ISO9001:8.5.2項の識別及びトレーサビリティの要求事項では、識別すべき内容とそれに伴うトレーサビリティ(追跡可能な状態)を組織がどこまで行うかを、識別及びトレーサビリティ管理規定を作成し対応することを要求しています。
今回の記事は、ISO9001:8.5.2項の識別及びトレーサビリティの要求事項の意味と構築ポイントについて解説します。
知識・経験を活かし、品質マネジメントシステムの規格を幅広い方々に理解いただき、各規格の普及のお手伝いができればという思いで立ち上げました!難解な内容も、知識と経験でわかりやすく解説していきますので、これからもよろしくお願いします!あくまでも個人の見解(公式に認められたものではない)となりますので、ご理解いただき是非参考にしていただければ幸いです★
目次
ISO9001:8.5.2項の識別及びトレーサビリティの意図
ISO9001:8.5.2項の識別及びトレーサビリティの要求事項では、部品・原材料の入荷から製品製造過程、顧客の納品そしてエンドユーザー(その製品を最終的に使用する人・組織)に至る全過程において、組織の製品がどのような状態で作られたかがわかるつまり、識別(区別)・追跡することが可能な状態にすることを要求しているのが本要求事項の意味です。
例えば、製造過程で間違えて生産したり、不良品を納品してしまうことを確実に防ぐ必要があります。
それらの管理を行うためには、部品・原材料レベルの識別が重要になり、それらを追跡できることができれば組織の大きな損害にならず、最低限の対応で済むことができるので、識別及びトレーサビリティの要求事項は、組織にとっても非常な有益な要求事項です。
識別及びトレーサビリティーの構築ポイント
組織は,製造及びサービス提供の全過程において,監視及び測定の要求事項に関連して,アウトプットの状態を識別しなければならない。
トレーサビリティが要求事項となっている場合には,組織は,アウトプットについて一意の識別を管理し,トレーサビリティを可能とするために必要な文書化した情報を保持しなければならない。
この要求事項のポイントは、製品ができるまでの過程を識別していくことがポイント!
ISO9001:8.5.2項の識別及びトレーサビリティの要求事項では、全過程において状態識別を要求しています。
その識別をきちんとできれば、顧客へ出荷した完成品のロット番号から、入荷部品のロットまで追跡(トレース)できることにより、不具合の特定が可能となる為、顧客への影響を最小限に食い止めることが可能になります。
識別及びトレーサビリティーを行う範囲は「組織で決める」
ISO9001:8.5.2項の識別及びトレーサビリティの要求事項を読むと範囲が広く、どこまでやるのかという観点で見ると非常に広い範囲に及ぶため、ISO9001の初段階で悩まれる要求事項に一つです。
この「どこまでやるのか」という範囲は、組織で決めてOK。
例えば、量産品の完成品に個体識別番号(シリアルNo.)を入れれば一番良いのですが、管理も大変ですし、中小企業では管理投資も必要になります(バーコード管理やQRコードなど)。
そのため、組織の中でどこまで追跡可能にするのかは、顧客への影響度や自社の損害という観点で識別トレーサビリティーを構築することがよいでしょう。
【注意】識別=表示ではない!
ISO9001:8.5.2項の識別及びトレーサビリティの要求事項で多くの企業が悩まれているのは、識別=表示と思っていることです。
ISO9001が求めているのは、他と区別できれば表示する必要が無いので、確実に識別できる色付き看板や現品票でもなんでもOKです。
徹底的に区別できることに越したことはないですが、管理コストがかかるので、要求事項を理解して組織・製品にあった管理を手順化しましょう。
※IATFの言っている意味は、上記についてです。
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ISO9001:8.5.2項の識別及びトレーサビリティはどこに記載すればいい?
ISO9001:8.5.2項の識別及びトレーサビリティは、識別及びトレーサビリティ管理規定を作成し対応することが求められます。
この規定には、「識別方法」「トレーサビリティの仕組み」が記載されている必要があります。
部品入荷から出荷までどのような識別が行われ、トレーサビリティはどこまで実施可能かをきちんと検証されていることが求められます。
内部監査などできちんと実施されているかを確認しましょう。
ISO9001:8.5.2に関するFAQ
ISO9001のメールコンサルティングでよくある質問をFAQ形式で3つご紹介致します!もっと詳しく質問したい場合は、是非メールコンサルティングサービスをご活用くださいね!
識別とは、製品やサービス、部品が混同されないように、明確なラベルや番号、コードなどを付与することです。これにより、製造やプロセスの各段階で何が対象かを明確に把握でき、エラーや不良の発生を防ぎます。製品番号、バーコード、工程管理カードなどが具体例です。
トレーサビリティの目的は、不良品や欠陥の発見時に、影響範囲を迅速に特定し、対象製品を追跡・回収することです。原材料から最終製品、さらに顧客の手元までの流れを記録することで、品質管理の透明性が向上し、リスク軽減や信頼性の向上につながります。
トレーサビリティを実施するには、製品や工程に関連する情報(製造日、ロット番号、担当者、使用部品など)を記録する仕組みが必要です。ERPシステムやバーコード管理、チェックリストの活用が効果的です。また、記録の保管期間と方法についても内部手順で定義しておくことが重要です。
ISO9001:8.5.2項の識別及びトレーサビリティ:まとめ
ISO9001:8.5.2項の識別及びトレーサビリティの要求事項の規格解釈はいかがでしたでしょうか?
本要求事項のポイントは、識別すべき内容とそれに伴うトレーサビリティ(追跡可能な状態)を組織がどこまで行うかを、識別及びトレーサビリティ管理規定を作成し対応することです。
ルールを作成したら本当にトレース可能かをしっかり確認するようにしてください。
それではまた!
【補足】IATFの注記について
IATF構築の場合は、本要求事項に以下の追記が記入されています。
本要求事項の意味は、工程における識別を徹底して管理することを要求しています。
識別が直接製品に表示できない場合とは、バーコート管理のことです。
直接製品に表示しない状態でもバーコードを読み取ることで合格・不合格をはじめとする製品の状態を読み込むことができればOK。
特に審査や監査では、その工程で識別ができているかを徹底して見られるので、各工程の状態が識別できる状態になっているかをしっかり検証しましょう!