ISO9001:8.5.6項の変更の管理の要求事項は、変更のプロセスを構築し、意図した変更の結果を得るために実施した一連の記録を保持することを要求しています。
今回の記事は、ISO9001:8.5.6項の変更の管理の要求事項の意味と構築ポイントについて解説します。
条項 | 題目 | ISO9001 | IATF16949 |
第4章 | 組織の状況 | 〇 | 〇 |
第5章 | リーダーシップ | 〇 | 〇 |
第6章 | 計画 | 〇 | 〇 |
第7章 | 支援 | 〇 | 〇 |
第8章 | 運用 | 〇 | 〇 |
第9章 | パフォーマンス評価 | 〇 | 〇 |
第10章 | 改善 | 〇 | 〇 |
※8.5項~8.7.2項は主に、①製造プロセス②生産管理プロセス③品質管理プロセスが関係します。
条項 | 題目 | ISO9001 | IATF16949 |
8.5 8.5.1 |
製造及びサービス提供 | 〇 | 〇注記 |
8.5.1.1 | コントロールプラン | 〇 | |
8.5.1.2 | 標準作業-作業者指示書及び目視標準 | 〇 | |
8.5.1.3 | 作業の段取り替え検証 | 〇 | |
8.5.1.4 | シャットダウン後の検証 | 〇 | |
8.5.1.5 | TPM | 〇 | |
8.5.1.6 | 生産治工具並びに製造・試験・検査の治工具及び設備の運用管理 | 〇 | |
8.5.1.7 | 生産計画 | 〇 | |
8.5.2 | 識別及びトレーサビリティ | 〇 | 〇注記 |
8.5.2.1 | 識別及びトレーサビリティ-補足 | 〇 | |
8.5.3 | 顧客又は外部提供者の所有物 | 〇 | 〇 |
8.5.4 | 保存 | 〇 | 〇 |
8.5.4.1 | 保存-補足 | 〇 | |
8.5.5 | 引き渡し後の活動 | 〇 | 〇 |
8.5.5.1 | サービスからの情報のフィードバック | 〇 | |
8.5.5.2 | 顧客とのサービス契約 | 〇 | |
8.5.6 | 変更の管理 | 〇 | 〇 |
8.5.6.1 | 変更の管理-補足 | 〇 | |
8.5.6.1.1 | 工程管理の一時的変更 | 〇 | |
8.6 | 製品及びサービスのリリース | 〇 | 〇 |
8.6.1 | 製品及びサービスのリリース-補足 | 〇 | |
8.6.2 | レイアウト検査及び機能試験 | 〇 | |
8.6.3 | 外観品目 | 〇 | |
8.6.4 | 外部から提供される製品及びサービスの検証および受入れ | 〇 | |
8.6.5 | 法令・規制への適合 | 〇 | |
8.6.6 | 合否判定基準 | 〇 | |
8.7 8.7.1 |
不適合なアウトプットの管理 | 〇 | 〇 |
8.7.1.1 | 特別採用に対する顧客の正式許可 | 〇 | |
8.7.1.2 | 不適合製品の管理-顧客規定のプロセス | 〇 | |
8.7.1.3 | 疑わしい製品の管理 | 〇 | |
8.7.1.4 | 手直し製品の管理 | 〇 | |
8.7.1.5 | 修理製品の管理 | 〇 | |
8.7.1.6 | 顧客への通知 | 〇 | |
8.7.1.7 | 不適合製品の廃棄 | 〇 | |
8.7.2 | (不適合製品関連の記録保持) | 〇 | 〇 |
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目次
ISO9001:8.5.6項の変更の管理の意図
製造業のみならず、多くの業種では様々な変更が日々行われています。
例えば、製造業であれば市場クレームが発生すれば、その対策のために変更が行われることも多いかもしれません。
「出荷検査が目視検査であったため、市場流出した」という流出原因であれば、「画像検査導入」という流出対策を行うこともあるでしょう。
しかしこれらの変更というのは、よかれたと思ってやることも「リスク」というものも存在するので大変危険です。
それらのリスクつまり、変更に関する弊害についてきちんと検証しないと変更したことによる新たな問題が発生することも考えられます。
また、「変更してOK」という承認も必要です。
現場の方が勝手に判断してなんでも変更されてしまうと、顧客と取り交わした品質がいつの間にか維持できなくなっていることも考えられます。
ISO9001:8.5.6項の変更の管理では、そういった変更に関するリスクを事前検証し、変更に取り組むことを意図しています。
次に、ISO9001:8.5.6項の変更の管理の要求事項について詳しく見ていきましょう。
①変更は「定義」と決めることが大事
品質マネジメントシステムを運用する上で非常に重要な要求事項なのがこの「変更の管理」です。
その為、変更プロセスを確実に構築し取り組むことが求められます。
その変更のプロセスのルールは、変更管理規定を作成し取り組む必要があり、その中で重要な内容が「変更の定義」です。
一般的に変更及びサービスを提供するメーカーは、「4M+1E」に着目して変更の定義を決定していることがほとんどです。
変更の定義は4M+1Eに注目
これらを参考に、変更の定義を決定し、変更管理規定内に明確に書くようにしてください。
変更の定義については、ISO9001:8.5.6項の変更の管理の要求事項を審査または顧客監査される際に必ず見られるポイントなので注意しましょう!
②変更は計画/非計画の二つを定める
変更は計画的に行われることもあれば、突発的な非計画的な変更が行われることがあります。
例えば大型設備の新規導入であれば計画的な変更に該当しますが、顧客クレーム発生からの変更などは、突発的な非計画的な変更に該当します。
計画的/非計画的のどちらなのかを明確にし、計画があればその変更計画管理を重視し、非計画的であれば特急的管理に対する厳戒態勢で取り組むことが求められます。
これらの定義・ルールなども変更管理規定に記載してください。
ISO9001:8.5.6項の変更の管理の要求事項の中でも重要ポイントの一つです。
③変更プロセスフローを作成する
ISO9001:8.5.6項の変更の管理の要求事項の対応は、リスクの多い作業となる為、変更の管理をきちんと行い対応することが求められる。
その対応方法をビジュアル的に組織内で分かりやすく示すことができるのが「変更プロセスフロー」です。
変更の流れをしっかりと定義しておくことで、どの部門の誰が対応するのかなども組織の中で決定しやすくなります。
下記の変更プロセスフローを参考に、自社内の変更管理規定にしっかり記載しておきましょう。
このプロセスに基づき、変更申請から変更の完了までを一連のプロセスの記録を記述できる変更申請書を作成することが重要です。
これがないと審査や監査で重大な不適合となることがあるので注意してください。
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④変更の管理は「変更の弊害」についてリスク検証することが大事
ISO9001:8.5.6項の変更の管理の要求事項には、以下のように記載されています。
変更の定義に該当する変更が発生した場合、変更プロセスフローに基づき計画を作成していきます。
その計画の中で変更に関する弊害すなわち「リスク」があるかを検証することが求められます。
例えば、Aという設備の改造を行うと、Bという設備も同時改造しなくてはならない場合。また、顧客との契約上、1年前に変更連絡を通知する必要があるが、他社で起きた品質トラブルの対応の共用設備の変更を一刻を争う状態なども大変です。
その為、変更のリスクをしっかりと洗い出し、リスク低減の活動に取り組むことが求められます。
⑤変更の評価及び判定を実施
ISO9001:8.5.6項の変更の管理の要求事項には、以下のように記載されています。
変更の計画後のリスク検証実施した後は、実際に変更作業に取り掛かります。
変更作業を評価するための計画も忘れないようにしましょう!何度も繰り返して評価することでその変更が正しく行えるかどうかの検証になります。
また、変更のサンプル数なども事前に決めておきましょう。
N=1個よりもN=30個の方が信ぴょう性は上がりますが、費用や工数がかかります。変更の影響度によってそれらの評価数を決定するようにしましょう。
それらの評価が完了したら、変更の許可がある権限者によって承認してください。
この承認は、量産製造ラインの許可なので、本格移行の許可となります。
一般的には、業務・職位分掌表などに変更の権限を記載したり、変更管理規定に記載されていることが多いです。
⑥変更の効果確認を実施して完了!
ISO9001:8.5.6項の変更の管理の要求事項を実施し、無事量産移行した後は、その変更の効果を確認し完了です。
変更した内容が問題なく生産内で機能しており、意図する結果が継続的に行われているかなどを確認します。
例えば、3LOT分調べてOKならその記録を変更管理申請書などに記載します。
そして、その変更の効果の確認までを権限者によって確認され、無事合格すれば完了です。
変更のプロセスに基づき、きちんとルール通り行われているかは、しっかり審査や顧客監査で確認されるとともに、無許可の変更などが行われていた場合、重大な不適合となりますので管理・監視をしっかり行いましょう。
ISO9001:8.5.6項の変更の管理:まとめ
ISO9001:8.5.6項の変更の管理の要求事項の規格解釈はいかがでしたでしょうか?
変更の管理は、品質マネジメントシステムの運用で超重要事項の一つです。
変更のプロセスを定め、変更管理規定のルールに従い実施してください。
変更のリスク検証がきちんと行われているかは、審査や監査で必ず確認されます。
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