで確認できますFAQで一般的な考え方を確認できますが、自社の規定・帳票・審査対応へどう反映するかは、会社ごとに判断が変わる場合があります。
解釈
この要求事項の考え方でよいか確認したい
反映
規定・帳票にどう落とし込むか相談したい
審査
審査指摘や回答方針に不安がある

個別事情がある場合は、メールコンサルで実務目線の確認ができます。

メールコンサルを見る

内部監査員の力量を証明するためにはどのような方法がありますか?

最も確実なのは外部研修の修了証の取得です。ただし修了証の取得だけでは不十分で、その後に①社内力量評価表による年次評価、②実際の監査実施実績、③変化に応じた継続教育の記録が揃って初めて「力量を維持している」という証明になります。

内部監査管理規定は必ず作成しなければなりませんか?

実務上、内部監査管理規定なしに7.2.3項への審査対応は極めて困難です。品質マニュアルに数行の記載があるだけでは「文書化されたプロセス」として認められない可能性が非常に高いです。監査員の力量要件・認定プロセス・評価方法・養成計画・f)g)の維持要求をひとまとめにした独立した規定として作成することを強く推奨します。

QMS監査員・製造工程監査員・製品監査員は別々の人が担当しなければなりませんか?

必ずしも別々の人である必要はありません。一人の監査員が3種類全ての力量を証明できれば、一人で全種類の監査を担当することも可能です。実際、全種類の監査が可能な「フルスペック監査員」を育成することが、第二者監査員の候補としても有効です。ただし、各種類の追加力量を個別に証明することは必要です。

外部研修を受講させる予算がない場合はどうすればよいですか?

外部研修が難しい場合は①SAC等の資格を持つ社内トレーナーによる内部研修、②審査法人・コンサルタントによる出張研修、③e-ラーニングや自主学習+社内テストという方法も選択肢です。ただしいずれの場合も「誰が・何を教えたか・受講者の理解度確認をしたか」の記録が必要です。外部研修の修了証がない場合は社内評価の精度と記録の充実度が審査での判断基準になります。

内部監査員リストはどのくらいの頻度で更新すればよいですか?

監査員の認定・資格取得・力量評価の都度更新することが原則ですが、少なくとも年1回の定期更新(力量評価の結果反映)を規定に明記してください。組織変更・退職・異動があった際も即時更新が必要です。最新版でない内部監査員リストは審査で問題になります。

年間最低監査回数はいくつに設定すればよいですか?

規格上の具体的な数値指定はなく、組織が定めることが求められています。実務的には「年1回以上の監査への参加」を最低基準として規定している組織が多いです。重要なのは「設定した回数を下回った監査員の扱い(再認定プロセス等)」を合わせて規定に明記することです。

顧客CSRの理解(要求事項b)はどのように証明すればよいですか?

外部セミナーでは対応できないため、IATF事務局が監査員に対してCSRの内容を教育した記録が証明手段となります。教育の内容(対象CSR・主要要求事項の解説)・実施日・受講者・理解度確認の記録を残してください。CSR改訂時の再教育記録も重要な証拠になります。

内部監査員教育を担当するトレーナーに資格がない場合はどうすればよいですか?

資格なしでのトレーナー活動は力量証明が困難です。対応策としては①外部研修機関に依頼して資格取得を目指す、②当面は外部講師(コンサルタント等)を活用しながら社内トレーナーを育成する計画を立てる、という段階的アプローチが現実的です。「現在資格取得に向けて取り組んでいる」という計画と進捗記録があれば、審査での説明がしやすくなります。

まとめ:IATF16949:7.2.3項の内部監査員の力量

IATF16949:7.2.3項は、内部監査員にa)〜e)の5つの最低力量+監査種類別の追加力量+f)g)の力量維持を要求し、これらをすべて文書化されたプロセスで検証・管理することを求める条項です。

本要求事項のポイントを改めて整理すると以下の通りです。

  • 内部監査管理規定の作成が必須(これがないと審査が通らない可能性が非常に高い)
  • a)〜e)の各力量を外部研修修了証・社内力量評価記録で証明する
  • 内部監査の3種類(QMS・製造工程・製品)ごとに必要な追加力量を規定化する
  • 内部監査員リストに監査種類・力量証明根拠・認定日・年間実績を記載して最新版を維持する
  • 力量評価13項目を数値化して毎年評価し、その記録を保持する
  • f)年間最低監査回数を規定に明記し、実績記録を残す
  • g)変化への知識更新を規定に明記し、変化時の再教育記録を残す
  • トレーナーの資格要件を規定化し、力量証明書類を文書として管理する
  • 養成計画を策定して中長期的な監査員育成の仕組みを構築する

「修了証を取得して登録して終わり」では審査に対応できません。力量の証明・評価・維持・養成を一体的に管理する仕組みを内部監査管理規定として文書化することが7.2.3項対応の本質です。

「内部監査管理規定の作り方がわからない」という方へ

7.2.3項は審査で不適合になりやすい条項のひとつです。「どこから手を付ければよいかわからない」「現状の対応が審査基準を満たしているか不安」という場合は、メールコンサルティングで個別にご相談いただけます。

メールコンサルについて詳しく見る

本記事の内容を、自社の規定・帳票・教育に落とし込む!

IATF16949・ISO9001・VDA6.3は、要求事項を理解するだけでなく、現場で説明できる仕組みにすることが重要です。判断に迷う部分は個別相談で、資料を整えたい場合は教材・サンプルをご活用ください。

まず相談したい方へ
メール相談・個別コンサル監査対応、規格解釈、規定・帳票の考え方を実務目線で確認できます。


サービスを見る

自社で整備したい方はこちら学習教材、社内教育資料、規定サンプル、帳票サンプルを目的別にまとめています。


規格理解
IATF・ISO教材


社内教育
実践教材


規定作成
規定サンプル


記録整備
帳票サンプル


5大ツール
コアツール教材


VDA6.3
VDA6.3教材

品質マネジメントシステム構築・学習支援
QMS認証パートナー
ISO9001・IATF16949・VDA6.3 実務支援
規格理解で終わらせず、監査で説明できる仕組みへ。
記事で規格の考え方を理解しても、自社の規定・帳票・教育・監査対応に落とし込む段階で迷うことは少なくありません。QMS認証パートナーでは、規格解釈から仕組みづくり、社内教育、審査対応までを実務目線で支援しています。
迷ったら、実務者に相談できます
「この解釈でよいのか」「自社の帳票や規定にどう反映すればよいのか」と迷った場合は、目的に合わせて相談方法を選べます。