【IATF16949攻略】8.5.1.5:TPMの要求事項徹底解説!

IATF16949:8.5.1.5項のTPMの要求事項のポイントは、設備リストの作成及び保全目標が明確にされた保全計画書の作成とその監視です。

今回の記事は、IATF16949:8.5.1.5項のTPMの要求事項の意味と構築ポイントについて解説します。


この記事の実務解説
QMS認証パートナー
専属コンサルタント

H.Minamino

製造業25年・自動車業界15年以上の実務経験

IATF16949・ISO9001・VDA6.3を、現場で使える形に落とし込む視点で解説しています。

規格要求事項の解釈だけでなく、審査で説明できる規定づくり、現場で使える帳票、内部監査・顧客監査への対応まで、実務で迷いやすいポイントを中心に整理しています。

専門領域
IATF16949・ISO9001・VDA6.3
得意分野
規定・帳票・監査対応の実務化
支援内容
教材提供・メール相談・個別コンサル

「この解釈でよいのか」「自社の規定や帳票にどう反映すればよいのか」と迷った場合は、QMS認証パートナーの教材・相談メニューもご活用ください。


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第8章:運用(8.5~8.7.2)についての「要求事項リスト」はこちら
ISO・IATF 8章
※IATF運用には、ISO9001の要求事項の運用が必須です。
条項 題目 ISO9001 IATF
第4章 組織の状況
第5章 リーダーシップ
第6章 計画
第7章 支援
第8章 運用
第9章 パフォーマンス評価
第10章 改善

※8.5項~8.7.2項は主に、①製造プロセス②生産管理プロセス③品質管理プロセスが関係します。

条項 題目 ISO
9001
重要
帳票
IATF
16949
重要
帳票
8.5
8.5.1
製造及びサービス提供 〇注記
8.5.1.1 コントロールプラン
8.5.1.2 標準作業-作業者指示書及び目視標準
8.5.1.3 作業の段取り替え検証
8.5.1.4 シャットダウン後の検証
8.5.1.5 TPM
8.5.1.6 生産治工具並びに製造・試験・検査の治工具及び設備の運用管理
8.5.1.7 生産計画
8.5.2 識別及びトレーサビリティ 〇注記
8.5.2.1 識別及びトレーサビリティ-補足
8.5.3 顧客又は外部提供者の所有物
8.5.4 保存
8.5.4.1 保存-補足
8.5.5 引き渡し後の活動
8.5.5.1 サービスからの情報のフィードバック
8.5.5.2 顧客とのサービス契約
8.5.6 変更の管理
8.5.6.1 変更の管理-補足
8.5.6.1.1 工程管理の一時的変更
8.6 製品及びサービスのリリース
8.6.1 製品及びサービスのリリース-補足
8.6.2 レイアウト検査及び機能試験
8.6.3 外観品目
8.6.4 外部から提供される製品及びサービスの検証および受入れ
8.6.5 法令・規制への適合
8.6.6 合否判定基準
8.7
8.7.1
不適合なアウトプットの管理
8.7.1.1 特別採用に対する顧客の正式許可
8.7.1.2 不適合製品の管理-顧客規定のプロセス
8.7.1.3 疑わしい製品の管理
8.7.1.4 手直し製品の管理
8.7.1.5 修理製品の管理
8.7.1.6 顧客への通知
8.7.1.7 不適合製品の廃棄
8.7.2 (不適合製品関連の記録保持)

当サイトの情報提供スタンスについて

当サイトでは、ISO9001およびIATF16949について、規格要求の解説にとどまらず、実務でどのようにルールや記録へ落とし込むかを重視して情報を整理しています

規格の理解とあわせて、「現状とのギャップをどう捉えるか」「どこから手を付けるべきか」といった判断に迷いやすい点を、現場目線で分かりやすく解説することを目的としています。

記事内容を自社へ当てはめる際の考え方や、判断に迷うポイントについては、別ページで整理した情報も用意しています。

IATF16949:8.5.1.5項のTPMの意味とは?

【IATF16949攻略】8.5.1.5:TPMの要求事項徹底解説!11

IATF16949:8.5.1.5項のTPMとはTotal productive maintenanceの略です。つまり、総合的設備管理のこと。企業内において、設備の保全はISO9001の中で実施していると思いますが、それよりレベルの高い要求をしているのがIATF16949です。

この要求事項の意図は、総合的設備管理を行い、設備停止時間の減少を目指し、生産性を向上させることを意図しています。

本要求事項は「有料版記事」で詳しく解説中

【重要】TPMシステムの構築とは?

IATF16949:8.5.1.5項のTPMの要求事項のポイントは、文書化したプロセスではないのですがルールは必要なので、規定などを作成しておくことがポイントです。ルールに関しては、設備・治具管理規定などを作成しておくのがおすすめです。そのルールの中に書くべき内容が本要求事項になるので、一つずつ要求事項を見ていきましょう。

a)設備一覧の作成を行い管理する

IATF16949:8.5.1.5項のTPMの要求事項のポイントは、工場内の設備の定義を決定し、その設備・治具をリスト化することです。設備や治具については、以下のように定義しリストに記載するようにしましょう。

規定に書いておくと便利!区分のポイント

▶設備(せつび)
生産活動を行うための機械や装置。
例:工作機械、プレス機、射出成形機など。
▶機械設備(きかいせつび)
製品を加工・組立するための専用または汎用の機械。
▶ライン設備(らいんせつび)
生産ライン全体を構成する設備群。搬送装置、ロボット、検査機器を含む。
▶冶具/治具(じぐ/じぐ)
加工や組立時に部品を正しい位置に保持したり、精度を確保する補助具。
▶治工具(じこうぐ)
治具と工具をまとめた呼称。製造現場で作業を効率化・標準化する目的で使用。
▶金型(かながた)
樹脂成形や金属プレスなどで使用される製品形状を転写するための型。生産品質を大きく左右する。
・・・

このようなリストを使用して、次の要求事項に基づきリストをアレンジしていきます。

b)設備・治工具の消耗品とストック数の決定

IATF16949:8.5.1.5項のTPMの要求事項では、a)の設備リストが完成したら、消耗品の管理を決定していきます。

STEP1:設備に対する消耗部品とそのストック数を決定する

STEP2:それらを決めたら設備・治具リストに追加する

STEP3:その消耗部品の交換頻度を決定する

STEP4:交換頻度で確実に保全活動を行う保全計画を作成する

保全計画については、計画と目標の作成が必要です。詳細は、f)g)参照を参照してください。

c)保全のための資源特定

IATF16949:8.5.1.5項のTPMの要求事項でいう「資源」とは、メンテ用交換部品や外注業者それに対する費用や、メンテナンスを行う人員などが資源として該当します。資源計画についても保全計画を立てる際にわかるように計画立てることが求められます。

※設備・治工具といったメインの資源だけではないことがポイントです!

d)保存方法・包装状態の明確化

IATF16949:8.5.1.5項のTPMの要求事項では、設備・治工具は常に正しい保管状態にあり、すぐに使用可能な状態を管理する必要があります。設備・治具リストにそれらの保管ルールを定めておくことで本要求事項の対応が可能です。製造工程監査では、これらの内容もきちんと確認するようにしてください。

ISO9001・IATF16949・VDA6.3は、条文の理解と「自社業務への落とし込み」は別物です。文書化や運用判断で生じる迷いを、内部監査・仕入先監査の抱負な実務経験をもつ立場から個別に整理することが可能です!
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e)該当する顧客固有要求事項

顧客のSQM(仕入先品質マニュアル)や品質保証協定書の中に、顧客から指定された保全計画で保全活動を行う旨が記載されている場合があります。もし自社の中で対応できない内容などあれば、免除許可をもらうようにしましょう。対応可能な場合は、設備リストの中に保全要求を明確に記載することが求められます。

関連記事

保全計画の立案と目標が重要!

IATF16949:8.5.1.5項のTPMで設備リストともう一つ重要なのが、保全目標を決定し計画を立てること。審査や顧客監査で見られるポイントは、この保全計画基づき実施されているかそして、目標未達の是正処置が実施されているかがポイントです。

次に、f)からi)の要求事項について見ていきましょう。

f)保全目標を立案する

IATF16949:8.5.1.5項のTPMの要求事項の対応では、文書化した保全目標が必要なので、目標についてはKPI指標の一つとして管理するのがポイント。多くの企業の場合、工程設計(生産技術部など)プロセスのKPI指標にしていることが多いです。その目標の中身として、OEE・MTBF・MTTR・予防保全(計画保全の達成度)などがあげられます。

関連要求事項

IATF:8.5.1.5項のTPM②

タートル図はプロセスの目的・責任・インプット/アウトプット・指標を俯瞰でき、どこまで記載するかの粒度が重要。プロセス定義の整理は〔タートル図テンプレート〕で進められます。

【重要】保全目標はOEE・MTBF・MTTRの内、最低1つは選ぶ

IATF16949:8.5.1.5項のTPMの要求事項の対応で保全計画の達成度のみを目標に選ぶ企業が多いですが、最低でもOEE・MTBF・MTTRから一つ選ぶようにしてください。「やっていない」とやっていない理由を説明させられますし、毎回改善の機会で指摘に繋がるので対応するようにしましょう。

OEE・MTBF・MTTRについては、以下のように解釈できます。

IATF:8.5.1.5項のTPM③

OEEの計算例
ある工場で、可動率(計画に対しての実可動)が80.0%、性能(設計上の製造スピードに対する実スピード)が90.0%、品質(良品率)が98.0%の場合
OEE = 80.0% x 90.0% x 98.0% = 70.6%
MTBFの計算例
ある工場の装置で、100時間稼働→故障→70時間稼働→故障→80時間稼働→故障と繰り返した場合のMTBF
MTBF=(100 + 70 + 80)/3≒83.3時間
MTTRの計算例
ある工場における機械で稼働→3時間故障(修理)→稼働→7時間故障(修理)と繰り返している場合のMTTR。
MTTR=(3 + 7)/2=5時間

設備保全は対象設備の特定と保全頻度の判断が要点。設備リストと保全計画を要求事項にひも付ける管理は〔設備保全計画・管理表帳票〕で整理できます。

g)目標が未達の場合の是正

IATF16949:8.5.1.5項のTPMの要求事項では、前述の通り、保全計画と目標を監視した文書すなわち「保全計画表」が必須です。計画通りできたかできなかったか、目標を達成できているのかをIATF16949の要求事項に基づいた管理を行うようにしましょう。

もし達成できなかった場合は、「達成できなかったが、その期間の生産へは影響しない。なぜなら・・・だから」という文言が重要です。保全の遅れは製品に直接影響する場合があり、リスクがあります。その為、問題無であることを確認した結果が重要です。

是正については、10.2.3項の問題解決のストーリー通り行います。

関連要求事項

h)i)予防保全が可能な内容については対応

IATF16949:8.5.1.5項のTPMの要求事項では、予防保全・予知保全の方法を利用し保全活動を行うことを意図しています。

予防保全・予知保全の違い
予防保全
保全計画によって決められた時期にメンテナンス
予知保全
故障の予兆を検知した時にメンテナンス
※例えばXbarR管理図で監視などで検知できる場合もあり!

特に予知保全が必要なのは「金型」です。金型はショット数などで成型品の状態がわかるので、予知保全の対応が求められます。該当する場合は必要な方法(例えばXbarR管理図)を選定し監視を行いましょう。

また、摩耗や劣化がある装置・治工具は注意してください。特にポカヨケ装置のようなものは、この予防保全・予知保全の考えができていないと指摘の対象になります。

j)定期的オーバーホール

IATF16949:8.5.1.5項のTPMの要求事項でいう定期オーバーホールが必要な代表例は金型です。

ショット数などから定期オーバーホール時期や金型更新月を予測し、それらを保全計画表の中で明確にしておくことが重要です。

IATF16949:8.5.1.5項のTPMはどこに記載すればいい?

IATF16949:8.5.1.5項のTPMの要求事項の対応は、設備・治具管理規定などを作成し、総合的設備管理についてのルール化を行いましょう。設備の定義やメンテ頻度の考え方などが網羅された規定を作成することが求められます。

また、日常点検表・目標管理シートなど関連した帳票(記録用紙)の整備も行いましょう。

「規定作成をどこから手を付ければいいか分からない」とお悩みの企業様必見!規格対応も、考え方やサンプルを参考に少しずつ整えられます。実務の規定〔IATF16949の規定サンプル〕で確認できます。

IATF16949:8.5.1.5に関するFAQ

規格対応でよく聞かれる悩み:FAQ

ISO9001やIATF16949、VDA6.3に取り組む中で、「審査対策として何を優先すべきか分からない」「要求事項に対する構築の考え方が整理できない」といったお客様の声は少なくありません。

また、社内にQMSを体系的に理解している担当者がいない場合や、外部コンサルの費用面で継続的な支援が難しいと感じるケースもあります。こうした悩みは、特定の企業に限らず、多くの現場で共通して見られるものとなっています。

【IATF16949:FAQ】

TPMの計画はどのように考えればいいですか?

TPMは計画を立てて実行することが重要であり、企業の設備数やQMS運用体制に依存します。頻度としては通常は数ヶ月から1年程度が一般的です。単純な計画の策定だけではNG!トレーニング、実際の保全活動の実施まで、段階的に進めないといけないので、結構大変です。

TPMシステムの構築で特に注意すべきポイントは何ですか?

重要なのは、設備リストの作成と保全目標の設定です。これに基づいて、保全計画を文書化し、実際のメンテナンス活動を継続的に監視・改善していくことが求められます。特に、OEEやMTBF、MTTRなどの指標を使用して、設備の稼働率や効率性を評価することも重要です。

TPMと従来の保全管理の違いは何ですか?

従来の保全管理が事後対応型の保全に依存することが多いのに対し、TPMは予防保全と予知保全を重視します。これにより、設備のダウンタイムを最小限に抑え、生産性の向上を図ることができます。

IATF16949:8.5.1.5項のTPM:まとめ

IATF16949:8.5.1.5項のTPMの要求事項はいかがでしたでしょうか?

本要求事項は、保全目標と保全計画を作成することを前提とし、それらの対応はa)からj)の対応が網羅されていることが求められます。このTPMの内容は、審査や顧客監査でも注目される要求事項の1つです。

きちんと管理できていないとリスクを発生させる可能性が高いため、厳しく確認されるケースも少なくありません。

それではまた!

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