IATF:8.6.1項の製品及びサービスのリリース-補足の要求事項では、製品の検査を適切な段階で実施する。その検査計画は、コントロールプランに定め実施することを意図しています。
今回の記事は、IATF:8.6.1項の製品及びサービスのリリース-補足の要求事項の意味と構築ポイントを解説します。
知識・経験を活かし、品質マネジメントシステムの規格を幅広い方々に理解いただき、各規格の普及のお手伝いができればという思いで立ち上げました!難解な内容も、知識と経験でわかりやすく解説していきますので、これからもよろしくお願いします!あくまでも個人の見解(公式に認められたものではない)となりますので、ご理解いただき是非参考にしていただければ幸いです★
条項 | 題目 | ISO9001 | IATF |
第4章 | 組織の状況 | 〇 | 〇 |
第5章 | リーダーシップ | 〇 | 〇 |
第6章 | 計画 | 〇 | 〇 |
第7章 | 支援 | 〇 | 〇 |
第8章 | 運用 | 〇 | 〇 |
第9章 | パフォーマンス評価 | 〇 | 〇 |
第10章 | 改善 | 〇 | 〇 |
※8.5項~8.7.2項は主に、①製造プロセス②生産管理プロセス③品質管理プロセスが関係します。
条項 | 題目 | ISO9001 | IATF |
8.5 8.5.1 |
製造及びサービス提供 | 〇 | 〇注記 |
8.5.1.1 | コントロールプラン | 〇 | |
8.5.1.2 | 標準作業-作業者指示書及び目視標準 | 〇 | |
8.5.1.3 | 作業の段取り替え検証 | 〇 | |
8.5.1.4 | シャットダウン後の検証 | 〇 | |
8.5.1.5 | TPM | 〇 | |
8.5.1.6 | 生産治工具並びに製造・試験・検査の治工具及び設備の運用管理 | 〇 | |
8.5.1.7 | 生産計画 | 〇 | |
8.5.2 | 識別及びトレーサビリティ | 〇 | 〇注記 |
8.5.2.1 | 識別及びトレーサビリティ-補足 | 〇 | |
8.5.3 | 顧客又は外部提供者の所有物 | 〇 | 〇 |
8.5.4 | 保存 | 〇 | 〇 |
8.5.4.1 | 保存-補足 | 〇 | |
8.5.5 | 引き渡し後の活動 | 〇 | 〇 |
8.5.5.1 | サービスからの情報のフィードバック | 〇 | |
8.5.5.2 | 顧客とのサービス契約 | 〇 | |
8.5.6 | 変更の管理 | 〇 | 〇 |
8.5.6.1 | 変更の管理-補足 | 〇 | |
8.5.6.1.1 | 工程管理の一時的変更 | 〇 | |
8.6 | 製品及びサービスのリリース | 〇 | 〇 |
8.6.1 | 製品及びサービスのリリース-補足 | 〇 | |
8.6.2 | レイアウト検査及び機能試験 | 〇 | |
8.6.3 | 外観品目 | 〇 | |
8.6.4 | 外部から提供される製品及びサービスの検証および受入れ | 〇 | |
8.6.5 | 法令・規制への適合 | 〇 | |
8.6.6 | 合否判定基準 | 〇 | |
8.7 8.7.1 |
不適合なアウトプットの管理 | 〇 | 〇 |
8.7.1.1 | 特別採用に対する顧客の正式許可 | 〇 | |
8.7.1.2 | 不適合製品の管理-顧客規定のプロセス | 〇 | |
8.7.1.3 | 疑わしい製品の管理 | 〇 | |
8.7.1.4 | 手直し製品の管理 | 〇 | |
8.7.1.5 | 修理製品の管理 | 〇 | |
8.7.1.6 | 顧客への通知 | 〇 | |
8.7.1.7 | 不適合製品の廃棄 | 〇 | |
8.7.2 | (不適合製品関連の記録保持) | 〇 | 〇 |
目次
IATF:8.6.1項の製品及びサービスのリリース-補足はコントロールプランが肝
IATF:8.6.1項の製品及びサービスのリリース-補足の要求事項では、ISO9001の8.6の内容をより詳細に記載しているのがポイントです。
この解釈は、「製品検査計画がコントロールプランに全て記載されており、その検査記録は確実に保持すること」という意味です。
ISO9001取得企業であれば、検査記録は保持していると思いますが、全ての検査をコントロールプランで網羅していないと思うので、しっかり見直しを行ってください。検査計画がコントロールプランから抜けると本要求事項で指摘されます。
初回リリース=初出荷のこと
IATF:8.6.1項の製品及びサービスのリリース-補足の要求事項では、以下のようなことが大事です。
本項でいう初回リリースとは、初物出荷のことです。つまり、初期流動管理状態にあるような製品を出荷することを意図しています。
これらは特別な状況下にある為、通常は出荷検査担当者承認だけで対応している場合でも、この時だけ特別な部門横断承認を行う企業も多いのではないでしょうか?
そういった初回リリースの対応方法が特別な状態で対応することがある場合は、それらもコントロールプランに記述することがおすすめです!(重要ノウハウ)。
例えば、N=5通常検査のところをN=30で、工程能力指数を全工程調査する場合などもあります。
それらにきちんともれなく対応するためにも、初回リリース対応計画はコントロールプランに書いておくことがおすすめです。
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変更が発生したら初回リリースと同様の管理を!
IATF:8.6.1項の製品及びサービスのリリース-補足の要求事項では、以下のようなことが大事です。
これからもわかるように、何らかの品質に影響する変更が行われた後は、変更後の製品を再リリースすることになります。
その際は、特別な状態つまり初期流動管理状態と同じような状態なので、初回リリースと同じ管理+変更工程は重点工程として管理することが必要です。
そのため、変更管理表などで変更を管理している企業は、変更管理表に初回リリース同様の確認項目が確実にチェックされた結果が確認できないと不適合です。
IATF:8.6.1項の製品及びサービスのリリース-補足はどこに記載すればいい?
IATF:8.6.1項の製品及びサービスのリリース-補足の要求事項は、製造管理規定に記載し、権限については、業務・職位分掌を参照させるようすることがポイントです。
検査管理規定や変更管理規定及び不適合品処理規定など様々なプロセス管理規定とリンクするので、全てに記載することは大変です。
想定される場面での権限者を、職位と権限込みで業務・職位分掌でリリース権限を明記するようにしましょう。
IATF:8.6.1に関するFAQ
よくある質問をFAQ形式で3つご紹介致します!もっと詳しく質問したい場合は、是非メールコンサルティングサービスをご活用くださいね!
「初回リリース」とは、製品やサービスが初めて出荷される際のプロセスのこと。別名:初品出荷。具体的には、初めて市場に出荷される製品や、品質に影響する変更が加えられた製品が対象となります。初回リリースは通常の出荷とは異なり、特別な管理や承認が必要です。つまり、初期流動管理対象品の出荷です。このため、製品が初めてリリースされる際には、コントロールプランに基づいた厳格な検査と承認が必要であり、検査も「厳しい検査状態」にすることが構築のポイントです。
コントロールプランは、製造工程における品質管理のための計画書(つまりQC工程図)です。IATFの規格に基づき、各工程で行う検査や測定、管理活動を明確に記載され、特に8.6.1項では、製品やサービスのリリースに対して、検査や承認手順がコントロールプランに文書化されていることが要求されます。コントロールプランは品質保証の要であり、適切な品質管理を実施するために非常に重要な文書です。特に製造工程監査やPPAPといった重要な要求事項とも関連します。
製品やプロセスに品質に影響する変更が加わった場合、変更後の製品は「再リリース」として取り扱われます。これは、初回リリースと同様に厳格な管理が求められ、特に変更管理表に基づいて、全ての確認事項が適切に処理されているかを確認します(製造工程監査を実施するなどのルール化が鍵)。また、コントロールプランやPPAP(生産部品承認プロセス)も再提出の対象となることがありますので、変更が発生した際にはこれらの手順を確実に実施する必要があります。
IATF:8.6.1項の製品及びサービスのリリース-補足:まとめ
IATF:8.6.1項の製品及びサービスのリリース-補足の要求事項の規格解釈はいかがでしたでしょうか?
本要求事項のポイントは、製品の検査を適切な段階で実施する。その検査計画は、コントロールプランに定め実施することを意図していました。
初回リリースという言葉に若干わかりにくさがありますが、初期流動管理状態と解釈すれば様々な場面が想像できるのでわかりやすいかと思います。
特に、変更からの初期流動管理が初回リリースに該当するのは見落とされがちなので注意しましょう!
それではまた!
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掲載:2024年12月1日